労働基準法第2章では実際に働くときのルールである労働契約、就業規則や労働協約についてまとめてあります。これらと法令によって会社全体あるいは個々人の労働時間や賃金・休日などの内容が規定されています。
①労働契約等
実際に働くときの最低基準としてのルールを決めたのが、労働基準法です。逆にいうと、労働基準法の規定を上回るのは問題ありません。実務上も、労働基準法に違反しない範囲で「うちの会社はこうしよう」と独自のルールを決めることが珍しくありません。例えば、労働基準法では、休日は週1日あればいいことなっていますが、最近は週2日の休日の会社が少なくありません。「週1日」という労働基準法の規定を上回って休日を与えていることになります。そういった「うちの会社はこうするよ」といったルールは、具体的には、主に次項に掲げるものによって規定されています。
▷労働契約
労働者と使用者の間で結ばれる労働に関する契約のことをいいます。この契約が結ばれれば、労働者は労働を提供することになり、使用者はその労働の対価として賃金を支払うことになります。
▷就業規則
会社全体のルールブックです。「うちの会社はこうするよ」ということが規定されます。
▷労働協約
労働組合と使用者又はその団体との間で結ばれる労働条件その他に関する協定です。書面を作成して、両当事者が署名または記名押印することにより効力を生じます。上記のそれぞれに規定される内容と法令により、各会社内や労働者個々人に関するルールや労働条件が決まることになります。
②効力関係
前述の労働契約、就業規則、労働協約、法令の間には優先順位(効力関係)があります。
法令≧労働協約≧就業規則≧労働契約
法令が最も強く、労働契約が最も弱い関係になっています。個別に不利な労働契約を結ばされたと仮定した場合、その個別に結んだ労働契約より、会社全体に適用される就業規則の方が労働者にとって有利であるはずです。さらに、その就業規則よりも団体交渉等で勝ち得たであろう労働協約の方が有利である可能性があります。その上に、絶対に守るべき基準として法令をおいてあります。この効力関係であれば、労働者を最も保護することができます。仮に、個別の労働契約で労働者にとって不利な条件があったとしても、就業規則や労働協約により有利な内容の条件があればそちらを適用するのです。また、この効力関係であれば最低でも法令の内容は下回らないことになります。
③労働契約の期間
期間の定めのない労働契約(正社員など)の場合については、特に規定はありませんが、有期労働契約(期間の定めのある契約:1年契約の契約社員など)を結ぶ際には、最長で3年までという規定があります(特例的にもっと長い契約を結べるときがあります)。
有期労働契約を結ぶときは、最長3年まで!
これは、「労働者が辞めたくても、辞められない」という事態になるのを防ぐための規定です。民法によれば、期間を定めて労働契約を結んだ場合には、その間は原則として会社を辞めることはできません。そこで労働契約が不当な長期の人身拘束にならないように、労働基準法を定めて労働者を保護しています。なお、期間の定めのない契約は、民法において、「いつでも意思表示すれば解約することができる。この場合には、約2週間を経過すれば雇用契約は終了する」こととされています。民法の規定によって、いつでも解約する自由があり、特に労働基準法で保護する必要がないので、特段の規定はもうけられていません。
④労働条件の明示
皆さんが実際に働くときには、一番初めに給料や労働時間、休日等の規定を確認してから働き始めると思います。もしそれらの労働条件があやふやなまま働き始めた場合には、その後にトラブルが生じるということにつながりかねません。そういったトラブルを防止するために、労働契約を締結する際には、労働時間、賃金などの労働条件を明示しなければならないこととされています。明示すべき労働条件は、下記の表のとおりです。絶対に明治しなければならない「絶対的明示事項」と、定めがある場合には明示しなければならない「相対的明示事項」に大別されます。
絶対的明示事項(必ず明示しなければならない事項) |
|
相対的明示事項(定めがある場合には明示しなければならない事項) |
|