文章の内容を豊かにしよう(決まり文句、文章の削り方法、和語と漢語)

第2章 文章の内容を豊かにしよう!

 

27、「~です」よりも「~だ」「~である」で伝える

原文 朝は6時に起きます。軽くジョギングしましてから、朝食を摂ります。それから急いで駅へ向かいます

改善例 朝は6時に起き。軽くジョギングしてから、朝食を摂る。それから急いで駅へ向か

敬体(です・ます)の文は単調になりやすい

日本語の文体には敬体(です・ます)と常体(だ・である)があります。手紙など、相手に話しかける文章には敬体を用い、実用文は常体を多く用いています。文章に変化をつけるのであれば圧倒的に常体のほうが変化に富み、敬体は単調です。

 

 

28、過去の話に現在形を入れる

原文 5年ぶりに帰郷したら、何もかもが変わってい。川は護岸に囲まれ、山は切り離され、見る影もなかった。だが、変わらないもののあった。それは人情だった

改善例 5年ぶりに帰郷したら、何もかもが変わっていた。川は護岸に囲まれ、山は切り崩され、見る影もない。だが、変わらないものもあった。それは人情

→過去をすべて過去形で表す必要はない

過去の話の中に現在形を混ぜると、読み手は現在形で表された内容を、あたかも眼前のことのように感じ取れ、迫力が出てきます。

<未来のことも現在形で表せれる>

・来週、私は北海道に行く。その夜の食卓には新鮮な魚介類が並んでいる。

話し手の意識がどの位置にあるかで、表現の時制が変わる。これは日本語独特。

 

 

29、同じ言葉を繰り返さない

原文 水の硬度は味にも関わってくる。一般に硬度が高いほど体にはよいとされているが、硬度が高いと飲みにくいのが難点だ

改善例 水の硬度は味にも関わってくる。一般に数値が高いほど体にはよいとされているが、飲みにくいのが難点だ。

→同じ言葉が何度も出てくるとくどい。~ことも連続使用を避ける

<言葉は違っても中身が同じケースもある>

原文 人には嗜好がある。好き嫌いの中には生まれつきのものもあるので、人の好みを一概に責められない。

改善例 人には嗜好がある。中には生まれつきのものもあるので、一概に責められない。

 

 

30、決まり文句を避ける

原文 その知らせに、ある者はがっくり肩を落とし、ある者は唇を噛んだ

改善例 そのしらせに、ある者はひどく落胆し、ある者は悔しさにたえようとした。

→決まり文句は事実と合わない

実用文では伝えたいことの中身をできるだけ忠実に表現することが重要であるため決まり文句は必要ない。その場で体験したこと、目撃したことをきめ細かく観察し、それに最もふさわしい表現を使うのが文章作法のきほんです。

主な決まり文句

カモシカのような脚 一面の銀世界 黒山のひとだかり 朝食をペロリと平らげる こだわりの逸品 気になるお値段は~ ~の鉄人/~の達人 ~をご存じだろうか(文の決まり文句) ~する今日このごろである(文の締め)

 

 

31、比喩表現を避ける

原文 彼女は”○○小町”と称され、柳のような眉バラの微笑をたたえ、男たちに人気があった。

改善例 彼女は地元で評判の美人で、形のよい補足長い眉に華やかな微笑をたたえ、男たちに人気があった。

 

→比喩表現は実用文に適さない。~のようなを使った方がよいかも

まず比喩表現は成り立つのは、同じ文化や風土をもつ人たちの間だけなのです。実用文で物事を描写する際に心掛けるべきは、描く対象に正面から向き合い、しっかり神作することです。その観察でつかんだ様子に最もふさわしい具体的表現を探しましょう。

 

 

32、文を飾りすぎない

原文 いわゆるメタボブームに端を発して再燃したダイエット文化がこれまでと異なるのは、「健康」を大前提とする概念であることだ。

改善例 メタボ騒ぎをきっかけに再燃したダイエット熱がこれまでと異なるのは、健康を意識した取り組みを大前提としていることだ。

→飾りすぎは読み手を混乱させる

 

