第3章 言葉の使い分けを身につける
28,手法を表す「方法」「手口」
方法 作業効率を上げるには、最適の方法を見つけることだ大事です。
手口 この手口からすると、どうやらプロの仕業ではないかと思われる |
→マイナスイメージの「手口」「やり口」
<手法を表す言葉一覧>
- 「方法」・・・最も適用範囲が広い言葉です。例えば、「この考察は方法的なまちがいを冒している」といった評論文にも、「うまい方法がみつからないんだ」とう会話文にもすんなり収まります。
- 「手口」・・・文脈を選びます。マイナスイメージがとても強い言葉なので、犯罪など限られたケースにしか用いません。
- 「手段」・・・方法よりやや改まった感じ。具体的なことに用いるケースが多い(例、どんな手段を取ろうが、人命を救助しなくてはならない。なんてあくどい手段をとるんだ)。方法よりもあくどさが強まる。
- 「やり方}・・・方法・手段より改まらない平易な表現(例、やり方が少しまずかったのかもしれない)
- 「仕方」・・・方法と同義の平易版(例、今日は英語の挨拶の仕方を学んだ)
- 「手だて}・・・方法・手段と同義のほかに策略の意味もある(例、この壁を突破する手立てがどうにも見つからない。
- 「手」・・・方法・手段よりも平易で会話的な表現。(例、八方手をつくしたけれど、だめだった)
- 「流儀」・・・独特のやり方。技能、芸術などで人、流派などの方法を指す。(例、”オレ流”が落合監督の流儀として話題になった)。
- 「ハウツー」・・・物事のやり方や作り方を指します。
- 「ノウハウ}・・・ハウツーよりも少し専門的なニュアンスが出てき、技術的知識・情報やコツといった意味で使われています。
- 「マナー」・・・行儀・作法など社会的な決まりとして定型化されたものを指します。
29、守るべきこと「決まり」「しきたり」
決まり 学校には学校の、会社には会社の決まりがある。
↓ しきたり この地方には古くからしきたりがたくさん残っている。 |
→いつからあるか、どんな人が使うかで使い分ける
主な使いどころ・・・
●関係者の間-規約(町内会の規約)
●公的-おきて(掟)(社会、組織、団体など)-慣習(民族、地方など)
●官公庁や企業-規程(服務規程)
<決まりを表す言葉一覧>
「決まり」・・・何かを決めてみんだで守るようにする。その取り決めが決まりです。かたいものからやわかなものまで、文章も会話もという具合に、取り決め全般をカバーします。規則はややより固くなる。
「しきたり」・・・古風な響きがあります。以前からの慣わしという意味です。「慣わし」とは個人や社会が繰り返し行ってきたことであり、要するに以前からある決まり事です。
「規則」・・・「決まり」のややかたい表現。行動や事務処理の基準となる取り決め(交通規則をしっかり守りましょう)
「おきて」・・・公の決まりのことだが、”必ず守るべき”という強い意味を含む。(自然界には弱肉強食の厳しいおきてがある)
「さだめ」・・・おきてとほぼ同義。かたさがあり、改まった文章に用いられる。(それが世のさだめというのなら、従うことにいたします)
「慣わし」・・・個人や社会が繰り返し行ってきて”しきたり”になったこと。(お盆に家族全員が集まるのが、わが家の慣わしだ)
「慣習」・・・ある民族や社会で伝統的に決まっている行動様式。改まった文章に用いる。(新参者が地域の慣習を無視すると、摩擦が起きやすい。
「習慣」・・・日常の決まりきった行為のあり方。「慣習」より狭い個人や家庭にも使う(早寝早起きの習慣がみについた)
「決まり」につく動詞の基本は「守る」「破る」
●守る:守る、従う、服する、順守する、厳守する、遵奉する(従い、固く守ること)、受け入れる ●破る:破る、背く、反する、違背する、無視する、反抗する、抗う |
30、思いつくこと「発想」「着眼」
発想 彼は発想はよいのだが、それを形にする実行力に乏しい。
着眼 ユニークが着眼点が、ストーリーを面白くしている。 |
→考えのひねり出し方に応じて多様な表現がある
思いつくことを表す言葉
「発想」・・・頭に浮かぶ考えのことで広く使われます。芸術や創作、企画などに関するいちばん基本的な考えが発想でそれを推し進めて全体の内容や実現方法などを組み立てることを「構想」と言います。この場合、発想は構想の前段階として位置づけられます。
「着眼」・・・特定の所に眼をつけることと、そのつけ方を意味します。ふだん、人が気づきにくい点に眼をつけた場合に用いられます。
「発案」・・・新しく考え出すこと。最初に考えることを指し、立案の前段階。(この製品の発案者は、これで特許を取った)
「立案」・・・案を立てること。発案した案の具体的計画を工夫すること。(このプロジョクトの立案に際しては、安全を第一に考えた。
「考案」・・・工夫して新しい方法や商品を考え出すこと。(従来とは方式をまったく異にする製品を考案した)
「着想」・・・物事の計画や方法に関する工夫や考え。「発想」より具体的。(この推理小説の着想は、現実の事件から得たそうだ)
「アイディア」・・・「思いつき」ほど気まぐれでなく、着想ほど練っていない考え。(主婦が考えたアイディア商品の展示会が開かれている。
「思いつき」・・・瞬間的に頭にひらめいた考え。いい加減な考えを指す。(単なる思い付きの発言を控えていただきたい)
考えの内容をほめる表現
●名案/良案/妙案/新案/創案 ●独創的な/ユニークな/独自の/独特の/オリジナルな/奇抜な/新奇な/考え抜かれた/卓抜な/革新的な/スケールの大きな/壮大な ●優れた/よい/うまい/すてきな/すばらしい/秀逸な |
31、場を表す「世間」「社会」
世間 世間はそう甘いものではない
社会 卒業おめでとう。いよいよ社会へ出ていくね |
→限定した範囲の「世間」、広い範囲の「社会」
<場を表す言葉一覧>
「世間」・・・そこに住む人間つまり周囲の顔を見える人たちを意識した言葉です。
「社会」・・・もっと広い範囲を指し、会話からかたい文章まで広く使われます。
「世の中」・・・「世間」同様、他者との関わりを意識するが、「世間」より広い。(例、こんな善意に触れると、世の中、捨てたものではない。
「世」・・・さまざまな人間関係、社会関係を統括して言う。(民主主義の世のなのに、許し難い横暴がまかり通っている。
「ちまた」・・・もとは「道股」。「繁華な通り」を経て、世間の意。やや古めかしい。(今、ちまたではこの手の商品が流行っているそうだ)
「浮世」・・・「憂き世」と「浮世」(はかない世)を混成した言葉。つらくはかない世。世間。人生。
「娑婆」・・・苦しみ多くたえるべき世界。逆に、束縛の多い世界から見た自由な世界(俗世間)も表す。(しばらく人里離れたところに居たので、娑婆の空気が恋しい)
「世界」・・・同じ職業など、同類の者の集まり、その範囲(しょせん、君と僕とは生きている世界が違うのだ)
「ゲマインシャフト」・・・共同社会。家族や村落など、人々が地縁・血縁・精神的つながりなどで自然発生的につくった集団です。
「ゲゼルシャフト」・・・利益社会。国家から都市、会社や組合まで、ある特定の目的や利害を達成するために作為的につくった集団です。
32、自分以外を示す「他人」「よそ物」
他人 親友も最初は他人同士だった。
よそ者 この土地の人たちは、よそ者になかなか打ち解けてくれない。 |
