経営者が信用組合・金庫と付き合うべき理由+複数の銀行と取引をしておくことのメリットとは?+借入の際に金融機関に提出する書類にはどんなものがありますか?

創業時の会社が信用組合・信用金庫と付き合うべき理由

信用組合・信用金庫という言葉自体は、聞いたことがあると言う方も多いのではないでしょうか。街を歩いていてもたまに見かけます。

ですが、深く掘り下げて理解されている方は、意外と少ないのではないでしょうか。

信用組合・信用金庫は、「何を目的とし、誰の為に、何の事業」を行っているのか?

ずばり、お答えになれますでしょうか?

一般人やサラリーマンであれば、答えられなくても問題はありません。が、起業家・経営者のあなたはそれではいけません。

小さな会社の社長であるあなたがまず取引きを開始すべきは、メガバンクや地銀ではなく、信用金庫・信用組合です。

会社の口座を作ることだけが目的であれば、別にメガバンクでも構いません。ですが、長期短期にかかわらず戦略的に融資・資金調達を考えている場合は、まずは信金・信組との取引(会社口座の開設を含め)からはじめましょう。

事業経営において資金調達・資金繰りは避けては通れない道。

メガバンク(都市銀行)は取引関係がなく、かつ、信用がない中小零細企業は相手にしてくれません。信用保証協会の保証を介さずに銀行から直接借入を行うことを「プロパー融資(低金利かつ長期貸付が多い)」と言いますが、取引ゼロの状態からこのプロパー融資を引き出すことは、まず不可能です。

なぜか?

銀行(特にメガバンクや地銀)は、営利を目的としている会社だからです。儲けが出ないと株主から総スカンを喰らいますから、貸付には慎重になります。

金融事故や貸倒れなどは、絶対に起こしてほしくないわけです。

(本来、銀行はお金の貸付を生業としているのですが、お金と信用が無い会社には、一切お金を貸しません。おかしな話ですが、これが現実です。)

取引が無い企業には一切お金を課さない理由は、ここにあります。

一方の信金・信組は、営利企業ではありません。メガバンクのように儲け「だけ」を考えているわけではありません。

当ページでは、創業・スタートアップ時の会社や中小企業が信用組合・信用金庫と付き合うべき理由とそのメリットについて解説していきます。

それでは、見ていきましょう。

目次(もくじ)

  • 信用組合とは?
  • 信用金庫とは?
  • 大手銀行との業務目的の違いとは?
  • 地域密着型だから親身に対応してくれる?
  • それぞれの融資の特徴
  • 制度融資とは?信用保証協会付き融資について
  • まとめ

信用組合とは?

信用組合は株式会社とは異なり、非営利の金融機関です。組合員の相互扶助を目的に設立されていますので、組合員の利益や経済的地位の向上を一番に考えた運営が行われています。

信用組合では基本的に預金をするのも、融資が行われるのも原則、組合員に限定されています(組合員以外からの預金や組合員以外への融資は制限されています)。

組合員といっても信用組合への出資者であり利用者ですので、特別な加入制度があるわけではありません。

「地域信用組合」であれば、信用組合の営業エリアに住んでいる、または職場がある、あるいは事業を営んでいれば組合員となることができます。

ただし事業者の場合は、事業の種類により事業者規模(従業員数や資本金額)による加入制限がありますので、事前に確認が必要です。

組合員となるためには、信用組合に出資する必要があります。

出資金は預金とは異なりますので、自由に引き出すことはできず、信用組合の事業活動に充てられます。

加入単位は信用組合によって異なりますが、1口単位(数百円から数千円)で1口から加入することができます。また、出資金には、組合の業績に応じて配当がつきます。

信用金庫とは?

信用金庫も、株式会社とは異なり、非営利の金融機関です。

営業地域が一定のエリアに限定されており、会員や利用者、地域の相互扶助を基本理念として、地域社会の発展に寄与するこを目的とした運営が行われています。

信用金庫は会員制度が設けられていますが、会員にならなくても預金など利用できるサービスはあります。

ただし、融資は原則会員のみが対象とされています。会員資格は信用金庫の営業地域に住んでいる、または職場がある、あるいは事業を営んでいることです。

ただし事業者の場合は、「従業員300人以下または資本金9億円以下」と加入制限があります。

信用組合との違いは?

信用組合とよく似ていますが、信用組合と信用金庫では組合員(会員)になるための資格が異なり、信用組合では預金は組合員に限定されていますが、信用金庫では制限はありません。

また、融資が行われる条件も異なります。

融資を受けるためには信用金庫の会員になる必要がありますが、会員にならなくても口座を開設してサービスを受けることができる点では、信用組合よりも利用しやすいと言えます。

信用金庫の会員になるためには、出資する必要がありますが、出資金の額は信用金庫により異なり、一定額(数千円から数万円)以上の出資が求められています。

大手銀行との業務目的の違いとは?

