<企業分析する時の情報・指標の使い方>
ここでは実際の投資において、自ら集めた情報を使えるようにするために、情報分析の仕方、指標の見方などを紹介していきます。これを理解することで、その時の株の状態を把握できるようになります。
例えば、PERやPBRを用いると「今の株価が割安であるか、割高であるかを判断する」目安になります。これを知ることにより、株の売り時や買い時の目標を立てることができます。また、財務諸表は「会社の通信簿、もしくは健康状態を表す」ので、読み取る力を身につけると、「会社が今後も元気に頑張っていけるか? すでに病気になってしまっているか?」の判断をより正確にできるようになります。
ところが、こういったアルファベットや難しそうな言葉が出てくると、「いやだな~、めんどくさいな~」と思う方が多くいらっしゃると思います(笑)。
…確かに面倒です! ですが、そこがチャンスでもあります!もし他のみなさんがやっていないとすれば、自分だけが知ってるわけですから、これは大きな武器(有利)になると思いますよ。情報分析は、株をやっていく上でかなり大事な部分ですから、力を入れてしっかり理解したいところです。
…しかしながら、情報の分析には理解するのには少々時間がかかります。分析についてじっくり勉強するのは、このサイトを一通りチェックしてからで結構ですので、まとまったお時間が許す時に挑戦してみてください!
☆これをやるかやらないかで一番差が出る部分だと思います。
<PERを知る(株価収益率)>
PER(株価収益率)というのは、“会社の利益と株価の関係”を表していて割安性を測ることができます。一般的に、『PERが低ければ低いほど、会社が稼ぐ利益に対して株価が割安である』といえます。具体的な計算式は次のようになります(具体的な数字を入れると…yahooファイナンスより)。
■PER(株価収益率)=時価総額※÷純利益
(=株価÷1株あたりの利益)
※時価総額とは、“株価×発行済み株式数”を指します。会社丸ごとの値段を表します。
PERは、時価総額÷純利益で求めることができます。(1株あたりで考えると、株価が1株当たりの純利益の何倍まで買われているかを示すことになります)上の図のようにPERが“10倍”であれば、純利益の10倍まで買われていることになり、投資した資金の回収までに“10年”かかると言う見方にもなります。
PERの変化としては、株価が下がれば↓、PERも下がります↓。逆に、株価が上がれば↑、PERも上がります↑。
純利益の視点から見ると、純利益が前年より増えれば↑、PERを下げる↓要因となり、純利益が前年より減れば↓、PERを上げる↑要因になります。
このPERという指標を投資にどう生かしていくのか?ということですが、『その会社における、過去のPERや将来の予想PERと比較すること』もありますし、『同業他社とPERを比較すること』もあります。前者の場合は、PERの変化によりその会社内での割安性を読み取ることができますし、後者の場合は、その業界平均のPERから見て割安か、割高かを比較することもあります。
補足説明として、業界によって平均PERは異なります。これは業界によって成長力や安定力などに違いがあるからです。特にIT関連の銘柄は成長力期待が強く、PERがとんでもなく高いです(100倍以上のところもあります)。PERが高すぎる銘柄は成長がついてこないことがわかった時に、急落する恐れがあるので個人的には避けて買わないようにしています。ちなみに、東証一部の平均PERは約15倍くらいになっています。
最後に、PERを使う上で気をつけたいことは、「PERが低いからこの株は割安だ!とPERだけで投資判断するのではなく、後に紹介する他の指標も参考にして総合判断をすること」です。
※このレベルの解説では、なかなかPERについては理解していただけていないと思います。スペースの都合もありますので、深く掘り下げて勉強されたい方は、『PERの基礎を学ぶ!』のページにお進みください。ただ、PERを理解しないと株式投資ができないというわけではございませんので、初心者の方は、まず軽くこのサイトを1周していただくのがよろしいかと思います。
☆PERは株価の割安感を測る一つの目安になります。
PERの基礎を学ぶ①
前のページ(PERを知る)でも紹介しましたが、PER(株価収益率)とは、『会社の“利益”と“株価”の関係を表していて、割安性を測る指標』です。PERの数字が小さいほど割安といえます。このPERという指標はとっても便利なのですが、あやまって解釈すると大変なことになりかねないので、このページで詳しく取り上げることにしました。 …前のページよりは、わかりやすい説明になっていると思います(笑)。