→血縁にもとづく「他人」、地縁にもとづく「よそ者」
<自分以外を表す言葉>
- 「他人」・・・第一の意味は”親類縁者などでない人”です。さらに、自分以外の人全般を広く指す用法があります。
- 「よそ者」・・・地縁をもとにしています。その土地とは関係ない人、つまり、他の土地から来た人、他国者と言う意味で、土地に限らず、サークルや組織などの所属が異なる人も指します。
- 「他者」・・・使い方が「他人」と近いが、主に文章で用いられ、ややかたい。(他者に依存する癖をなくさないと、いつまでたっても自立できない)
- 「別人」・・・ある人とはまったく別の人の意。ほかの人。(変装した彼は、別人のように振舞った)
- 「第三者」・・・当事者以外の人。利害関係がない、との意味をよく含む。(冷静になるため、第三者の判断を仰いでみてはどうか。
- 「余人」・・・それ以外の人、自分以外の人。(あの人の能力は、余人ももって代えがたい)
- 「人」・・・「我」に対する語。他人の意味。(人のことは気にせず、自分のことだけに専念しなさい)
自分のことを表す言葉
●自分/自身/自己/己(おのれ)/我/本人/当人/当方 ●両性・・・私(わたし)/わたくし/わたくしめ/あたくし/あたし/あっし/わて/自分/手前/余・予/不肖/それがし(某))/愚生 ●男・・・僕、俺、俺様、わし、わい、我、おいら、小生、吾輩、拙者、老生、吾人 ●女・・・あたい、うち、わらわ |
33、お金を借りること「借金」「負債」
借金 借金が払えず、とうとうサラ金に手を出しそうだ。
負債 この社の再建は、多額の負債をどう整理するかにかかわっている。 |
→つけや借り(くだけた表現)から債務(法律上の義務)まで
<お金を借りることを表す言葉>
「借金」・・・個人の住宅ローンから国の借金である国際まで、経済はさまざまな借金で動いています。
「負債」・・・少しかたく響き、使い方も選びます。「負う・債務」なので、他者に弁済すべき法律上あるいは慣習上の債務のことです。
「借り入れ」・・・必要な金を政府や銀行などから借りる意で用いることが多い。(政府系金融機関からの低利の借り入れで何とか一息ついた)
「ローン」・・・貸与金、信用取引の意味だが、消費財やサービスなどの借主の立場から借金と同義で用いられる例も多い。(車のローンをようやく払い終えた)
「借財」・・・借金を指す。古風な響きがあり、改まった文で用いられる。(事業に失敗し、巨額の借財を負った)
「借款」・・・国際間で金銭を借り入れること。政府間レベルと民間レベルがある(東海道新幹線は世界銀行からの借款で建設された)
34、「こと」は個人、「もの」は一般
こと わからない言葉にぶつかったら、とにかく辞書に当たってみることだ
もの 苦労して得た知識は、なかなか忘れないものだ。 |
→「こと」と「もの」を入れ替えると意味が変わる
●貴重な落とし物を届けてもらえるとは、実にうれしいことだ→個人の意見
●初孫の誕生は、実にうれしいものだ→一般論
「こと」を使った上の文は、話して個人の思いを述べています。「もの」を使った下の文は、人はみな同じ気持ちになるはずだとの不偏心理に基づいています。
35、理由を表す「せい」「おかげ」
せい 低気圧がちかづいているせいで、雲行きが怪しくなってきた。
↓ おかげ 先生のご指導のおかげで、無事に審査に通りました。 |
→「せい」はマイナス、「おかげ」はプラスの文脈で使う
<理由を表す言葉一覧>
「せい」・・・多くはよくないことに用いられます。
「おかげ(お蔭)」・・・こちらはプラスイメージの表現です。人から受けた力添えや神仏の助けなどへの感謝を含んでいます。
「ゆえ」・・・やや古めかしい感じ、主に文章に使われる者。(貧しいがゆえに、犯罪に手を染めてしまう)
「賜物」・・・神からたまわったものの意味から、よい結果に使うプラスイメージの表現。丁重な感じが強い(優勝はチーム全体の努力の賜物だ)
「ため」・・・因果関係を示す。目的を表す「ため」と紛らわしいので要注意。
「から」・・・用言(形容詞、動詞など)の終止形につけて理由・原因を表す
「結果」・・・「原因→結果」の「結果」をそのまま表に出した表現(苦労した結果、高い評価が得られた。)
<因を使った熟語が表すきめ細やかな原因>
一因(原因の一つ)、遠因(遠い間接的原因)、外因(外部の原因)、起因(それを原因として何かを引き起こすこと)、真因(本当の原因)、成因(物事のできあがる原因)、素因(もとになる原因)、動因(事件などを引き起こす直接原因)、内因(内部の原因)、誘因(ある作用を引き起こす原因)、要因(主な原因) |
36,気合を入れて取り組む表現
本気 ようやく彼も本気になってくれたようだ
真剣 聴衆はその講演に真剣に耳を傾けた |
→気合の入れ方で「本気」から「真剣」に移る
<本気・真剣に関する言葉一覧>
- 「本気」・・・本当の気持ちであり、冗談やふざけ半分とは違うということ。
- 「真剣」・・・本気と同義であるが、本気度が最も高まったことを表す言葉。
- 「本腰」・・・本格的な気構え。「本腰」は本気になったときの腰の構え。「~を入れて」「~を据えて」(自治体としても、本腰を入れて復興に取り組む
- 「熱心」・・・情熱をもって一心に取り組む姿勢。(集いに熱心に誘ってくれた)
- 「命がけ」・・・命を捨てるほどの覚悟で取り組むさま(事故現場では命がけの救出作業が続いた)
- 「死に物狂い」・・・死ぬほどの覚悟で取り組むさま(受験直前には死に物狂いで勉強に打ち込んだ)
- 「必死」・・・命を投げ出すくらい全力を傾けるさま。ただし、現実に死ぬことはなく、命がけや死に物狂いよりは軽い表現
- 「捨て身」・・・わが身を捨てる覚悟で事に当たる姿勢(捨て身の反抗に出たら、勝機が生まれた)
- 「一心不乱」・・・一つのことだけを考える(一心不乱に母を看病した)
- 「一意専心」・・・課題に一意専心で取り組む。(一事に集中する)
- 「無我夢中」・・・心を奪わえ我を忘れる(演奏中は無我夢中だった)
- 「不眠不休」・・・眠らず休まず(不眠不休で頑張る)
- 「一所懸命」・・・一心に必死になるさま(何事も一所懸命にやれば、成果が出るものだ)
37、美しいさまを表す
美しい 山頂から望む美しい景色には、誰もが心打たれます。
きれい 見て!きれいな月が出ているよ 麗しい 見目麗しいお姫様です。 |
→基本表現「美しい」、会話表現「きれい」
<美しさと表す言葉>
- 会話向きが「きれい」、幅広く使えるけれどやや改まった感じなのが「美しい」、一層改まって古風な感じなのが「麗しい」となります。
- 「華やか」・・・”はなのように美しい”から発し、派手な美しさ、盛んなさまを表す。(彼女が来ると、その場がぱっと明るくなる。実に華やかな人だ。
- 「あでやか」・・・なまねかしい美しさ、濃厚な美しさ表す。(彼女のあでやかな姿に、一同は目を奪われた)
- 「きらびやか」・・・輝くばかりに見事に美しい様子。(スターが勢ぞろいする、きらびやかな舞台となった)
- 「小ぎれい」・・・身づくろい、部屋がなどがさっぱり整っているさま。(あの家族は、いつも小ぎれいな服装をしている)
- 「派手」・・・外見や行動などが一目を引く様子。(都会の派手な生活にあこがれた)
<不快を催させる言葉>
- 「醜い」・・・醜い骨肉の争いを演じた(いやな感じがし、目をそむけたくなる様)
