何度も転職を繰り返している人は、転職回数のせいで次の転職先が決まらないかも……と不安になることもあるのではないでしょうか。一般に、転職回数が20代で2回、30代で3回以上になると、転職活動で不利になると言われています。しかし、転職回数が多くても、上手にアピールすれば問題になりません。ここでは転職回数にまつわるデータと、回数の多さを不利にしない履歴書&面接対策を紹介していきます。
1. データで見る! 転職回数は何回までならセーフ?
転職活動をする上では、人より転職回数が多いと思われることは不利になると考えられています。では、人より多い転職回数とは何回くらいのことを言うのでしょうか?
※ちなみに転職回数の数え方は、職場が変わった回数を数えるので、たとえば3つの職場を経験している人なら転職回数は「2回」です。
1回くらいの転職なら不利になることはない
実際のところ、1回くらいの転職では、転職活動の際に気にされることはありません。
2014年にエンジャパンが行った転職回数の調査結果によると、全体の83%は、少なくとも一度は転職を経験しています。5回以上転職している人も17%おり、「5回以上」を5回と換算して単純計算すると、1人あたり2.35回以上転職していることになります。
出典:第98回 アンケート集計結果 「退職」について(2014年版)
20代は2回、30代は3回以上で「転職回数が多い」印象に
転職回数は年代によっても大きく変わります。転職回数が「多い」と思われる回数は20代なら2回以上、30代以上なら3回以上。40代以上では、転職回数が大きくばらついてくるため、回数そのものはあまり気にされない傾向があるようです。
上記の調査の年代別結果からわかる、各年代の特徴は以下のとおりです。
- 20代→ 63%の人が少なくとも一度は転職を経験しているものの、転職未経験者も多い
- 30代→80%に転職経験があり、1~3回の割合が24%、21%、19%とほぼ横並び
- 40代→転職経験者の割合が86%と全年代でもっとも高く、回数にもばらつきが大きい
- 50代→84%に転職経験があり、5回以上の人が22%ともっとも多い
- 60代→転職経験がある82%のうち、最多が2回、次点が5回以上と二極化の傾向に
出典:第98回 アンケート集計結果 「退職」について(2014年版)
実際に転職回数が多いほど転職成功率が下がったデータも
下記のグラフは、転職サイトDODAの登録者のうち、どのくらいが転職先を見つけられたか(成功率)を調査した結果です。初めて転職する人の成功率を100とした場合に、2回目以降の転職成功率がどう推移するかを、年齢別に示しています。
35歳以上を除くすべての年代で、転職回数が増えるほどに転職成功率が低下していくのがわかります。
- 24歳以下→他の年代に比べ2回目の転職での成功率の落ち幅が大きい。3~4回目でも徐々に下がる
- 25~29歳→2回目で約15ポイント、3回目では約25ポイントと、3回目での落ち幅が大きい
- 30~34歳→2回目では25~29歳と同じくらいだが、3回目では下がり方がゆるやかに
- 35歳以上→全世代で唯一、2回目が1回目を上回る結果であるものの、3回目以降は下落の一途をたどる
出典:DODA ホンネの転職白書 転職は何回まで許される?転職回数と成功率の関係性
35歳以上で2回目の転職回数が多い理由上記のグラフを見ると、35歳以上では転職2回目の成功率が1回目を上回っています。これはある程度の経験を積んでからの転職となると、ひとつの企業に勤め続けてその社風に染まっている人よりも、一度くらいは転職経験があり柔軟性も持ち合わせている人が人事にとって魅力的だからと考えられます。 |
人事が気にする転職回数、35歳以下は「2回以上」という意見も
2014年にエンジャパンが行った転職コンサルタントへの調査によると、若手層(35歳以下)なら2回以上、ミドル層(35歳以上)なら3回以上だと採用企業の人事が気にするという結果が出ています。この結果は、上記の成功率を裏付けるものとなっています。
出典:「エン転職コンサルタント」 ミドル層の転職回数と転職成功の可能性について発表
メディカル系、クリエイティブ系は転職回数を気にされにくい
職種によっては、転職回数が多いことが不利とはいえない場合もあるようです。メディカル系やクリエイティブ系がその代表格です。
DODAの転職回数と成功率の関係を、職種別に調べた調査を見てみましょう。
出典:DODA ホンネの転職白書 転職は何回まで許される?転職回数と成功率の関係性
転職回数が多くても転職成功率が高い職種
→技術系(メディカル/化学/食品)、クリエイティブ系
専門性の高い職種で、4回目以上でも高い成功率を維持しています。どちらも技術の向上やステップアップのために早くから転職する人が多いのが特徴です。
