決算整理仕訳1(決算の全体像、未収収益、未払費用、前受収益、前払費用、当座借越、現金過不足、当座借越、貯蔵品)

■決算の全体像について

★:まず大事なのは期中仕訳と決算整理仕訳では仕訳の方法や考え方が多少異なる。決算日が来たら、決算仕訳して財務諸表を作成する。

●経理の流れ

貸借対照表は決算日時点の財政状態、損益計算書はある期間(基本は4月1日~3月31日)の経営成績を表す。

決算日以降の経理部の流れ(経理部は決算日からクソ忙しい)

  • ステップ1、期中仕訳を集計する。
  • ・試算表(前T/B)を作成
  • ステップ2、決算整理仕訳を作成する。
  • ステップ3、決算整理仕訳も折り込んで再集計する。
  • ・前T/Bに決算整理仕訳も織り込んで集計して決算整理後試算表(後T/B)を作成
  • ステップ4、財務諸表を作成し、世間に公表する。
  • ・後T/BからB/SとP/Lを作成する。
  • ・非上場企業では、5月下旬に株主総会&税務署に提出。
  • ・上場企業では6月下旬に株主総会&税務署に提出。

●試算表とは

ある時点までに作成された仕訳を集計した表。T/B(トライアルバランス表)といい、資産表とは別物。↑の画像の左が後T/B。前T/bと後T/Bの2種類がある。借方と貸方とで左右に分かれ、実務経理では月次試算として毎月つくっている。貸借対照表や損益計算書と連動して作成される。

■現金過不足の処理

例1)期中に原因不明の差額があると判明

2月28日、A社(決算日は毎年3月31日)において、金庫内の現金を数えたところ、1万円札が1枚と5千円札が2枚のみであった(2万円)。一方この時点の帳簿上の現金勘定の残高は20,300円であった。この差額の原因は不明である。

(借)現金過不足300(貸)現金300

※印帳簿に合わせるのではなく、現残高に合わせるために、帳簿の現金(資産の減少)がないと考える。実際の残高のほうが高ければ、(借)(貸)は逆になる。

【期中仕分】

3月2日、上記差額は先日300円切手を1枚現金で購入した際に、仕分けをしなかったことが原因であると判明した。

(借)通信費300(貸)現金過不足300

【決算仕分】

決算になった。上記差額の原因は不明である。

(借)雑損300(貸)現金過不足300

※現金過不足をなくして、雑損に変更した。

※不明な差額を放置はできないので、雑益・雑損(雑収入・雑損益)として処理する。実際の残高<帳簿上の残高であれば、実際の残高の方が損しているため雑損とする。逆であれば雑益。

例2)決算になり原因は不明があると判明

決算になり、A社(決算日は毎年3月31日)において、金庫内の現金を数えたところ、1万円札が1枚と5千円札が2枚のみであった(2万円)。一方この時点の帳簿上の現金勘定の残高は20,300円であった。この差額の原因は不明である。

(借)雑損300(貸)現金300

※決算時に判明した場合は、直接雑損300にする。

例3)決算になり原因不明の差額ありと判明。

決算になった。現金実際残高は10万、帳簿上の現金勘定残高は9万。差額不明。

(借)現金10,000(貸)雑益10,00

■当座借越(当座預金のマイナス残高の負債振替)

①3月20日、買掛金50万円の支払いのために、小切手に50万と記載して振り出した。このとき、当座預金残高は20万しかなかったが、あらかじめ銀行と当座借越契約(限度額1億円)を締結している。

(借)買掛金500,000(貸)当座預金500,000

※期中は当座預金がマイナスになっても借越契約あれば気にしなくてもよかった。

②このまま決算になった。

(借)当座預金300,000(貸)当座借越300,000

当座預金という資産の増加/当座借越という負債の増加

※預金が-30万円である=30万円借金していることになる。

■費用処理した項目の貯蔵品への振替

  • 鉛筆などの事務用消耗品の購入→消耗品費
  • 切手の購入→通信費
  • 収入印紙の購入→租税公課
  • 消耗品は使いきれなくても消耗品費という費用扱い。
  • 切手や収入印紙は期中は費用になるが、使いきれなかったら資産扱いとなる。
  • 期中も決算も資産性(換金性の高いもの)のあるものは費用でなく、別処理をする。

例1)

①2月22日、現金で100円切手を300枚購入した。

(借)通信費30,000(貸)現金30,000

②決算になった。期末日(3月31日)時点で上記切手のうち未使用で残っているは100枚である。

(借)貯蔵品10,000(貸)通信費10,000

※通信費(費用)を貯蔵品(資産)に振り替える。

③翌期首(4月1日)、再振替仕分けを行う。

(借)通信費10,000(貸)貯蔵品10,000

例2)