 

33、無駄を徹底的に削る

原文 ペットを飼えるマンションには、どのような設備が備えられているのか。市内のマンションでは、共用設備として、散歩から帰ってきたときのための足洗場や汚物ダストが設置されているほか、室内にはペットの感電防止のためにコンセントが高めの位置に設置されているというような配慮がされている

改善例 市内のペット可マンションには、共用設備として散歩からの帰宅時に足洗場や汚物ダストがあり、室内コンセントがペットの感電防止に高めの位置につけられてある。

→思い切って文を削り、伝えたいことを明確に

大胆に削るほど伝えたい内容がはっきりします。要するに何が言いたいのか。それをわしづかみにしましょう。

 

<文章の削り方法>

①言葉・表現・内容の重複に気をつける→一つにまとめる

②回りくどい表現をやめる→短い表現に書き換える

③誘導の疑問文、断り文などで話を展開しない→ずばり核心に入る

④余計なつなぎの言葉なども徹底して省く→内容の自然な展開を考える

⑤書きたいことがたくさんある→優先順位をつけ、下位のものから削除する

 

 

34、漢語より和語のほうが優しい

原文 遊休地有効活用が、緊迫の課題として浮上した

改善例 遊んでいる土地をどううまく活かすかが、差し迫った課題として浮かび上がった

→和語は漢語よりも読み手が受ける印象をやわらげる

漢字の熟語は大半が中国からの外来語です。音読みなので、目から入ってきても耳から入ってきても、硬い感じがします。そんな漢語を日本人になじみ深い和語(やまとことば)に置き換えると、印象がずっとやわらかくなる。

○○(漢字二文字)+する が熟語(漢語)になるので片方の漢字を使った和語を思い出せばよいのです。

  • ・歩行する→歩く、歩む
  • ・就寝する→寝る、眠る、床に入る
  • ・後悔する→後で悔やむ
  • ・遅延する→遅れる
  • ・削減する→削る、減らす

漢文(漢語)は江戸時代以降からインテリたちの素養でした。ですから、漢語を使うとちょっと硬い、構えた印象を与えます。役所の文書や、ビジネスでも権威づけをしたい文書には、あえて漢語を多く使うようです。それはそれとして、一般の実用文では和語をうまく生かすことをお勧めします。

 

 

35、”ひらがな”のほうがやわらかく響く

原文 生憎 注文の品は只今切らしております。然しながら、其れに近いしなが御座いますので、資料を送りします。

改善例 あいにくご注文の品はただいま切らしております。しかしながら、それに近い品がございますので、資料をお送りします。

→ひらがにしたほうがずっと読みやすい言葉もある

雑誌の記事やノンフィクション作品などもひらがなを多用する傾向にあります。

・副詞・・・生憎(あいにく)、如何(いかが)、敢えて(あえて)、飽く迄(あくまで)

・接続詞・・・然し(しかし)、或いは(あるいは)、即ち(すなわち)、又(また)

・代名詞・・・其れ(それ)、是れ(これ)、何方(どなた)、誰(だれ)

・助詞・・・位(くらい・ぐらい)、程(ほど)、乍ら(ながら)、等(など)、迄(まで)

 

 

37、「まず」「そして」を極力削る

原文 私がこの仕事に向いていると思う理由は、以下である。まず、人と接するのが好きなこと。そして、人の役に立つことに喜びを見出せること。さらに、相手の立場を想像できること。

改善例 私がこの仕事に向いていると思う理由は、以下である。人と接するのが好きであり、人の役に立つことに喜びを見出せ、相手の立場も想像できる。以上である。

→つなぎ言葉はほどんど不要

→接続語を使わずに、文をまろやかに

日本語文章の一般作法として、接続詞を使わない方が、文章はやわらかくなる(順接、逆接、累加)。これらは話の流れがかんたんにわかります。つまりは、文章の論理性を高めるのです。その分、理屈っぽく、ごつごつした感じになり、やわらさが損なわれます。使わなければまろやかになります。

