保険給付の全体像と保険給付内容について

健康保険法の保険給付の種類

①病気やまたはけがに関する保険給付

病気・けがに対して・・・

  • ●治療(療養)を受けたら→療養の給付
  • ●入院したら→入金時食事療養費、入院時生活療養費
  • ●保険の対象外の治療をあわせて受けたら→保険外供用療養費
  • ●やむを得ず療養の給付等を受けることができなかったら→療養費
  • ●訪問看護を受けたら→訪問看護療養費
  • ●緊急に移送されたら→移送費

被扶養者に関する保険給付

  • ●被扶養者が療養を受けたら→家族療養費
  • ●被扶養者が訪問看護を受けたら→家族訪問看護療養費
  • ●被扶養者が移送されたら→家族移送費

負担の限度額を超えた場合

●一部負担金などの額が一定の基準を超えたら→高額療養費及び高額介護合算療養費

休業中の生活費

●休業中の生活費として→傷病手当金

 

②死亡・出産に関する保険給付

死亡した場合には・・・・

  • ●死亡したら→埋葬量又は埋葬費
  • ●被扶養者が死亡したら→家族埋葬量

出産した場合には

  • ●出産時に一時金として→出産育児一時金
  • ●休業中の生活費として→出産手当金
  • ●被扶養者が出産したときの一時金として→家族出産育児一時金

 

 

病気またはけがに関する保険給付

①療養ほ給付

(1)概要

治療代のことです。病院等で療養(治療)を受けた場合に、「治療行為」そのものが療養給付として支給されます。「治療行為」という現物を支給する現物給付になります。療養給付の範囲として・・・

①診察 ②薬剤又は治療材料の支給 ③処置、手術、その他の治療 ④居宅における療養上の管理およびその療養にともなう世話そのたの看護 ⑤病院又は診療所への入院及び療養に伴う世話その他の看護

(2)一部負担金

療養の給付を受ける際には、次の割合を額を一部負担金として本人が負担することになっています。

区分 負担割合
70歳に達する日の属する月以前である場合(原則) 100分の30
70歳に達する日の属する月の翌月以後である場合(下記の場合を除く) 100分の20
70歳に達する日の属する月の翌月以後にあって、標準報酬月額が28万円以上の場合(現役並みの所得者) 100分の30

②入院時食事療養費

被保険者が入院した場合の食事代です。厚生労働大臣が定めた基準で算定した額のうち、食事療養標準負担額を本人負担してもらい、残りを入院時食事療養費として支給されます。実際には現物給付されることになっています。

[食事療養標準負担額]

入院していない人もしている人も食事をします。入院していない人は自分で食費を負担し、入院している人は保険給付で全額支給される、としたら入金をしていない人が損するため、そういった事態を避けるために「普通に生活していたらかかるであろう食費」は入院している人にも負担してもらうことになっています。原則、1食につき460円を負担することになっています。

 

③入院時生活療養費

特定長期入院被保険者(長く入院する方々の病床)に入金している65歳以後の被保険者に関する保険給付です。特定長期入院被保険者が入院していている場合は、食費、高熱水費を本人負担してもらい、(生活療養標準負担額)、残りを入院時生活療養費として支給します。入院時生活療養費も、実際には、現物給付されることになります。

[生活療養標準負担額]

特定長期入院被保険者には、一般に生活するの必要なコストを本人に負担してもらうことなります。それが生活療養標準負担額です。原則的には、1日につき、320円と1食につき、460円との合計額になります。

④保険外併用療養費

保険が適用できない高度な医療などを受けた場合にも、通常の保険適用部分と同等の部分は保険を適用することとしています。その際に支給される保険給付が保険外適用療養費です。この保険給付も現物給付で行われています。療養の給付、入院時食事療養費、入金時生活療養費に相当するものが支給されます。

⑤療養費

現物支給が原則となるが、現物支給できない病院も存在するため、その場では、全額を払っておき、後で現物給付の形で支給を受けます。これを療養費といいます。療養の給付、入院時食事療養費、入院時生活療養費及び保険外併用療養費に変わる者になります。次のいずれかの要件に該当する場合支給される。