- 「醜悪」・・・きわめて不快なさま。醜いよりも強い(醜悪な権力争い)
- 「見苦しい」・・・見ているだけで不愉快になるさま(見苦しい姿をおみせしてしまった)
- 「みっともない」・・・体裁が悪い様(みっともない負け方だ)
- 「けばけばしい」・・・品がなく、派手さが目立つさま(けばけばしい看板が乱立している)
38、年齢で異なる”かわいさ”
かわいい 道端にかわいい花が咲いていた
愛くるしい なんて愛くるしい顔立ちの子なんだろう。 |
→幼児のかわいらしさを表す「愛くるしい」、年齢が上がると「愛らしい」
<かわいさを表す言葉>
- 「かわいい」・・・人や動物に限らず、さまざまなものの外見や仕草などに、かわいさ。
- 「愛くるしい」・・・対象を選び、幼児のあどけない可愛さを表すのです。似た言葉の「愛らしい」は、幼児よりも少し年上の、主に女の子の、愛さずにはいられないかわいさを表します。
- 「かわいらしい」・・・小さい存在が人を微笑ませる感じ(かわいらしいイヤリングをしている)
- 「いじらしい」・・・弱いものが一所懸命であるなど、けなげや痛々しい感じ。(子供同士で助け合う姿が、いじらしい)
- 「可憐」・・・守ってやりたくなる気を起させるかわいさ、いじらしさ。(人知れず野に咲く花は可憐だ)
- 「あどけない」・・・無邪気で幼い感じのかわいさ(その少年の顔は、まだあどけなかった)
- 「いたいけ」・・・小さくてかわいい、いじらしくて痛々しい様。(いたいけな幼児を虐待するとは、許せない)
<”憎さ”の程度は~い、~らしい、~たらしい>
- 「憎い」・・・しゃくにさわる気持ち(こんな運命が憎い)
- 「憎らしい」・・・かわいげがない(あいつはいつでも憎らしい口をたたく)
- 「憎たらしい」・・・態度や様子がいかにも憎い(憎たらしいったら、ありゃしない)
- 「憎々しい」・・・非常に憎らしい(憎々しい態度だ)
- 「小憎らしい」・・・生意気で憎らしい(子供のくせに小憎らしい言い訳をする)
39、好ましい気分を表す
うれしい 合格でき、とてもうれしい。
喜ばしい 彼女が合格できたのは、とても喜ばしい |
→主観表現「うれしい」、客観表現「喜ばしい」
<好ましい気分を表す言葉>
- 「楽しい」・・・気にかかることが何もなく、明るい満たされた気分。(飲んだり食べたり話したり、と楽しい一日をすごした)
- 「愉快」・・・普通と異なる事態に接し、快感を覚えたり陽気になったりすること。(ナンセンスなストーリーだが、愉快な映画だった)
- 「おかしい」・・・普通と異なる状況に緊張がほぐれ、笑い出したくなる気分(彼がまじめぶるもんだから、おかしくて)
- 「面白い」・・・こっけいで笑いを誘う感じ(この本には子供向けの面白い話が載っている)
40、はっきりしていることを表す
明らか 失敗の原因はまだ明らかになっていない。
明瞭 大臣の答弁は、発音は明瞭だが中身がよくわからない。 |
→「明」の後、「然」の前の漢字で意味が決まる
<はっきりしていることを表す言葉>
- 「明らか」・・・事柄や事情がはっきりしていて疑う余地のないことです。何が明らかなのかは、「明」の後につけた、もう一文字の漢字で確定します。
- 「明瞭」・・・文字や音声などの表現が、ほかとまぎれることなくはっきりしているさまを意味します。
- 「明白」・・・明らかを「白」でさらに強めた表現。事実に重点を置く。
- 「判断」・・・論理や思考の筋道が通っていること(あの人の説明は明晰でわかりやすい)
- 「明確」・・・はっきりしていて確か(明確な規定なので、この点に疑義は生じない)
- 「明快」・・・気持ちよいほど、はっきりしていること(明快な説明にみんなが納得した)
- 「判然」・・・はっきりしていて良く分かること。否定形での使用が多い。
- 「歴然」・・・歴はことごとくの意味、際立ってはっきりしていること(実力の差は歴然としているので、勝負にならない)
※否定形にするには「不」か「~でない」「~としない」をつける
- ●不・・・不明/不明瞭/不明確
- ●~でない・・・明らかでない/明瞭でない/明白でない/明晰でない
- ●~としない・・・判然としない/歴然としない
41、「しつこい」と「しぶとい」
しつこい セールスの勧誘がしつこくて困る。
しぶとい このチームはしぶといので、簡単には負けない |
→色・味・香りなどにも使う「しつこい」
<しつこさを表す言葉>
- 「しつこい」・・・うるさくつきまとう感じを言います。人以外にも使えます(色・味・香り)。
- 「しぶとい」・・・人の性格によく用いられます。強情である、片意地というマイナスイメージの意味だけでなく、困難に負けない、粘り強い、というプラスイメージもあります。
- 「くどい」・・・同じようなことを繰り返され、うんざりする状態、味や色にも使う。(くどいほど念を押したから、大丈夫です)
- 「執拗」・・・相手がうるさがるほどしつこく、何度も繰り返すこと(執拗に食い下がったが、結局、断られた)
- 「執心」・・・あることに心が惹かれ、そこから離れないこと。異性に対する思いを冷やかして「○○にご執心だ」という使い方もある。
- 「粘り強い」・・・根気があってよく頑張る(決勝戦の粘り強い戦いはすごかった)
- 「ねちっこい」・・・しつこくてあっさりしていないこと(とにかくねちっこい奴で、なかなか解放してくれない)
<しつこさのなさを表す言葉>
- 「あっさり」・・・単純でしつこくない(ここはあっさり引き下がっておこう)
- 「さっぱり」・・・しつこくなく爽やか(風呂に入ってさっぱりした)
- 「さばさば」・・・嫌なことが済んで爽やか(借金を返し、さばさばした)
- 「さらり」・・・あっさりしてこだわらない(過去のいきさつをさらりと水に流した)
- 「淡々と・淡々たる」・・・さらりよりも改まった感じ(彼は苦労を淡々と語る)
- 「淡白」・・・さっぱりして、こだわらない(金銭には淡白な人間だ)
- 「無頓着」・・・気に欠けない、こだわらない(着るものには一切無頓着だ)
42、「かたい」「やわらかい」の使い分け
硬い 表情が硬いので、もっとリラックスしてください
軟らかい ここは地盤が軟らかいので、注意が必要だ |
→使い分けの複雑な”硬い・堅い・固い”
- 「硬い」・・・質が強く、密度が大きく、よく締まっている。力を加えても形が変わりにくく、たやすく砕けたり裂けたりしない。(ダイヤモンドがいちばんが硬い)
- 「堅い」・・・中身が詰まっていて、かんたんに形を変えない。(圧力や働きかけに対して動じない。手堅く堅実である。真面目で信用できる。堅苦しい。(硬い木材でつくったので、出来がしっかりしている)
- 「固い」・・・しっかりと緩みがなく、容易に崩れない、融通が利かない(決意が固い、頭が固くて困る)
- 「軟らかい」・・・質が弱く、密度が小さく、形が変わりやすい(発想がとても軟らかい、胃が弱っているので、軟らかい食べ物がよい)
- 「柔かい」・・・しなやかである、ふんわりしている(このクッション、柔らかくて気持ちいい)
43、物理的・日物理的に狭いとき
せせこましい リビングのつくりがせせこましくてくつろげない
手狭 子供が大きくなって家が手狭になった。 |
→物理的・精神面を表す「狭い」「せせこましい」
●物理・非物理両面に用いる・・・狭い、狭小、狭隘、狭窄、偏狭