※つなぎ言葉も論理重視の文章には向く

 

 

37、談話を入れて分をリアルに

原文 保健所で衝撃的な事実を知らされた。飼い主本人が愛犬を連れてくるケースが増えているというのだ。何年も一緒に暮らした犬を、なぜ自ら処分しようとするのか

改善例 「飼い主本人が愛犬を連れてくるケースが増えています」。こんな衝撃的な事実を語るのは、保健所の担当者Aさん。何年も一緒に暮らした犬を、なぜ自ら処分しようとするのか。

→談話を活かして親しみがわく文に

具体的な人物を登場させ、その人ならではの談話を紹介すれば、親近感や迫力が出ます。これを冒頭にもってくるだけでも迫力が増します。しかも、担当者の生の声で語らせています。これらは新聞や週刊誌でよく使われる手法です。

●「まさか」「信じたくない」–。ヘリが出勤した○○航空センターの同僚の隊員や社員らは、突然の事故に言葉を失った。

内容の核心にふれる象徴的な言葉を、そのまま投げ出すのです。談話には”目で読む文章を耳で聞く文章”に変える力があるので、話の内容がよりリアルになるし、親しみも沸いてきます。

データは地の文に回し、談話は象徴的なエッセンスに絞り込むのがポイントです。

 

 

38、文に”動き”を出すひと工夫

原文 どこまでも続く長い道。はてしなく広がる大空。空を自由に飛ぶオオワシ。北海道の風景は雄大だ。

改善例 長い道がどこまでも続く。大空がはてしなく広がる。オオワシは空を自由に飛ぶ。北海道の風景は雄大だ。

→動詞を使って、動きをだす

原文は文末がいずれも”道・大空・オオワシ”と名詞になっています。名刺には動きがありません。せっかく前に「どこまでも続く」「はてしなく広がる」「空を自由に飛ぶ」と動きを出す言葉があるのに、名詞で動きを止めています。改善例では動詞で終わらせています。読み手に一つ秘匿の光景をリアルに想像させます。

動詞は「動作」を表すのが得意です。

原文 著しい進歩だ(形容詞+名詞+だ)

改善例 著しく進歩した(副詞+動詞)

原文 デザイン性の追求が活発だ(名詞+の+名詞+が+形容動詞)

改善例 デザイン性を活発に追求しだした(名詞+を+副詞+動詞)

 

動詞でも「~ている」形は状態性が強く、動きが弱い。

 

  • 原文 壁にぶつかっている。全身するか後退するか、迷っている。それ以外の道がないかとも考えている。
  • 改善例 壁にぶつかった。全身するか後退するか、迷う。それ以外の道がないかとも考えた。

 

 

39、文に”迫力”を出すひと工夫

ここでは、書いた文章に見出しをつけたり、標語を作るような場合に助詞をうまく使って動き出すことを考えます。次の文にはどんな見出しが適切でしょうか?

ここでは、書いた文章に見出しをつけたり、標語を作るような場合に助詞をうまく使って動き出すことを考えます。次の文にはどんな見出しが適切でしょうか?

会社更生手続き中の○○社の管財人を務める○○弁護士は、債券放棄を柱として更生計画案について主力取引銀行などの合意が得られる見通しになったと明らかにした。

原文 ○○社の更生計画案が合意の見通し

改善例 ○○社更生計画案、合意

→助詞で終わらせて迫力を出す

少ない字数で適格に内容を表現するのが見出しです。新聞の見出しには、こんな面倒な要求に応えるための工夫が、ふんだんに見られます。その決め手は助詞の使い方です。通常文を作ってから述語を削れば助詞が残る。

・首相責任問う声も→首相の責任を問う声も出ている

・まず執行停止を→まず執行停止をすべきだ

・給付金支給は?→給付金の支給はどうなっているのか?

