第1章 プレゼン資料は「シンプル&ロジカル」でなければならない

レッスン1 スライドは「5~9枚」でまとめる

●社内プレゼンは3分で終わらせる

社内プレゼンで最も大切なことは決裁者の立場になって考えることです。提案内容を彼らが理解しやすく納得できるように伝える。最も迷惑なことは無駄に時間を奪うことです。そのため社内プレゼンは3分で終わらせるのが基本。長くても5分で終わらせます。「5~9枚」を超えるとよくわかならないプレゼンになる。人間が瞬間的に記憶できる数は7±2と心理学でも証明されている。

レッスン2 社内プレゼン資料は「4つのパーツ」で構成される

◆社内プレゼン資料の全体像をつかむ(例として店舗来客数の改善案)

1表紙 2ブリッジ・スライド 3本編スライド(5~9枚)①現状報告(「課題」とその「原因」)②提案(「解決策」とその「効果」)4アペンディックス(別添資料)

社内プレゼンはすべてこのパターンで対応可能です。各項目の役割としては、、

  • ・表紙→次の話題への架け橋として活用するスライドです。端的にプレゼンのテーマを示す、短いタイトル(13文字以内)にする
  • ・ブリッジ・スライド→現状報告と提案のように本編の大きな流れを示すと効果的です。ただし必ず必要なスライドではないため提案内容がごくシンプルなものであれば必要ありません。

◆本編スライドは現状報告と提案で構成する

  • ・本編スライド→どのようなプレゼンでも現状報告と提案の2つのパーツに分かれます。現状報告では第1にどんな課題があるか?を明らかにしたうえで、第2にその課題が生じる原因は何か?を提示します。それを踏まえて提案においてその原因を解消する解決策を提案するとともにその解決策を実施した結果、期待される効果を示します。また本編スライドの最後には提案内容の概要を1枚にまとめた概容スライドを示します。ここで押さえるべき情報が事業実施に必要なコストとスケジュール。これは定型フォーマット化しておくと便利です。この概要スライドを含めて5~9枚にまとめましょう。
  • ①現状報告
  • ■何が課題か? ■その課題の生じる原因は何か?
  • ②提案
  • ■原因を解消する「解決策」 ■「解説策」を実施した「効果予測」

・アペンディックス(別添資料)→本編スライドには盛り込むことができなかったデータや本編スライドの補足説明に必要なデータをストックした資料集です。プレゼン終了後、決裁者などから出される質問・疑問に回答するときにスクリーンに投影します。これに不備があると十分な検討がされていない、決裁するには至らないと判断されてしまいます。

レッスン3 プレゼンは「ワンテーマ」に絞る

◆テーマを絞ってシンプルに

5~9枚のスライドにまとめるためには「ワンプレゼン=ワンテーマ」が基本です。例としてある小売企業で来客数が大幅に減少したため対応策を考える指示があり結果として接客接遇の改善・店舗の清掃・店舗の外装の変更・什器の入れ替えなどの施策を総合的に進めるべきだと結論が出た場合プレゼンはまず一連の施策を総合的に進めることを提案するプレゼンを行います。そして①→②→③→④の順にプレゼンを行う。

  対象 アクション
接客待遇改善 ①研修の実施 店長研修
店舗の清掃 ②清掃の徹底

清掃のルール化

店舗 ③什器の入れ替え

什器デザイン刷新

什器刷新店舗の選定

什器入れ替え実施

④外装変更

外装変更店舗の選定

外装変更店舗の選定

外装の変更の実施

◆一歩ずつ「陣地」を広げる戦略が正解

テーマを小分けにする効果はもうひとつ重要な意味があります。たとえば店舗外装の変更の具体策についてプレゼンしたところ、新しい外装デザインがイメージに合わないと差し戻しになったとしたら、次回はデザインについて再度プレゼンするだけで済みます。もし1回のプレゼンですべてを済ませるならば細部こまかくつかれプレゼン自体が廃止されることにもなりかねません。小分けにすることでスピード間が生まれます。詳細まですべてを決めてからプレゼンしようとするとどうしても時間がかかり決裁者はとまどいます。短いサイクルで次々と決済を取っていったほうがよいです。まず大きな方針で決済を得て、そのうえで詳細についての決済を進めていくかたちです。決裁者はちゃんと検討進めていると安心します。

 