●物理面に限る・・・狭苦しい/手狭
●非物理面に限る・・・狭量
- <狭いことを表す言葉一覧>
- 「狭小」・・・場所や心が狭くて小さいこと。(狭小な土地に人家が密集している)
- 「狭陰」・・・面積が狭いこと。度量が狭いこと(狭陰な道路を大型車が走る)
- 「狭窄」・・・狭くてゆったりしていないこと。ひねくれていて心が狭いこと(腸の一部で狭窄を起こしている)
- 「偏狭」・・・狭くてゆったりしていないこと(偏狭な土地)
- 「狭苦しい」・・・狭くて不自由なこと(狭苦しい安アパートで暮らした)
- 「狭量}・・・他者を受け入れる心が狭いこと(狭量な男なので、なかなっかうんと言わない)
「広い」ことを表す言葉もある。
●物理・非物理両面に用いる:広い、広大、広範、手広い、度量
●物理面に限る:広やか、広々、広漠、果てしない
●非物理面に限る:広量、雅量、太っ腹
44、判断などが適切であること
妥当 妥当な解決法を探りたい
順当 Aチームが順当に決勝戦まで勝ち上がった。 |
→「妥当」はやり方、「順当」は結果に対する評価
「妥当」とは、あることが道理や実体に合っているときに使います。幅広く用いられ、やり方にするプラス評価を表します。
「順当」のほうは、使い道が狭くなり、物事の結果について、それを当然とみなすのです。
●当・・・穏当、至当(至って当然なこと)、正当、適当、当を得た、当然、真っ当、当たり前
●適・・・適正、適切、適格、好適(程よくふさわしいこと)、最適、理に適う
●そのた・・・誂え向き、うってつけ、的確、注文通り、ぴったり、ふさわしい、ほどよい、もっとも
<適切なことを表す言葉>
- 「穏当」・・・無難で道理に合う、妥当ほどではないが、それに近い(穏当な線で落ち着いた)
- 「適切」・・・ちょうどよい、「適当」よりも、ぴったり感が強い(適切なアドバイスをいただき、助かりました)
- 「適当」・・・ほどよくふさわしい。いい加減の意味もある。(適当なところで仕事を切り上げましょう)
- 「誂え向き」・・・偶然、まるで注文したようにぴったり合うこと(誂え向きの展開となってきた)
- 「的確」・・・的を外さず確かなこと(実に的確な情勢判断だ)
45、「早い」「速い」の使い分け
早い 今年は梅が咲くのが早い
速い 彼がクラスでいちばん足が速い |
→時期・時刻は「速い」、動き・速度は「速い」
●早い・・・足早、素早い、早熟、早世、早退、早計(軽率な考え)、早春、早婚、早暁、早晩、早朝、早起き、早合点、早変わり、早口、早咲き、早死に、早耳、早業、矢継ぎ早、早生(ませていること)、気が早い、締め切りが早まる、投票の出足が早い
●速い・・・急速、迅速、拙速、速写、速射、速成、速記、速球、速達、速断、速報、敏速、頭の回転が速い、川の流れが速い、変わり身が速い、決断が速い、呼吸が速い
<はやいことを表す言葉>
- 「迅速」・・・人の行動、事の運びがきわめて速い(迅速な対応に感謝します)
- 「速やか」・・・間を置かずにすぐ(速やかなお返事をお願い致します)
- 「敏捷」・・・動作がすばやい、すばしこい(身のこなしが敏捷)
- 「敏速」・・・事をすばやく行う(消防士の敏速な消火活動で助かった)
- 「尚早」・・・時期が早すぎる(時期尚早な案として先送りされた)
46、名が知られていることを表す
有名 あの登山ルートは、険しい難所が多いことで有名だ
高名 今回のコンサートは、高名な演奏家を海外から呼んだ |
→プラス評価に使う語と、マイナス評価に使う語がある
<名がしられていることを表す言葉>
- 「有名」・・・人物(有名な俳優)に限らず、さまざまな事柄・事物(有名な事件・レストラン)や、「有名なワル」などマイナス評価の場合にも使えます。例文の険しい難所が多いもマイナスの事柄と見られます。
- 「高名」・・・人の名声の中でも、ある分野でとても評価が高いケースに使います。演奏家や学者、研究者、作家、芸術家、など分野を明示すること言葉がよくつきます。
- 「著名」・・・良く知られたことを表すが、評価が高名ほど高くなく、有名ほど一般に知られていなくても使う。やや改まった感じ。(著名な研究者がこぞってシンポジウムに参加した)
- 「知名」・・・優れていたり人気があったり、よく知られたりしている(ここが名にし負う日本三景の一つ)
- 「名にし負う」・・・良く知られた。「名に負う」を強めた形。古風な感じ。(ここが名にし負う日本三景の一つ)
- 「名うて」・・・有名で評価が高い。マイナス評価にも使う。やや古風(あの選手は名うての試合巧者として知られている。若いころは、名うての暴れん坊として知られていた)
- 「名だたる」・・・名立ちてあるの意。マイナス評価にも使う。やや古風。(名だたる強豪が集まった)
※その他(名を使わない)・・・音に聞こえた、顔がひろい、ポピュラーな、売れっ子、評判がよい
47、物事が止まる時の表現
留まる しばらく現地に留まることにした
つかえる 言葉につかえて何も言えなくなってしまった |
→しばらく動かない「留まる」、先に進めない「つかえる」
<物事が止まる時を表す言葉>
「留まる」・・・しばらく動かないこと。
「つかえる」・・・何かに突き当ったりふさがれたりして先に進めない状態のことです。
「滞る」・・・物事が順調に進まず、つかえたり留まったりすること(家賃が滞ってしまい、支払いを催促された)
「立往生する」・・・行き詰まって動きが取れないこと(説明の最中に思わぬ質問が出され、立往生してしまった)
「暗礁に乗り上げる」・・・困難にぶつかって進まなくなること。(大臣のスキャンダルで、国会の審議が暗礁に乗り上げた)
「にっちもさっち(二進も三進)も行かない・・・行き詰まって動きが取れないこと。そろばん用語から転じ、金銭の融通が利かないことに使うことが多い(この不況で経営がにっちもさっちも行かない)
※”滞る”を使った表現・・・渋滞、停滞、遅滞、延滞
48、同じ状態を続けることを表す
保つ 若さを保つ秘訣は何でしょうか。
続ける 予算が苦しいが、この事業は続けられることになった |
→ある状態を変えずに続ける「保つ」、途切れないようにつなげる「続ける」
<続けることを表す言葉>
- 「維持する」・・・健康、治安、現状といった抽象的な事柄に用いられます。
- 「継続する」・・・以前と全く同じか同種の物事を続けることです。
- 「保持する」・・・今の状態を自分のものとして守り続ける(彼女は世界記録を5年間も保持している)
- 「保存する」・・・具体的な物事を、そのままの状態で残す(この一帯の街並みを保存することが、市議会できまった)
- 「キープする」・・・確保する、取っておく、球技で球を確保する。(ウイスキーのボトルをキープする)
- 「もつ」・・・ある状態が長く続く。(この重労働では体力がもたない)
49,文字で表現する「著す」「記す」
著す この作者は、代表作以外にも数々の名作を著している。
記す 忘れないように、手帳に記しておいた |
→「著す」は書物を書くこと、「記す」は書き留めること
<書くことを表す言葉>
- 「著す」・・・は書物にして世に出す、その作品が著作、著書になります。文章を書いて生活している人を指します。
- 「記す」・・・書つける、後に残すために書き留める。記録するという意味も含まれています。