・両者戦績タイに→両者の戦績がタイになった

・遭難か→遭難かと見られる

 

 

40、敬語をきちんと使いこなす

原文 先生様がお見えになられました。

改善例 先生がお見えになりました。

→二重敬語に要注意(ご利用になられる、お買い求めになられる)

 

 

41、謙譲語をきちんと使いこなす

原文 大方のお客様が参られたそうなので、私たちもそろそろ参りませんか

改善例 大方のお客様がいらっしゃったそうなので、私たちもそろそろ参りましょうか

→自分を下げて相手を持ち上げる

詳しくは働き方コムのビジネス文書メニューにて解説あり。

 

 

42、「て」でつなぐか「、」で分けるか

原文 彼は猛烈に努力してよく遊ぶ

改善例 彼は猛烈に努力しよく遊ぶ

→「て」でつなぐのと(て接続詞と呼ぶ)「、」で分けるのでは意味が変わる

て接続詞は「て」でつなぐ複数の事柄をひとかたまりに捉えたり、一連の動作と考えます。運用中止は「、」で区切られる各事柄を、別々ものととらえます。

●昨日はデパートへ行っ買い物をし食事をしてきた

●昨日はデパートへ行き買い物をし食事をしてきた

●昨日はデパートへ行って買い物をし、食事をしてきた

二つの文の内容は明らかに違います。上の文では、買い物も食事もデパートの中で済ませたと考えられます。真ん中の文では、デパートへ行ってから、次に外の店で買い物し、その次に外のレストランで食事をしたと解釈されます。デパートへは、買い物や食事とは別の用事でいったのでしょう。最後の文は買い物をデパートでし、食事をデパートでした場合です。

「て」でつなぐ文章の原則-その2-

て接続詞には次のような原則もあります。文の主語が一つの場合、ての前と後の事柄が「意志でコントロールできる動作・状態同士」か、「意志でコントロールできない動作・状態同士」でなければならないという決まりです。

●彼は飛行機で目的地に着いて友達に電話した

●彼は飛行機で目的地に着き、友達に電話した

原文はルール違反です。この場合の「目的地に着く」のは飛行機まかせなので自分の意志でコントロールできませんが、「電話をする」のはコントロールできることです。この場合には改善例のよう「運用中止」を用います。

 

 

43,「そうだ」「ようだ」「らしい」の使い分け

原文 詳しいことはわかりませんが、ヘリが降下中に事故が起きたらしいです。

改善例 関係者の話によると、ヘリが降下中に事故が起きたようです。

→強い根拠があるときに、「らしい」を使う

「らしい」はその中でもかなり確実な根拠に基づいて推量する場合に用いられる。

<推量使用例>

①この靴は小さいようだわ。

②この靴は小さそうですね。

③この靴は小さいらしい。

①の「ようだ」のようは「様」=様子から出た表現です。子供が靴を履いてみて何かもぞもぞしているのかもしれません。履き心地が悪そうな様子を見て、母親が直感的に小さいようだと判断しているのです。

「そうです」のそうは「相」に由来します。つまり外面に現れた様子からの判断です。これも①同様、感覚や勘を働かせるのですが、その元になるのは視覚です。売り場に陳列されている靴と、子供の足の大きさとをみくらべているのでしょう。また、靴を実際に履かせていない状況での判断です。

「らしい」は、はっきりした根拠がある場合です。実際に履かせたら子供が顔をしかめたとか、指でつま先を押したらきつかった場合です。

この他の推量表現には・・・

「~かもしれない」・・・ちょっとするぐらいのわずかな根拠による推量

「~だろう」・・・何か根拠みたいものはあるが弱い推量

「~に違いない」・・・確かな根拠のある推量。

 

 

