一般被保険者が失業した場合に支給される求職者給付を基本手当といいます。
①支給要件・手続き
(1)支給要件の概要
基本手当は、一般被保険者が離職し、失業状態になった場合(失業した場合)に、算定対象期間(原則:離職の日以前2年間)に、被保険者期間が通算して12か月以上であったときに支給されます。
※倒産の場合・・・倒産等により離職した場合や、有期労働契約が更新されなかったことにより離職した場合等は、離職の日以前1年間に6か月以上の被保険者があれば支給されます。
- [用語]離職/失業
- 雇用保険法で用いられる離職及び失業の定義は、
- 「離職」被保険者について事業主との雇用関係が終了することをいいます。会社を辞めただけなら離職にあたります。
- 「失業」被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいいます。
(2)算定対象期間
被保険者期間を算定する際の基になる算定期間対象は、原則として、「離職日以前2年間」です。
(3)被保険者期間
この被保険者期間が、算定対象期間内に12か月以上あれば、原則的には基本手当の支給要件を満たすことになります。つまりは、算定対象期間とあわせて考えると、会社を辞める前2年間に12か月以上働いていた場合には、原則として支給要件を満たすことになります。
具体的には、被保険者であった期間を離職日から遡って1か月ごとに区分し、その区分された期間のうち賃金の支払いの基礎となった日数(賃金支払い基礎日数)が11日以上あるものを、1か月の被保険者期間として計算します。
(4)支給の手続き
会社を辞めたら、まず最初に自分の住所又は居所を管轄する公共職業安定所に出頭し、求職の申込をした上で、基本手当の受給資格の決定及びその後の失業認定日の指定を受けます。失業認定日は、28日ごとに指定されます。その後は、その28日ごとに指定された失業認定日に管轄公共職業安定所に出頭し、直前の28日につき失業の認定を受けます。失業の認定を受けた日については、基本手当が支給されることになります。
※待機期間・・・求職の申込をした日以後において、失業している日が通算して7日に満たない間は基本手当は支給されません。これを待機期間といいます。
- [用語]
- 「公共職業安定所」・・・自分の住所・居所を管轄する公共職業安定所を、管轄公共職業安定所といいます。
- 「所轄公共職業安定所」・・・事業所の所在地を管轄する公共職業安定所を、所轄公共職業安定所といいます。
②基本手当の額
前記の支給要件を満たし、失業の認定を受けた日について基本手当が支給されます。基本手当の額は、賃金日額というものを基にして算定されます。
(1)算定方法の概要
まず、賃金日額の算定式により、基になる額を求めます。その額が賃金日額の上限額を上回る場合は上限額を、下限額を下回る場合は下限額を賃金日額とします。求められた賃金日額に給付率を乗じて得た額を基本手当の日額とします。
賃金日額の算定→上限額・下限額の適用→給付率を乗じる
(2)賃金日額の算定
賃金日額は、原則として下記の式により算定されます。一言でいうと、6か月の給料n1日平均額です。
- [賃金日額の算定式(原則)]
- 賃金日額=6か月間(※)に支払われた賃金総額÷180
- ※この6か月間とは、算定対象期間において被保険者期間として計算された最後の6か月間のことです。
(3)上限額・下限額
前記の賃金日額に対して、次の上限額及び下限額を適用します。(2)で算定された額が賃金日額の上限額を上回る場合は上限額を、下限額お下回る場合は下限額を賃金日額とします。
・賃金日額の上限額
賃金日額の上限額は、受給資格にかかる離職の日における年齢に応じて、定められています。
離職日における年齢 | 賃金日額の上限額 |
30歳未満 | 12.740円 |
30歳以上45歳未満 | 14,150円 |
45歳以上60歳未満 | 15,550円 |
60歳以上65歳未満 | 14,860円 |
・賃金日額の下限額
賃金日額の下限額は、一律2.290円になります。
(4)給付率
基本手当の額は、前記(3)までで求められた賃金日額に対し、次の表の給付率を乗じて得た額となります。
離職日の年齢 | 賃金日額
|
給付率 |
60歳以上65歳未満 | 2,290円以上4,580円未満 | 100分の80 |
4,580円以上10,460円以下 | 100分の80から100分の45 | |
10,460円超 | 100分の45 | |
上記以外 | 2,290円以上4,580円未満 | 100分の80 |
4,580円以上11,610円以下 | 100分の80から100分の50 | |
11,610円超 | 100分の50 |
※これらの上限額、下限額及び給付率にかかる金額は、毎年8月1日に、賃金の変動に合わせて自動的に見直されることになっています。
③基本手当の日数
(1)所定給付日数
基本手当は、失業中であれば制限なく支給されるというものではありません。1人ずつ基本手当を受給できる日数が決められます。その受給できる日数のことを所定給付日数といいます。所定給付日数は、特定受給資格者であるかどうか、就職困難者であるかどうか、離職日の年齢、勤務していた期間(算定基礎期間)の長さによって決定されます。
- [所定給付日数を決定する要素]
- ●特定受給資格者であるかどうか
- ●就職困難者であるかどうか
- ●離職日の年齢
- ●算定基礎期間の長さ
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一人ひとりの所定給付日数
