ここでは保険料の、申告、納付についてまとめました。大雑把にいうと、算定の対象になる期間が始まる時に概算で保険料を支払っておき、対象になる期間が終了したときに精算します。
①全体について
一般保険料及び特別加入保険料については、算定の対象となる期間のはじめに概算で保険料を納めて置き、算定の対象になる期間が終了した時点で精算します。
(1)継続事業の場合
継続事業の場合には年度(4月1日から翌年3月31日まで)単位で処理をします。毎年6月1日から7月10日の間にその年度の保険料を概算で支払い次の年度の6月1日から7月10日の間に確定精算をします。年度ごとにこの処理を繰り返しながら更新していくのでこの方式を年度更新といいます。
(2)有期事業の場合
有期事業の場合には、原則として、年度ではなく事業の全期間を通じて処理をします。事業が始まる時に概算保険料を支払っておき、事業が終了した時点で確定保険料の精算をします。
※印紙保険料は、これらの処理とは別に日雇労働被保険者に賃金を支払うつど納付することとされています。
②概算保険料
年6月1日から7月10日の間、あるいは事業の開始時に概算保険料を納めるが、実際には継続事業について年度の途中で事業が開始される場合もあります。あるいは事業主が年度更新を忘れている場合や年度の途中で賃金総額の見込み額が大きく増加する場合もあります。そういった場合のことも考慮して、全部で5種類の納付方法が規定されています。
(1)継続事業の概算保険料
原則・・・6月1日から7月10日まで(6月1日から40日以内・当日起算)
例外・・・中途成立の場合には、保険関係成立日から50日以内・翌日起算
(2)有期事業の概算保険料
有期事業は「事業の開始日(保険関係成立日)から20日以内(翌日起算)」に納付することとされています。
(3)概算保険料の認定決定
労働保険料は、自主申告・納付を原則としていますが、場合によっては事業主が納付を忘れてしまうこと(概算保険料申告書を提出しないとき)や、納付された金額が間違っていることもあり得ます。そういった場合には、政府の方で「あなたの会社の保険料は○○円です。」ということを決定(認定決定といいます)及び通知し、保険料を納付してもらいます。納付は、「認定決定の通知を受けた日から翌日起算で15日以内」に行います。
(4)増加概算保険料
(増加概算保険料を納付する場合)
●賃金総額の見込み額等が大幅に増加した場合
増加後の賃金総額の見込み額または特別加入保険料算定基礎額の総額の見込み額が、増加前の賃金総額などの見込み額の100分の200を超え、かつ、増加後の賃金総額などの見込み額に基づき算定した概算保険料の額と、すでに納付した概算保険料との差額が13万円以上である場合
●労災保険または雇用保険のいずれか片方のみが適用されえていた事業において、両方の保険が適用されることになり、保険料率が変動した場合
変更後の一般保険料率に基づき算定した概算保険料の額が、すでに納付した概算保険料の額の100分の200を超え、かつ、その差額が13万円以上である場合
(納期)
賃金総額などの増加が見込まれた日又は一般保険料率が変更した日から30日以内(翌日起算)
(5)概算保険料の追加徴収
年度の途中に、政府が一般保険料率、第1種~第3種特別加入保険料率を引き上げた場合には、すでに納付した保険料との差額を追加で徴収することとしています。これを追加徴収といいます。追加徴収に関しては、通知を発する日から起算して30日を経過した日(当日起算)が納期限になります。
③概算保険料の延納
概算保険料は分割払いをすることもできます。これを延納といいます。たしかに保険料の総額が大きい場合には、分割払いじゃないときつい、というこも考えられます。企業の資金繰りから考えても、分割払いの方が処理しやすりということもあります。そういったための延納制度です。
(継続事業の延納(原則))
継続事業が、年度を単位として保険料を納付することとしているのは先に述べたとおりです。その年度を4か月ごと3期に分けて延納することができることとしています。具体的には、次のように、なります。
期間 | 納期限 | |
第1期 | 4月1日~7月31日 | 7月10日 |
第2期 | 8月1日~11月30日 | 10月31日 |
第3期 | 12月1日~3月31日 | 翌年1月31日 |
④確定保険料
①のところで述べたように、年度あるいは事業が修了したら確定精算をします。概算で払った概算保険料との差額を精算することになります。3種類の納付方法があります。
(1)継続事業の確定保険料
前記①にあるように、6月1日~7月10日までの間に前年度の確定精算を行います。概算保険料と同様に6月1日から40日以内に行うこととされています。また年度の途中に事業が廃止された場合には、「保険関係が消滅した日(事業が廃止された日の翌日)から50日以内に行います。
(2)有期事業の確定保険料
有期事業の確定保険料は「事業の終了日の翌日(保険関係消滅日)」から50日以内に納付することと規定されています。