大手銀行と信用組合・信用金庫では、預金や融資など取り扱っている商品内容にほとんど変わりはありませんが、経営理念や業務目的が異なります。

銀行は営利組織ですので、銀行の利用者ではなく会社や株主の利益を第一に考えて運営されています。

営利目的の株式会社となんら変わりはありません。会社が利益を出して株主に利益を還元することが優先されています。

主要な取引先も大企業が多く、東京や大阪など、大都市に本店があり地方に支店があるのが特徴です。

一方、信用組合・信用金庫は非営利の金融機関ですので、会社のオーナーである株主は存在せず、組合員(会員)と地域社会へ還元することが優先されているため、会社の利益よりも組合員(会員)の相互扶助に重きが置かれています。

大手銀行とは異なり、信用組合・信用金庫は、基本的には都道府県に1行本店がある、地域に密着した金融機関です。

主な取引先は営業地域にある中小企業や個人が対象であり、融資においては原則、組合員(会員)に限定されています。

信用組合・信用金庫は、その地域に住む人々のための相互扶助を目的とした地域密着型の金融機関として存在しています。

地域密着型だから親身に対応してくれる?

信用金庫・信用組合は、やはり担当営業さん、職員さんが親切です。

営業地域にある顧客を対象としているため、フットワークが軽く、気軽に会社に通ってくれて資金需要の相談をしてくれたり、書類を届けてくれたり、毎月払う税金を受け取りにきてくれることもあります。

地域に密着している分、属人的な要素が強いと言えます。

ですので、中小企業・個人事業であれば、ひとつは信用金庫・信用組合とお付き合いしていても損はありません。

また、地域密着型金融機関として様々な取り組みが行われています。

例えば、顧客に対するコンサルティングの一環として、助成金などの公的助成制度を提案してくれたり、政府系金融機関や信用保証協会との協調融資を支援しているところもあります。

法人や個人事業主向けのセミナーや講演会、勉強会等を定期的に開催して、事業主同士の意見交換の場として活用しているところもあります。

このような地域への取り組みは、ホームページ上に掲載されますので、口座を作ろうと思っている金融機関のホームページをチェックするのも良いでしょう。

それぞれの融資の特徴

信用金庫・信用組合は、銀行が行っているような大規模な融資を受けるには向いていませんが、地域の利用者を主体にサービスを提供しているため、比較的小さな会社・事業者でも融資をしてもらえる可能性が高いと言えます。

信用金庫・信用組合からの融資は、基本的に「信用保証協会の保証付き融資」になります。

信用金庫・信用組合の融資の特徴は、地域の利用者から資金を預かり、資金を必要とする人に融資を行うことで地域経済の活性化を担うことにあります。

そのため銀行よりも資金量が少ないため、金利が高めに設定されている事があります。

しかしながら、信用金庫・信用組合では、会員になって口座を作り、給与振込用の口座にしたり、公共料金の引き落としをするなどした場合は、通常の金利よりも低い金利で優遇を受けられる場合もありますので、一概に金利が高いとは言えません。

どちらも融資は原則、会員を対象に行われていますが、信用金庫では700万円以内の小口融資については、会員以外の利用者でも利用する事ができます。

また、事業向けの融資以外にも個人向けのローンなど独自の商品を展開しており、利用者の資金ニーズに幅広く対応しています。

なお、会員の資格を満たさなくなった場合は会員を脱退することになりますので、新たに融資を受けることはできませんが、融資中のものはそのまま継続して返済することになります。

制度融資とは?信用保証協会付き融資について

都道府県や市町村などの地方自治体が中小企業や起業家を支援することを目的として行っている融資を制度融資と言います。

制度融資は各自治体が独自で設けている制度ですので、融資の内容や条件はその自治体によって異なりますが、金融機関から直接融資を受けるよりも低い金利で資金調達ができるということが最大のメリットです。

