- 一、個人事業主とは
- 二、個人事業主と会社の主な違い
- 三、個人事業主のメリット
- 四、個人事業主のデメリット
- 五、個人事業主の税金と確定申告
- 六、確定申告とは?
- 七、個人事業主とフリーランスの違いとは?
個人事業主とは
個人事業主とは法人を設立せずに自ら事業を行う個人のことです。自営業とも言います。
個人事業主とは、株式会社などの会社ではなく、個人で事業をすることをいいます。別名「自営業」「フリーランス」とも呼ばれていますが、個人事業主は、個人で事業をするといっても、家族に事業を手伝ってもらったり、会社のように従業員を雇うことができます。
街を歩いていると、〇〇商店とか、たばこ屋さん、お酒屋さん、米屋さん、〇〇事務所、〇〇教室などの看板をよく見ますが、このような屋号(お店の名前)でやっているの多くのお店が個人事業主です。チェーン展開していないラーメン屋さんや美容院なども、ほとんどのお店が個人事業です。このような店舗や事務所などでは、個人事業主以外にも、たくさんのアルバイトやパートを含めた従業員が働いています。
このように個人事業主というのは、事業主が必ずしも1人でやっているというわけではなく、単に会社(法人)という形をとっていないだけだと理解してください。では、なぜ株式会社などの会社で、事業を行わないのでしょうか?個人事業と会社などの法人との主な違いについて考えてみます。
個人事業主と会社の主な違い
独立するには、個人事業主として開業する場合と株式会社などの会社を設立する場合がありますが、独立開業する際には個人事業と会社の違いをよく理解した上で事業を開始することが大切です。
個人事業を開業するのはびっくりするくらい簡単です。開業届を税務署に提出すれば、サラリーマンでも専業主婦でも誰でも事業を開始することができます。法人のように面倒な手続きはなく、開業費用もかかりません。事業開業後も、事務や会計などの事業経営は法人に比べれば圧倒的に簡単なのが個人事業主です。
一方、会社(法人)を設立して開業する場合、開業の手続きはかなり大変です。定款作成や法人登記などの書類作成や手続きを行う必要があり、それ以外にも様々な役所への届出が必要です。開業費用はざっと20~30万くらいかかります。また、会社になると、健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険など、各種社会保険への加入が義務づけられています。会計も厳密性が要求されるため、多くの場合、税理士などの専門家に依頼する形となります。さらに、事業が赤字であっても、法人住民税を毎年納税する必要があります(最低約7万円ほど)。個人事業の場合、赤字であれば、住民税を含めた税金の負担はほとんどありません。
個人事業と会社の違いについて、それぞれの特徴を比較してみます。
個人事業 | ||
開業資金 | 少ない資本でも可能 | |
開業手続き | 簡単 | 大変かつ費用もかかる |
社会的信用 | 低い | 高い |
会計処理 | 簡単 | 複雑(税理士に任せる) |
事業主の給与 | 経費にならない | 経費になる |
生命保険 | 所得控除になる | 経費になる |
退職金 | 経費にならない | 適正範囲内で経費となる |
社会保険 | 国民年金・国民健康保険 | 厚生年金・健康保険 |
赤字の繰り越し | 最大3年間 | 最大7年間 |
社員の確保 | 難しい | 個人事業より簡単 |
このように、開業や事業経営における費用や手間の面では、圧倒的に個人事業主にメリットがあるため、会社でないと取引が難しい場合などを除くと、まずは個人事業主で開業したほうが無難です。そのため、街には個人事業を営んでいるフリーランスや商店、事務所などがたくさん存在しています。
個人事業主のメリット
- ・会社の人間関係から解放される
- ・努力や能力に応じて、成果が反映されやすい
- ・自由な時間がとれる (会社のように就業時間に拘束されない)
- ・開業の手間や費用がかからない
- ・事業運営の手間がかからない (法人だと社会保険や源泉徴収など事務作業が大変)
- ・会計処理が簡単
- ・所得が赤字であれば、税金がかからない (法人だと赤字でも法人住民税がかかります)
- ・事業所得がそれほど多くなければ、法人よりも節税メリットがある
