株式会社を設立する為にまずは何か始めればよいのでしょうか?
会社設立のファーストステップは「会社の基本事項の決定」です。
- 会社の名前は何にするのか?
- どんなビジネス・事業を行うのか?
- 何人で設立するのか?役員はどうするのか?
- 資本金はいくらにするのか?
- 会社の住所はどうすのるのか? etc
これらの事項が決まれば、必然的にどの書類を準備すれば良いのか、いくらお金を準備すれば良いのかなども自動的に決まってきます。
例えば、会社の商号(目次1)が決まれば、法人実印が作れるようになります。
会社の事業目的(目次2)が決まれば許認可が必要かどうかが判明します。
会社の住所(目次3)が決まれば管轄の公証役場と法務局が決まりますから、申請先もわかります。
役員構成(取締役や監査役が誰で何人かなど)をどうするか(目次8)によって、印鑑証明書の必要通数も変わってきます。
更に税金面でも、事業年度を何月にするかによって、消費税の免税期間や法人住民税の均等割等の額が変わります(目次4)。
資本金の額をいくらにするかで、設立登記申請時の登録免許税も決まります(目次5)。
当ページでは、これらの決定項目一つひとつ丁寧に解説していますので、ぜひ、ご参考にしていただければと思います。
目次【株式会社を作る際に決めなければならない8つの事項】
- 商号 – 会社の名前を決める
- 事業目的 – 会社が行う事業の内容を決める
- 本店所在地 – 会社の住所(所在地)をどこにするかを決定する
- 事業年度 – 具体的な事業年度を決める
- 資本金 – 資本金の額を決定する
- 出資者・出資比率 – 株式会社設立のキーマンとなる発起人について決定する
- 株式譲渡制限 – 株式の譲渡について制限をつけるか否かを決定する
- 機関設計 – 取締役や監査役などの役員をどうするかを決める
1.商号(会社の名前)を決める。-商号は会社の顔!
商号(会社の名前)は、会社の顔ともいわれる大切なものです。 経営・マーケティング面から考えて、
- 覚えやすさ
- 呼びやすさ
- 親しみやすさ
- 主力となる商品イメージや事業内容を連想させるか
- 海外でも通用するか
などなど、 さまざまな角度からじっくりと検討してから決めましょう。
会社法上の規制にも注意しよう!
商号は、基本的には自由に決めることができますが、いくつかの決まり事があります。以下のルールに注意しながら、商号を考えます。
(1)名前の最初または最後に、必ず株式会社という文言を入れる
株式会社ですから、商号中には必ず「株式会社」という文言を用いなければなりません。
(2)使用できる文字
- ひらがな
- カタカナ
- 漢字(常用漢字を含む)
- 数字
- アルファベット
- アラビア文字
- コンマ(,)
- ハイフン(-)
- ピリオド(.)
- 中点(・)
- アポストロフィー(’)など
(3)「支社」「支店」など、会社の一部門を示す文字は使えない
株式会社●●支社、株式会社○○支店などの商号はNGです。株式会社はあくまでも別個独立した法人格を持ちますから、会社の一部門を示すような文言は使えません。
(4)世界的に有名な企業の名前はNG(例:「ソニー」「トヨタ」「ニッサン」など
当たり前ですが、商標権等の侵害になりますし、民事上の損害賠償訴訟リスクも負います。常識の範囲内で商号は決める必要があります。
(5)「銀行」「信託」などの文字は使えない
法律で明確にNGと規定されています。銀行という名前は、銀行業務を行う一定の会社しか扱うことができません。
会社法施行以前は、類似商号(同一の商号、似通った商号)が同一市区町村内で既に登記されている場合は、同一の商号(社名)は使えませんでしたが、 新会社法では、同一市区町村内でも、同一住所でなければ登記できるようになりました。
ただし、新会社法8条2項や不正競争防止法によって、故意に、同じもしくは類似の商号(社名)を使用した場合、 損害賠償請求の訴訟を起こされる場合もありますので、実務上は、法務局できちんと調べておく必要があります。以前ほど、時間と手間は掛かりません。
2.事業目的-どんな事業を行うのかを決める。
商号(会社の名前)を決めたら、次は、会社の事業目的を検討します。会社は、どんな事業を行うのかを定款に記載し、登記をしなければなりません。
この「事業目的」は、商号とならんで登記簿にも記載される最重要事項です。
ステークホルダー(取引先、投資家等)にとって、その会社がどんな事業を営んでいるのかは取引の重要な判断資料となります。
なお、会社設立後すぐに行う事業のほか、将来的に行う事業も含めて記載しておくことをお勧めします。
後で事業目的を追加することとなると、定款変更登記手続に手間と費用がかかってしまいます。
(ただし、すぐに事業を始めないからといって、まったく関連性のない事業目的を意味なく増やしすぎてしまうと会社の事業内容が不明確になり、融資手続などの際にあまりよくない印象を与えてしまう可能性もありますので、注意が必要です)
次に、事業目的の表現についてですが、登記手続上、問題がないような表現に改める必要があります。
※事業目的のサンプル・例はこちら → 定款記載事業目的のサンプル・見本
新会社法においては、事業目的の包括的な記載が従来より認められていますので、以前ほど、細かな表現にとらわれる必要はありません。
ただし、「明確性」「具体性」「営利性」「適法性」がきちんと満たされているかは注意しておきましょう。
- 「明確性」 → 誰が見ても事業内容が明確であること
- 「具体性」 → 具体的でわかりやすいこと
- 「営利性」 → 営利を目的とすること
- 「適法性」 → 法律などに違反していないこと
事業目的案がかたまれば、管轄の法務局で、事業目的の記載文言についての事前確認を行います。
許認可業種を行う場合は必ず管轄官庁に事前確認を!
