労働管理その他の労働に関する法令各種

労働管理やその他の労働に関連する法令をまとめました。

 

 

 

 

職業安定法

職業安定法は、職業紹介、労働者募集、労働者供給などについてまとめられている法律です。

①職業紹介

(1)公共職業安定所

公共職業安定所は、職業紹介、職業指導、雇用保険その他の職業安定法の目的を達成するために必要な業務を行い、無料で公共に奉仕する機関とする、と規定されています。

(2)地方公共団体の行う職業紹介

地方公共団体は、無料の職業紹介事業を行う旨を、厚生労働大臣に通知して、無料の職業紹介事業を行うことができます。→無料の職業紹介事業を行う地方公共団体を、「特定地方公共団体」といいます。

(3)民間の事業者の行う職業紹介

公共職業安定所及び地方公共団体以外に、民間の事業者も職業紹介を行うことができます。有料で行う職業紹介事業と、無料で行う職業紹介事業に大別できます。

①有料職業紹介事業

有料の職業紹介事業を行おうとする場合には、厚生労働大臣の許可をうけることとされています。許可後の最初の有効期間は3年、更新後は5年です。

②無料職業紹介事業

無料の職業紹介事業を行おうとする場合には、次の種類に応じて厚生労働大臣の許可を受けること又は厚生労働大臣への届出を行うことが必要です。

無料職業紹介事業

厚生労働大臣の許可が必要です。許可後最初の有効期間は5年、更新後は5年になります。

学校などの行う無料職業紹介事業

特別の法人の行う無料職業紹介事業

厚生労働大臣への届出が必要です。

 

②労働者募集・労働者供給

(1)労働者募集

労働者を募集する場合に、被用者以外の者に労働者募集を行わせることを委託募集といいます。報酬を与えて労働者の募集をさせる場合には、厚生労働大臣の許可が必要で、その報酬額については、あらかじめ、厚生労働大臣の認可を受けることとされています。報酬を与えずに委託募集を行う場合には、厚生労働大臣に届け出ます。

(2)労働者供給事業

供給元の支配下にある労働者を、供給契約に基づき供給先にて使用させる事業を労働者供給事業といいます。ピンハネ防止等の観点から原則禁止されていますが、労働組合などが厚生労働大臣の許可を受けた場合には、無料の労働者供給事業を行うことが認められます。

 

 

 

労働者派遣法

①労働者派遣事業の許可

労働者派遣事業を行おうとする場合には、厚生労働大臣の許可を受けることとされています。許可後最初の有効期間は3年、更新後は5年です。

[用語]紹介予定派遣

職業紹介を予定した派遣のことを紹介予定派遣といいます。まずいったん派遣し、その派遣期間中、会社は労働者を、労働者は会社をお互いにチェックします。問題なければ派遣期間終了後、正社員などとして採用するシステムです。会社側も労働者側も採用する、あるいは採用されることに関するリスクを軽減できます。

②派遣禁止業務

派遣業務は、原則として、業務の種類にかかわらず、自由に行うことができます。ただし、一定の業務については、労働者の保護などの観点から派遣事業を行うことが禁止されています。

[派遣禁止業務]

●港湾運送業務 ●警備業務 ●建築業務 ●医療関係業務

 

③労働者派遣できる期間

「派遣就業の場所ごとの制限」と「派遣労働者ごとの制限」の2種類の規定によって、労働者派遣できる期間が規定されています。

(1)派遣就業の場所ごとの制限

労働者派遣はいつまでも続けていいものではありません。正社員の就業を阻害しないことなどを考慮して、派遣就業の場所ごとに、労働者派遣の期間は、原則として3年までとされています。ただし、所定の用件を満たすことにより、派遣期間を延長することができます。

・原則 派遣可能期間は3年

・派遣可能期間の延長 派遣先は派遣可能期間が終わる1ヶ月前までに、過半数労働組合等(労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者)の意見を聴いて、派遣可能期間を延長することができる。

