第二新卒として転職活動をしようとしている方の中には、「第二新卒って何年目まで?」「こんな理由で退職してもいいの?」「新卒の就活と面接内容は違うの?」……など、さまざまな疑問を抱いている方もいるのではないでしょうか。「今すぐ転職したい!」という人も、衝動的に退職してしまう前にしっかりとポイントを抑えて行動することが大切です。ここでは第二新卒の転職について基本的な情報を提供するとともに、第二新卒の方のための転職ノウハウをお伝えしていきます。
1. 第二新卒の転職事情は?
第二新卒は、新卒から3年未満の人のこと
「第二新卒」とは、学校を卒業してから一度就職し、3年未満の人を言います。厳密に言えば4年目以降の人は入りません。正社員として就職した人だけではなく、フリーターとしてアルバイトで働いていた人、家業を手伝っていた人でも第二新卒の求人に応募できる可能性があります。
混同しやすいものとして「既卒(きそつ)」がありますが、こちらは学校を卒業したものの就職していない人のことを言います。会社によっては、社会人を経験していない既卒も第二新卒と同じ扱いにしてくれることがあります。
ちなみに厚生労働省の調査によると、大学を3月に卒業して新卒で就職したのち、3年以内に離職する割合はおおよそ30%強。学校に戻って学びなおす人や、体調や結婚、家庭の事情などで再就職しない人もいるため一概には言えませんが、数字だけで言えばおおよそ3人に1人は第二新卒として転職していく可能性があるというわけです。
第二新卒の転職理由1位は「労働条件」
第二新卒の人は、どんな理由で退職する人が多いのでしょうか?
厚生労働省の調査によると、第二新卒にあたる人が多い20~24歳に多い転職理由は「その他」を除くと男女ともに1位は「労働時間等の条件が悪い」となっています。2位以降は男女差がありますが、収入や人間関係、仕事内容が共通して上がってきています。
【転職入職者が前職を辞めた理由】 ※「その他」を除く ◇男性20~24歳 1位 労働時間等の条件が悪い 18.6% 2位 収入が少ない 12.4% 3位 職場の人間関係 10.4% 4位 会社の将来が不安 7.7% 5位 仕事の内容に興味を持てず 6.8% ◇女性20~24歳 |
※「平成25年雇用動向調査結果の概況」より
これから初めての転職を考えている人の中には、「残業が多くてきつい」「人間関係で揉めてつらい」などの理由での転職するのは「我慢が足りないのでは」と思う人もいるかもしれません。しかし、案外こういった理由で転職している人は多いのです。
第二新卒のうちに転職するメリットとデメリット
具体的に転職を考えるに当たって、気になるのが実際に第二新卒で転職活動をする場合のメリットやデメリットです。業界や職種によっても異なりますが、一般に第二新卒で転職活動をする場合には以下のようなものが挙げられます。
【メリット】 ・中途採用は経験者募集が多いが、第二新卒枠なら業種未経験でもよい求人が多い ・新卒と比べると応募者が少ないので競争率が低く、大手・人気企業でもハードルが低め ・一般の中途採用と違って経験やスキルよりもポテンシャルで評価してもらえる ・仕事探しの軸が新卒の時よりも明確で探しやすい 【デメリット】 |
第二新卒で転職活動をすると、新卒で入った会社でのキャリアをリセットすることができます。さらに数年であっても働いた経験があるため、新卒の就職活動のときよりも理想の仕事や働き方が明確になっており、会社を見る目も肥えているはず。
つまりより自分のキャリアプランにあった働き方をするチャンスを得やすいのです。
一方、「またすぐ辞めてしまうのでは」と厳しい目で選考されるのは大きなデメリット。また、日本では新卒から勤め続けている生え抜き社員を大事にする傾向が少なからずあるので、転職者はなかなか出世できず、社内のキャリアアップが同世代よりも遅れる可能性があります。
第二新卒として転職活動をしようと考えている人は、こういったメリット・デメリットを考慮して、本当に転職すべきかどうか、もう少し今の職場で頑張ったほうがよいかを考えてみましょう。
2. 第二新卒の転職市場での価値は?