最後に、事業目的の決定において注意が必要な「許認可手続」についてです。
これから営む事業が、行政の許認可を必要とするかを事前に調べておく必要があります。
許認可の要件として、定款に「○○○○○事業」(例:介護保険法による居宅介護支援事業、一般及び特定労働者派遣事業)などの文言を記載しおかないと許認可を受けれない場合もありますので、 事前に許認可申請窓口で確認をとっておきましょう。
3.会社住所・本店所在地を決める。
会社を設立する場合には、必ず本店所在地を定めなければなりません。
場所については、特に制限はありませんので、自宅、賃貸事務所など、どの住所でも問題はありませんが、できれば実際に会社機能を持たせた場所で登記するようにしましょう。
法務局が実際に実地調査に来るわけではありませんが、役所などからの郵便物も登記した所在地に届きますし、取引先が自社の登記簿謄本を調べたときのことなどを考えると、対外的信用を失いかねません(ここには会社がない、と思われてします可能性があります)。
なお、賃貸物件を本店所在地とする場合は、予め大家さん(貸主)に会社、法人事務所として使用してよいかの確認をとっておくことをお勧めします。
賃貸借契約上、会社、法人事務所としての使用が認められない場合もありますので、事前確認は必須です。
定款記載上の注意点!
本店所在地において、定款上は最小行政区画までの記載に留めることも可能です。
定款には、本店所在地を「兵庫県神戸市」という形までにとどめておき、具体的な番地まで記載しなくても構いません。
※定款に市以下を省略して記載した場合でも、登記申請までに発起人の合議等で最終番地までを決定しておかなければなりません。
将来、「神戸市内」で本店移転を行う場合には、定款変更をする必要がなくなりますので、会社設立後、本店移転の可能性がある場合など事情がある場合は、事務負担の軽減も考えて最小行政区画に留めておくべきでしょう。
4.事業年度を決める!
設立する会社の事業年度を決めます。
日本で最もメジャーなものは「毎年4月1日から翌年3月31日まで」で、国や地方公共団体、大企業によくみられる事業年度です。
なお、事業年度は上記日時にとらわれることなく、自由に設定することが可能ですので、新設する会社の業種・業態に合わせて決めましょう。
素直に3月決算としてもいいですし、個人事業と同じように「毎年1月1日から同年12月31日」と定めることも可能です。
※1月1日からの事業年度とする場合は終期を「同年12月31日」とします。
注意点!
ここで1つ注意が必要なのですが、事業年度を何月に設定したとしても、設立後にその月がきた場合は初年度決算をすることになります。
例えば、3月決算とした場合、その年の2月に会社を設立したとすると、設立当初の事業年度は1ヶ月あまりで終わってしまうような場合です。
設立後の大変忙しい時期に、すぐに決算手続に入らなければいけない状況になってしまいます。
尚、決算手続の煩雑さを勘案し、設立予定会社の、業界・業種の繁忙期を避けるのも1つの手と言えます。
5.資本金-会社の資本金の額を決める!
次に会社の資本金の額を決定します。株式会社は、設立にあたって株式を発行しなければなりません。
原則として、株式の総数が設立時の資本金になります。
資本金は、自己資金、設立後の運転資金、融資の必要性、許認可の必要性、設立後の経営なども考え、妥当な額にしましょう。
一般的には、資本の額が多いほど信頼度はアップする言われていますので、ある程度の資本金を用意できる場合は、最初にできるだけ高額設定にしておくのも、ビジネスの観点から見れば得策かもしれません。
ただし、消費税の免税を受けるためにも、資本金は1000万円以下に抑えて置いた方が有利だとも言えます。
資本の額を決める際は、対外的信用、節税面などあらゆる面を考えて決定します。
資本金の額の決め方については、当サイト内のこちらのページも是非ご参考ください。
6・出資者(発起人)を決める!