まず、PERの求め方からですが、【時価総額÷純利益】で数字出すことができます。PERを出すことで、『時価総額(=株価×発行済み株式数)が純利益の何倍まで買われているか?』を示すことになります。時価総額はヤフーファイナンスの中にある、下の部分に載っています。純利益の数字は“企業→決算推移”とクリックした中にある、当期利益という部分から数字を引っ張ってきてください。
<時価総額の例>
<純利益(当期利益)の例>
※この場合、ソフトバンクの純利益(当期利益)が1086億円2400万円であることがわかります。
この2つの数字を用いてPERを計算すると、時価総額÷純利益がPERでしたから、1兆3696億3800万円÷1086億2400万円=12.46 となります。PERは12.46倍と出すことができました。しかし、こんな面倒な計算をしなくても、ヤフーファイナンスの下の部分を見ればPERの数字は書いてあります(笑)。株価収益率という部分がPERの数字なんです。(同じように、“株価÷1株利益”で計算しても“時価総額÷純利益”と同じ意味になります。なぜなら“時価総額÷純利益”を両方とも発行済み株式数で割った場合、“株価÷1株利益”となるからです)
☆丸暗記するのではなく、PER(株価収益率)という数字の意味を理解してください。
PERの基礎を学ぶ②
前のページ(PERの基礎を学ぶ)で『PERの数字の出し方』や『PERの意味するところ』を理解されたと思います。次に考えたいのは、このPERという指標を使って、どうやって割安性を計るかです。漠然と“PER(株価収益率)”という数字を出すだけでは、あまり意味がありません。
まず一つの例として、純利益と時価総額の関係から、PERが10倍と出たとしましょう。ここから考えてみます。このPER10倍というのは、時価総額(=発行済み株式数×株価)が純利益(株主の取り分)の10倍という意味でしたね。このときのPER10倍を、この会社だけで“絶対的”に考えると、『純利益10年分で時価総額と同じになる』という意味になります。つまり、投資家がこの会社の株を時価(今の株価)で買うと、その投資額は広い意味で『10年間で投資額分が稼げる』ということを示しています。…ということは、PERが5倍であれば5年間で、20倍であれば20年間で投資額分が稼げるということを示します。
このような理由から、PERが低い株は、投資額の回収までの期間が短いと言う意味で割安と言われています。
次に、PER(株価収益率)という数字を全体の平均や他の会社と比べる、“相対的”な視点で考えてみましょう。例えば、先ほど使った『PER=10倍』という会社があったとします。仮に、この会社は東証1部に上場していて、電力会社(東京電力や中部電力など)だったとします。
相対的に比較できるのは、所属する業界全体から見たPERです。この場合は電力会社を例に取っているので、【電気・ガス業】という欄を参照してください。“東証1部”と仮定していますので、【東証1部】の欄を見てください。業界全体のPERが15倍だった場合、この電力会社のPER10倍というのは割安という判断になります。
あとは、具体的に東京電力や中部電力など個別の電力会社のPERをいくつか持ってきて、それと比較をし、PERが高いか低いかを判断することです。このやり方は、「電力会社に投資をしたいけど、どの電力会社にしようか迷う~!!PERという利益の面から見た指標で判断をしたい!」という時にも、きっと役に立つと思います。(※業界平均のPERが知りたい場合は、相互リンク先の【初心者のための割安株ドットコム】さんのサイトが便利です)
☆PERは絶対的にも相対的にも利用できるので、いろいろな角度から活用してください。
<PCFR(株価キャッシュフロー倍率)を知る>
PCFR(株価キャッシュフロー倍率)は、あまり聞きなれない指標かもしれません。株価が1株当たりのキャッシュフロー※の何倍に当たるかを見る指標で、PERやPBRと同様に株価の割安感を測るものです。
このPCFRという指標は、PERの欠点を補う指標といえます。例えば、企業の業績がよく、設備投資を積極的におこなった企業は減価償却費※が増えます。その結果、設備投資の増加は直近の利益を押し下げることになります。
PERは前ページで紹介したとおり、『時価総額と純利益(1株あたりの利益)の関係』を示す指標ですので、設備投資の増加によって利益が減ると、本業で利益が出ている企業でもPERが上がってしまいます。このねじれを修正する指標がPCFRです。
業種によって設備投資の額も大きく違ってきますから、PCFRは同業他社との比較に用いられます。PCFRが低いほど『株価が割安である』といえます。具体的な計算式は次のようになります。