- 「書く」・・・文字を記すという意味ですが、広く絵や図にも用います。文章と絵・図の区別をつけたい人は、描くを用います。
- 「認める(したためる)」・・・書き記す、書類・手紙を書き整える。(一筆、手紙を認めさせて頂きました)
- 「表す」・・・心にあるもの、抽象的なものを、表情・態度・言動、文章・絵画・音楽などで表現する
- 「描く」・・・絵や図をかく。そのほか描写する意味もある(この小説は、苦悩する人物像を描き切れていない)
※書くに別の動詞を加えてより細かいニュアンスを伝える
書き上げる(書いて仕上げる)、書き入れる(記入する)、書き写す、書き起こす、書き落とす(書き出す)、書き込む(手帳、行間などに書き入れる)、書き添える(書き足す)、書き損じる(書くのを失敗する)、書き出す(書き始める)、書きつける(書いておく)、書き留める(心覚えに書いておく)
50、不明な事をきく「聞く」「質す」
聞く 交番で道を聞いた。
質す 疑問点を関係者に質した。 |
→「聞く」は声をかけて問う、「質す」は納得するまで問う
<きくことを表す言葉>
- 「聞く」・・・声や音を耳で感じ取ること
- 「聴く」・・・注意深くきくこと(警察官が住民に事情を聴く)
- 「質す」・・・納得できるまで質問することです。不明点、真意、真偽などを目的語とすることが多いです。
- 「問う」・・・わからないこと、はっきりしないことを、人に尋ねる。ややかたい表現。(解散・総選挙で民意を問いたい)
- 「尋ねる」・・・不明なことの手がかりを求めて尋ねる(安否を尋ねる電話が殺到した)
- 「糾す(ただす)」・・・事の良い・悪いを問う。厳しく追及する。(疑惑を糾せとの声が日増しに高まっている)
- 「誰何(すいか)する」・・・不審な人物に「何者か」と声をかける(ここでは警備員が誰かれ構わず誰何している)
※書くに別の動詞を加えてより細かいニュアンスを伝える
聞き入れる(相手の願いや要求を受け入れる)、聞き置く(先方の意見を聞くだけで、自分の意見を言わない)、聞きかじる(人の話のうわべだけを聞く)、聞き流す(聞いても心にとめない、他人の過ちをとがめない)、聞きほれる(聞き入って心を奪われる)、聞き分ける(聞いて是非や意味を理解する)
51、「知る」「わかる」の使い分け
知る その人のことは知っています
分かる あなたの言うことはわかります |
→単にしっているだけでは「わかる」とは言えない
<知ることを表す言葉>
- 「知る」・・・何から何まで熟知している場合まで、使用範囲がとても広いです。
- (知り方)認知する、察知する、感知する、探知する→(深化)熟知する、知悉する、知りぬく
- 「わかる」・・・ただ存在を知っている程度では使えません。物事の見分けがしっかりつく、そんな把握の仕方です。
- 「悟る」・・・はっきりと理解する・見抜く。感づく。(彼が言外に匂わせた意味を悟った)
- 「理解する」・・・物事の筋道をつかみ取る。分けを知る。(彼が取った行動は理解し難い)
- 「解する」・・・わかる。了解する。理解する。(しゃれを解する)
- 「認識する」・・・物事の本質までしっかりと理解する(事態の重大さをまったく認識していない)
※「知識」に至るまでのプロセス
(認知する)存在、状態、事実関係を認める→(認識する)本質・意義を認める→(知識)認識内容を心の中に蓄積する
52、「使う」「用いる」「活かす」
用いる この製品には厳選した材料を用いています
活かす 各人の能力をもっと活かす人事をして欲しい。 |
→効果的に使う意味の「活かす」
<使うことを表す言葉>
- 「使う」・・・何かの働きをある目的のために役立てる、そんな行為を表現する基本語が使うです。
- 「用いる」・・・使うよりちょっと改まった感じ。両者は大半の文を入れ替えることができます。
- 「活かす」・・・効果的に使うという意味です。既存の物事のもつ力や価値を役立てるのです。
- 「運用する」・・・活用するに近い意味。法や規則、資金などをよく目的語にする(法は厳正に運用されなければならなし)
- 「応用する」・・・原理や知識、技術を実際に当てはめて使う(この技術は実に広い分野に応用できる)
- 「利用する」・・・役立たせる。自分の利益のために悪用する(自然エネルギーを利用する、あなたは彼に利用されてりうだけだ)
- 「流量する」・・・所定の目的以外のことに使う(公金を流用している疑惑が浮上した)
- 「転用する」・・・目的を変えて他の用途につかう(農地を宅地に転用した)
- 「使いこなす」・・・自由自在に使う(インターネットを使いこなす)
- 「使い込む」・・・具合が良くなるまで使い鳴らす(使い込んだ食器なので愛着がある)
- 「使い果たす」・・・全部使ってしまう(貯金を使い果たしてしまった。)
- 「使い分ける」・・・相手や目的で区別して使う(あいつは二つの顔を使い分けている)
53、人のことを悪く言う表現
けなす 評論家に作品を徹底的にけなされた
なじる 手続きの不備を、先方からなじられた |
→なぜか、漢語よりもなじみが薄い和語
<悪く言うときの和語>
- 「けなす」・・・人の欠点などを挙げて悪く言うことです。
- 「なじる」・・・相手の欠点や悪い点を、問い詰めるように責めることです。面と向っていう感じが強く、その分、臨場感があります。
- 「くざす」・・・悪く言う。けなすとほぼ同じ意味(何でもくざすのが、彼の趣味みたいだ)
- 「こきおろす」・・・ひどくけなす。けなすよりも程度がひどい。(自慢のアイディアを机上の空論だとこきおろされた)
- 「そしる(謗る)」・・・他人の言動を非難する。なじるより激しくない。誹謗する。(その怠慢はそしられても仕方ない)
- 「ののしる(罵る)」・・・大声で避難する(罵倒するはひどくののしること)(みんなが見ている前でののしった)
- 「毒づく」・・・ひどくののしる。毒舌をふるう。(金を貸してあげたにもかかわらず、「ケチだ」と毒づかれた)
- 「けちをつける」・・・欠点を挙げてけなす(細かいことにまでケチをつける)
- 「ほめそやす」・・・みんなでほめる(その優勝は、国を挙げてほめそやした)
- 「ほめたたえる}・・・賞賛する(勇敢な行為として、ほめたたえられた)
- 「誉めたてる」・・・おおいにほめる(天狗になるから、そんなにほめ立てないで)
- 「ほめちぎる」・・・最大級にほめる(最高傑作とほめちぎられた)
54、「感心する」「感動する」の使い分け
感心する 子供の作品ながら、あまりによくできているので、感心した
感動する 無私の精神で尽くす彼の姿に、感動した |
→「感心する」は上から目線でつかう
<感じる心を表す言葉>
- 「感心する」・・・上位者が同等以下の人をほめる場合に使われます。
- 「感動する」・・・上下関係がない。何かの場面や行い、作品などに深く感じ入り、それが心にしみ込んで充足感さえ覚える
- 「感激する」・・・激しく感動し気持ちが奮い立つ、受け身的な「感動」よりも積極性が強い。(20年ぶりの再会に感激した)
- 「感嘆する」・・・感心してほめる。ただし、目上から目下へとは限らない。(本物の芸に感嘆する声がしきりだった)
- 「感銘を受ける」・・・深く感動し心に刻み付ける。忘れない(被爆者の手記に感銘を受けた)
- 「感極まる」・・・感激が極限に達し、冷静でいられない(感極まって泣き出してしまった)