(2)派遣労働者ごとの制限

同一の組織単位(会社内の「課」などです)における同一の派遣労働者の受け入れは、3年までとされています。

3年経過後、さらに3年延長する場合の要件(過半数労働組合等への意見聴取)

  • ・同じ人について、3年を超えて同じ課への派遣は×
  • ・別の人の同じ課への派遣○
  • ・課が異なれば、同じ人の派遣○

[違法な派遣の場合の労働者の雇用]

派遣先が、派遣禁止業務に従事させたり、派遣可能期間の規定に違反して派遣を受けたりした場合(違法な労働者派遣があった場合)には、その時点で、派遣先から派遣労働者に対し、同一の労働条件で労働契約の申し込みがあったものとみなします。→雇うことになります。

 

④教育訓練等

派遣元(派遣会社)は、派遣労働者に対する計画的な教育訓練や、希望者へのキャリアコンサルタントを実施しなければなりません。

 

 

 

 

~高年齢者雇用安定法~

高年齢者雇用安定法では、高年齢者の雇用が安定するように、60歳までの雇用義務、65歳までの継続雇用などの措置について規定されています。大雑把にいうと、65歳までの労働者を雇用することを求めています。

①定年年齢

定年年齢を定める場合には、60歳を下回ることはできません。ただし、高年齢者が従事することが困難であると認められる業務に従事している労働者については、60歳未満の定年を定めることができます。

  • 原則 60歳を下回ることはできない
  • 例外 坑内作業の場合には下回ってもよい

②高年齢者雇用確保措置

(1)高年齢者雇用確保措置

65歳未満の定年の定めをしている事業主は、65歳までの雇用を確保するため、定年の引き上げ、継続雇用制度の導入又は定年の定めの廃止の3つの措置のいずれかを講じなければなりません。義務規定です。

(2)継続雇用制度の対象者

従来は、労使協定により基準を定めた場合には、継続雇用制度の対象者を限定することを認めていましたが、平成24年改正により、この規定は廃止され、原則として、全員を対象として制度とすることとされました。

(3)継続雇用制度の対象者が雇用される企業の範囲

平成24年改正で、継続雇用制度の対象となる高年齢者が雇用される事業主の範囲が、いわゆるグループ企業まで拡大されました。定年後に、グループ企業で継続雇用した場合も、継続雇用制度として認められます。

 

 

 

 

~障害者雇用促進法~

障害者の雇用を促進するために、事業主などには障害者の雇用義務が課せられています。その雇用義務を果たしていない場合には、ペナルティを課すこととしてます。逆に、義務化されている雇用率を超えて障害者を雇っている場合には、超過人数1人につき月額27000円を支給します。

①障害者雇用率

(1)障害者雇用率

事業主は障害者雇用率以上の人数の身体障害者又は知的障害者を雇用しなければなりません。

雇用しなければならない障害者の人数=労働者の数×障害者雇用率

障害者雇用率
一般事業主 100分の2.0
特殊法人 100分の2.3
国・地方公共団体 100分の2.3
一定の教育委員会 100分の2.2

※業種によっては障害者が雇用できない場合もありその場合は障害者雇用率は軽減される。

(2)重度障害者の特例

重度身体障害者又は重度知的障害者である労働者については、その一人をもって

2二人の身体障害者又は知的障害者である労働者に相当するものとみなします。

②障害者雇用調整金・障害者雇用納付金

障害者雇用率を超えて障害者を雇用している場合には障害者雇用調整金を支給します。障害者雇用率を満たしていない場合には、障害者雇用納付金というペナルティを徴収します。これらの障害者雇用調整金の支給及び障害者雇用納付金の徴収は、実際には、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が行います。

(1)障害者雇用調整金

障害者雇用率を超える事業主に対しては、超過人数1人当たり月額27000円の障害者雇用調整金を支給します。

(2)障害者雇用納付金

障害者雇用率に満たない事業主からは、不足人数1人当たり月額50000円の障害者雇用納付金を徴収します。

※障害者雇用調整金、障害者雇用納付金の規定は、100人以下の労働者を雇用する事業主には適用しないことになっています!

