あなたの文章は伝わってる?(実用文について)

第1章 伝わる文章について

 

・メールやSNSで文章で書く機会は増えたのに、文章力がつかないわけ

→短いメッセージしか書かないから、文章を書く力が落ちる。

 

・つぶやきは書けるのに、なぜまとまった文章は書けないの?

→まとまった文章を書くには、「型」と「流れ」が必要。

 

・文章によって、目指すゴールが違う!

文章は大きく分けると「物語文」「説明文」になります。普段の生活で必要な文章は、説明文になります。

説明文の多くは「実用文」です。実用文とは手順や考えを実質的に伝えるための文章。例として企画書・レポート・マニュアルなどです。

単に読んで理解して、行動を起こしてもらうための文章力を身に着ける。

<実用文の種類は4つ分かれる>

  • 提案する・・・企画書/提案書(型1)
  • 説明する・・・報告書・連絡文・謝罪文(型2)
  •        レポート(型4)
  •        紹介文・推薦文(型5)
  •        ブログ・エッセイ(型6)
  •        自己PR文・エントリーシート(型7)
  • 依頼する・・・勧誘文/依頼文/指示書(型3)
  • 教える・・・テキスト/マニュアル

 

 

第2章 200字の法則で、読ませる文章を書く!

200字とは、1段落にあたります。1段落で適格に自分の考えを伝える。「200字の法則」をしっかり習得すると基礎が固まる。

 

 

1、伝わる文章って、どんな文章?

伝わる文章を集約すると3つの性質を持っています。

  • ①誰に向けてかいているのかが明確な文章
  • ②論理的に書かれている文章
  • ③わかりやすい文章

②の論理的に書くとは・・・

「事実」と「意見」だけで文章を書くということです(事実と意見以外として~したい/~したくない/悲しいなどの自分の気持ちがある)。論理的な文章では、学校の感想文のような感情を書くのではなく、意見を書き、意見を支えるものとして事実を書きます。

 

<意見と事実と気持ちの違い>

(気持ち)個人内の感情。主観的なもの。根拠はなくてもいい。「~したい、うれしい、楽しい、悲しい、さびしい」

(事実)真偽が確かめられること「なぜならば~だからだ」

(意見)根拠をともなった考え。「主張」ともいう「~に賛成だ、~に反対だ、私は~だと思う」

 

 

2、まずは1段落を伝わる文章にする!

1段落の文章は、字数でいうとだいたい200字くらいになります。200字とは、400字詰めの原稿用紙の半分、パソコンソフトのワードで1ページを40字25行でレイアウトするとたった5行です。200字ではたくさんの話題を入れることはできません。ですから1段落の文章には、ひとつの話題について書いていきます。日常で書かなければならない文章は、たいてい1段落の文章で間に合います。忙しい現代人は200字を読むのが限界。

 

 

3、実用文のパターンは決まっている!

「提案」「報告」「勧誘」「お願い」この4つは実用文の中でも使用頻度が高い。それぞれに展開パターンがあるので、パターンを覚えれば楽に実用文が書くことができます。

 

①提案文パターン(新プロジェクトの立ち上げの提案)

ダメな例文(106字)

新プロジェクトを立ち上げてワークを開発したいと思います。まず、ワークのプログラムを立案して、その後、トライアルという順序で進めるので、何人かのグループを作ります。ワークは、いい人間関係を築くというのがテーマです。

→簡潔に見えてスラスラ読むことができますが具体的なことは何ひとつ書かれていません。わかった気にさせておいて、何もわからないというたちの悪い文章です。「ワーク開発」と言われても、何のワークなのかがわかりません。そのため開発プロセスのイメージがわきません。グループの構成人数もわからないので、規模も検討がつきません。いい人間を築くことがテーマとありますが、どんな人間関係改善にアプローチしているのかがあいまいです。

 

伝わる例文(227字)

(最初)良好な人間関係を保つことは難しいものです。そこで職場の人間関係を良くするためのワークの開発提案します。(真ん中)このプロジェクトは、開発グループと実践グループで構成し、各グループがワークのプログラムを立案します。そのプログラムにしたがって、実践グループがトライアルをします。その結果によって、プログラムを改善していくという流れです。(最後)ぜひ、このプロジェクトをスタートさせたいと思います。ご協力をお願いいたします。

(構造)

  • コンセプト・・・このプロジェクトの趣旨は何かを伝える
  • 構造とプロセス・・・プロジェクトの構成とその流れを伝える
  • ダメ押し・・・提案全体を繰り返して締めくくる

 

(最初)「コンセプト(もっとも伝えたいこと)」で「難しい人間関係を良好に保つワークを開発したい」という提案の意図を書いています。提案者の意図を理解できるので、ワークの対象者のニーズもイメージできます。

(真ん中)の部分は「構造」です。構造はメンバーの階層や、お互いの関係を示すときに使うパターンです。ここでは、プロジェクトメンバーがどのように構成されるかについて書いています。さらに、このプロジェクトがどのように進んでいくのかについても書いています。これを「プロセス」と呼びます。進め方がわかると安心感もあります。