レッスン4 プレゼンのストーリーは1つだけ覚えればOK

◆優れたプレゼンはロジックがシンプルである

この4つの内容が繋がっていればロジックなプレゼンと言えます。今回の例としては、、、とします。

  • 課題=店舗来客数の大幅減少
  • 原因=接客接遇不評
  • 解決策=接客接遇の研修
  • 効果=顧客満足度90%

解説策の提案は必ず「コスト」と「スケジュール」とワンセット。これが社内プレゼンの鉄則です。

 

レッスン5 プレゼン資料は「根拠→結論」を積み上げる

◆必ず結論と根拠はワンセットで示す

ロジカルなプレゼンで重要ものの一つに結論と根拠はワンセットで示すことがあげられます。根拠(データ)→結論をしめすのです。本編スライド3のように顧客満足度調査で得た接客待遇を「根拠」として、その接客待遇を改善することが最優先とするのが「結論」と考えます。

◆鉄壁のロジカルスライド見本と作り方

【トーク例】 店舗来客数の減少への対策についてご提案いたします。

 

【トーク例】 まず現状報告から、、、

 

【トーク例】ご覧のように、今年に入ってから半年で来客数が3分の1に減少しています。至急対策を打つ必要があります。=課題

●表の作り方 挿入タブ→グラフ縦棒→デフォルトのC1~F1を削除+カテゴリ(A列)の名称変更→データラベルの表示で数値を各棒の上に表示

 

【トーク例】なぜ、来客数が減っているのか?毎月行っている顧客満足度調査を見ると年初には90%の満足度だったのが、7月には60%にまで低下しています。顧客満足度を上げる施策を打つ必要があります=原因

●表の作り方 挿入タブ→グラフ折れ線→デフォルトのC1~F1を削除(系列の削除は系列2を右クリックして削除→テーブル列)+カテゴリ(A列)の名称変更→データラベルの表示で数値を各棒の上に表示。

 

【トーク例】ではお客様は何に不満を感じているのか?ご覧のように、接客待遇がお客様の不満足要素のトップになっています。これがわが社の現状です。

●表の作り方 挿入タブ→グラフ横棒→デフォルトのC1~F1を削除(系列の削除は系列2を右クリックして削除→テーブル列)+カテゴリ(A列)の名称変更→データラベルの表示で数値を各棒の上に表示。

 

【トーク例】この現状を受けて、改善案をご提示します。

 

【トーク例】最優先すべき対策として店長を対象とする接客待遇研修の実施をご提案します=解決策

 

【トーク例】接客待遇研修企業であるA社のデータによると店長研修を実施したB社では顧客満足度が30%から80%にV字回復をしたとの実績がございます。

【トーク例】プロジェクトの概要はこのとおり。顧客満足度の低い店舗20店舗の店長を対象に実施します。現在顧客満足度は60%ですが、これを90%にもっていくことを目標とします。コストは30万円です。=効果

 

 

【トーク例】8月1日から5日まで実施し、その後3週間にわたって効果検証を実施します。改めて、検証結果についてご報告させていただきます。

◆ロジカルな資料のイメージ

これは来客数の減少という課題に対する解決策を提案するプレゼンのスライドです。プレゼンのストーリーは次のとおり。まず来客数の減少という課題の原因は顧客満足度の低下にある。この原因を解決する最重要ポイントは接客待遇の改善。だから店長に対する接客待遇研修の実施という解決策を提案する。すると顧客満足度が90%にまで上昇という効果が期待できるというわけです。このストーリーは、なぜ?だから、どうする?すると、どうなる?という因果関係がしっかりとロジカルに組み立てられています。さらに、次のとおり、課題・原因・解決策・効果の根拠(データ)もすべて明確に示されています。

  • 〇課題=来客数の低下←【根拠】来客数低下を示すグラフ
  • 〇原因=顧客満足度の低下←【根拠】顧客満足度低下を示すグラフ
  • 〇解決策=店長に対する接客待遇研修の実施←【根拠】顧客アンケート
  • 〇効果=顧客満足度が90%にまで上昇←【根拠】他社の実績データ

このように課題→原因→解決策→効果というプレゼンのストーリーがしっかりと「根拠→結論」で支えられていることが、ロジカルなプレゼン資料は資料の条件なのです。

 

レッスン6 本編スライドは、最も骨太な要素だけで構成する

◆あれもこれも説明しようとしない

シンプル&ロジカルが社内プレゼンの鉄則です。つまりは

  • 最重要の要素→本編スライド
  • 補足的な要素→アペンディックス

◆決裁者にとって最重要な要素は何か?