技術系(メディカル)のなかでもとくに看護師や薬剤師は常に人手不足で退職してもすぐ次が決まるので、転職成功率がキープされるようです。
転職回数が多いと転職成功率が下がる職種:専門性の低い職種
→営業系、販売/サービス系
一方、転職回数が増えるほど転職成功率が下がってしまうのは、営業系、販売/サービス系といったあまり専門性の高くない職種。こういった職種では、さまざまな会社を経験するよりもむしろ一社に留まって長く勤めたほうがよいのかもしれません。
2. 人事に聞く! 「転職回数が多い人は取りたくない」理由
データを見てみると、20代なら2回以上、30代なら3回以上で「転職回数が多い」という印象になること、そして転職回数が多いと転職成功率に影響があることがわかりました。
では今度は、採用側が「転職回数が多い人は取りたくない」と考える理由について、実際に採用を行っている企業の人事担当者の意見を確認してみましょう。
「定着性」が疑われる
短い間に転職を繰り返している人は、「ジョブホッパー」だから採用しても長く在籍しない、と考えられてしまいます。転職し慣れているので、仕事上でちょっとした壁にぶつかったときにその場で改善しようとせず、「転職」という解決方法に頼るのではないか。すると会社にとっては労力をかけて仕事を教えても無駄になりますし、長くいない人には責任ある仕事を任せられないから不採用、といった判断にもつながります。
「ストレス耐性」に心配がある
上司が少し叱っただけで必要以上に落ち込んだり、取引先から強い口調で要求されたことに悩んでしまったりと、転職回数が多い人は協調性やストレス耐性に問題があることも少なくありません。社会人として働くうえではときに理不尽な目に合うこともあるので、我慢できるだけの心身のタフさが必要です。転職回数はその判断基準のひとつとして見られています。
「キャリアの一貫性」が気がかり
さまざまな職種を転々としている人については、「自分でも本当は何がしたいのかわかっていないのではないか」とキャリアの一貫性が問題視されます。また、同業であっても、転職回数が多いことで「ひとつの仕事で一人前になっていない」という印象になり、将来、会社にどんな貢献をしてくれるか、採用につながる期待感を持ってもらえないのです。
3. 転職回数の多さを不利にしない! 履歴書の書き方
これまで見てきたとおり、転職回数が多い人に対してネガティブな印象を抱く採用担当者も少なくない中で、実際に転職回数が多い人はどのように挽回していけばいいのでしょうか。
転職回数は必ず正直に伝えなければいけませんが、その中で転職回数の多さをプラスの印象に変え、相手を安心させることが書類選考通過のカギとなります。
自分の経歴を棚卸しして以下のようなポイントが伝えられるように考えてみましょう。
- その会社にいなかったような優れた技術やスキルを持っている
- これまでの転職理由やポリシーに一貫性がある
- 失敗した点を次に生かす姿勢があり、希望する業務に具体的なイメージを持っている
- 環境適応能力が高く、職場にすぐに馴染める
- 本人の人間性には問題がない
- 会社の倒産や家庭の問題など、やむをえない事情での退職のせいで回数が増えている
転職回数をプラスに変える自己PRの書き方
転職回数が多くても選考を通過するためには、自分に確固たるキャリアビジョンがあり、それが今回の転職活動にもつながっていることをアピールすることが大切です。
ここでは自己PR欄の書き方について、転職回数が多い人の中でも、同じ職種を続けている場合とさまざまな職種を経験している場合とに分けてポイントを紹介します。
同じ職種を転々としている人は、職務上の強みを強調しよう
同じ職種でいくつもの職場を経験している場合は、職務上のスキルの高さやプロフェッショナルであることを強調しましょう。
ポイント (1)職務上のスキルの高さや、仕事をする上でのモットーを強調 (2)具体的にどんなことをやり遂げたかいついて、数字を交えて説得力を出す (3)職場にすぐに馴染みたいという意思も大切例)20代、3社経験、営業職希望 私は7年間に渡って営業の仕事をする中で、「お客様第一主義」の営業スタイル(1)を貫いてきました。とくに心がけていることは、お客様の本当のニーズに応える商品を提供し、満足度をアップさせることです。 |
キャリアがバラバラな人は、今後に生かせる多角性をアピールしよう
これまでにさまざまな職種を経験してきた人は、その経験から多角的な視点やスキルを持っているはず。それをアピールしつつ、一貫した転職ポリシーがあることを明らかにしましょう。