誰がいくら出資するのかを決めます。出資金額は「1株の金額×株数」で計算します。
一般的には1株の金額を5万円としたり、資本の額が少ない場合は1万円とする場合が多いです。
なお、出資額に関しての制限はありませんが、自分以外にも出資者がいる場合には注意が必要です。
出資額の割合によっては、会社の重要事項(取締役の選任・解任など)を自分だけでは決められなくなります。お客様の出資額は総資本の1/2以上、できれば2/3以上の出資とするのが望ましいです。
(株主総会で重大な決議をする場合、全株式数の2/3以上を持つ株主の同意が必要です。もし、自分が代表取締役となり、全株式の25%を占めていたとしても、他に、Aという全株式数の75%を占める大株主がいるとすれば、重大な議決をする場合、そのAが「NO」といえば、その議決は否定されてしまいます)
7.株式譲渡制限-ほとんどの中小会社は株式譲渡制限会社
株式譲渡制限の有無について決定します。
新会社法では、株式譲渡制限をつけて非公開会社となれば、取締役などの任期も10年に伸ばせますし、非公開会社にだけ認められている条文も多くあります。
将来は株式公開を目指す場合でも、設立当初は小規模事業で始め、かつ、株式を公開する特別な理由がないのであれば、全ての株式に譲渡制限を付けて置くことをお勧めします。
用語解説!公開会社と非公開会社(株式譲渡制限会社)とは?
会社法での「公開会社」とは、その株式会社が発行する株式のうち1株でも譲渡自由な株式がある株式会社のことを言い、株式を上場している株式会社のことではありません。
「公開会社以外の会社(株式譲渡制限株式会社)」とは、その株式会社が発行するすべての株式が譲渡制限株式である株式会社のことを言います。
8.機関設計
会社の機関設計を行います。
株式譲渡制限会社では、取締役会及び監査役の設置が任意になり、取締役を1人のみとすること、役員任期を10年とすることも可能です。
新会社法では、株式譲渡制限株式会社については、最低限の機関設計のみを規定し、その他は企業の発展段階に応じて様々な機関設計の選択ができるようになっています。
<新会社法における機関設計のルール>
株主総会
すべての株式会社で必ず設置。
取締役
すべての株式会社で最低1人は必要。ただし、取締役会を設置する株式会社では3人以上。
取締役会
株式譲渡制限会社では任意設置。それ以外の株式会社では必ず設置。
監査役
株式譲渡制限株式会社では任意設置。ただし、取締役会を設置する会社では原則設置。
監査役会
大会社(株式譲渡制限株式会社、委員会等設置会社を除く)では必ず設置。取締役会を設置しない場合は設置できない。 ※大会社とは、資本金が5億円以上または負債総額が200億円以上の株式会社のことを言います。
委員会
監査役を設置する会社では、設置できない。会計監査人を設置しない場合は設置できない。
会計監査人
大会社では必ず設置。大会社以外の会社では任意設置。
会計参与
すべての株式会社で任意設置。大会社以外の株式譲渡制限株式会社が取締役会を設置する場合、会計参与を設置することで監査役に代えることができる。
<中小株式会社の機関設計のパターン例>
- 株主総会+取締役 (株式譲渡制限会社のみ可能)
- 株主総会+取締役+監査役 (株式譲渡制限会社のみ可能)
- 株主総会+取締役+監査役+会計監査人 (株式譲渡制限会社のみ可能)
- 株主総会+取締役+会計参与 (株式譲渡制限会社のみ可能)
- 株主総会+取締役+監査役+会計参与 (株式譲渡制限会社のみ可能)
- 株主総会+取締役会+会計参与 (株式譲渡制限会社のみ可能)
- 株主総会+取締役会+監査役 (従来の株式会社)
- 株主総会+取締役会+監査役+会計参与
- 株主総会+取締役会+監査役+会計監査人
- 株主総会+取締役会+監査役+会計監査人+会計参与
※ 株式譲渡制限株式会社では、1~5のように取締役会を置かないことも可能。
※ 株式譲渡制限株式会社では、1、4、6のように監査役を置かないことも可能。(6のパターンは大会社以外の株式譲渡制限株式会社のみ可能)
※ 1のパターンの場合、最もシンプルな形として、株主総会のほか、取締役1人のみの機関設計も可能となります。
このように、ケースバイケースの柔軟な機関設計ができるようになりましたので、企業の発展段階に応じて機関設計を変更していくといったことも可能になります
用語解説!株式会社の機関とは?
株式会社は法人ですが、実際に手足や頭があるわけでなく、実際に株式会社の意思を決定する人やその意思決定を実行に移すための執行者が必要となります。
この意思決定をする人や、執行者のことを、株式会社では機関と呼びます。