PCFR(株価キャッシュフロー倍率)=株価÷1株あたりのキャッシュフロー
1株あたりのキャッシュフロー=営業キャッシュフロー※÷発行済み株式数
PCFRの見方ですが、上の式を見ていただくと株価を分子に、一株あたりのキャッシュフローを分母に取っています。株価が分子ですから、株価が下がれば↓、PCFRも下がります↓。 また、分母である1株あたりのキャッシュフローが上がれば↑、PCFRは下がります↓。
このように株価が下がったり↓、一株あたりのキャッシュフローが上がる↑ことにより、PCFRが下がり↓、割安になります。
☆PCFRはPERを補完する指標になります。
<PBRを知る(株価純資産倍率)>
PBR(株価純資産倍率)というのは、“会社の純資産と株価の関係”を表していて、PERと同様に株価の割安性を測ることができます。 これを使うと、企業の持っている株主資本(純資産)から見た株価の割安度がわかります。
特徴としては、PBRが低ければ低いほど『株価が割安である』といえます。仮に会社が仕事をやめて解散するとしたら、総資産から支払い義務のある費用を全て支払い、従業員に所定の給与や退職金を払って、それでも資金が残った場合はそれらは全て株主の物となります。PBRの具体的な計算式は次のようになります(具体的な数字を入れた例は以下の画像を参考)。
- PBR(株価純資産倍率)=株価÷1株あたり株主資本(BPS)
- (1株あたりの株主資本(BPS)=株主資本※÷発行済み株式数)
上の式を見ていただくと、株価を分子に、一株あたりの株主資本を分母に取っています。株価が分子ですから、株価が下がれば↓PBRも下がります↓。また、分母である1株あたりの株主資本(BPS)が上がれば↑PBRは下がります↓。
このように株価が下がったり↓、一株あたりの株主資本が上がる↑ことにより、PBRが下がり↓割安になります。
このPBRという指標は『PBR=1倍』というのが評価基準になります。理論上は、PBRは1倍を下回らないと考えられるので、「PBRが1以下」の会社は割安性が極めて高いといえます。
もし仮に、PBRが1以下の株式会社が解散した場合には、(持ち株数に応じて株主資本を受け取る権利がありますから)株主が儲かる計算になります。ですから、業績が良いのにPBRがあまりにも低い場合は、解散価値(PBRはどうなのか?)が意識されて、株価の下支えの要因になることもあります。
株価というのは、必ずしもあるべき価格で存在するわけではありません。そのために割安株、割高株が生まれてきます。割安株投資は、こういった割安の状態の株を発見して投資するため、市場のスキをついた投資であるともいえます。
☆PBRも株価の割安感を測る一つの目安になります。
<ROEを知る>
ROE(株主資本利益率)というのは、企業の収益性を測る指標です。株主資本(株主による資金=自己資本)が、企業の利益(収益)にどれだけつながったのかを示します。
具体的な計算式は次のようになります。(ヤフーファイナンスではこの位置に表示されています。)
ROE(株主資本利益率)=1株あたりの利益(EPS)÷1株あたりの株主資本(BPS)
1株あたりの利益(EPS)=当期純利益÷発行済み株式数
1株あたりの株主資本(BPS)=株主資本※÷発行済み株式数
よって、計算式より、ROEが高いほど株主資本を効率よく使い、利益を上げて能力の高い経営がなされていることがわかります。逆に、ROEがあまりにも低い企業は、資金をうまく使えていないわけですから、経営が下手ということで、会社の存在価値が疑われてしまいます。
実はおもしろいことに、ROEはPERやPBRとも密接な関係があります。次のような式が成り立つのです。
ROE×PER=PBR
これを具体的にみていきますと、それぞれの計算式は、ROE(EPS/BPS)、PER(株価/EPS)、PBR(株価/BPS)で表すことができますから、実際に上の式に当てはめると、公式が成り立つことがわかります。
(下の式では、分子と分母のEPSが互いに打ち消します)
ROE(EPS/BPS) × PER(株価/EPS)
EPS/BPS × 株価/EPS = 株価/BPS = PBR
ROE×PER=PBR
ここからいえることは、PBRは「ROE×PER」で表されますから、PBRが低い企業というのは、ROEやPERも低い可能性が大きいのです。すなわち、PBRが低いということは、即座に『割安』と判断されがちですが、株主資本による企業の収益性(ROE)も低くなっていることがあるので、その点は注意が必要です。
☆『PER・PBR・ROE』の指標は、まとめて覚えましょう!
