内定辞退の方法

転職活動時、波風立てずに内定を辞退するためのノウハウ集

 

転職活動の中で、複数の企業から内定をもらえることがあるかもしれません。ただし、あなたが入社できるのはもちろん1社のみ。入社を決めた企業以外からの内定は、辞退しなければいけません。

「内定辞退はいつまで認められる?」「どんな理由を伝えれば失礼にならない?」

ここでは、内定辞退を企業側に伝えるためのノウハウをお伝えします。ビジネスパーソンとしての礼儀やマナーにのっとり、できるかぎり波風を立たせずに内定辞退の意を企業側に伝えられるようにしましょう。

 

1.転職活動時の内定辞退の心得

転職活動時の内定は辞退できる

結論から言うと、転職活動時に企業から出された内定は辞退することができます。

企業側からすれば「辞退しないで欲しい」という声が本音であることは間違いありませんが、転職活動で1社しか受けないというケースばかりではないことも、採用担当者はよく知っています。

ある企業の採用担当者であるAさんは、内定を辞退されることに対し、全面的に否定はしないと言います。

「採用活動をやり直す手間やコストなどを考えると、内定辞退はできればやめてほしいですね。しかし、内定辞退せざるをえない転職希望者の事情もわかっているため、ある程度は仕方がないとは思っています」

誠意を込めた態度と、きちんとした謝罪の気持ちを伝えることが、スマートな内定辞退のための一番重要なコツなのです。

本命企業以外から、先に内定が出たら…「受諾」ではなく「保留」を

本命企業よりも前に、第二志望以下の企業から内定が出ることもあるかもしれません。その場合は安易に受諾をせず、しばらくの間待ってもらえるよう企業側に伝えましょう。

内定を保留のまま、企業が待ってくれるのは大体1週間。どんなに長くても2週間前後といわれています。

また、内定保留を伝える場合は理由を聞かれることが多いですが、ここは素直に言う必要はありません。「家族に相談してから決めたいので」などにすると良いでしょう。「第一志望の企業からの結果が来るまで待ってほしい」などとストレートに言うと、企業によっては気分を損ねてしまうことも。入社意欲が低いと見なされ、最悪の場合内定取り消しになるケースもあるので、理由は慎重に伝えましょう。

もしも受諾してしまったら…
受諾してからの内定辞退は、速やかに連絡を

内定は、法的に言うと入社日の前までであれば辞退することができます。内定が出てから受諾するまでの間に辞退する場合も、内定を受諾した後に内定辞退を告げる場合も、内定辞退の方法に違いはありません。具体的な伝え方については『2.内定辞退を伝えるのは電話で(例文付き)』を参考にしてください。

企業によっては内定・入社を受諾した段階で「内定受諾書」「入社受諾書」などの提出を求められるケースもありますが、これらの書面に法的な拘束力はありません。「書類提出後の内定辞退は認められないのでは…」などと悩まず、しっかりと内定辞退の意思を企業側に伝えましょう。

ただし、「内定辞退はいつでもできる」とは考えないように注意が必要です。あなたの中で内定を辞退することが決まり次第、1日でも早く企業に連絡を入れましょう。速やかな報告は、社会人として最低限度のマナーです。

また、企業側は、内定を出してから着々とあなたを受け入れる準備を進めています。あなたに任せたい仕事を整理したり、研修資料を作成したり、あなたの使う備品を用意したり…内定を辞退するということは、こうした企業側の準備をすべて無駄にしてしまうということ。迷惑をかけてしまったことを自覚した上で、真摯な態度で伝えることが大切です。

2.内定辞退を伝えるのは電話(例文付き)

企業側に内定の意志を伝える最適な伝達手段と、必ず伝えるべきポイントをお伝えします。

自分で企業に応募している場合は電話がベスト

内定辞退を伝える手段は、「誠意を見せる」「できるかぎり迅速に伝える」という2つの観点から電話が最も適しています。

内定辞退を伝えるというのは、どんな場合であっても気詰まりなもの。できる限り相手側と接点を持たずに伝えられれば…とメールで伝えたい気持ちもわかりますが、ここは相手への誠意の気持ちを大切にして、採用担当者へと電話をかけましょう。

電話の時間は10:00~12:00、14:00~17:00の間に

電話をかけるタイミングに関しても、相手側への配慮は欠かせません。何かとバタバタしている始業前後・定時前後や、席を外していることが多いお昼時を外して連絡しましょう。