 

 

 

 

~労働契約法~

①労働契約の原則

労働契約は、対等の立場で労使双方の合意に基づき、締結、成立あるいは変更すべきことが明記されています。一般に、「労働契約の合意の原則」といわれています。労働契約の形は問いません!口頭でも成立する。労働契約の内容はできる限り書面で確認すべきとされています。

②就業規則との関係

(1)労働契約の変更

労働契約を変更する場合も、労使双方の合意によることが原則です。合意がなければ、就業規則を変更することにより、労働条件が、労働者の不利益になるように変更することなども、原則としてはできないのですが、「使用者が変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が合理的なものであるときは」は、労働契約の内容である労働条件は、変更後の就業規則に定めるところによるものとされます。つまり就業規則の内容を合理的な内容で変更した場合には、その変更内容が個々の労働条件に反映されることになります。

(2)就業規則違反の労働契約

就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とされます。無効となった部分は、就業規則で定める基準に引き上げられます。「部分無効自動引き上げ」という考え方です。簡単にいうと、就業規則のほうが労働契約より強いということを明記しています。

③労働契約の継続と終了

近年、懲戒や解雇などをめぐる個別労働関係紛争がぞうかしています。不当な出向、懲戒、解雇を防止するために、出向、懲戒、解雇につき、使用者が権利を乱用したものとみとめられる場合には、それらの出向、懲戒、解雇は無効とされます。

 

 

~男女雇用機会均等法~

 

①差別の禁止

(1)性別を利用とする差別の禁止

性別を理由として、募集・採用から定年・退職・解雇まで差別することを禁止しています。

  • ●募集及び採用
  • ●配置(業務の配分及び権限の付与を含ます)、昇進、降格及び教育訓練
  • ●住宅資金の貸与などの権利厚生
  • ●職種及び雇用形態の変更
  • ●退職の推奨、定年及び解雇並び労働契約の更新

(2)性別以外の自由を理由とする差別の禁止

表面上は性差別になっていなくても、実質上は差別になっているということがあるため、意味なく身長、体重、を募集採用とした場合や転勤などを昇進内容に加えるなどです。

 

②セクシャル・ハラスメントの防止

(1)セクハラの防止事業主は職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により、労働者が不利益を受け、又は就業環境が害されないよう必要な措置をこうじなければなりません。対価型や環境型セクハラなど分類されている。

③紛争解決

性差別に関する紛争解決方法が3種類あります。

(1)自主的解決

事業主は、労働者からの苦情の申し出を受けたときは、苦情処理機関に処理をゆだねるなどの自主的解決を図るように努めなければなりません。

(2)都道府県労働局長による援助

当事者の双方又は一方から援助を求められたときには、都道府県労働局長が当事者に対し、必要な助言・指導または勧告をすることができます。

(3)調停

当事者の双方または一方から調停の申請があった場合で必要があると認める場合には、紛争調整委員会に調停を行わせるものとされています。この場合には、調停委員による調停が行われます。

 

 

 

 

~育児介護休業法~

①育児休業・介護休業の定義

(1)育児休業

育児休業とは、労働者が、その子を養育するためにする休業をいいます。

※実際には、原則として、1歳までの子を養育するための休業が該当します。

(2)介護休業

介護休業とは、労働者が、要介護状態にある対象家族を介護するためにする休業をいいます。

  • [要介護状態]
  • 負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいいます。
  • [対象家族]
  • ①配偶者、父母、子、配偶者の父母
  • ②祖父母、兄弟姉妹、孫

②育児休業・介護休業の取得

(1)育児休業・介護休業の取得

労働者は、事業主に申し出れば育児休業、介護休業を取得することができます。事業主は、労働者から育児休業の申し出又は介護休業の申し出があったときは、原則として当該申し出を拒むことができません。申し出でOK!事業主の承認などは必要ありません。