44、カタカナ語を乱用しない

原文 議員各人がルーチンワークにいかにポジティブに取り組んだかが、課トータルとしてのパフォーマンスにもつながる。

改善例 議員各人が日常業務にいかに前向きに取り組んだかが、課全体としての成績向上にもつながる。

→不要なカタカナ語は品を落とす

カタカナ語の乱用は、その言葉の知らない読み手を戸惑わせ、意味がすんなり伝わりません。結果的に文章の品位を落としてしまいます。

 

 

45、「?」「!」を乱用しない

原文 自治体が野良ネコを徹底管理する!という。それを聞いた時、なんて良い制度なんだ!と感心した。だが、本当だろうか?誰にとって?ネコ?人間?

改善例 自治体が野良ネコを徹底管理するという。それを聞いた時、なんて良い制度なのかと感心した。だが、本当だろうか。誰にとってよいのか。ネコ、それとも人間?

→記号の乱用は品を落とす

 

 

46,体言止めは情報不足

原文 A社は4月、新機軸の店を開店。この1か月間の利用客は1日平均350。店長いわく、「客の反応は上々」

改善例 A社は4月、新機軸の店を開店させた。この1か月間の利用客は1日平均30人と、目標の300人を上回った。店長は「客の反応は上々」と喜んでいる

→実用文で体言止めは避ける

体言止めは述語を省き、体言(名詞・代名詞)で文を打ち切ります。日本語文は、肯定か、否定か、疑問かが、文末にならないとわかりません(~である、~でない、~か)。最後の最後が判断の決め手となります。その手前で止める体言止めは、情報面で不完全な文となります。

体言止めもうまく使えば、文にテンポや余韻が生じます。でも、乱用すれば文の品位を落とすのでお勧めされていない。

<必要事項を省略しない体言止めの使い方>

社内報の記事など、字数制限があり、少ない字数に多くの情報を盛り込むとき、体言止めは便利です。最たる例はタウン誌のお店紹介記事です。

●オープンしたばかりの中華料理店。中国人シェフが腕をふるう本場の味で、中でも麻婆豆腐は一押し。お区域ある風味と辛み、さんしょうの刺激が絶妙にマッチ。

 

 

47、「~たいと思う」を使わない

原文 世間をお騒がせし、申し訳ありません。こころよりお詫びしたいと思います。

改善例 私どもが不祥事を起こし、申し訳ありません。心よりお詫び致します

→へりくだっているようで無礼

当人は、丁寧に、失礼のないようにと気をつかったのかもしれませんが、敬意の厚塗りは逆に品位を落とします。また、今まさにわびようとしている人が、「したい」「思います」と未来への心づもりを口にする点です。

「~たいと思う」は自信のなさの表れにもつながる。

「~と思います」で自分の行為の予告をする場合

●では、これから食べてみようと思います。(×=食べてみたいと思います。)

●それでは、聞いてみようと思います。(×=聞いてみたいと思います。)

と使うのが正しいですが、単刀直入に食べてみます、聞いてみますでよいのです。

 

48、キーワードを盛り込む

原文 医療機関が患者の信頼を回復させるには、たとえば、長時間にわたって患者を待たせて診療にはわずか数分しかかけないといった問題の改善が必要だ

改善例 医療機関が患者の信頼を回復させるには、たとえば「3時間待ちの3分診療」といった問題の改善が必要だ。

→楽に理解させ、説明が省ける

ごちゃごちゃ書くよりも、異なる象徴的な言い方に言い換えれば、わかりやすく伝えることができる。

 

49、すごさを一目でわからせる

原文 2005年、日本の人口が自然現象した。この傾向は今後も続くとみられ、その行方が憂慮されている。

改善例 2005年、日本の人口が史上初めて自然現象した。この傾向は今後も続くと見られ、2050年には1億人を切ると予測され、多方面への影響が憂慮される。

→客観的にすごさを表す

事実を淡々と紹介するだけでは、読み手にそのすごさがわからないことがあります。何かすごいことを紹介するときは、それが客観的にみてどれほどすごいのかを、端的に言葉で知らせるべきです。