理由は「検討の結果、申し訳ありませんが辞退させていただきます」がブナン

内定を辞退する際、一番困るのが「辞退の理由」。条件面に不満がある、同時に応募していた他社からも内定が出た…など、理由は人によってさまざまかとは思いますが、すべて正直に伝える必要はありません。

「検討の結果、勝手ながら辞退させていただきます」と理由を明らかにしない言い方が一番ブナンといえます。

もちろん、企業によっては、なぜ内定を辞退するのかという理由を詳しく掘り下げてきたり、入社先の情報を聞いてきたりすることもありますが、実はそうした企業は少ないもの。内定辞退の理由は「聞かれたら答える」といったスタンスでいた方が賢明といえます。

伝えるべきは、内定辞退に至った経緯よりも「内定を辞退することにした」という意志と「迷惑をかけて申し訳ない」という謝罪の2点です。ポイントをぶらさないようにしっかりと伝えましょう。

求められた場合は、直接の訪問を

基本的には電話でのやりとりで、内定辞退は受理されます。ただ、中には「具体的にお話をうかがいたいので、直接来ていただけますか」と来社を依頼されることも。この場合は、誠意を見せるという意味で先方に依頼されたとおりに来社しましょう。

来社の場合、電話よりもハッキリと辞退の理由を求められることがあります。ただし、引きとめるためや、あなたを責めるために呼ぶ企業はほとんどありません。「最後に、断られた理由を面と向かって聞いておきたい」という想いからの来社依頼だと考えて、論理的に理由を話す準備だけはしっかりしつつ、あまりかまえず臨みましょう。

内定辞退の連絡例

以上のポイントを踏まえて、電話で企業に内定辞退の連絡を入れる際には下記のような内容にすると良いでしょう。

内定辞退の理由を一切自分から伝えない場合と、他社からもらった内定を受諾するという理由から辞退する場合の2通りの例を紹介するので、参考にしてください。

<理由を一切言わない場合>

お世話になります。内定の通知をいただきました田中太郎と申します。先日は面接のためにお時間を割いていただき、誠にありがとうございました。

大変申し上げにくいことなのですが、この度は御社よりいただきました内定を辞退させていただきたいと思い、ご連絡させていただきました。

家族とも相談し、十分に考え悩んだ末、勝手ながら辞退させていただきたく決断いたしました。

御社にはたいへんご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ございません。何卒よろしくお願い申し上げます。

 

<他社からもらった内定を受諾する旨を伝える場合>

お世話になっております。

先日、内定の通知をいただきました田中太郎と申します。

この度は、内定のご連絡をいただきまして、誠にありがとうございます。

実は、今回内定をいただいたにもかかわらず恐縮ですが、御社への入社を辞退させていただきたくご連絡させていただきました。

実は御社以外にも面接を受けており、そちらから内定をいただいたのが理由です。

御社にも大変魅力を感じていて非常に迷ったのですが、自分の将来を考え、キャリアアップに繋がる仕事をいち早く任せてもらえる環境に行きたいという思いに至り、慎重に検討した結果、他社に入社することを決断いたしました。

こちらの一方的な都合で恐縮ですが、ご理解のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。


転職エージェント(人材紹介会社)を利用している場合はメールでも電話でもOK

転職エージェント経由で転職活動をしている場合、あなたが企業に直接連絡をとる必要はありません。担当のエージェント相手に、メールもしくは電話で内定辞退の意志を伝えましょう。この場合も、内定を辞退することが決まり次第迅速に連絡することを忘れずに。

エージェントの場合、必ずと言っていいほど内定辞退の理由を詳しく聞いてきます。ここは、その理由がどんなものであっても素直に答えておきましょう。

エージェント側からすると、内定辞退の理由は今後の企業選びの指標にも影響する大事な要素。率直に伝えることで、あなたの希望に沿った求人を紹介してもらいやすくなります。

また、辞退理由が給料などの条件面だった場合、エージェントが企業側に交渉してくれるケースもあります。伝えておくに越したことはありません。

この場合も、企業を紹介してもらったお礼と、手間を掛けさせてしまったことへの謝罪の気持ちが伝わるように丁寧な文面を作成しましょう。

3.さいごに

内定を辞退すること自体は、仕方のないこと。大事なポイントは、企業側に不快な思いを抱かせないようにして自分の意志を伝えることです。お互い納得の上で内定を辞退できるよう、誠意をもって内定辞退の連絡を入れましょう。