- 「感に堪えない}・・・非常に感動し、それを表に出さずにいられない(感に堪えない面持ちでかしこまっていた)
55、「推測する」「推定する」の使い分け
推測する 印刷がかすれているが、内容はだいたい推測できる
推定する 被疑者を無罪だと推定する根拠は何ですか |
→推測のうえで決定する推定
<推測・推定を表す言葉>
- 「推し量る、測る」・・・未知のことをあれこれ考える基本語。
- 「推測する」・・・部分的・間接的に知った事実をもとにする。
- 「推定する」・・・推測のうえで決定するという意味です。決定までもっていくのですから、根拠もある程度、確かでなければなりません。
- 「推理する」・・・既知の確かな材料を基に、筋道立てて未知のことを考える。(故障の原因を推理してみた)
- 「推論する」・・・未知のことを論理的に推量し、論を先に進める(数学の証明問題では、ただしく推論することが何より要求される)
- 「忖度する」・・・他者の気持ちをおしはかる(人の気持ちを忖度してばかりいないで、自分のことをしっかり考えないさい)
- 「憶測」・・・いい加減な推測(憶測で物をいってくれては困る)
- 「推す」・・・一つの事柄からほかへ考えを進める(この点から推すと、成功は間違いなし)
- 「酌む」・・・相手の事情をおしはかる(どうぞ、当方の事情も酌んでください)
- 「気を回す」・・・余計なことまで当て推量する(あれこれ気を回す)
- 「当てずっぽう」・・・名詞。いい加減な推測(当てずっぽうで言ったら、当たった)
- 「心当て」・・・名詞。当て推量。見当をつけること(心当てに跡地を訪ねた)
56、大きな差異があるときの表現
並外れる 彼は並外れた体力をもっている。
抜きんでる 彼女の成績は学年でも抜きん出ている。 |
→並み外れてプラス方向に優れている「抜きん出る」
「並外れる」・・・程度が普通ではないことを意味します。必ずしもプラスの場合でけではなく、それが悩みの種ということもあります。
「抜きん出る」・・・群を抜く、抜群と同義で、これらは良い意味に限って使います。あることが大勢の中でよいほうに飛びぬけていることです。
次の例では、ほかとの差異に重点を置く表現とほかより優れている点に重点を置く表現に分けて紹介します。
- <ほかとの差異に重点を置く表現>
- 「かけ離れる」・・・はるかに隔たる(実際に見た光景は事前に想像していたものとはかけ離れていた)
- 「桁が違う」・・・比べる相手との差が大きい。(二人の間の実力差は桁が違う)
- 「雲泥の差がある」・・・天と地ほどの差がある(本家本元と亜流では、雲泥の差がある)
- <ほかより優れている点に重点を置く表現>
- 「秀でる」・・・多くの中から抜きん出て優れている(一芸入試は何かで特に秀でた人材を選抜する)
- 「際立つ」・・・同類の中で目立って優れている(彼女はモデルの中でも美しさが際立っている)
- 「卓越する」・・・ほかの及びもつかないほど優れている(卓越した判断力で、難局を切り開いてきた)
- <ほかに及ばないことの表現>
- 「後れる」・・・標準より劣る(この機会は技術革新に後れている)
- 「落ちる」・・・相対的に劣る(これも悪くないが、あれより落ちる)
- 「劣る」・・・ほかに及ばない(これは明るいに品質が劣る)
- 「見劣りする」・・・劣って見える(外国選手と比べると、日本選手は体格が見劣りする)
- 「人後におちる」・・・他人より劣る(気配りでは人後に落ちない)
57、”普通”程度を表す「まあまあ」
まあまあ まあまあ合格点をあげられます。
かなり かなり順調な滑り出しだ。 |
→普通に近い「まあまあ」、非常にに近い「かなり」
<程度を表す言葉>
- 「まあまあ」・・・まあを少し強めています。いずれも普通に最も近い程度です。普通よりは少し上な位置になります。
- 「かなり」・・・非常にぐっと近づきます。同程度の表現には、相当に、だいぶ、なかなか、けっこうです。
- 「比較的」・・・ある基準と比べて(この地域は被害が比較的に小さかった)
- 「だいぶ」・・・おおかた。相当に、だいぶんとも言う。(そこまでは、車で行ってもだいぶかかる)
- 「なかなか」・・・相当に。(なかなか見ごたえのある展覧会だった)
- 「けっこう」・・・相当に。何とかうまく(こんな簡単な道具でも、けっこう役に立ちます。
- 「ずいぶん」・・・程度がはなはだしい。非常に。(ずいぶん長く待たされた)
58、確実なさま表す「きちんと」
きちんと 毎月の支払をきちんと済ませている
しっかり しっかりつくってあるので、叩いても壊れない |
→状態から性格まで「きちんと」「しっかり」で表せる
<確実なさまを表す言葉>
- 「きちんと」・・・過不足がない様子、正確でまちがいがない様子、乱れがなく整っているさまなどを表す。
- 「しっかりと」・・・堅固なさま、確かなさまを表します。物理的な確かさだけでなく、人の性質や考え方が堅実で信用できる場合です。
- 「きっちり」・・・きちんと合っているさま。数字に端数がないさま。(検算した結果、勘定がきっちり合った)
- 「しかと」・・・確かに。間違いなく。堅く。しっかり。古風な感じがする表現。(しかと頼みました)
- 「ちゃんと」・・・きちんと。几帳面に。しっかりと。整った状態に。口語的な表現。(頼まれたことはちゃんとやってください)
- 「確か」・・・はっきりしていて、だいたい間違いない様(あれは確か、先月初旬のことだったと思う)
- 「きちんきちんと」・・・規則正しく正確に(毎月、ローンをきちんきちんと払っている)
- 「正確に」・・・正しく確実に(一字一句、正確に記憶する)
- 「明確に」・・・明らかで確かに(担当部署の責任を明確にする)
- 「的確に」・・・的を外さず確かに(やるべきことを的確に指示する)
59、ある物事の”すべて”を表す
全部 もっている力は全部出し切って戦った。
一切 その件について、私は一切関与しておりません |
→全体をつくる個々の要素まで意識する「全部」丸ごとつかむ「一切」
<すべてであることを表す言葉>
- 「全部」・・・会話から文章まで広く使える語、すべても意味は同じですが、「すべて」の方がやや改まった感があります。どちらも話題の事柄の全体を指し、それと同時に全体を構成する個々の要素も意識した表現です。ことごとくも同様の意識が強く感じられます。
- 「一切」・・・物事をまとめてとらえる面が強いのです。「一切の責任を負う」というように、名詞の場合は肯定形で用いますが、副詞では例文のように否定語で使う。
- 「みな(皆)」・・・全部。もとはすべての人の意だが、人以外にも使う。(やっかいなことは、みな片付いた)
- 「みんな」・・・みなと同じ意。主に会話で使われる。(料理はどれもみんなおいしかった)
- 「残らず」・・・全部。すっかりみな。(知っていることは、残らず話します)
- 「ことごとく」・・・一つ残らずすべて。ここへの意識が強く、改まった感じがする(蒔いた種をことごとく鳥に食べられていた)
- 「一から十まで}・・・はじめから終わりまで。何から何まで。(一から十まで教えている暇はない)
※割合別にみると・・・
- 全体の6~7割→ただいた(大体)
- 7割→たいてい(大抵)、たいがい(大概)、おおよそ・およそ、おおむね(概ね)
- 7~8割→おおかた(大方)、あらかた(粗方)、概して、ほぼ