 

50、「ので」と「から」ではインパクトが違う

原文 台風が近づいているから、遊泳禁止になりました

改善例 台風が近づいているので、遊泳禁止になりました

→「ので」は客観性が強く、「から」は主観性が強い

のでとからはどちらも原因・理由を表しますが、客観性の強い「ので」を用いた方が、文のインパクトが強まります。

説得力を考えたら「ので」を用いたほうがよいでしょう。

<「ので」の使い方>

●猛暑が続いたので、熱中症患者が続出した。

●事故で電車が止まったので、遅刻した

●日曜日なので、休館です。

※のでを使った文は前後の文体をそろえなくてもよい。のでを使った文は、前半と後半の二つのつながりがとても強いので、です・ます(敬体)で書く場合、後半の文末だけ敬体にすれば済みます。他方、からを使った文は前半も敬体でそろえることが多いです。

原文 用事があるから、今日は失礼します。

改善例① 用事があるので、今日は失礼します

改善例② 用事がありますから、今日は失礼します

 

<「から」の使い方>

●夕焼けがきれいだから、明日もよいお天気でしょう(推量)

●風が強いから、窓を閉めよう(意志)

●くだらんから、やめておけ(命令)

とりわけ後半(主節)が推量・意志・要求・命令などの場合は、「から」を使うべきです。要するに、「から」は主観の範囲内の表現で、ときにはひとりよがりのことさえあります。

 

51、語順を変えて文を強く

原文 私は、人の話を聞かずに勝手なおしゃべりをする酔っ払いがいやです。(主語+目的語+述語)

改善例 いやですね。酔っ払いは。人の話は聞かない、勝手なおしゃべりはするしで。(第1文「述語+目的語」+第2文「その理由」)

→強調したいことを先に出し、余分な言葉は削る

改善例は二重の倒置となり、通常の語順を入れ替えると違和感が生じ、文意が強まります

 

 

52、事実を紹介したら、その意味も明らかに

原文 座席が満杯の電車に、お年寄りが乗り込んできた。パリッとしたスーツを着込んだ大人たちが目をそらす一方、だらしない服装の高校生がざっと席を譲った。

改善例 座席が満杯の電車に、お年寄りが乗り込んできた。パリッとしたスーツを着込んだ大人たちが目をそらす一方、だらしない服装の高校生がさっと席を譲った。人を、見た目で判断してはいけないと思った

→事実の紹介だけでは何が言いたいのかわからない

自らの体験、見聞きしたこと、あるいは数値データなど、具体的事実を紹介したら、その事実が何を意味するのか、すなわち筆者がそれを通じて何を伝えたいのかを、すぐに明らかにすべきです。事実をそのまま出されただけでは、「だから、何なの?」という疑問が残ります。

事実の紹介+意味づけ→伝えたいことを明確化 ※意味づけにより事実の必要範囲の記述

①事実を紹介しただけでは、何を意味するのかわからなかったり、複数の読み取りが可能な場合がある。筆者自身が意味づけをすることで、伝えたい内容を明確にできる。

②文章で大事なのは意味づけのほうなので、事実紹介は意味づけを引き出すのに必要な範囲に留めればよい。

 

 

53、強い具体的・客観的根拠をつける

原文 この校舎はとにかく貴重な建築物なので、保存してほしい。

改善例 この校舎は関東大震災の「復興小学校」の貴重な現存遺構として国の重要文化財に相当すると専門家も高く評価しているので、保存してほしい。

→根拠が強ければ説得力も強い

”とにかく貴重な建築物”とは理由付けが抽象的なのです。重要文化財という強い根拠を示した方が説得力もつよくなります。

 