(3)確定保険料の認定決定
確定保険料についても、概算保険料と同様に認定決定があります。
- (認定決定が行われる場合)
- ●確定保険料申告書を提出しないとき
- ●確定保険料申告書の記載に誤りがあると認めるとき
- (納期)
- 通知受けた日から15日以内
⑤メリット制
(1)メリット制
仮に、同じ事業の種類で同じ賃金総額だとすると、労災保険料は同額になります。一方、労災事故の発生率は、事業主の災害防止努力→作業環境の整備などによって、それぞれの事業ごとにかなり異なるのが実情です。ということは、労働者災害補償保険法による保険給付の額は異なることになります。「労災保険料の額が同じなのに、保険給付の額が違う」というのは不公平になります。そこで、保険料と保険給付のの額の比率に応じて、公平になるように保険料を割り引きあるいは割増することとしています。この制度をメリット制といいます。無事故無違反なら保険料が安くなる、自動車保険をイメージするとわかりやすいと思います。
- 労災事故(少)→保険給付額(少)→保険料を割り引く
- 労災事故(多)→保険給付額(多)→保険料を割ります
(2)メリット制の種類・概要
①継続事業のメリット制
事業の規模要件、事業の継続性、収支率の3つの要件を満たしたら適用。「ある程度以上の規模があり、3年度以上継続している事業で、収支率が一定水準を超えているか下回っている場合にはメリット制を適用する」ということになります。
要件 | 概要 |
規模要件 | 連続する3年度中の各年度において、事業の規模がある程度以上に大きいこと
→原則的には、100人以上の労働者を使用する事業であること |
継続性 | 3年度以上継続していること |
収支率 | 収支率が100分の85を超え、または100分の75以下であること |
継続事業のメリット制は上記の収支率に応じ、連続する3年度の最後の年度の次の次の年度の労災保険率を、引き上げる又は引き下げることで適用します。
②特例メリット制
中小規模の事業用の特別なメリット制です。中小規模の儀業のほうが労災発生率が高いので安全または衛生を確保する措置を講じることを要件として割引率をアップさせるという特例メリット制を設けています。中小規模の事業の災害防止努力を促すことが趣旨です。適用される要件、方法等は継続事業のメリット制とほぼ同様です。
安全又は衛生を確保するための措置を講じたら→割引率をアップします!
③有期事業のメリット制
有期事業に適用されるメリット制です。有期事業の場合には、原則的には年度という考え方がないので、次の次の年度の労災保険率に適用するという方法ではなく、直接、確定保険料を上げ下げするという方法で適用することとされています。具体的には有期事業が終了してから3か月の時点までを算定期間として収支率を求め、確定保険料を上げ下げすることとしています。
追徴金等
労働保険料は自主的に申告・納付することを原則としていますが、何らかのことで納付しなかったり、または遅れた場合には、督促、滞納処分あるいはペナルティとして追加の金額を徴収するなどの規定がされています。
①追徴金
労働保険料を正しく納付しない場合には、追徴金という懲罰的な徴収金を科すこととしています。具体的には確定保険料及び印紙保険料につき認定決定を受けたときに、その納付すべき確定保険料や印紙保険料の額に一定の率を乗じた額を追徴金として徴収します。
追徴金が徴収されるケース | ||
確定保険料の認定決定をしたとき | 印紙保険料の認定決定したとき | |
追徴金の額 | 認定決定により納付すべき額の100分の10 | 認定決定により納付すべき額の100分の25 |
②督促・滞納処分及び延滞金
(1)督促・滞納処分
労働保険料等を納付しない場合には、政府が督促します。この督促は、督促状を発して行い、督促状の指定期限までに労働保険料等を納付しない場合には、政府が滞納処分をすることとされています。
[用語]滞納処分
滞納者の財産を差し押さえて、その財産を換価し、滞納している保険料等に充てる処分をいいます。
(2)延滞金
延滞金とは、遅延利息のことです。懲罰としての意味合いも合わせて持ちます。具体的には、督促状の指定期限までに納付しない場合に、労働保険料の額に、納期限の翌日からその完納又は財産差し押さえの日の前日までの期間の日数に応じ、年14.6%(当該納期限の翌日から2か月を経過する日までの間については、年7.3%)の割合を乗じて計算した延滞金を徴収します。
労働保険事務組合
厚生労働大臣の許可を受けて労働保険の事務処理を行うことができるようになった団体を、労働保険事務組合といいます。中小事業の事業主の労働保険に関しる事務処理の負担の軽減を図るとともに、労働保険の適用の促進を図ることがこの制度の趣旨です。
簡単にいうと、「事業主の団体が厚生労働大臣の認可を受けて労働保険事務組合を作ることができ、作った労働保険事務組合では労働保険事務の処理をすることができるということができます。