企業側から見た第二新卒のメリットは「コストの低さ」
第二新卒は転職市場でどういった価値があるのでしょうか? 企業側から見た第二新卒の最大のメリットは最低限の経験はあるが、若いがゆえの「コストの低さ」です。
大規模な説明会を開催したり、企業パンフレットを大量に渡す新卒採用と違って、第二新卒は採用にかかる費用が抑えられます。また、採用後も社会人としての基礎的なマナー等は身に着いているので研修は最低限でOK。さらに中途採用で年齢の高い経験者を採るよりも、給料も低くて済みます。
また、社会人経験が浅いので、前の会社の風土に染まっておらず、企業に馴染みやすい柔軟性があると考えられています。つまり企業は、「コストのかからない新人」という目で第二新卒を見ているのです。
企業から見たメリットをまとめると以下の通り。
【企業が第二新卒を採用するメリット】 ◆コストが低い ・採用自体のコストが安い ・基本的な社会人のマナーが身に着いている(研修不要) ・中途採用でそれなりの年齢の経験者を雇うより給料を抑えられる ◆前職の勤務年数が少ない分、企業文化に染まっておらず柔軟性がある ◆新卒者は大手企業に流れがちだが、第二新卒は中小企業にも来やすい |
企業側から見た第二新卒のデメリットは「またすぐ辞める」
一方、最大のデメリットは「またすぐ辞めるかもしれない」ということです。
前職を3年以内に辞めてしまっているということは、ストレス耐性が低い人材かもしれません。また、「実際に働いてみたらイメージが違った」というように、考えが甘かったり、自分がどんなキャリアを積んでいきたいのかというビジョンがあいまいな可能性もあります。
そのため、第二新卒は「長く働いてくれる人材かどうか」という点では、企業から非常に厳しい目で見られることは間違いありません。
企業から見たデメリットをまとめると以下の通り。
【企業が第二新卒を採用するデメリット】 ◆前職を3年以内に辞めたため、またすぐ辞めるかもしれない ・ストレス耐性が低い可能性がある ・キャリアビジョンがあいまいな可能性がある ◆経験者よりも仕事を教える労力がかかる ◆新卒と違って立場が中途半端で、他の社員との扱い方が難しくなる |
第二新卒の評価基準は「社会人の基礎」と「ポテンシャル」
以上のメリット・デメリットから、企業が新卒採用をする際に見てくるのは「社会人としての基礎」と「ポテンシャル」です。
第二新卒には、新卒と違って社会人としての常識やマナーを身に着けており、新卒以上に会社にどう貢献できるか、明確な意識を持っていることが期待されています。しかし中途採用者ほどの経験・実績があるわけではないので、即戦力となることよりもむしろ「今後会社にどのように貢献してくれそうか」というポテンシャルで評価されます。
そこをしっかりとアピールできるように履歴書や面接の対策を練る必要があります。次の項からは、対策について見ていきましょう。
3.第二新卒が転職活動で気をつけるポイントは?
新卒の就職活動との違いは?
第二新卒の転職活動は、一般の転職活動と同じです。新卒の就職活動との最大の違いは、ある時期に様々な企業がいっせいに採用活動を行うのではない、ということでしょう。募集のあるときにタイミングよく応募しなければならず、狙った会社に行けるかはある意味運の世界なのです。
募集数も1~若干名と少ないことが多く、研修後に配属が決まるのではなく「システム部のエンジニア職」「第二営業部の営業マン」といった具体的なポジションに応募します。
そのため、一括で行われる就職活動と違って、「××社のエントリーシート攻略法」といったノウハウの共有はありません。誰かのマネをしてもうまくいかないのが第二新卒の転職活動なのです。
【新卒の就職活動と、第二新卒の転職活動の主な違い】 ・募集時期が決まっていない ・募集人数はひとつのポジションに1~若干名程度 ・1ヵ月半~3ヶ月程度と、転職活動の期間が短い ・2~3回の面接で済む企業が多く、採用ステップが少ない ・エントリーシートではなく履歴書・職務経歴書を提出 ・グループ面接はまれ ・「去年は面接でこれを聞かれた」といった口コミ等の情報がほとんどない |
第二新卒の転職活動の流れ
では実際に第二新卒の転職活動はどのように進めていけばいいのでしょうか?