①2月22日、現金で2000円の収入印紙を100枚購入した。

(借)租税公課200,000(貸)現金200,000

②3月9日、現金で4000円の収入印紙を100枚購入した。

(借)租税公課400,000(貸)現金400,000

③決算になった。期末日(3月31日)時点で上記収入印紙はそれぞれ10枚ずつ残っている。

(借)貯蔵品60,000(貸)租税公課60,000

④翌期首(4月1日)、再振替仕分けを行う。

(借)租税公課60,000(貸)貯蔵品60,000

■収益・費用の前払い・前受けと未収・未払の計上

少し今までとは違う考え方になるが、今後の簿記では重要となる考え方になるので注意する。前払い・後払いの保険料・家賃の期中と決算での仕分についてそれぞれ見る。

●現代簿記の収益・費用を計上する概念

現代簿記では現金預金の入出金をもって収益・費用を計上するわけではありません。例として売掛金は契約が成立した時点で収益に計上するが、実際の入金は翌月だったりする。

★現代簿記は、入金のタイミングで収益を計上するのではない、また出勤のタイミングで費用を計上するのではない。権利・義務の確定したタイミングなどで費用・収益を計上する(発生主義という。逆の入出金のタイミングで計上する場合を現金主義という)。ただ、以下のように利息や経費に関してはそのルールを多少逸脱しているが、最終的には現代簿記の発生主義を採用するかたちとなる。その最終的に発生主義になる過程が以下で行う家賃(費用)の前払い・後払いの4パターン等である。

・商品売買➡権利・義務の確定したタイミングで費用・収益を計上している(発生主義)。

・固定資産の売買➡権利・義務の確定したタイミングで費用・収益を計上している(発生主義)。

・受取利息、受取家賃➡入出金のタイミングで費用・収益を計上している(現金主義)。

・水道光熱費、支払家賃、給料(経費)➡入出金のタイミングで費用・収益を計上している(現金主義)。

例)保険料の前払い

2002年、3月1日、この先1年分の火災保険料12万円を現金で支払った。

(借)支払保険料120,000(貸)現金120,000

※決算日は3月31日でこの先1年分を払うとしてもすぐに決算日が来て1か月分しかないのに1年分の保険料を計上してよいのか?という論点がある。そのため決算時は以下のように対応する。

(借)前払保険料110,000(貸)支払保険料110,000

※前払保険料という資産の増加と考える。

●家賃の前払いと後払いの重要な4パターン(テナント側と大家側の前払いと後払いの4パターン)

前払のケース後払い(未払)のケース
費用のケース
(テナント側)
①前払費用:資産③未払費用:負債
収益のケース
(大家側)
②前受収益:負債④未収収益:資産

①前払費用:すでに代金は支払った。しかしその恩恵(用役)をまだ受けていない状態。資産。

➡家賃で例えると、来月(以降)の家賃を前払いしている状態のテナント側。すでに来月(以降)の家賃を支払っているので、そこに来月(以降)住むことができる権利がある。

➡「経費は支払ったときに借方」と仕分けする。よって決算で修正(調整)する必要がある。

1月1日に1年分支払:(借)支払家賃12(貸)現金12

決算整理仕訳:(借)前払家賃9(貸)支払家賃9

※決算で払いすぎている家賃9か月分を取り消し前払家賃という資産に変換している。

②前受収益:すでに代金は受け取った。しかしその恩恵(用役)をまだ与えていない状態。負債。

➡家賃で例えると、来月(以降)の家賃を前もって受け取っている状態の大家さん。すでに来月(以降)の家賃を受け取っているので、テナントに来月(以降)物件を提供する義務がある。

➡「家賃収益は支払を受けた時に貸方」と仕分けするので、決算で修正(調整)する必要がある。

1月1日に1年分受取:(借)現金12(貸)受取家賃12

決算整理仕訳:(借)受取家賃9(貸)前受家賃9

※決算でもらいすぎている家賃9か月分を取り消し前受家賃という負債に変換している。

③未払費用:まだ代金は支払っていない。しかしその恩恵(用役)をすでに受けた状態。負債。

➡家賃で例えると、今月(以前)の家賃を支払っていない(後払い)としている状態の、テナント側。すでに物件を提供してもらっているが、まだ今月(以前)の家賃を支払っていないのでその分支払う義務がある。

➡「経費は支払ったときに借方」と仕分けするので、まだ仕分けしていない。決算で修正(調整)する必要がある。

期中(3か月分未払い):仕分けなし=後払いにして払っていないから仕分けしない

決算整理仕訳:(借)支払家賃3(貸)未払い家賃3

※決算で未払分に関しては負債として計上する。

④未収収益:まだ代金は受け取っていない。しかしその恩恵(用役)をすでに提供済みの状態。資産。

➡家賃で例えると、今月(以前)の家賃を受け取っていない(後払い)状態の、大家さん。すでに物件を提供しているが、まだ今月(以前)の家賃を受け取っていないので、その分受け取る権利がある。

➡「家賃収益は受け取ったときに貸方」と仕分けするので、まだ仕分けしていない。決算で修正(調整)する。

期中(3か月分未払い):仕分けなし

決算整理仕訳:(借)未収家賃3(貸)受取家賃3

※まだ受け取っていない未収の家賃を資産として先に計上

している。

例)

2002年2月1日、A社はB社に事務所を貸すことにした。賃貸にあたりB社は家賃を5か月分前払した(B社の当座預金からA社の当座預金へ支払)。なお1か月分の家賃は10万円である。

2002年2月1日

(借)支払家賃500,000(貸)当座預金500,000

決算になった(決算日は2002年3月31日)。必要な決算整理仕訳を行う。

(借)前払家賃300,000(貸)支払家賃300,000

※2か月分(2002年2・3月分)は家賃として費用となるが、残りの3か月分は前払いとなるため決算では資産として計上する。