決裁者が最も重視するのが顧客の声です。そのため上記例では本編スライドには顧客アンケート調査が盛り込まれています。最も重要なスライドだけを本編スライドに入れることで、はじめて5~9枚のシンプルな資料が出来上がります。

 

レッスン7 2案を提案して採択率を上げる

◆選択肢があると、人は選ぼうとする

採択率を上げるとっておきの方法としては2案を提案する方法です。人間というものは、選択肢が1つしかないともっといいものがあるかもしれないと考える傾向があるからです。逆に、選択肢を示すと、そのなかからよりよいものを選ぼうという思考が働きます。

◆メリット・デメリットを1枚のスライドにまとめる

決裁者が判断しやすくため以下のようにメリットデメリットをまとます。複雑な内容の場合はスライドを1枚ずつ使用こともあります。

A案:店長研修の実施 B案:店舗全員研修の実施

  メリット デメリット
A案 店舗稼働が可能

徹底度:低い

改善までの時間:長い

B案

徹底度:高い

改善までの時間:短い

店舗稼働:なし

売上減:▲30%

◆どちらの案を推すのか明確にする

2案を示す場合は必ず方向性の同じだけど細部に違いのある2案を提案しましょう。例としてテスト販売だけを行う案とプラスしてあたらしい販促活動も行う案の2案を提示する。そうしておけば、万一2案とも否決され、再提案する必要が生じても、テスト販売を行うことは承認されるケースが多いでしょう。陣地を広げることはできるはずです。

またどちらでもいいとうスタンスでプレゼンはしないようにしましょう。どちらの案にも確信がもてずにいるとう印象を与えてしまうため必ず「私は、〇〇の理由によりA案を推します」などと明言するようにしてください。

 

レッスン8 社内プレゼンで絶対に押さえるべき3つのポイント

◆本当に利益を生み出すのかという財務的視点

スライドを作る前に必ず確認しておくことです。これを上司に指摘されれば1からやり直し無駄な時間を過ごすこととなります。

まず第1に提案する事業を実施することによって本当に利益を生み出すのか?という財務的視点です。どのような提案であっても現状よりも収益アップやコストカットなど何らかの財務的なデータが改善されることがゴールでなければならないのは当然です。その際必ず押さえなければならないのはコストと売上・収益予測の2つ。まずコストについては事業を実施するうえで必要なコストを明確に示さなければなりません。おそらく、部署内で事業内容を検討する際にコスト計算を綿密に行っているはずですが、再度精査するべきです。経理の専門者にあらかじめ確認してもらうこともありです。コストについて本編スライドには数字だけ目立つように掲載するだけで、細かい計算根拠については上司に尋ねられた際などアペンディックスにて対応する。

次に売上・収益予測です。提案事業を実施することによりどれだけの利益がもたらされるのか、つまり効果を明示しなければなりません。過去データ(他社、類似事業)を探し出してそのデータを根拠に使うことを第1に検討するべきでしょう。過去データがない場合はリサーチ調査を行い、そのデータを根拠とします。リサーチに予算がかけられない場合はトライアル実施を提案することになります。効果検証のために十分なサンプル数を確保できるミニマム・トライアル(日数・地域・店舗を限定すなど)を提案することが適切でしょう。

◆現場でうまく回るのかという実現可能性

第2のチェックポイントは本当に実現可能となるかです。魅力的であっても現場が成立しなかったりモチベーションを下げてしまうようでは意味を成しません。

◆経営理念に合致した提案であるか?

決済者が提案にまよった場合によりどころにするのが経営理念ですので経営理念に外れたことはしてはいけません。

 

レッスン9 いきなりスライドをつくり始めない

◆まずは一人ブレストでスライド・イメージを磨く

まずは紙とペンを用紙してこれまで企画・事業内容を検討する過程で集まったデータを書き出すことで頭の中を整理することが大事です。

  結論 根拠(データ) ビジュアル(スライドに搭載する写真)
課題 店舗の来客数減少 来客数推移のデータ(過去6ヶ月分) 店舗写真
原因 顧客満足度の低下 顧客満足度調査(過去6ヶ月分)  
解決策

接客待遇研修

・店長研修?

・全員研修?

〇顧客アンケート  
効果 顧客満足度90% 他社の研修導入実績  

◆関係部署のスタッフとブレストする

ブレストの人数もマジックナンバー「7±2」にします。まわりの同意を得てアドバイスとうら取りをするようにしましょう。