基本的には以下のステップを踏んでいきます。
転職するかどうかを考える(1) ↓ 応募したい企業を探す(2) ↓ 履歴書を送って応募(3) ↓ 面接(4) ↓ 内定(5) ↓ 前職を退職・入社(6) |
(1)本当に転職すべきかどうかは熟考を
「給料が低い」「上司と合わない」など、今の仕事に不満があって転職活動を考えている人は、本当に転職すべきかどうかをもう一度よく整理しておきましょう。
第二新卒での転職は、社会人としてのキャリアを積んでいく上での大きな決断となります。一時の不満から感情的に転職を決めてしまうと、次の職場でもすぐに不満が耐えられなくなり、転職を繰り返すということになりかねません。
そういった事態を避けるためにも、自分が何を求めて転職するのか、どの業界でどんな仕事をしたいのかという軸をはっきりさせ、転職でしか実現できないのかをじっくり考えてみましょう。
(2)応募する企業の探し方
第二新卒の転職活動では、まず情報収集をして応募する企業を決めます。求人の探し方には以下のような方法があります。
・転職エージェントを使う
・求人サイトを使う
・企業のウェブサイトから直接探す
・ハローワークを使う
・人脈から紹介してもらう
▼転職エージェントを使う
転職エージェントとは、専任のキャリアアドバイザーとの話し合いをしながら自分の進むべき方向を見定め、それに合う求人を紹介してもらえるサービスのことです。経験も浅く、自分にどんな仕事が向いているのかわからなくて不安な人こそ、積極的に転職エージェントを使うことをおすすめします。
【メリット】 ・どんな求人に応募すればいいかわからない人も親身に相談に乗ってもらえる ・採用する企業側がエージェントにお金を出すので、無料でサービスを受けられる ・履歴書の書き方や面接についてもアドバイスをもらえる ・面接時間の調整や、内定後の労働条件の交渉もしてもらえる 【デメリット】 |
無料でさまざまなサービスを受けられて便利な一方、担当者の人となりによってはデメリットのような残念なケースもあります。いくつかのエージェントを併用してみるのもよいでしょう。
転職エージェントには、全国規模の大手から地域に根ざした中小までいろいろな会社があるので、自分に合いそうなところを探してみましょう。
▼求人サイトを使う
リクナビネクストやマイナビ転職など、大手求人サイトの検索項目には「こだわり項目」として「第二新卒歓迎」があるところもあります。そういった企業を探していくと、第二新卒に有利な条件の仕事が見つかる可能性があります。
【メリット】 ・自分のペースで転職活動を進められる ・多くの求人を見て比較することができる 【デメリット】 |
▼企業のウェブサイトから直接探す
大手企業などでは、自社のサイトで中途採用の募集をしていることがあります。新卒の就活時に不採用だった憧れの会社で募集がでていないか確認してみるのもよいでしょう。運よく自分のやりたい仕事の募集を見つけられた場合は、チャンスを逃さずに応募しましょう。
【メリット】 ・働きたいと思っている企業に直接応募できる ・「とにかくこの会社に入りたい」という場合に、会社内のどんなポジション・部署に募集があるのか一度に確認できる 【デメリット】 |
▼ハローワークを使う
ハローワークでは、基本的には失業者向けの求人を取り揃えています。よって、若い人向けの求人が少ないという事情があり、第二新卒の方にはあまりおすすめできません。
ただし、転職エージェントや求人サイトの内容が充実していない地方では、ハローワークが頼りになることもあります。
【メリット】 ・企業側が無料で登録できるので、求人サイトやエージェントにない企業が見つかる可能性がある ・転職エージェントや求人サイトがカバーしていない地域でも求人を探せる 【デメリット】 |
▼人脈から紹介してもらう
家族や親戚、学生時代の先輩、現在働いている会社で培った人脈などから、転職先を紹介してもらえることがあります。しかし、働き始めてからそう経っていない第二新卒の場合はなかなか難しいかもしれません。
また、転職することを周囲に打ち明けるタイミングの問題もあるので、もし「人材を募集している会社はないか」と相談する場合はくれぐれも慎重に。
【メリット】 ・信用に基づく紹介なので、内定が出やすい可能性がある 【デメリット】 |
(3)履歴書・職務経歴書を書く際のポイント
応募したい企業が決まったら、応募書類を作成します。たいていの企業で求められるのは「履歴書」「職務経歴書」のふたつです。企業のウェブサイトから直接応募する場合は、エントリーフォームからの登録を求められたり、企業によっては履歴書の決まったフォーマットがあったりするのでよく確認しましょう。
また、履歴書や職務経歴書の内容では、第二新卒の人は「新卒とは違い経験があること」「経験者と違って柔軟性があること」をアピールするために、下記のポイントに気をつけて書いてみてください。
▼志望理由は経験を踏まえて書く