(最後)の部分では、プロジェクトへの協力をお願いして、ダメ押しします。

 

②報告文のパターン(講演会開催の報告)

ダメな例文(119字)

12月12日に、山田春夫先生の後援会を開催しました。講演会では、タブレットをどのように使うかや、どうすれば有効に使えるかなどについて話していました。講演会に参加している人たちも、タブレットのことに興味津々だったようで、とても盛り上がりました。

→西暦や年号が入っていないので、いつの12月12日かわからりません。また先生の肩書や所属先がないのでどの山田先生かわかりません。講演会の話の要点がまとまっていないので、山田先生が主張したかった点がわかりません。様子を伝えたいなら多くの人がメモを取りながら、多くの人が積極的に質問していましたなどイメージできる文章を入れたいところです。

伝わる例文(236字)

(最初)2013年12月12日、港区のイキイキホールに早稲田大学准教授の山田春夫先生をお招きして、「タブレットが教室に入ってくると何が変わるか」というテーマで講演をしていただきました。(真ん中)お話しの要点は以下の通りです。(1)これから勉強の道具としてタブレットが導入されるようになる。(2)教室内だけでなく、家庭でもタブレットを使ってべんきょうするようになるだろう。(3)タブレットをどのように活用するかがポイントになるだろう。(最後)以上、タブレットの動向について詳しいお話を聞くことができ、参加者にも好評でした。

  • コンセプト・・・この報告の趣旨は何かを伝える
  • 構造とプロセス・・・内容の要点を拾って伝える
  • ダメ押し・・・報告全体を繰り返して締めくくる

→最初の部分は、この報告の概要を書いています。いつ、どこで、誰が、どんなテーマで何をしたのか、を最初に伝えることでこれから報告したい内容の全体像が見えてきます。これも前の提案分と同じように、コンセプトを伝える部分です。真ん中の部分では、講演の内容を3つの要点にまとめています。これを要約と呼びます。このように何かを報告する文章では、箇条書きにして要約すると、読んだ人が一目で要点を捉えやすくなり、伝わりやすくなります。最後の部分は、報告の全体を繰り返します。参加者の反応を書くことで、報告会の雰囲気も伝わります。こうして読み手にダメ押しをします。

 

③勧誘文のパターン(社内グループ旅行の勧誘)

ダメな例文(82字)

大分県湯布院温泉に、グループ旅行を計画。2月21日~23日の日程になりそうです。ぜひ、ふるってご参加ください。なお、参加希望者は、山田までお知らせください!

→勧誘文では、読み手に詳細を知らせることが必要です。詳細がわからないとそれに参加していいものかどうか、判断できないからです。読み手に知らせているのは、旅行先と日程くらいです。旅行先での予定、参加費、そもそもなぜグループ旅行が計画されたのかがわからないので、判断に困ります。山田さんについても詳しく書きべきです。

伝わる例文(188字)

(最初)日ごろの仕事の慰労とワームワークのさらなる結束を目指して、グループ旅行を次のように企画しました。(真ん中)2月21日~23日の日程で、場所は大分県湯布院温泉です。夜のイベントは、チーム対抗卓球大会を用紙しています。参加費は1万5千円です。参加希望者は1月31日までに、総務部山田まで、口頭あるいはメールでお知らせください。(最後)たくさんの方の参加をお待ちしております!

  • コンセプト・・・ここの企画の趣旨を何かを訴える
  • 構造とプロセス・・・日程、場所、参加費、参加申請などの決定している情報を提示
  • ダメ押し・・・勧誘を繰り返して締めくくる

→(最初)は勧誘の意図について書いています。「慰労とチームワークのためにこの企画をしました」ということを訴えかけているわけです。コンセプトは文章の最初に持ってきて、「この文章は何のために書いたのか」ということをはっきりと読者に伝える役目を果たしています。(真ん中)では日程、場所、イベント、参加費、そして参加希望者が具体的にどのようなことをするのかについて書いています。ここでは、決まったことを書いていますので事実とよぶことにしましよう。事実は文章の中では重要な部分です。とは決まったことを書けばいいので、それほど難しく考える必要はありません。(最後)の部分は「たくさんの方の参加をお待ちしております!」と締めくくりをしています。つまりダメ押しです。

 

④お願い文パターン(ゴミだしルール徹底のお願い)

ダメな例文(84字)

ゴミを前日に出す人がいますが、当日の朝に出してください。また、ネットは必ずかけるように。袋の口もしっかり縛ってください。ゴミだしルールを守るように心がけましょう。

→ゴミだしルールを徹底しなければならない理由がわかりません。私たちはただ~してくださいと言われてもそれをする理由がわからないと、なかなか行動がともわない。お願いするのに上から目線であるために伝わらない文章になっています。

伝わる例文(204字)

(最初)ゴミ出しルールを守っていただけますようお願いします。最近、カラスがゴミあさりをしてゴミが散乱するという事態が起こっています。(真ん中)次のゴミルールの3点を確認してください。(1)前日の夜にゴミを出さず、朝になってから出してください。(2)ゴミを出したあとはネットを元通りにかけておいてください。(3)ゴミ袋から中身が出ることのないように、袋の口はしっかりとしばってください。(最後)以上、ルールを守っていただけますようお願いします。

