国民年金の概要・被保険者・給付について

 

①国民年金法の概要

「国民年金制度は、日本国憲法第25条第21項に規定する理念に基づき、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする」と規定されています。また「国民年金は、国民の老齢、障害又は死亡にかんして必要な給付を行うものとすると規定されています。すこし堅苦しくなってしまいましたが、「老齢」、「障害」又は「死亡」の3つの保険事故に対して給付を行うことが、この法律の主たる事業になります。

[国民年金の原則]

  • 国民年金は主だったものとして
  • 国民の老齢、障害、死亡に関して
  • 必要な給付を行う。

②保険者・適用範囲

国民年金の保険者は政府です。また国民年金は企業などの単位で適用するものではなく、原則として国民全般を対象として適用します。

  • 国民年金の保険者 政府
  • 国民年金の対象者 国民全般(原則)

※国民年金事業は、政府が掌握しているけど、実際の運営業務は、日本年金機構に委任、委託されています!日本年金機構は、社会保険庁の行っていた業務を受けついて平成22年1月に発足した組織だよ。

 

 

 

 

被保険者

 

①被保険者の全体像

 

国民全般を対象とするというのが原則の考え方ですが、実際には被保険者の要件を設けてあり、その要件に該当したものを国民年金の対象者としています。国民年金の被保険者は大別すると2種類です。要件に該当した場合に強制的に適用される強制被保険者と、任意で加入することができる任意加入被保険者です。細かくみると全部で5種類の被保険者が存在します。

 

被保険者→強制被保険者→第1号被保険者・第2被保険者・第3被保険者

↓→任意加入被保険者→任意加入被保険者・特例による任意加入被保険者

 

②強制被保険者

第1号~第3号被保険者がおり、この区分のことを種別といいます。

(1)第1号被保険者

第1号被保険者に該当するのは自営業等です。条文では、「日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であって、第2号被保険者及び第3号被保険者のいずれにも該当しないもの」と規定されています。これだけではわかりにくいのですが、次の(2)(3)とあわせると、自営業などが該当することになります。

(2)第2号被保険者

会社員・公務員などの厚生年金保険の被保険者を第2号被保険者といいます。

(3)第3号被保険者

サラリーマンの妻などの、第2号被保険者に扶養されている配偶者(被扶養配偶者)のことを、第3号被保険者といいます。条文では、「第2号被保険者の配偶者であって主として第2号被保険者んお収入により生計を維持するもののうち20歳以上60歳未満のもの」と規定されています。つまり、会社員等の配偶者で、この要件を満たしたものが第3号被保険者に該当します。

厚生年金保険
国民年金
第1号被保険者

自営業、学生など

第2号被保険者

会社員、公務員など

第3号被保険者

会社員の妻、あるいは夫など

(4)国内居住要件、年齢要件について

種別 国籍要件 国内居住要件 年齢要件
第1号被保険者 × ○(20歳以上60歳未満)
第2号被保険者 × × ×(65歳以上の例外あり)
第3号被保険者 × × ○(20歳以上60歳未満)

 

③任意加入被保険者

強制被保険者から除かれている人が一定の要件に該当している場合は、申し出をすることによって任意に被保険者になることができます。

(1)任意加入被保険者

次のいずれかの要件に該当している者(第2.3号被保険者は除く)は、厚生労働大臣に申し出ることによって被保険者にあんることができます。

  • ●日本国内に住所を有する20歳以上の60歳未満の者であって、厚生年金保険法に基づく老齢給付などをうけることができるもの
  • ●日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の者
  • ●日本国籍を有する者その他政令で定める者であって、日本国内に住所を有しない20歳以上65歳未満のもの
  • ※上記の任意加入ができる人たちは、65歳未満で第1号被保険者になれない人たちです。!第1号被保険者になれない人たちをカバーする制度です。

[任意加入の目的]