  • ●療養ほ給付等を行うことが困難であると認めるとき
  • ●保険者がやむ得ないものと認めるとき

⑥訪問看護療養費

指定訪問看護事業者から訪問看護を受けた場合に支給されます。医師ではなく「指定訪問看護事業者から受けた場合です。大臣が定めるところにより算定した費用の額のうち、一部負担金相当額(基本料といいます)を本院に負担してもらい、残りを訪問看護療養費として支給します。実際には現物給付されることになっています。

⑦移送費

移送代です。通院などの場合には支給対象とはなりません。緊急その他やむを得ないなどの一定の要件を満たした場合を対象として支給されます。具体的には下記の3つのすべてに該当したときに対象となります。移送費に一部負担金とかはない。

  • ●移送により適切な療養を受けたこと
  • ●磯の原因である疾病又は負傷により移動することが著しく困難であったこと
  • ●緊急その他やむ得なかったこと

⑧家族療養費・家族訪問看護療養・家族移送費

(1)概要

被扶養者が療養を受けた場合、訪問看護を受けた場合、移送された場合に支給される保険給付です。療養の給付、入院時食事療養費、保険外併用療養費および療養費に相当するものとして家族療養費が支給されます。訪問看護療養費に相当する者として家族訪問看護療養費が支給されます。移送費に相当するものとして家族移送費が支給されます。

(2)家族療養費の給付割合

療養の給付等とほぼ同様ですが、対象者が6歳に達する日以後の最初の3月31日(6歳年度末といいます。小学校入学前ということになります)までである場合には、療養につき算定した費用の額の8割相当額を給付されることとされています(負担額が2割ということです)。

 

区分 給付割合
被扶養者が6歳に達する日以後の最初の3月31日の翌日以後であって70歳に達する日の属する月以前である場合(原則) 100分の70
被扶養者が6歳に達する日以後の最初の3月31日以前である場合 100分の80
被扶養者が70歳に達する日の属する月の翌月以後である場合(下記を除く) 100分の80
現役並み所得者である被保険者の被扶養者が70歳に達する日の属する月の翌月以後である場合 100分の70

⑨高額療養費及び高額介護合算療養費

療養が長く続いた場合は合算された額が規定された額を超えた場合には高額療養費や高額介護合算療養費を支給します。

⑩傷病手当金

病気やけがではたらけないときの生活費です。おおざっぱにいうと、休業4日目から1年6ヶ月間支給されます。

(1)支給要件

下記の5つの要件を満たした場合に、疾病手当が支給されます。療養のため労務に服することができない者が、3日間の待期を満たしたら支給されることになります。

  • ●療養のためであること
  • ●労務にふくすることができないこと
  • ●連続した3日間の待機期間があること
  • ●任意継続被保険者でないこと
  • ●特例退職被保険者でないこと

(2)傷病手当金の額

1日ごとに、標準報酬月額(を平均した額)の30分の1に相当する額(1日分の額)の3分の2に相当する金額が支給されます。

(3)疾病手当金の支給期間

支給を始めた日から起算して1年6ヶ月までの間について支給されます。

 

 

死亡・出産に関する保険給付

被保険者・被扶養者が死亡した場合や出産した場合の保険給付です。死亡した場合には葬儀代が支給されます。出産した場合には、出産の際の一時金や休業中の生活費が支給されます。

①死亡に関する保険料給付

死亡した場合には、埋葬料等の葬儀代が支給されます。

(1)埋葬料

被保険者が死亡した場合に支給される保険給付です。被保険者により生計を維持されていたものであって、埋葬を行うものに対し5万円を支給します。

(2)埋葬費

(1)の埋葬料の支給を受けるべき者がいない場合には、埋葬を行ったものに対して、埋葬料の金額の範囲内で、埋葬に要した費用に相当する金額が支給されています。

(3)家族埋葬料

被扶養者が死亡した場合には、家族埋葬料として、被保険者に対し5万円が支給されます。

 

②出産に関する保険給付

出産した場合には、出産の際の一時金と、休業中の生活費である出産手当金が支給されます。

(1)出産育児一時金

被保険者が出産した場合には、出産育児一時金という一時金を支給します。出産育児一時金の金額は、1児につき40.4万円です。出産した子の一定の脳性まひに対する保障精度に加入する医療機関などでの出産に関しては、3万円を超えない範囲内で保険者が定める額が加算されます。

(2)出産手当金

被保険者が出産に関して休業した場合の生活費です。

(3)家族出産育児一時金

出産育児一時金と同じように1児につき404.4万円になります。