<例>こどもがおこづかいを増やしてほしいと親に訴える場合

  • ・とにかく足りない
  • ・買いたいものがある
  • ・交友関係が広がっておこづかいが足りなくなった
  • ・この2年間、おこづかいがたりなくなった
  • ・調べたらクラスでおこづかいが一番少なかった
  • ・ここ1年で物価が2%上がった

後ろにいくにつれて説得力が強くなっていきます。

<説得力を強める根拠づけ方法>

  • ・個人的なものよりも社会的なものの方が強い
  • ・数字や科学的データを挙げると納得させやすい
  • ・伝聞や噂よりも決定的な事実を示す方が強い
  • ・公的権威や専門家のお墨つきを得るのも有効なことがある
  • ・最強の一つを挙げて済む場合のあるが、それがない場合にはいくつかの根拠を合わせる”合わせ技”も有効である

主張+具体的・客観的根拠→説得力(根拠により説得力の度合いが変わる)

 

<抽象と具体の行き来>

具体例やデータを出して話を進めるのが「具体」レベルです。でも、事実をいくら並べても、話は深まりません。ただ、量的に横に広がるだけです。それを縦に深めたり高めたりするのが「抽象」レベルの考察です。

人に具体的なことを長々と話すと、相手は「だから、何なの?」と尋ねるはずです。事実を通して言いたいことは何なのか、と聞いているのです。その何かをはっきりさせるには、話した事実を解釈したり分析し、「意味」をつかむこと(=概念化、一般化)が必要です。その作業が「抽象」化です。

たとえば、体重が大幅に増えた、ウエストが太くなった、血圧が上がった、体脂肪が増えたとします。個々の事実を紹介するだけでは、核心がつかめません。それらをまとめて「メタボリック症候群」と概念化すれば、ことの重要性がつかめるのです。

逆に抽象概念が先行するときは、それを具体例に落として考えを進めます。こうして具体⇔抽象の行き来をうまくやることで、物事のより本質に近い所まで考えを深めていけるし、読み手にわかりやすい文章にもなります。

 

 

54、自信をもって断定形にする

原文 最近、飲食店のサービスが悪くなったように感じる。安いチェーン店で特にそう感じる。合理化を進める中で何か大切なものが失われているように思う

改善例 最近、飲食店のサービスが悪くなった。安いチェーン店で特にそうだ。合理化を進める中で何か大切なものが失われたのでないか

→推量表現は自信のなさ・調査不足の表れ

「よう」も「感じる・思う」もいかにも自身なさげです。自分が感じたことであっても、それが自分ひとりの思い込みではないと考えるから話題にするのです。自身がなければ、文章にすべきでありません。自身が足りないから、他人の意見も聞いてみる、何かの資料やデータに当たってみる。確たる裏付けがないのに断定すれば、この筆者はなんと一方的な物言いをするのかと信頼を失います。

 

 

55、感動や感情を押し付けない

原文 先日、タクシーに乗り、運転手の挨拶に驚いた。「私は○○交通の△△でございます。目的地まで安全運転で参ります」と言うではないかなんともさわやかな挨拶。恐縮すると同時に感動し、それから居心地よい安心感を覚えた。

改善例 先日、タクシーに乗ったら、運転手が「私は○○交通の△△でございます。目的地まで安全運転で参ります」と挨拶した。このさわやかな挨拶に驚き、それからスーと安心感を覚え、居心地がよかった。

→事実を描いて感情を表す

感動しても「感動した」と言わず、うれしくても「うれしい」とストレートに言わない。これが感情表現の原則です。感情語を抑制的に用いるほど、思いは静かに深く伝わります。感動がらみの突出した部分を大胆に削るのです。

喜びや悲しみ、怒りなどは、それを象徴的に表す具体的な事実や状況をしっかり描くことで、読み手に強く印象づけられます。

感情を表すのに感情語はかえって邪魔

原文 その瞬間、彼の顔は怒りでいっぱいになった。

改善例 その瞬間、彼の顔はみるみる紅潮し、目が血走った