  • コンセプト・・・このお願いの趣旨は何かを伝える
  • 構造とプロセス・・・関係者に対して、このように行動してほしいという原則を伝える
  • ダメ押し・・・お願いを繰り返して強調する

→(最初)このお願いの意図を書いています。そういうことなら協力しようと気持ちになります。コンセプトは必ず先頭へ。(真ん中)の部分では、3つのゴミ出しルールについて書いています。これを方針と呼びます。箇条書きにすることでわかりやすくする。(最後)の部分で、ルールを守ってもらえるように、お願いを繰り返しています。ダメ押ししてお願いを強調します。

 

 

4、段落展開の最初には、必ず「コンセプト」がくる!

提案、報告、勧誘、お願い文に共通するポイントは最初にコンセプト、最後にダメ押しが入ることです。

最初にコンセプトがくるのは、一番伝えたいことをはじめに明示して、いかに続く文章を理解しやすくしています。

<文章の展開パターン>

(報告文)コンセプト→要約→ダメ押し

(提案文)コンセプト→構成(関係、しくみ、組織など)→プロセス(進め方、変化など)→ダメ押し

(お願い文)コンセプト→方針(箇条書きなど)→ダメ押し

(勧誘文)コンセプト→事実(決まっている情報)→ダメ押し

 

5、情報はいくつかのタイプに分類できる

コンセプトに続く文章はいくつかのタイプに分類できます。伝えたいことによって、文章パターンは決まってくる。

<コンセプトに続く情報タイプの例>

事実(=すでに決まっていること)・・・日時、場所、会費など

手続き(=特定のことを成し遂げるためのやり方や手順)・・・応募方法、登録方法、申込条件、料金支払い方法など

プロセス(=時間の経過とともに起こること)・・・実験の内容、プロジェクトの遂行、作業の過程など

構造(=人と人の関係、組織の構成、全体と部分の関係)・・・プロジェクトの編成、各チームの関係、メカニズムのしくみ、会社の組織など

方針(=原則、ルール、目指す方向など)・・・組織のルール、教育の目指す方向、経営方針など

 

 

6、読み手の頭にすっと入る文章を書くには?

伝わる文章とは、読んだ人がすぐにすっと理解できる文章です。段落の展開パターンを習得した後は、その中身の文章をわかりやすくすることを意識しましょう。

①1つの単語は1つの意味で使う(ワンワード、ワンミーニング)

1つの単語は1つの意味に限定して使います。また逆に同じ意味であれば常に同じ単語に統一するとよいでしょう。

単語の使い道を区別する場合

「思い」と「想い」の区別

  • ・母はとても優しい人だと思います。→頭で考えたこという意味合いで使うとき。
  • 。夢が叶いますようにと想いをこめた。→心で強く想うというニュアンスのとき。

同じ意味の単語を統一する場合

読み手に、より具体的に伝わるほうの単語を選ぶ。

  • ・学校と小学校や小学校に統一
  • ・鳥とすずめ→すずめ
  • ・雨と通り雨→通り雨
  • ・雑誌とファッション誌→ファッション誌
  • ・ペンと赤いボールペン→赤いボールペン

②「ワンセンテンス、ワンアイデア」で、ダラダラ長文を短くする

1つの文で、2つ以上の事柄を書いてはいけない。この原則を守ると、文の長さが短くなります。文を短くすることによって、わかりやすい文章になります。

よくある悪い文章が~ですが、~のような「が」でつながれた文章です。「が」は順接と逆説のどちらの意味にも取れるので、文章の流れがわかりにくくなってしまします。

参考例

・今日は晴れですが、明日は雨かもしれません→今日は晴れです。しかし、明日は晴れかもせれません。(逆説)

・今日は晴れですが、明日も晴れると思います→今日は晴れです。だから、明日も晴れると思います。(順接)

 

 

③「ワンパラグラフ、ワントピック」で、1つの話題に終始する

1つの段落では1つの話題だけを扱う。2つの内容を扱うとごみごみするので避けるべきです。

 

 

7、つなぎの言葉で「流れ」を作る

1つの文と1つの文の間にはつながりがあります。つながりを示す単語を「接続語」と呼びます。この接続語で文章を短くしよりわかりやすくする。

接続語の種類

  • ・順接・・・だから、そこで、したがって
  • ・逆説・・・しかし、にもかかわらず
  • ・並列・・・また、そして
  • ・添加・・・しかも、さらに
  • ・選択・・・または、あるいは
  • ・理由・・・なぜなら
  • ・例示・・・たとえば
  • ・制約・・・ただし、なお
  • ・要約・・・つまり、ようするに
  • ・転換・・・さて、ところで
参考例文

日本ではこれまで中学校から英語が教えられてきた、それは受験科目の1つとしての位置づけが強、コミュニケーションの道具として使えるほどにはなっていない。

↓ 修正

日本ではこれまで中学校から英語が教えられてきた。しかし、それは受験科目の1つとしての位置づけが強い。したがって、コミュニケーションの道具として使えるほどになっていない。