一般的に日本政策金融公庫の創業融資よりも金利が低い傾向にあります。

各自治体が銀行などの金融機関に対して預託金を預けたり、利子の補助を行ったりすることで創業時でも融資が受けやすくされています。

基本的には自治体に窓口が置かれていて、金融機関への融資の紹介が行われます。

申し込みをすると、自治体の担当者との面談や事業計画書の内容などについて営業状態や信用などの審査が行われます。

この融資を受ける際に保証人になってくれるのが「信用保証協会」です。信用保証協会は公的機関であり、金融機関ではありません。

都道府県ごとに設置されており、中小企業や事業者が融資を受ける際に公的な保証人となって、資金調達をサポートすることを担っています。

信用保証協会に保証料を払う必要がありますが、連帯保証人を探す必要がないというメリットがあります。

もちろん信用保証協会でも審査が行われますので、審査が通れば保証を受けることができます。

自治体の審査と信用保証協会の審査がクリアされると融資が決定され、金融機関から貸付が行われます。

このように制度融資は、地方自治体と銀行などの金融機関、そして信用保証協会の3つの機関が協力して、中小企業の発展・振興図ることを目的として設けられていますので、創業時の運転資金や創業後の資金調達を集める手段として、上手に活用したいところです。

まとめ

当ページでは、地域に根ざした身近な金融機関である信用金庫と信用組合について解説をさせていただきました。

いかがでしたでしょうか。

都銀・地銀に比べると利子は多少高くなりますが、地域の会社や住民にはきめ細かいサービスを提供してくれる信用金庫と信用組合を、賢く利用していきたいものですね。

 

 

複数の銀行と取引をしておくことのメリットとは?

資金繰り悪化時の「つなぎ融資」や「追加融資」が下りやすくなる。

いきなりプロパー融資は無理ですから、まずは信用保証協会付き融資で銀行との取引をはじめ、コツコツと返済実績を作っておきましょう。

創業時の方がお金を借りやすいので(自己資金・事業経験などの借入要件を満たせば過去の経営成績は問われないため)、創業期から銀行との取引を開始するのがベストですが、既存の企業も、今からでも決して遅くはありません。

信用保証協会の保証枠の中で銀行と取引を行い(可能であれば複数行)、滞ることなく毎月きちんと返済して銀行との信頼関係を築いておけば、もし今後仮に資金繰りに悪化した場合でも、劇的に融資が下りやすくなります。

また、銀行との取引が長くなれば信用保証協会の保証を付けなくても、金利なども好条件で融資がいずれは可能になります(プロパー融資)。

このとき、取引銀行は多ければ多いほど良いです。

理由は3つです。見ていきましょう。

1.貸し渋りにも耐えられる

例えばA行とB行、2つの銀行から借入を行っていたとしましょう。予期せぬ出来事が起きて資金繰りが悪化、追加融資が必要になった場合、A行が謝絶でもB行が融資OKであれば、なんとか倒産は避けられますよね。

2.協調融資で資金調達がスムーズになる

あるいは、事業拡大で大きな設備投資が必要になった場合。協調融資という形で「A行が○○万円だすのであれば、B行の我々も○○万円出します」と言うケースもあり得ます。いずれのケースも1行のみの取引では融資は受けられません。

3.銀行の吸収合併の影響を受けにくい

現在も銀行の金融再編(統廃合・吸収合併)が続いています。一行としか取引をしておらず、その銀行が吸収合併されたらどうなるでしょうか。吸収する側ではなく、吸収される側だとしたらどうなるでしょうか。

吸収合併後の銀行は以前の銀行とは違います。決済権者も当然変わります。

既存融資の条件変更を一方的に突きつけてきたり、新規融資を受かられなくなる可能性もあります。

複数銀行との取引を行っておけば、このようなリスクも回避ができます。

以上、複数行取引のメリットを簡単にですが理解してもらえたかと思います。

※一口に銀行と言ってますが、メガバンクや都市銀行である必要はありません。信用金庫や信用組合、地方銀行で構いません。

資金繰りが悪化してから銀行に駆け込んでも遅い。

これまでにまったく取引が無い、海の物とも山の物ともつかない会社の社長がいきなり現れて「お金に困っています。お金を貸してください・・・」と窓口で泣きついても、門前払いされます。

当然と言えば当然です(本来は銀行もそのような会社にだってお金を貸さなければなりませんし、それが銀行の使命でもあるのですが、本音と建前、銀行もやはり自社の業績が一番大事なので貸しません)。

銀行は「雨の日に傘を貸さず、晴れの日に傘を貸したがる」とはよく言ったものです。それ以上でもそれ以下でもなく、その通りなのです。

「いやいや、うちの会社は現金も預金も潤沢にあるし、資金繰りも特に問題ないから、銀行からなんて借りなくていいよ」と言う社長さんも、1行も銀行との取引が無い場合は、危険です。先にも言いましたが、今の時代なにが起こるかわかりません。顧問税理士のアドバイスを受けつつ、無理のない範囲内で銀行からお金を借りて、実績を作っておきましょう。前述の通り、お金がある会社には銀行も喜んで貸してくれますので・・・・。