ポイント (1)どんな軸で転職してきたかをワンフレーズで伝える (2)志望している仕事と直接関係ある仕事に重点を置いて語る(直接関係のない仕事にはあまり触れない) (3)これまでの経験が今回の志望職種にどんなふうに生かせるか具体的にアピール例)30代、4社経験、編集職希望 私は今まで一貫して「女性をきれいにする」仕事にこだわってきました(1)。 |
転職回数が多くても履歴書の職歴欄にはすべて書く
履歴書の職歴欄には、転職回数が多くてもすべての経験を書く必要がありますので、働いてきたすべての会社を年代順に記載していきます。
転職回数が多い人は、あまり書きたくない会社を省いたり、在籍期間が極端に短かった会社を前後に勤めた会社の期間に含めたりと、ついごまかしたくなるかもしれません。ですがそういったごまかしは経歴詐称になってしまいます。職歴は正直に書き、転職回数をリカバーできるような自己PR欄などを書くことが求められます。
※詳しくは→書き方注意!履歴書の職歴の書き方
転職回数が多い人は職歴欄の大きい履歴書を使う
履転職回数が多すぎて手持ちの履歴書の職歴欄に入りきらない場合は、下記のような職歴欄の多い履歴書を使用します。自分の職歴は何行あれば収まるのかをよく確認して、必要な行数のある履歴書を購入、またはダウンロード&印刷しましょう。
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→【転職Hacksの無料履歴書テンプレート「経歴欄が広め」版】-Word版、PDF版
それでも入りきらない場合は、職務経歴書とのあわせ技で
どうしてもすべての職歴が履歴書に入りきらない場合は、履歴書には勤務期間が長い会社を中心に抜粋した職歴を記載し、最後に「(他、3社を経験。詳しくは職務経歴書に記載)」と書いておきましょう。そして職務経歴書にすべての職歴について書いていってください。
4. 転職回数を逆手にとって印象アップ! 面接徹底対策
無事に書類選考を通過することができれば、今度は面接。転職回数が多い人は、面接で転職回数やそれまでの退職理由について聞かれることも多いです。
聞かれたくないと思う人も多いでしょうが、実はその質問は大きなチャンス。これまでの経験やスキルを説明するとともに、将来どのように仕事をしていきたいかを話すことで「今度はすぐに辞めない」という姿勢をアピールしてください。
転職回数が多さを聞かれたら、転職活動の軸を答えよう
面接で転職回数が多い理由を聞かれたときは、これまでの転職にまつわる考えをポジティブな言葉で答えます。「あの会社はやりたい仕事をやらせてくれなかった」「給料が安くて不満だった」といったネガティブな答えは避けましょう。
ポイント (1)これまでの転職活動の軸、キャリアステップに対する考え方をアピール (2)ネガティブな理由は答えず、前向きな理由を話す (3)今度は長く働きたいことに加え、どのように貢献したいかを語る「転職回数が多いように見受けられますが、どうしてですか?」 例)30代、4社経験、営業事務希望 私はこれまで「結果にこだわり、ステップアップすること」(1)を軸にして転職活動をしてきました。 |
退職理由を聞かれたら、今後の働き方に焦点を当てて答えよう
転職の面接ではたいてい退職理由を聞かれますが、転職回数が多い場合はとくにこれまでの退職理由を入念に聞かれる場合があります。たとえ人間関係の問題や待遇を改善したいなどの理由であっても、これからの働き方に焦点を当て、前向きな理由を説明するようにしましょう。
ポイント (1)これからどんな仕事にチャレンジしたいかにフォーカス (2)なぜ前職ではやりたいことができなかったかも説明 (3)たとえ本音であっても、不平不満や他人にばかり責任を持たせる言い方はNG「今回の退職理由を教えてください」 例)20代、4社経験、SE職希望 一番の理由は、顧客ニーズを汲んだ制作の仕事がしたいと考えたため(1)です。 前職はもともとSEでの採用でしたが、会社の業績不振のため昨年から営業職としても働いていました。初めて仕事でしたが顧客ニーズを直接聞き取って商品に反映させられるという面白みがあり、やりがいもありました。 |
やむを得ず転職した場合は、退職理由でもはっきりと伝えよう
会社が倒産した、体調を崩した、家庭の事情でなど、さまざまな事情で転職せざるを得なくなった結果、転職回数が増えてしまったという人もいます。そういった場合はその理由をはっきりと伝えつつ、消極的な姿勢にならないよう、今後の展望を話してみてください。
ポイント
(1)理由は正直に話す |
5.まとめ
以上が、転職回数にまつわるデータや人事の本音、それに対応するための履歴書&面接対策です。
とくに20代で2回以上、30代で3回以上の人は「転職回数が多い」と思われますからしっかりと対策を。ポイントはあくまでも転職ポリシーが一貫しており、これまでの経験が仕事でも生かせるということです。
これを意識すれば転職回数が多い人でも必ず成功できるはずです!