- [用語]
- 特定受給資格者・・・倒産等で辞めざるを得なくなったひとたちいのことをいいます。自己都合などの人たちに比べて、より保護することとしています。
(2)特定受給資格者以外の受給資格者についての所定給付日数
特定受給資格者以外の受給資格者にかかる所定給付日数は、次の表のように定めれています。
算定基礎期間 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
全年齢 | 90日 | 120日 | 150日 | |||
就職困難者 | 45歳未満 | 150日 | 300日 | |||
45歳以上 | 360日 | |||||
65歳未満 |
(3)特定受給資格者についての所定給付日数
特定受給資格者にかかる所定給付日数は、次の表のように定めれています。
算定基礎期間 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | —– |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上45歳未満 | 240日 | 270日 | |||
45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
④基本手当の受給期間
基本手当は、失業してから10年、20年経過してから公共職業安定所に出頭しても受給することはできません。原則として、離職の日の翌日から起算して1年(受給期間といいます)の間に受給しなければなりません。なお、所定給付日数が360日の受給資格者は1年+60日、所定給付日数が330日の受給資格者は、1年+30日が受給期間となります。
原則 離職の日の翌日から起算して1年
例外 ●所定給付日数が360日の受給資格者
→離職の日から翌日から起算して1年+60日
●所定給付日数が330日の受給資格者
→離職の日から翌日から起算して1年+30日
その他の求職者給付
上記の基本手当は一般被保険者用の求職者給付です。それ以外の被保険者が失業した場合には、それぞれの被保険者に係る求職者給付が支給されます。
①高年齢求職者給付金
高年齢被保険者が失業した場合には、高年齢求職者給付金が一時的で支給されます。
(1)概要
・高年齢求職者給付金は、高年齢被保険者が失業した場合において、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上であったときに支給されます。
・離職の日の翌日から起算して1年を経過するまでに、管轄する公共職業安定所に出頭し、求職申込をしたうえで、失業していることについての認定を受けます。
・高年齢求職者給付金は一時金で支給されるため、失業の認定及び支給は1回限り行います。
(2)高年齢求職者給付金の額
高年齢求職者給付金の額は、高年齢受給資格者を受給資格者とみなして計算した基本手当の日額の30日分又は50日分になります。
算定基礎期間 | 1年未満 | 1年以上 |
支給日数 | 30日 | 50日 |
②特例一時金
短期雇用特例被保険者が失業した場合には、特例一時金という一時金が支給されます。
(1)概要
・特例一時金は、短期雇用特例被保険者が失業した場合において、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上であったときに支給されます。
・離職の日の翌日から起算して6か月を経過するまでに、管轄公共職業安定所に出頭し、求職も申込をしたうえで、失業していることについての認定を受けます。
・特例一時金は一時金で支給されるため、失業の認定および支給は1回に限り行います。
(2)注意点
特例一時金の場合には、被保険者期間の計算方法が基本手当と異なります。資格取得日の属する月の初日から資格喪失日の前日の属する月の末日まで、ひきつづき短期雇用特例被保険者として雇用されたものとみなし、1暦月中に賃金支払い基礎日数が11日以上ある月を1か月の被保険者期間として計算します。
(3)特例一時金の額
特例一時金の額は、特例受給資格者を受給資格者とみなして計算した基本手当の日額の40日分になります。
③日雇労働求職者給付金
日雇労働被保険者が失業した場合に支給される求職者給付です。日雇いで働くという形態なので、基本手当等のほかの制度とはかなり違った制度になっています。
(1)概要
・日雇労働求職者給付金は、日雇労働被保険者が失業した場合において、原則として、その失業の日の属する月の前2か月間に、その者について印紙保険料が通算して26日分以上納付されているときに支給されています。
・失業の設定は、日々その日について行われます。
[用語]印紙保険料
印紙保険料とは、日雇労働被保険者に賃金を支払うつど、事業主が納付しなければならない保険料です。賃金日額に応じて3段階(第1級176円~第3級96円)にグ文さえています。
(2)日雇労働求職者給付金の日額
日雇労働求職者給付金の日額は、前2か月間に納付された印紙保険料の種類、枚数に応じて7,500円、6,200円、4,100円の3種類のいずれかの額になります。
(3)日雇労働求職者給付金の支給日数
月ごとの日雇労働求職者給付金の支給日数(の限度)は、前2か月前に納付された印紙保険料の枚数に応じて定められています。
印紙の納付枚数 | 支給日数の限度 |
26枚から31枚まで | 13日 |
32枚から35枚まで | 14日 |
36枚から39枚まで | 15日 |
40枚から43枚まで | 16日 |
44枚以上 | 17日 |