<ROICを知る(投下資本利益率)>上級です!
ROIC(投下資本利益率)というのは、“企業が事業活動のために投じた資本(IC)に対して、本業でどれだけの利益を出せたか”を測る指標です。言うまでもないことですが、数字は高い方がよいです。具体的な計算式は次のようになります。(NOPLATとは、税金〔主は法人税〕を引いたあとの営業利益を指します)
- ROIC(投下資本利益率)=NOPLAT÷投下資本(IC)
- NOPLAT=営業利益×(1-税率※) ※税率は40%前後
- 投下資本(IC)=株主資本(純資産)+有利子負債
ROICはNOPLATを投下資本で割ることにより算出されますが、ここで出てくるNOPLATとは、営業利益から税金(約40%)を引いたものです。当期純利益からではなく、営業利益からの数字を引っ張ってきているため、本業で稼ぐ力をよりよく表している指標であるといえます。
そしてもう一方の数字、投下資本(IC)は“株主資本+有利子負債”で表されます。ここで、もう少し細かく見てみることにします。
- ◎資産ベースで投下資本を考えると、『固定資産+運転資金(売上債権+在庫-支払債権)』で表すことができます。
- ◎負債ベースで考えた場合は、『株主資本+流動負債の有利子分+固定負債の有利子分+少数株主持分』です。
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なんだかむずかしいですね~(苦笑)。しかも、これらの数字を拾ってくるには、EDINET(金融庁)にある有価証券報告書からデータを引っ張ってこなくてはなりません(汗”)。さらに、実はこれ以外にも投下資本については人それぞれでいろいろな説を持っているので、計算する人によってブレてしまう指標なんです(汗”)。
…ですので、株主資本や有利子負債の数字は、簡易的に四季報に載っている数字を利用してもよろしいかと思います(四季報をお持ちでない方はマネックス証券の会社四季報欄などをお使いください)。
もっとわかりやすくなるように、ここで一つ例をあげて考えてみます。次のような条件で、具体的に数字を入れていきますね。
(営業利益:1億円 税率:40% 株主資本:5億円 有利子負債:1億円)
- NOPLAT=営業利益×(1-税率)=1億円×60%=6,000万円
- 投下資本=株主資本+有利子負債=5億円+1億円=6億円
- ROIC=NOPLAT÷投下資本(IC)=6,000万円÷6億円=0.1=10%
もう一度確認になりますが、ROIC(投下資本利益率)というのは、企業が事業活動のために投じた資本(IC)に対して、本業でどれだけの利益を出せたかを測る指標です。個人的には、ROICは15%以上ある企業が魅力的です。
★上場企業のROICの変化を時間の経過とともに見たいときは、「経営分析ツール」がおすすめです。GMOクリック証券に口座開設しておくと、無料で使えます。
☆ROICは少しむずかしいので、サイト読破後に戻ってきてください!