将来に渡って業績も好調で金融機関のお世話になることなどなければ、それに越したことはありません。ですが、そんな会社なんて存在したとしても、数%でしょう。もとい、1%も居ないかもしれません。

別に資金繰りが悪化しなくても、企業を大きくしていきたいと考えているのであれば、将来必ず資金調達が必要になるときがやってきます。

それが1年先か数年先かはわかりませんが、会社を大きくしていきたいのでれば、必ずやってくることがわかっているのですから、銀行との取引自体は今からでも、初めておいて損はありません。

業績が良い会社の多くは顧問税理士も優秀でしょうから、税理士と銀行とのつながりがあると思いますから、まずは顧問税理士に相談してみましょう。

なお、今回は銀行を例にメリットを上げましたが、金融機関との取引ということでいえば、日本政策金融公庫商工中金などでも構いません。

無担保・無保証人の制度も今は充実している

とはいえ、「結局は経営者が連帯保証人にならないといけないらしいじゃん、そんなの嫌だね。」という方もいらっしゃると思います。

そんな方でも公的融資であれば、業績さえ良ければ無担保・無保証人でも融資が下りる制度があります。

個人事業主は結局のところ自分で借金を抱えなければなりませんが、会社の場合は、違います。基本的には「所有」と「経営」が分離しています。

あくまでも、お金を借りるのは経営者のあなたではなく、会社です。銀行と会社の金銭消費貸借契約なのです。経営者であるあなたが連帯保証人にならなくてもお金を借りられるのであれば、やはり金融機関との取引は行っておくべきと言えます。

 

 

借入の際に金融機関に提出する書類にはどんなものがありますか?

企業への貸付を行っている金融機関は数多くありますが(銀行・ビジネスローン、信用金庫・信用組合、日本政策金融公庫など)、融資申請に必要となる一般的な書類は下記のとおりです。

各金融機関によって多少は異なりますが、大同小異です。

融資を受ける場合はこれらの書類は必ず準備しなければならないと考えておけば問題ありません。

追加で提出を求められた場合は、都度、提出していけばOKです。

【必要書類一覧】

  • 借入申込書
    様式は金融機関によって異なります。
  • 事業計画書(創業計画書又は経営改善計画書)
    創業融資の場合は創業計画書、設備資金や運転資金を借りる場合は事業計画書、リスケジュールを申し込む場合は、経営改善計画書を提出します。
  • 決算書
    通常は直近2期分が必要です。金融機関によってさらに遡って求められることもあります。確定申告書、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書など。
  • 試算表
    直近の決算以降に借入の申込を行う場合に必要です。最新の会社の業績を確認するためです。
  • 資金繰り表
    つなぎ資金の為の融資やリスケジュールを申し込む場合に必ず必要になります。創業融資の場合も追加資料として提出しておけば、審査のプラスになります。
  • 見積書
    設備資金を借りる場合は必ず必要。
  • 納税証明書
    個人・法人を問わず税金を納めているかを確認されます。
  • 個人の場合
    ・個人の印鑑証明書
  • 法人の場合
    ・定款
    ・法人登記簿謄本又は履歴事項全部証明書
    ・法人の印鑑証明書
    ・代表者個人の印鑑証明書

【その他、場合によって求められる書類】

  • 不動産の登記簿謄本
    不動産を担保に入れる場合に必要。
  • 売掛金明細書
    ABL融資などの場合。
  • 許認可を証する書類
    許認可が必要な書類を営んでいる場合、あるいは、始める場合に、許認可取得の有無を確認されます。

申込から融資実行までの流れ

STEP1

申込

サービスの流れ

STEP2

面談

サービスの流れ

STEP3

審査・実地調査

サービスの流れ

STEP4

融資の可否の決定

サービスの流れ

STEP5

融資実行

申請から融資実行までの期間

通常、申込から融資実行までの期間は1ヶ月~2ヶ月です。プロパー融資や日本政策金融公庫融資であれば、審査機関が1箇所なので、審査期間は短くなります。

自治体の制度融資の場合、審査機関が3箇所に増えます。銀行、自治体、信用保証協会です。早期に資金が必要な場合は、必要書類の収集・作成に要する時間も含め、余裕をもってスケジュール組むようにしましょう。

顧問税理士がいる場合は、決算書や試算表はすぐに出してくれると思いますので、資金需要が発生した場合は顧問税理士に声を書けていつでも出せるようにしておきましょう。

顧問契約の内容にも依りますが、事業計画書や経営改善計画、資金繰り表の作成、金融機関との取り次ぎを行ってくれるケースもあります。

資金繰りに困った場合、急な資金が必要になった場合は、顧問税理士がいる場合はまず相談されてみると良いでしょう。