せっかく新卒で入社した会社を辞めてまで応募してくるからには、なにかはっきりとした志望理由があるはずだ、と企業の人事は考えます。逆に仕事の経験を踏まえた上で転職活動をしているのに、仕事に対する意識が甘いようでは書類選考を通すことはできません。
これまでの社会経験を踏まえて、今後どのように働いていきたいのかのビジョンが明確になる志望動機を書いてください。
例) これまでの2年間、私は経理部門で働いてきました。前職で新たな会計ソフトが導入された際にはいち早く使い方を覚え、より使いやすくなるようにシステム部に提案を行いました。その経験から、会計ソフトを作るSEとして働くことに興味を持ち、未経験でも働けると伺い貴社を志望いたしました。これまで働いてきた経理としての知識を生かしながら、貴社の経理ソフトの改善に取り組めるSEとして活躍したいと考えております。 |
▼自己PRではポテンシャルをアピール
第二新卒の転職活動では経験の浅さから、履歴書の自己PR欄に書けるような実績がない、と悩むことがあるかもしれません。そんな場合は、自分の資質で仕事に役立つポテンシャルがないか考えてみましょう。できれば働いていた期間のエピソードがあると良いですが、なければ学生時代の活動なども含めて考えてみても問題ありません。
例) 私の強みは絶対に諦めない粘り強さです。この粘り強さは、学生時代にやっていた柔道で培いました。前職の販売の仕事でも、年末セールで誰よりも大きな声を出して粘り強くお客さんにアピールすることで、無事に目標としていたおせち100個を完売させることができました。今回希望している営業職は、未経験のBtoBの仕事となりますが、この粘り強さを武器に貴社に貢献していきたいです。 |
(4)面接での答え方のポイント
面接では、必ず「なぜ新卒で働き始めて3年も経たないうちに辞めるのか」ということを詳しく聞かれます。その際、会社に問題があったなど、後ろ向きな理由を話すのは避けましょう。
また、明るくはきはきと話し、先方の話は素直で謙虚に聞くことで、中途採用者にはないフレッシュさや柔軟性を見せることも大切。社会人らしい服装や、面接のマナーにも注意して臨みましょう。
▼退職理由は前向きなものを話す
たとえ本音では「やりたい仕事ではなく、退屈な仕事割り当てられた」「給料が安い」「土日出勤が嫌だ」といった理由で退職するのであっても、そのまま話してしまうのはNG。退職理由は前向きなものを話しましょう。
例) 前職では企画開発の仕事を志望して入社したのですが、配属になったのは総務部でした。総務の仕事をすることで、ひとつの会社を運営していくには細かい部分で様々な気を配らなくてはならないということを実感することができ、とても勉強になりました。しかしやはり当初から志望していた開発の仕事をしてみたいと考え、上司に異動を申し出ましたがかなわないとのことだったので、退職を決断いたしました。 |
▼「またすぐ辞める」と思われないために長期視点をアピール
企業の採用担当者が一番気にしていることは、「せっかく採用しても、またすぐ辞めてしまうのではないか」ということです。そう思われないためには、長期にわたってこの会社でキャリアを築いていく意思があることを伝えましょう。
例) これまでの仕事では、社会人としての基本を身に着けることはできましたが、まだ自分から何か提案するような立場に至ることはできませんでした。まだまだ勉強しなければならないことも多い私ですが、御社にご採用いただけた場合は、できるだけ早く自分の考えで仕事を進められるように務め、今度は末永く会社に貢献できるように頑張りたいです。 |
▼面接での立ち居振る舞いにも注意
社会人としての基本的なビジネスマナーが身に着いているかどうかは、面接での態度で相手にはっきりとわかってしまいます。服装や面接のマナーなどは、面接を受けに行く前によく確認をしておきましょう。
(5~6)退職準備は内定をもらってから
無事に面接を通過し、内定をもらったら退職の準備に入ります。まずは自分の上司に退職の意向を伝え、退職届を提出します。無事に退職日が決まったら、業務の引き継ぎやデスクの整理、退職の挨拶メールの準備などをしていきましょう。
初めての退職では、退職自体を気まずく感じるかもしれませんが、転職は悪いことではありません。社会人であれば転職するのも当たり前ですから、お世話になった人たちへの感謝の気持ちを忘れず、円満に退社できるように心がけましょう。
▼職場に退職を切り出すタイミングは?
現在働いている職場に退職を切り出すのは、転職先の内定が出てからにしましょう。法律では、退職は「2週間前まで」に申し出ればよいことになっていますが、会社の規定によっては「1ヶ月前まで」といった期間が定められていることがあります。引継ぎなどに問題が出ないよう、転職活動を始める前に社内のルールや先輩の前例を確かめておきましょう。
4.まとめ
以上が第二新卒で転職をする際のポイントです。第二新卒での転職は、思い切った決断が必要になりますし、第二新卒ならではの注意点もあります。
しかし、この記事のポイントを抑えておけば、自分に合った仕事や働き方をかなえることができるはずです。