- 9割→ほどんど、総じて、おしなべて
60、「まもなく」「いずれ」の使い分け
まもなく 列車はまもなく発車します
いずれ いずれ改めてご挨拶にうかがいます |
→「いずれ」「いつか」はいつになるのか未定のとき
<まもなく近い言葉>
- 「まもなく」・・・幅広く使える基本語、間も無く、間を空けずに、のそのままの内容です。
- 「いずれ」・・・いつかと同様、近いうちにと言う意味。どちらもそれがいつかになるかは未定、という共通があります。
- 「やがて」・・・まもなく。少し改まった感じ。(あれからやがて半年になる)
- 「そのうち」・・・今からそう遠くないうちに・近いうち。(そのうち、いいこともあるよ)
- 「ほどなく(程無く)」・・・まもなく。改まった感じ。(お連れ様もほどなくお見えになるそうです)
- 「のちほど(後ほど)」・・・その日のうちか遠からず。(のちほど、確認の電話を入れます)
- 「近々(きんきん、ちかぢか)」・・・近い将来。ややかたい表現。(近々、海外へ出張します)
- 「追って」・・・引き続き、すぐに(詳しくは、追ってお連絡します)
61、少しずつ進む「ようやく」「やっと」
ようやく 何度も説明を聞き、ようやく中身が理解できた
やっと 資金難やら何やら大変だったが、やっと開店にこぎつけた。 |
→変化する過程が重心の「ようやく」、結果の「やっと」
<ゆっくりした変化をあらわす言葉>
- 「ようやく」・・・時間をかけて物事が進み、何かが実現し、経過に受信があります。例文では「何度も」説明を強く効いたことに意識が向いています。
- 「やっと」・・・は資金難うんぬんの困難よりも、「開店にこぎつけた」という結果とそれを可能にした努力に意識があります。
- 「徐々に」・・・急激にの対義語、変化の仕方が少しずつ緩やかにである点に重心があります。
- 「だんだん」は「だんだん面白くなってきた」というように、「面白くなってくる」変化事態に重心があります。
- 「しだいに(次第に)」・・・おおきな変化に向って順を迫って少しずつ。(台風はしだいに努力を増してきた)
- 「漸次」・・・一定方向へ、少しずつ。硬い感じの漢語。(事態は漸次、好転してきている)
- 「おいおい」・・・時がたつにつれて少しずつ。やや古風(おいおい暮らし向きも良くなるだろう)
- 「ぼつぼつ」・・・事が少しずつ、まばらに進むさま(観光客がぼつぼつ増えてきた)
- ※「刻」「日」「年」を用いた表現
- 刻→日→年の順に変化の幅が広がります。つまりその順にスケールが大きくなります。「刻々」「日に日に」「年々」などがある。刻が切羽詰まった感じです。
62、間を置いて繰り返すさま
時々 ぜひ、時々顔を見せてください
時として ベテランといえど、時としてミスを犯すこともある |
→まれに起きる「時として」
<時々・時としてに近い言葉>
- 「時々」・・・最も基本的な語で、会話から文章まで幅広く使われます。不定期な間隔ではあるのですが、そう長くなく、ある程度の似た感覚を置いてというニュアンスです。例文は間延びをさせずに繰り返して来てほしいという感じになります。
- 「時として」・・・時にとってと同義で「まれに」「場合によって」と言う意味です。繰り返す意味は弱く、普段はほどんどないのだれど、まれにそんな事態が起きることを表します。例文では、べレランがミスを犯すことはむしろ珍しい、といった前提があります。会話より文章に多く用いられます。
- 「時に」・・・時々、何かのはずみに。(この庭にも、時に野鳥が顔を見せる)
- 「時には」・・・場合によっては、ある時には。(時には、気晴らしも必要だ)
- 「時たま」・・・まれに。時々。(温暖化の影響か、最近は時たまにしか雪が降らない)
- 「たまさか」・・・ごくまれに。文章言葉。(こんな山奥まで訪ねて来る人は、たまさかにしかいない)
- 「ちょくちょく」・・・たびたび。しばしば。頻度が高い(彼はこの点にちょくちょく顔をだす)
- 「時折」・・・時々、たまたま(時折しか便りをよこさない)
- 「たびたび」・・・何度も(たびたび注意したのにきいてくれなった)
- 「しばしば」・・・間隔をあまり空けずに何度も(不可解なことがしばしば起きる)
- 「再三」・・・二度も三度も(当局から再三、警告を受けていた)
- 「しきりに」・・・立て続けに、何度も(しきりに催促してよこす)
- 「頻繁に」・・・(しきりに。次から次へと。(この道路は大型車が頻繁に通る)
- 「しょっちゅう」・・・たえず。くだけた表現(奴はしょっちゅう遊び歩いている)
63、「~まで」「~までに」「~までで」
~まで このイベントは8月末までやっている
~までに このイベントは8月末までに終わる ~までで このイベントは8月末までで終わる |
→「に」がつくか「で」つくかで限界の示し方が変わる
「~まで」・・・の例文は、イベントが8月末までずっとやっており、それ以降はもうやっていないという意味です。「まで」で示されている時点を境に、事態が反転するのです。
「~までに」・・・8月末までの間でいつかはわからないが、その間にイベントが終わるということです。「に」は動作が成立する範囲の限界点を示す助詞です。8月末がその最終限界点です。
「~までで」・・・例文は、イベントが終わるのがちょうど8月末であることを表します。「で」には、動作(例文では終わる)が行われる時期・時間を限定する働きがあるからです。8月末で打ち切るという感じです。
※限界を示す言葉として「~で」「~にて」「~において」があり、「~で」=「~までで」。にて、においては古風にした感じです。
64、おおよその数量を表す
~くらい 駅までは歩いて20分くらいかかる。
~ばかり 30万円ばかり、融通してください |
→「~くらい」「~ほど」より丁寧な「~ばかり」
上の3つは意味はほとんど同じですが、丁寧さの印象が違います。
<おおよその数量を表す言葉>
- 「くらい」・・・時間・空間・重量と幅広く使えます。
- 「ばかり」・・・くらい、ほどより数字をぼかすニュアンスがつよく、それゆえの奥ゆかしさがあります。
- 「~ほど」・・・それと同じ程度(10人ほど、精鋭のスタッフをそろえた)
- 「およそ」・・・正確ではないが、だいたい(被害額はおよそ50億円に上るとみられる)
- 「約(名詞)」・・・おおまかな数量(この木は樹齢が約1000年だそうだ)
- 「~がらみ(名詞)」・・・年齢や値段を表す数詞について、「それくらい」の意(50がらみの男でした)
- 「見当(名詞)」・・・見込みとしてだいたい。(経費は割り勘で、5000円見当になる)
- 「ざっと(副詞)」・・・大づかみに見積もって(デモにはざっと3万人が参加した)
65、「~がる」「~ぶる」の使い分け
~がる 彼はクラシック音楽の通がる
~ぶる 彼はクラシック音楽の通ぶる |
→ふり(演技)を批判的に見る「~ぶる」
それぞれいかにもそうであるようなふりをしていることを表します。
「~がる」は感情や感覚、属性を表す形容詞・形容動詞の語幹や、希望を表す助動詞「たい」の語幹「た」、および名詞について動詞をつくる接尾語です。「悔しがる・嫌がる・暑がる」といった具合です。~がるの基本的な働きは、主観的な表現を客観的な表現に変えることです。本人の主観表現から、そんな様子の人物を他者が見た客観表現になります。