個人事業主のメリットは、何と言っても自由にやりたいことができるということです。サラリーマンの時のように会社内の人間関係に悩まされることもありません。事業経営がうまくいけば、経済的にも精神的にも圧倒的な自由と快適さを手に入れることができます。開業や事業経営に費用や手間がかからないことも大きなメリットの一つです。
個人事業主のデメリット
- ・仕事や収入が安定するかわからない
- ・すべてを自分で判断しなければならない (サラリーマンのように仕事の指示はない)
- ・事業に失敗した場合は自分の財産を売却してでも債務を返済しなければならない
- ・厚生年金ではないため、年金が少ない
(国民年金基金や小規模企業共済に加入することでカバーできます) - ・雇用保険に加入できないため、失業時の収入がない
(その分毎月の雇用保険額を支払う必要はありません) - ・社会的な信用度が低いため、取引先の確保や従業員の採用が難しい
- ・赤字の繰り越しは、3年までしかできない (法人は7年)
- ・事業所得が多くなれば、法人よりも税金が高くなる
個人事業主にも当然ながらデメリットがあります。ポイントはこれらの欠点をよく理解した上で、個人事業主のメリットを最大限に生かすことが重要です。
理想的な事業展開は、まずは手軽な個人事業主で開業し、その後資金的な余裕や社員を雇える状況になれば、法人化して、更なる事業の拡大を図ることだと思います。
個人事業主の税金と確定申告
個人事業主の税金について見ていきましょう。個人事業主が支払う税金は、以下の4つの税金です。
- ・所得税(国税)
- ・住民税(地方税)
- ・個人事業税(地方税、事業所得が290万円以下は免除)
- ・消費税(国税、売上1.000万円以下は免除)
所得税や住民税は、会社員の時にも毎月の給与から天引きされていて馴染みがありますが、個人事業主になっても支払います。個人事業税は初めて聞く方も多いと思われます。個人事業税というのは、個人事業の所得(利益や儲けにあたるもの)に応じてかかる税金です。事業内容によって税率が異なります。消費税は、通常、消費者としてモノやサービスを買う場合に支払っていますが、個人事業主になった場合は事業者として消費税を支払う必要があります。ただし、消費税には例外があり、個人事業の売上が1.000万を超えない限りは免除となり、消費税を支払う必要はありません。そのためか、売上が1.000万を越えない個人事業主が多く、売上が1.000万を超えるようなら、税金面でメリットがある法人化することがおすすめされています。
確定申告とは?
会社員の時には、税金の手続きを会社がしてくれていたため、税金に対する意識があまりありませんが、個人事業主になると、所得の合計額が所得控除(基礎控除など)の合計額を超える場合には、自ら確定申告をしなければなりません。確定申告をせずに税金を支払わないでいると、脱税となり、後日、税務署から連絡が来て、追徴課税や場合によっては懲役などのペナルティが課されることがあります。
確定申告は、原則として翌年の2月16日から3月15日までが申告の期間ですが、この確定申告の申告期間内に前年1/1~12/31の売上や経費や控除などを算出して、管轄の税務署に確定申告をします。
この確定申告のための会計処理を年末年始にまとめて行う個人事業主もいますが、売上や経費などの証拠(請求書や領収書など)が必要となり、それらがどこに行ったかわからなくなってしまうことが多いため、個人事業主は、毎月、確定申告のための会計ソフトなどを使って会計処理をしておくことが一般的です。また、個人事業用とプライベートの費用をしっかり分けて、事業の経費を証明するためには、事業用の銀行口座 や 事業用のクレジットカードを持っておくと便利です。
このように、個人事業主と会社員では異なることが多くあるため、個人事業のために必要なことは事前に準備しておくことをおすすめします。
個人事業とフリーランスの違いとは
フリーランスと個人事業主の違いを知っておこう
会社員ではない自由業の人に対して「フリーランス」や「個人事業主」という呼称が使われることがありますが、「フリーランス」と「個人事業主」の違いをみなさんはご存知でしょうか?多くの方がこの言葉を一緒くたにして使ってしまっているように思います。
そこでここでは
- フリーランスって何?