任意加入をするのは次のいずれかの目的のためです。

  • ●受給資格期間を満たすため
  • 老齢に関する年金を受給するためには保険料納付済期間等が25年以上なければなりません。この25年の期間を満たすために任意加入します。
  • ●年金額を増やすため
  • 老齢基礎年金は40年の保険料納付済期間がある人に満額支給することにしています。若いうちに滞納等の期間がある人が、後々もらう年金額を満額に近づけるために任意加入します。

(2)特例による任意加入被保険者

・概要

平成6年改正の際に、いままで保険料を納めていない(滞納している)人たちについての対策を講じることにしました。この制度の施行日である平成7年4月1日に40歳以上である者に限って、65歳以上70歳未満の間、特例的に任意加入することを認めることにしました。前記の任意加入被保険者の上限年齢のうえに、5年分の期間の上積みを認めた制度ということになります。更に、この制度については、平成17年4月1日を迎えた際に、「対象者をもうあと10年分拡げよう」ということにしました。結局、現在では、平成17年4月1日に40歳以上である者を対象にした制度になっています。

・要件

昭和40年4月1日以前に生まれた者であって、次のいずれかに該当するものは、厚生労働大臣に申し出ることによって被保険者になることができます。

  • ●日本国内に住所を有する65歳以上70歳未満の者
  • ●日本国籍を有する者であって、日本国内に住所を有しない65歳以上70歳未満のもの
  • ※ただし、その者が老齢又は退職を支給自由とする年金の受給権を有する場合は、特例による任意加入被保険者になることができません。

 

 

~給付等の全体像~

老齢、障害、死亡に関する給付がその中心です。その他に脱退の場合の一時金等が規定されています。またそれらとは別に、国民年金への上乗せのものとして国民年金基金があります。

①給付の種類

国民年金の給付は、老齢、障害、死亡に対して支給される基礎年金とそのほかの給付に大別できます。

(1)基礎年金

「老齢」「障害」「死亡」の3つの保険事故に対して行う給付の中心に位置するのが老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金です。老齢になれば老齢年金基礎年金が、一定の障害状態になれば障害基礎年金が、死亡すれば一定の遺族に遺族基礎年金が支給されます。

[用語]給付

国民年金では「保険給付」といわず、「給付」といいます。本来、保険というものは、何度か出てきたように[保険料を払っていおいて→保険事故が起きたら→保険給付をもらう]という原理に則るものをいいます。国民年金においては、保険料を払わずに給付を受ける方等がいるので、必ずしも保険の原理に合致する場合ばかりではありません。そこで、「保険給付」とはいわず「給付」といいます。

(2)その他の給付

基礎年金のほかに、次のような給付があります。

  • 付加年金・・・老齢基礎年金に上乗せ(付加)する年金です。年金額を増やすためのものです。
  • 寡婦年金・・・高齢な寡婦のための年金です。夫の掛けた保険料の掛け捨て防止と高齢寡婦に対する所得保障の意味合いを持ちます。
  • 死亡一時金・・・保険料の掛け捨て防止のための給付です。遺族基礎年金を受給できる方がいない場合などに支給されます。
  • 脱退一時金・・・短期滞在の外国人の方の掛け捨て防止のための給付です。払った保険料の約半分に相当する額を支給します。
  • 特別一時金・・・旧法から新法に移る際に規定された掛け捨て防止のための給付です。

[国民年金の給付の全体像]

  • 給付→基礎年金 ・老齢基礎年金 ・障害基礎年金 ・遺族基礎年金
  •   ↓→その他の給付 ・付加年金 ・寡婦年金 ・死亡一時金 ・脱退一時金 ・特例一時金

②国民年金基金

第1号被保険者がゆとりある老後を送ることができるように、国民年金に上乗せして給付を行うのが国民年金基金です。平成28年7月現在、都道府県ごとに設立されている地域型国民年金基金と、同種の事業等で集まって設立する職能型国民年金基金の2種類の基金があります。医師、弁護士、個人たくしーなど、多くの事業または業務で職能型国民年金基金が設立されています。