債権者保護手続きとは?+株式会社の存続期間の廃止手続きについて

債権者保護手続とは?

会社が資本金や資本準備金の額を減少したり、合併や分割等の組織再編や組織変更を行うなど、会社の債権者に対して影響を及ぼす可能性のある行為を行う場合は、予め債権者に異議を述べる機会を与えなければなりません。

会社の債権者とは、例えば融資を受けている銀行や金融機関であったり、仕入先であったり、会社に対して債権を持っている人、つまり会社にお金を貸している人とイメージすれば分かりやすいかもしれません。

債権者からすると会社を信用してお金を貸しているのに、黙って資本金額を減らされたりすると、何らかの不利益を被る可能性もあります。

ですので、例えば資本金額を減少するのであれば予めきちんと「資本金額を減少しますので、異議があれば申し出てください」という機会を与える手続きが必要になるのです。

この手続きの事を「債権者保護手続」と言います。

では、「債権者保護手続」とは具体的にどのような手続きを行うかというと、

  • 官報に公告をすること
  • 個別催告をすること

の2点です。

官報とは国が発行している新聞のような物です。

官報には、法律の制定や改正などの情報、政府が決定した事項や法令により記載することが定められている事項が載っていますが、基本的には官報販売所や国立国会図書館、定期購読をしている公共機関などにしか設置されていないため、実際に見る機会は少なく、一般的に知られている物ではありません。

この官報に「異議があればいついつまでに申し出てください」と掲載して、広く一般に告知することを「公告をする」と言います。

個別催告とは、官報とは別に会社が把握している債権者には個別に通知することを言います。

官報が広く一般に向けて通知する行為に対して、個別催告は特定の個人や法人に対して会社から直接通知する行為です。

この債権者保護手続を要する手続きは会社法で定められていますが、会社が「解散」する際には官報に必ず公告をしなければなりません。

解散の為の公告機関は2ヶ月以上必要です。

官報には「会社が解散しましたので、異議がある債権者の方は公告掲載の翌日から2ヶ月以内に申し出てください」と掲載されます。

よく「債権者がいないので公告をしなくていい」と思われている方もいますが、会社が把握していない債権者がいるかも知れないので、万が一に備える意味でも必要な手続きです。

官報へ解散公告を掲載するには、最寄りの官報販売所に申し込みます。インターネットから申し込みができる他、郵送やFAXでも申し込みできます。

掲載料金は、1行当たりの単価?行数で計算されますが、解散公告であれば3万5千円~4万円前後になります。

申し込み後、解散公告が掲載されるまでには約2週間掛かりますので、スムーズに解散手続きを行うには逆算してスケジュールを調整する必要があります。

なぜなら官報には債権者に対して「公告掲載の翌日から2ヶ月以内に申し出てください」と掲載されますので、例えば5月1日に会社が解散した場合でも、公告掲載日が5月15日であった場合は、5月15日の翌日から2ヶ月を経過した日以降でないと清算結了ができない事になるからです。

債権者保護手続が終了していない以上は、会社の清算手続きが終了していない事になりますので、法務局へ清算結了の登記を行うことはできません。

少しでも早く解散を失くしたいと考えているのであれば、予め掲載日を確認して手続きを進めるようにしましょう。

解散公告を掲載して債権者が所定の期間内に何も言ってこなければ、解散することが承認されたことになりますが、もし債権者が異議を述べた場合は、債権者に対して弁済をするまたは弁済に相当する担保を提供する、若しくは、信託会社等に財産を信託しなければなりません。

 

 

株式会社の存続期間の廃止手続きについて

株式会社は、定款で「存続期間」を定めることができます。

「存続期間」とは、その名の通りで会社が存続する期間であり、存続期間が満了すると会社は解散することになります。

株式会社を設立したのになぜわざわざ存続期間を設定するのかと思うかもしれませんが、例えば一定の目的のためだけに会社を設立した場合、その目的が達成されたことで会社を継続する必要がなくなるので解散するといった事由があります。

現在では、複数の企業が共同出資して設立する株式会社(合弁会社)など、特殊な事由がない限り「存続期間」を定めることはありません。

定款には「存続期間」の定めの規定があり、存続期間の定めは登記事項ですので、会社の登記事項証明書(登記簿謄本)にも下記のように記載されています。

「存続期間」会社設立の日から満●年
「存続期間」平成●年●月●日まで

存続期間後も会社を継続したい、存続期間を廃止した場合は、株主総会により存続期間を廃止する決議を行い、管轄の法務局へ変更登記申請を行うことで廃止することができます。

<株主総会議事録記載例>

第1号議案 定款一部変更の件

議長は、定款第●条(存続期間)を廃止し、以下を1条ずつ繰り上げたい旨を述べ、その理由を詳細に説明し、その可否を議場に諮ったところ、満場一致をもって原案どおり可決確定した。

<存続期間の廃止に必要な書類>

  • 変更登記申請書
  • 株主総会議事録

<存続期間の廃止に必要な費用>

  • 登録免許税:30,000円

すでに存続期間が経過している場合は、何の手続きを行わなくとも会社が解散している状態になります。

ですので、引き続き会社を継続させた場合は、まずは会社を継続させる手続きを行うことになります。

株主総会の特別決議により存続期間の廃止・会社の継続の決議を行い、合わせて解散の登記・清算人の就任登記も行う必要があります。

また、会社が解散したときに役員(取締役・代表取締役・監査役)は法務局への職権で抹消されていますので、改めて役員選任を行うなど、存続期間が経過した場合は手続きが煩雑になりますので注意してください。

社歴のある有限会社でも会社を設立した際に存続期間(旧 存立時期)の定めを設定している場合があります。

登記簿謄本を確認して始めて気付く事もありますので、まずは登記簿謄本を確認されることをお勧めいたします。