減価償却・貸倒処理の基本と論点

■固定資産の減価償却とは

消耗品費などは経費処理すれば、費用が大きくなる(=利益は少なくなる)

固定資産は1年以上使用する資産だが、消耗品費と同様に費用計上する場合があり、それが減価償却。減価償却費の仕訳方法(計算方法)は2種類ある。定額法と定率法。簿記3級では定額法のみ。定率法については、学びHPの会計・財務ページに詳しくまとめてあるよ。

●減価償却例の読み方

取得価額50万円、耐用年数5年、残存価額0円

  • ・耐用年数・・・国税庁のHPに記載されている資産の耐用年数を参照した数値。
  • ・残存価額・・・○年後に、価値がどれくらい残っているかという意味。「耐用年数10年・残存価額3万円と見積もる」場合は、10年後のその資産の価値は3万円になっていると読み取れる。

例1)取得価額50万円、耐用年数5年、残存価額0円

①2001年4月1日、50万円のパソコンを現金で購入した。

(借)備品500,000(貸)現金500,000

備品という資産の増加/現金という資産の減少

※500,000という金額は簿価という。

②5年使用したとしたら、5年後の価値は0円と見積もった(1年ごとに10万円ずつ価値が下がっていく)。2002年3月31日が終了し決算になった。

(借)減価償却費100,000(貸)備品減価償却累計額100,000

減価償却費という費用の発生/備品(備品減価償却累計額)という資産の減少➡簿価40万円

※このように1年ごとに10万円ずつ価値が下がっていくと考え、1年ごとに減価償却費の仕訳をしていく。

※(貸)については間接法により備品減価償却累計額という資産の減少分を取得額が引いていくイメージ。

③2003年3月31日が終了し決算になった。

(借)減価償却費100,000(貸)備品減価償却累計額100,000

減価償却費という費用の発生/備品(備品減価償却累計額)という資産の減少➡簿価30万円

例2)取得価額50万円、耐用年数5年、残存価額5万円

①2001年4月1日、50万円のパソコンを現金で購入した。

(借)備品500,000(貸)現金500,000

②5年使用したとしたら、5年後の価値は5万円と見積もった(1年ごとに9万円ずつ価値が下がる)。2002年3月31日が終了し決算になった。

(借)減価償却費90,000(貸)備品減価償却累計額90,000

③2003年3月31日が終了し決算になった。

(借)減価償却費90,000(貸)備品減価償却累計額90,000

例3)取得価額130万円、耐用年数10年、残存価額10万円で途中で簿価より高い値段で売却した

①2001年4月1日、130万円の建物を掛けで購入した

(借)建物1,300,000(貸)未払金1,300,000

②2002年3月31日が終了し決算になった。

(借)減価償却費120,000(貸)建物減価償却累計額120,000

③2003年3月31日が終了し決算になった。

(借)減価償却費120,000(貸)建物減価償却累計額

120,000

※1年ごとに12万円ずつ価値が下がっている。ここまでで残存価額(簿価)は130-24=106万円

④2003年4月1日、上記建物を110万円で売却した(掛け)。

(借)建物減価償却累計額240,000(貸)建物1,300,000

※130万円ー24万円=106万円の建物が売却して消えたという意味。

(借)未収入金1,100,000(貸)固定資産売却益40,000

※簿価106万円の建物を110万円で売却したため、売却益が4万円出たという意味。

●固定資産の減価償却の論点1=固定資産を期首ではなく、期中に買った場合はどうなる?(期中取得と期中売却)

例1)固定資産期中に購入

①2年1月1日、130万円の建物を掛けで購入した。耐用年数10年、残存価額10万円(年間12万円価値がなくなる)=期中取得

(借)建物130万(貸)未払金130万

②2年3月31日が終了し、決算になった。

(借)減価償却費3万(貸)建物減価償却累計額3万

※購入から最初の決算までは3か月のみしかたっていないので、年間12万÷4=3万の価値が落ちたと仕訳する。

③3年3月31日が終了し決算になった。

(借)減価償却費12万(貸)建物減価償却累計額12万

④3年5月31日、上記建物を110万円で売却した(掛け)。=期中売却

  • (借)建物減価償却累計額15万(貸)建物130万
  • (借)減価償却費2万→2か月分の建物の減価償却費
  • (借)未収入金110万→建物を掛けで売った金額。
  • (借)固定資産売却損3万→3年5月31日時点の建物の簿価は113万円だったが、110万円で売却したので3万円の損が出たということ。

●減価償却の月次決算と期末決算における実務の対応

企業の多くは月次決算として月ごとに決算のようにまとめている。その中で減価償却については

・正確な計算は期末決算でのみ

・月次決算では、概算の数値で行う。概算で行なわないと(減価償却しないと)費用がなくなり、利益が決算の時より多くなったしまう。

例)

①1年5月1日になったので、4月の月次決算を行う。減価償却費については1年度の年間額は120万円と見積もられた。

(借)減価償却費100,000(貸)減価償却累計額100,000

※年間の合計が120万というみつもりなので、1か月ごとに10万の減価償却を行う。

②2年3月31日が終了し、決算となった。年間の減価償却額を計算したところ、125万円であった。

(借)減価償却費150,000(貸)減価償却累計額150,000

※決算で再度減価償却費を計算したら、125万円だったので、3月分の(最後の月の)減価償却費に差額の5万円を足した金額とする。

■貸倒について

貸したお金は必ず返ってくるわけではなく、ツケ代金も必ず回収できるわけではない。夜逃げや倒産などが理由。

「3%くらいは貸し倒れる」と予測➡これを決算において仕訳する。=貸倒引当金の設定という決算整理仕訳をする。

●貸倒の処理について(基本)

