労働安全衛生法

労働安全衛生法は、安全と衛生に関して守らなければならない規則をまとめてある規則集です。各職場で作らなければならない安全衛生の管理体制や、有害物・危険物の取扱、危険な機械などの検査に関することや健康診断に関することなどが規定されています。第1章~12章まであります。

一、機械等に関する規制(第5章)

二、危険物等に関する規制(第5章)

三、安全衛生教育(第6章)

四、健康診断等(第7章)

 

 

 

安全衛生管理体制(第3章)

各事業場などは、安全及び衛生の確保のために、それぞれ安全衛生に関する管理体制を構築しなければなりません。

 

①安全衛生管理体制の種類

労働者にとって「安全でかつ、衛生的な職場」を確保するということが重要であることはいうまでもありません。その安全で衛生的な労働環境の維持あるいは改善のために、各事業場で安全衛生管理体制を構築することが義務付けられています。安全衛生管理体制は、

①一般的に事業場内に構築しなければならない「一般的安全衛生管理体制」

②建築業などの現場で請負関係下で労働する場合の安全衛生管理体制である「請負関係における安全衛生管理体制」

の2種類に大別できます。

 

②一般的安全衛生管理体制

(1)一般的安全衛生管理体制の全体像

一般的安全衛生管理体制は、安全衛生管理に関しての統括管理を行う統括安全衛生管理者とその指揮の下で技術的事項の管理を行う安全管理者及び衛生管理者によって構成されます。また、規模の小さな事業場については、それらの義務を安全衛生推進者又は衛生推進者に行わせます。

(2)統括安全衛生管理者

統括安全衛生管理者は、安全衛生管理に関する統括管理や、安全衛生管理者などの指揮をします。特段の資格などのは必要とされてませんが、その事業の実施を統括管理する者にしなければならないとされています。

業種 使用労働者数
林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業 常時100人以上
製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、各種商品小売業、燃料小売業

旅館業、ゴルフ業、自動車整備業及び機械修理業

常時300人以上
その他の業種 常時1000人以上

(3)安全管理者

安全に関する技術的事項の管理を行います。下記の業種で、常時50人以上の労働者をしようする事業場ごとに選任しなければなりません。また安全管理者は原則、その事業場に専属の者を選任することとされています。

[選任すべき業種]

林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、各種商品小売業、燃料小売業旅館業、ゴルフ業、自動車整備業及び機械修理業

[用語]選任/専属/選任

  • 選任・・・選ぶことをいいます。
  • 専属・・・専ら属するつまり、いつもその事業場にいること
  • 専任・・・専ら任ずるつまり、その仕事を専門に行うこと

(4)衛生管理者

衛生に関する技術的事項の管理を行います。衛生管理者は、すべての業種で、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに選任しなければなりません。具体的には事業場で常時使用する労働者数に応じ、それぞれ衛生管理者を選任します。また安全管理者と同様に原則としてその事業場に専属の者を選任することとされています。衛生に関しては業種は問いません!安全は問われます。

常時使用する労働者数 衛生管理者数
50人~200人 1人以上
201人~500人 2人以上
501人~1000人 3人以上
1001人~2000人 4人以上
2001人~3000人 5人以上
3001人~ 6人以上

 

(5)安全衛生推進者、衛生推進者

規模の小さい事業場では、安全衛生推進者などを選任し、総括安全衛生管理者が統括管理する業務を行わせることとしています。具体的には、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場ごとに、安全衛生推進者又は衛生推進者を選任します。

●安全管理者●衛生管理者の両方が必要な業種→安全衛生推進者

●衛生管理者のみが必要な業種→衛生推進者

 

(6)産業医

医師のうち産業医を選任し、健康管理などを行わせます。具体的には、業種を問わず、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに産業医を選任しなければなりません。3000人を超える事業場(大きい工場)では、2人以上選任しなければなりません。

使用労働者数 産業医
50人以上 1人以上
3000人超 2人以上

なお産業は専属の者である必要ない。1000人を超える場合は専属の産業医が必要となります。

(7)作業主任者

作業主任者は、いわば「作業」のエキスパートです。危険を伴う作業などでは、作業主任者を選任し、作業の指揮・管理などにあたらせます。作業主任者は、安全管理者とは異なり、事業規模に関係なく「作業」の種類に応じ、危険有害作業であれば、選任義務が生じます。

 

③請負関係における安全衛生管理体制

(1)請負関係における安全衛生管理体制

元請と下請などの事業者の労働者が混在して働く工事現場などで、責任体制が不明確になることを防ぐため、あるいは連絡体制が不十分なために災害がはっせいすることを防ぐために、元請負人、下請負人が設けている一般的安全衛生管理体制とは別に、それぞれの現場ごとに請け負い関係における安全衛生管理体制を設けます。請負関係における安全衛生管理体制は、元請負人において安全衛生の統括管理を行う統括安全衛生責任者と、その指揮の下で技術的事項の管理を行う元方安全衛生管理者、及び下請負人において連絡調整などを行う安全衛生責任者によって構成されます。また規模の小さい事業場については、それらの業務を店社安全衛生管理者に行わせます。

[規模大] 統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者→元請で選任します

安全衛生責任者→下請けで選任します

[規模小] 店社安全衛生管理者→元請で選任します

(2)統括安全衛生責任者

統括安全衛生管理責任者は、建設業及び造船業の元方事業者において選任されます。安全衛生管理に関する統括管理や、元方安全衛生管理者の指揮をします。特段の資格などは必要とされていませんが、その場所においてその事業の実施を統括管理するものにしなければならないとされています。選任業種及び規模は次のようになります。

業種 使用労働者数
  • ●水道などの建設の仕事
  • ●一定の橋の建設の仕事
  • ●圧気工法のよる作業を行う仕事
常時30人以上
●上記以外の建設業及び造船業の仕事 常時50人以上

 

(3)元方安全衛生管理者

元方安全衛生管理者は、統括安全衛生責任者を選任した事業者で、建設業を行う場合に選任し安全・衛生に関する技術的事項の管理を行います。またその事業場に専属の者を選任することとされています。

(4)安全衛生責任者

安全衛生責任者は元請負人以外の請負人において選任され、元請負人において選任された統括安全衛生責任者との連絡や調整などを行います。

元請 統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者

↑↓

下請 安全衛生責任者

  • ●統括安全衛生責任者との連絡
  • ●上記の連絡を受けた事項の関係者への連絡
  • ●上記の連絡かかる事項のうち、関係するものの管理など

(5)店社安全衛生管理者

統括安全衛生責任者などの選任が義務付けられていない規模の小さい建設現場などは、店社安全衛生管理者を選任して指導を行わせます。

業種 使用労働者数
  • ●統括安全衛生責任者との連絡
  • ●上記の連絡を受けた事項の関係者への連絡
  • ●上記の連絡かかる事項のうち、関係するものの管理など
常時20人以上30人未満
●主要構造部が鉄骨または鉄骨筋コンクリートつくりである建築物の建築の仕事 常時20人以上50人未満