「市場」をとらえて戦略を組み立てよう

第4章 「市場」をとらえて戦略を組み立てよう(マーケットの動向をしっかり把握することが、売れる戦略につながる)

 

1、製品と市場の組み合わせから考えてみよう(アンゾフの製品と市場の領域分類とは?)

マーケティングは突き詰めていえば「何を」「誰に」「どのように」売るか、ということです。「何を」は製品、「どのように」は価格・流通・販促ということになりますが、ここで「誰に」をあらわすのが「市場」という言葉です。

 

アンゾフの4つの戦略「「製品と市場の領域分類」

既存製品 新しい製品
既存市場 「市場浸透」戦略 「新製品開発」戦略
新しい市場 「市場開発」戦略 「多角化」戦略

以下から読み取る4つの戦略とは?

既存市場×既存製品=市場浸透戦略→購入回数と量を増やす、競争相手の顧客を奪う

既存市場×新しい製品=製品開発戦略→現在の市場に新製品を投入する

新しい市場×既存開発=市場開拓戦略→既存の製品を新しい市場に投入する(海外市場など)

新しい市場×新しい製品=多角化→既存の市場・製品に、関連のある事業、ない事業に進出する

2、川上に向かうか、川上に向かうか(垂直統合・後方統合・前方統合とは?)

一般に、商品というものは、原材料から部品(中間財→巻末)を経て製品がつくられ、出来上がった製品が卸売り、小売を経て最終的に消費者の手に届くものです。ですから、たとえば製品のメーカーなら、部品メーカーから仕入れ、それを加工してつくった製品を卸売りに販売するのが主要な仕事です。しかし事業の効率化を考えれば、必ずしも製品の製造だけにこだわる必要はありません。部品の安定確保、品質の維持を目的に、部品メーカーを傘下におさめたり、卸売りの販社をつくる戦略も考えられます。

垂直統合とは?→複数の段階を押さえて、安定供給や市場の確保をねらうのが「垂直統合」

  • 原材料メーカー
  • 部品メーカー
  • ●製品メーカー←銀行・物流業者など
  • 卸売り業者
  • 小売業者
  • 消費者

川上(↑)に向かえば「後方統合」、川下(↓)に向かえば「前方統合」

 

 

3、市場に出れば、「5人の敵」がいる?(ファイブ・フォース・モデルの考え方)

市場の5つの敵とは・・・

①現在の競合業者 ②新規参入業者 ③代替品 ④買い手 ⑤売り手

※④は価格に影響力を持ち、利益率を悪化させることがあるのです。デフレが進行する中、ファストフード店の顧客はよりやすいメニューを求めて、確実にお店の利益率をさげています。

5つの競争要因に整理すれば最優先課題がわかる。

5つの競争相手に分けて整理する

(ファーストフード店の例)

①現在の競合業者→○○チェーン店の進出

②新規参入業者→××商事の業界参入

③代替品→○○弁当への顧客流出

④買い手→より安いランチの要望

⑤仕入値段の値上げ要求

5つに分けて整理すれば、取り組むべき最重要要因が判断できる。

4、市場の変化に対応した戦略とは?(SWOT分析の考え方)

マーケティングの外側には企業がコントロールできない環境の変化がある。環境変化に対応する「SWOT分析」とは・・・。

自社の有利な要素を「強み(Strength)」、自社の不利な要素を「弱み(Weakness)」とする。自社にとって有利な環境の変化を「機会(opportunity)」、不利な環境の変化を「脅威(Threat)」と呼びます。強みと弱みは会社でコントロールできる内部要因、機会と脅威はコントロール不能な外部要因の変化ということになります。

機会 脅威
強み 積極的攻勢戦略 差別化戦略
弱み 段階的施策戦略 専守防衛または撤退戦略

強みの分野に機会が訪れたときは「積極的攻勢」戦略、反対に弱みの分野に「脅威」が発生したときは「選手防衛または撤退」戦略をとる以外にありません。という感じに読み取る。

 

5、ニーズ優先とシーズ優先の違いを見る(必要から迫るか、種から育てるか)

ニーズ・・・こんな商品があるといいなというニーズから商品を考える

シーズ・・・わが社にこんな新しい技術がある

必要から迫ってマーケティングリサーチするか、種から迫るか

 

6、いろいろなマーケティング手法を知っておこう(増す・マーケティングからインターネット・マーケティングまで)