(2)育児休業・介護休業の期間

育児休業は、原則として、子が1歳に達するまでの間取得できます。介護休業は同一の対象家族について3回、通算93日まで取得することができます。

 

③子の看護休暇

子供はすぐに熱を出したりします。子供が小さいうちは、看護のために会社を休まなければならないというこもたびたびあるのが普通ではないでしょうか。そういった場合の休暇を取得しやすくするために、「子の看護休暇」の制度が法制化されています。

(1)概要

小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、その事業主に申し出ることにより、一の年度において5労働日を限度として、負傷し、もしくは疾病にかかった子の世話又は疾病の予防を図るために必要な子の世話を行うための休暇を取得することができます。

(2)事業主の義務

事業主は、労働者から子の看護休暇の申し出があったときは、原則として申し出を拒むことができません。

 

 

~労使関係に関する法律~

①集団的労働関係

労働者と使用者の関係を労働関係といいます。労働基準法をはじめとするほとんどの法律は、個々の労働者と使用者の間の関係を規定しています。この個々の関係を個別的労働関係といいます。それに対して、労働者の団体(労働組合など)と使用者の間の関係を集団的労働関係といいます。

②労働組合法

(1)動労組合の定義

「労働組合」とは、次の2つの定義に当てはまる団体又は連合団体をいいます。

●労働者が主体で自主的であること

●労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的としていること

(2)不当労働行為の禁止

事業主は次の行為(不当労働行為)をしてはなりません。

  • ●労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、もしくはこれを結成しようとしたこと又は労働組合の正当な行為をしたことを理由に解雇などの不利益な取り扱いをすること
  • ●労働組合に加入せず、又は労働組合から脱退することを雇用条件とすること
  • ●団体交渉を拒むこと
  • ●労働組合を結成し、もしくは運営することは支配し、もしくはことれに介入すること、又は経費の援助を与えること
  • ●労働委員会などへの申し立てをしたことなどを理由に解雇などの不利益な取り扱いをすること

(3)免責

①刑事について

労働組合の団体交渉その他の正当な行為は、刑罰の対象にはなりません。ただし、いかなる場合も暴力の行使は認められません。

②民事について

使用者は、正当なストライキなどについては、労働組合又はその組合員に対し損害賠償を請求することができません。

(3)労働協約

①労働協約の効力

労働組合と使用者またはその団体との間の労働条件その他の冠する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによってその効力を生じます。

②労働協約の有効期間

労働協約の有効期間は定めても定めなくてもOKです。定める場合には、有効期間は3年を超えることはできません。3年を超える有効期間が結んだものは3年の有効期間の定めをしたものとみなされます。有効期間の定めをしない場合には、90日前までに相手方に文書で予告すれば、労働協約を解約することができます。

 

③労働関係調整法

(1)争議行為の届出

争議行為が発生した場合あるいは発生する場合には、当事者は届け出又は通知をしなければなりません。通常は発生した段階で直ちに届け出をしますが、公益事業については事前に通知します。

①通常の場合

争議行為(ストライキなど)が発生したら、直ちに労働委員会又は都道府県知事に届出なければなりません。

②公益事業の場合

公益事業で争議行為をするには、少なくとも10日前までに労働委員会及び厚生労働大臣または都道府県知事に通知しなければなりません。

[公益事業とは]

  • ●運輸事業
  • ●郵便、新書又は電気通信の事業
  • ●水道、電気又はガスの供給の事業
  • ●医療又は公衆衛生の事業

(2)解決方法

労働関係調整法に規定されている争議行為の解決方法には3種類あります。

幹旋
幹旋員により行われています。当事者間を解決に努めます。
調停 調停委員会により行われます。調停委員会は、調停案を作成して、その受託を勧告します。
仲裁 仲裁委員で組織される仲裁委員会により行われます。仲裁裁定は、労働協約と同一の効力を有します。