- 個人事業主って何?
- 個人事業主に必要な手続きとは
- フリーランスと個人事業主の使い分け
の4点を軸に、ことばの意味や使い方の違いについてみていきましょう。
フリーランスと個人事業主では、前提となる概念が異なり、片方に当てはまる人も両方に当てはまる人もいます。それぞれのことばの意味を知ならなければ、正しい使い分けはできません。また、個人事業主になると必要な手続きもありますので、個人事業主に転身しようとお考えの方は要チェックです。
フリーランスって何?
フリーランスとは、企業や団体などと雇用関係がなく、独立して仕事を請け負う人をいいます。もっと詳しく説明すると、
正社員は、勤務先の企業と雇用契約を結んでおり、
派遣社員は、派遣会社と雇用契約を結び、派遣契約によって派遣先の企業で働いています。
これに対して
フリーランスは、単発の仕事ごとに契約を結ぶ形態となっています。実際には1回1回契約を交わすのではなく、一度に長期間の契約を結び、その中で案件ごとの発注書を受け取って業務を開始するケースというケースが一般的です。クライアントの要望によっては、守秘義務契約の締結を結ぶこともあります。
つまり、フリーランスとは働き方・契約の仕方を指すことばであり、IT系のプログラマーやWEBデザイナーをはじめ、カメラマンやイラストレーター、ライターや翻訳家などクリエイティブな仕事を中心に多くみられる働き方です。コンサルタントやファイナンシャルプランナー等もフリーランスで携わる人がいるなど、具体的にどの職業が当てはまるという明確なものはありません。
現在、社会でも広く多様な働き方が認められてきており、多くの人が自分にあった働き方を探すこと・求めることが可能になってきています。単発で契約を交わすフリーランスは、そのような働き方に適しているため、主婦や学生、シニアの方からも注目を集めています。
フリーランスは個人事業主になるのか?
個人事業主とは税務上の所得区分で、株式会社や合同会社などの法人を設立せず、個人で事業を営んでいる人をいいます。法人を設立している場合には売上を法人の事業所得として申告しますが、個人事業主では個人の事業所得としての申告となります。
つまり簡単に言えば、フリーランスのうち、法人を設立している人以外は基本的に個人事業主ということになります。個人事業主として事業を始め、売上の増加に伴って法人を設立する人もいます。
「会社勤めですか」と聞かれたとき、あるいは「法人でやっていますか、個人でやっていますか」と問われたときに、「個人事業主です」と答えるシーンが想定されます。
個人事業主に必要な手続きとは
個人事業主として働く場合には、まず税務署に「開業届」を提出します。このとき、「所得税の青色申告承認申請書」を提出しておくと、青色申告を行うことができますので、税務上有利になります。「所得税の青色申告承認申請書」の提出期限は開業した年の3月15日まで、あるいは開業から2カ月以内です。期限を過ぎるとその年の確定申告は、青色申告はできなくなりますので注意しましょう。
個人事業主の確定申告には、青色申告と白色申告があります。白色申告でも記帳が義務化されましたが、単式簿記ですので帳簿つけは比較的簡単です。
これに対して、青色申告では原則として複式簿記で記帳を行うことが義務付けられています。しかし、青色申告では赤字を繰り越せる、家族へ支払った給与は要件を満たせば全額所得税などの控除となる、65万円の特別控除が受けられるといったメリットがあります。
フリーランスと個人事業主の使い分け
フリーランスは働き方、個人事業主は引用元:税務上の区分ですので、フリーランスといわれる人のうち、個人事業主でもある人は多くいますが、必ずしも「フリーランス=個人事業主」ではありません。また、個人事業主の中には、インターネット等を通じて物販を手掛けている人もいますが、こうした人はフリーランスとは一般的には呼ばれないでしょう。
フリーランスの方、個人事業主の方、このような形態で既にお仕事を始められている方はたくさんいらっしゃいます。SNSなどを使って、「フリーランス」「個人事業主」で検索すると、その違いをよりイメージすることができるでしょう。上手にSNSを活用してつながりを作っていきましょう!