例)

①2年2月12日、A社に2,000円の商品を掛け販売した。

(借)売掛金2,000(貸)売上2,000

売掛金という資産の増加/売上という収益の発生

②2年2月20日、A社が倒産し、上記売掛金が貸し倒れとなった。

(借)貸倒損失2,000(貸)売掛金2,000

貸倒損失という費用の発生/売掛金という資産の減少

●貸倒引当金の設定

貸倒損失は、期中にいきなり倒産したりして貸倒を想定できなかった場合に貸倒損失として仕訳する。

貸倒引当金は、決算時等にあらかじめ回収できない売掛金などについて貸倒引当金(費用)として見積もり計上しておこうという意味。結果的に見積もりと違った場合は決算時に調整が必要。

例1)

2年3月31日(期末日)が終了し、初めての決算で売掛金の残高は100万円である。このうち3%は回収できないと見積もられた。

(借)貸倒引当金繰入30,000(貸)貸倒引当金30,000

(今のうちに)貸倒引当金繰入という費用の発生/(今のうちに)貸倒引当金という資産の減少

※早めに費用として計上してしまおう。発生主義の考え方による。

例2)2年目以降の論点。貸倒は5万円と仕訳していたが結果的に6万円だった。差額が1万円出たため、決算にて調整する必要あり。

3年3月31日(期末日)が終了し決算となったこの時点で売掛金の残高は200万円である。このうち3%は回収できないと見積もられた(6万円は貸し倒れると予測)。なお貸倒引当金の残高は5万円である。

(借)貸倒引当金繰入10,000(貸)貸倒引当金10,000

※差額1万円分を決算仕訳にて調整している。

例3)貸倒の充当

①2年3月31日(期末日)が終了し、初めての決算で売掛金の残高は100万円である。このうち3%は回収できないと見積もられた。

(借)貸倒引当金繰入30,000(貸)貸倒引当金30,000

②2年4月10日、得意先A社が倒産し、A社に対する売掛金が回収不能となった。なおA社に対する売掛金は5,000円であり、上記100万円に含まれている。

(借)貸倒引当金5,000(貸)売掛金5,000

※新たに貸倒引当金繰入を仕訳するのでなく、すでに費用計上してある貸倒引当金を勘定科目として使う。

例4)貸倒の充当2

①2年3月31日(期末日)が終了し、初めての決算で売掛金の残高は100万円である。このうち3%は回収できないと見積もられた。

(借)貸倒引当金繰入30,000(貸)貸倒引当金30,000

②2年4月10日、得意先A社が倒産し、A社に対する売掛金が回収不能となった。なおA社に対する売掛金は8,000円であり、うち3,000円は昨日販売した分、5,000円は上記100万円に含まれている。

(借)貸倒引当金5,000(貸)売掛金5,000

(借)貸倒損失3,000

※貸倒3,000分については昨日販売した=決算であらかじめの貸倒引当金に計上していないので、貸倒損失とする。

例5)貸倒の充当3

①2年3月31日(期末日)が終了し、初めての決算で売掛金の残高は100万円である。このうち3%は回収できないと見積もられた。

(借)貸倒引当金繰入30,000(貸)貸倒引当金30,000

②2年4月10日、得意先A社が倒産し、A社に対する売掛金が回収不能となった。なおA社に対する売掛金は5万円であり、全額上記100万円に含まれている。

(借)貸倒引当金30,000(貸)売掛金50,000

(借)貸倒損失20,000

※あらかじめ想定した引当金合計3万円を超えてしまった。その場合超えてしまった部分に関しては貸倒損失として計上する(期中仕訳)。

例6)貸倒の充当4

3年3月31日(期末日)が終了し決算となる。この時点で売掛金の残高は200万円である。このうち3%回収できないと見積もられた。なお貸倒引当金の残高は5万円である。

(借)貸倒引当金繰入10,000(貸)貸倒引当金10,000

※決算で結果的に貸倒引当金を1万円増加させたい。(想定よりも多くなった)そのまま1万円を追加する。

例7)貸倒の充当5

3年3月31日(期末日)が終了し決算となる。この時点で売掛金の残高は200万円である。このうち3%回収できないと見積もられた。なお貸倒引当金の残高は8万円である。(決算時)

(借)貸倒引当金20,000(貸)貸倒引当金戻入20,000

※結果的に決算では貸倒引当金は6万円となり、想定より2万円少なかったので、2万円分戻す仕訳をする。

例8)貸倒の後日回収

①2年3月1日、A社に500円の商品を掛け販売した。

(借)売掛金500(貸)売上500

②2年3月10日、上記A社が倒産した。

(借)貸倒損失500(貸)売掛金500

貸倒損失という費用の発生/売掛金500という資産の減少

※期中に貸倒引当金として想定していなかったので、貸倒損失として計上される。

③-A 2年3月20日、A社から500円回収した。

(借)現金500(貸)貸倒損失500

③-B 2年4月4日、A社から500円回収した。

(借)現金500(貸)償却債権取立益500

※③-Aと③-Bの違いは決算を挟んでいるか否か。勘定科目も変わってくる。