消費者へのアプローチの仕方にはいくつか種類がある。

マス・マーケティング・・・テレビやチラシなどの消費者全員に同じアプローチをする

ワンツーワン・マーケティング・・・特定の消費者に有効と思われる個別的なDMなどでアプローチ

※消費者をマス(かたまり)でとらえるのに対して、一人ひとりに合わせるのがワンツーマン・マーケティングです。

エリア・マーケティング・・・地域ごとにマーケティング活動を変える

フィールド・マーケティング・・・小売店店舗の情報を重視する

ダイレクト・マーケティング・・・流通経路を省く

テレ・マーケティング・・・DM,電話、FAX、Eメールなどを利用する

インターネット・マーケティング・・インターネットを重視し、活用する

 

 

7、マーケティング・リサーチ(市場調査)の方法

大きく分けると、自社や業者に委託して実地調査をする場合と公表されているデータを利用する場合があります。

①利用できる公表データを探す

・自社で作成した資料 ・官公庁の白書や調査資料 ・業界団体や研究調査機関の資料 ・インターネットのHP

②不足するデータについて実地調査する

自分たちで収集・記録・分析したものを「一次情報」、公表されたデータは伝聞・流用になるので「二次情報」などと呼びます。

 

 

二次情報は、出所や信頼度に不安がある場合が多く、本来なら一時情報によるのが理想です。しかし情報の収集には時間もコストもかかるので、まず二次情報で適切なものを探し、不足するデータについて一次情報の収集にあたるのが普通です。

 

実地調査方法のいろいろ

観察法・・外から観察してデータを取る

実査法・・・直接、対象にあたってデータをとる

  • ・郵送調査法・・アンケートを郵送する
  • ・留置調査法・郵送が手渡しして後日回収する
  • ・電話調査法・・電話でアンケートをとる
  • ・集合法・・集まってもらってアンケートをとる
  • ・グループインタビュー・・語り合ってもらう
  • ・個人面接法・・訪問して質問に答えてもらう

8、マーケティング環境分析とは?(3C分析をしてみよう)

マーケティング・データをもとに行う分析は、「マーケティング環境分析」といいます。市場や自社の状況(環境)を分析するわけで、外部環境分析と内部環境分析に分けることができます。3C分析といいます。
マーケティング環境分析・・内部環境分析→自社分析と外部環境分析に分かれる。

外部環境分析を分析する3つの要素は?

マクロ環境分析(Customer)・・・自社でコントロールできない環境のデータ

・人口構成 ・経済成長率 ・産業構造 ・自然環境 ・法律・税制など

顧客分析(Competitor)・・・製品の購買対象となる顧客データ

・購買人口 ・購買層 ・地域構成 ・購買場所 ・購買理由

競合分析(Company)・・・競合するライバル者の経営データ

・経営戦略 ・マーケティング戦略 ・売上高 ・シェア ・利益額

 

9、「市場細分化」でターゲットが絞り込める(マーケット・セグメンテーションの考え方)

的を絞るには、市場を分ける。分けたひとつひとつのグループを「セグメント」とよびます。

 市場細分化の基準になるものは?

社会経済的要素・・・年齢、性別、家族数、収入、職業、人種、宗教、国籍、教育水準

地理的要素・・・地域、人口規模、人口密度、気候

心理的要素・・・ライフスタイル、性格

購買行動的要素・・・使用頻度、ブランド・ロイヤリティー

市場細分化→ターゲティング→ポジショニング→マーケティング・ミックスという流れになります。

 

10、「標的」の市場を選ぼう(的を絞ることをターゲティングという)

消費者のアプローチ方法としてターゲット・マーケティングがあります。

「ターゲット・マーケティング」の位置づけ

マス・マーケティング→大量生産・大量販売

ワンツーマン・マーケティング→少量生産・個別販売

製品差別化→品質、ブランド、デザインなどで差別化

ターゲット・マーケティング→市場細分化、ターゲティング、ポジショニング

 

ターゲティングの3つのパターン

<無差別マーケティング>

市場←マーケティング・ミックス

<差別型マーケティング>

セグメント←マーケティング・ミックスA セグメント←マーケティング・ミックスB セグメント←マーケティング・ミックスC

<集中型マーケティング>

セグメント(1個に指定)←マーケティング・ミックス

市場のどこをターゲットにするかを決めて、そこを攻めるのがターゲティング。

 

11、市場シェアに応じたマーケティング戦略の決め方

ポジショニングのもっともわかりやすい分類方法としてシェア(市場の占有率)で分けることができます。

マーケティング・リーダー→すべての市場を狙う。

チャレンジャー→リーダーへの競争戦略をねらう。ある程度のセグメントを狙う。

フォロワー→無理なシェア拡大を目指さず、生き残りを確実に目指す。程ほどのセグメントをねらう。

ニッチャー→ニッチな存在としてがんばる。ある特定のセグメントのみねらう。

ポジションに応じて、企業の戦略もマーケティングの目標も変わる。