主観表現 | 客観表現 | |
感情 | ||
(私は)とてもうれしい。 | → | 彼はとてもうれしがっている。 |
(私は)彼女の成功が羨ましい | → | 彼は彼女の成功を羨ましがっている |
感覚 | ||
(私は)寒い。 | → | 彼は寒がっている。 |
(私は)くすぐったい | → | 彼はくすぐったがっている。 |
属性 | ||
(私は)偉い | → | 彼は偉がっている。 |
(私は)強い | → | 彼は強がっている |
「~ぶる」・・・名詞と形容詞・形容動詞の語幹について動詞をつくります。「大物ぶる」「聖人ぶる」「偉ぶる」などです。
66、「~ばむ」「~ぐむ」の使い分け
~ばむ 挑発的な言葉をかけられ、彼は気色ばんだ
~ぐむ つらい身の上話に、聞いている方が涙ぐんでしまった |
→様子やきざしが現れてくることを表す動詞をつくる
<様子・きざしの表れを表す言葉>
- 「気色ばむ」・・・様子を顔色に表す。ほかにも汗ばむ、黄ばむなども日常的に使っています。いずれにせよ、そのさまを帯びることを表します。
- 「涙ぐむ」・・・涙に目が浮かんで来たくらいの状態で、まだこぼれてはいません。この程度の表れがぐむです。きがじが見えるという感じです。
- 「~めく」・・・これも体言などについて”らしくなる”そういう感じがはっきりするという意味の動詞をつくります。「春めいて来た」「ざわめき出した」などと使います。
- 「~だつ」・・・~の状態になる。名詞、形容詞・形容動詞の語幹につく。(優勝を目的にし、チームが浮足立ってしまった)
- 「~じみる」・・・らしく見える。しみつく。体言につく。(結婚してから、所帯じみてきた)
- 「~めかしい」・・・そのように見える。「めく」を形容詞化したもの(古めかしい儀式が行われた)
- 「~らしい」・・・いかにも~にふさわしい。体言などにつく。(子供らしい仕草がほほえましかった)
67、名詞をつくる「~さ」「~み」
~さ 話のあまりのおかしさに、みんなが笑い転げた
~み 行間ににじむおかしみが、この作品の魅力だ |
→「~さ」で程度を、「~み」で丸ごとの感覚や様子を表す
~さも~みも形容詞・形容動詞の語幹について、その語を名詞化します。
「~さ」はおかしいという状態を程度の表現に変えることができます。
「~み」はついた語が表す感情や感覚、様子や形態、色や味に”そんな所”や”そんな点”があることを示します。それらの特徴があることを示します。
※副詞や名詞に「~さ」はつかない(以下は誤用例)
●彼の仕事にゆっくりさにいらだつ(ゆっくりは副詞)
●彼の緊張さが見ていて痛々しかった(緊張は名詞)
68、「~に関して」「~にとって」
~に関して その件に関しては、一切コメント致しません
~にとって この発明は、人類にとって大きな福音となる |
→対象を限ってのべるときは「~にとって」
物事を関連づけて述べる表現となるのが、「関して」「について」です。
「~にとって」は~の立場・見地から/としてはと対象を限って述べる表現する。対象はなんでもいいです。
<関連付けて言うときに使う言葉>
- 「~について」・・・に関して。ただし、下の例文では参考に挙げた~に関してよりもストレートにまなぶ対象本体を指し示す感じがする。こちらの方がベターです。(例文→大学では日本の近代文学について学んでいる/参考→大学では日本の近代文学に関して学んでいる)
- 「~において」・・・場所・時・観点などを示す(省エネという点において、こちらの製品の方が勝っている)
- 「~に対して」・・・ある物事に関して何かをすることをしめす。(その学生は先生に対してあからさまに文句を言った)
- 「~に関連して」・・・内容上、関わりあって(今の発言に関連して私にも言わせていただきたい)
- ※~に関しての反対は~にかかわらずです。逆接の意。
69、「~に即して」「~に則って」
~に関して 事実に即して詳細に分析しよう。
~に則って 会の規約に則って慎重に行動して頂きたい |
→「即」はぴったりついて離れない、「則」は手本
「即」・・・「位置につく、ぴったりついて離れない/すぐに」という意味があります。そこから、即位、即応、即時と言う言葉もうまれています。「~に即して」は、例文であれば事実から離れずに=事実そのものを、という意味になります。
「則」・・・手本、きまりを意味します。○○を規準としてそれに従ってという意味になります。例文の規約をはじめ、法律、規則、規約、戒律など決まりの類が多くおかれます。ただし、そうした既成の決まりだけでなく、「先生の教えに則って練習する」「遺言に則って遺産相続する」など基準・規準として尊重すべき対象なら幅広く使います。
<よりどころを示す言葉>
- 「に準じて」・・・手本としてそれに倣って、ある基準を標準として。(ここは先例に準じてことを進めよう)
- 「に基づいて」・・・~に基礎を置き、それをよりどころに(この理論は経験に基づいて考え出された)
- 「に依拠して」・・・~をよりどころにして、(先行研究に依拠して書かれた論文)
- 「に沿って」・・・よりどころにするものから離れないようにして(規定の方針に沿って交渉を進める)
- 「に応じて」・・・外からの働きかけに対応して。(事態の変化に応じて柔軟に対処したい)
- 「を踏まえて」・・・ある考え、事実の上に立って。(課題文の筆者の主張をふまえて自分の意見をのべなさい)
- 「~に乗る」・・・マイナスイメージを含む(まんまと計略に乗せられた)
70、優劣の差がないことを表す
甲乙つけ難い 最終候補はいずれも甲乙つけ難い力作ばかりだった
どんぐりの背比べ どのチームもどんぐりの背比べの力しかない |
→どちらも優秀な「甲乙つけ難い」どちらもたいしたことない「どんぐりの背比べ」
<優劣の差がないことを表す言葉>
複数の人や物事の間で、勢いや力量に優劣差がほとんどないことを表す連語表現がいろいろあります。それらは優れたもの同士を表すのか劣ったもの同士を表すのかで変わります。
- 「甲乙つけ難い」・・・これは両者の力量が優れている場合に用いられる言葉です。
- 「どんぐりの背比べ」・・・似たような力であり、どちらもたいしたことがない。マイナスイメージ。
- 「負けず劣らず」・・・優劣なく競い合うさま。(ああ言えばこういうで、どちらも負けず劣らず言い争っている)
- 「ごぶごぶ」・・・優劣の差がなく、確率が同じくらいで、予測が難しい様(合格の可能性は五分五分だね)
- 「五十歩百歩」・・・少しの違いはあるが、本質的には同じ。(度の提案も五十歩百歩だ)
- 「どっこいどっこい」・・・同じくらいで、大した差がないさま。くだけた会話表現。(あの二人が戦えばどっこいどっこいの勝負になるんじゃないかな)
- 「とんとん」・・・利害や収支、損得がほぼ同じになるさま。くだけた会話表現。(収支はとんとんで、あまりもうからない)
- ※同党を表す名詞表現
- ●互角・・・(力量に差がないこと。(新入幕の力士なのに、上位陣と互角の勝負をしている)
- ●伯仲・・・とても良く似ていて優劣がない。プラスイメージ・(実力が伯仲した同士に熱戦だ)
- ●拮抗・・・力がほぼ等しく、お互いに屈しない(拮抗した勢力が国境線でにらみ合っている)
71、表現しようのないことを表す
筆舌に尽くし難い この人の人生は、筆舌に尽くしがたい苦労の連続だった
曰く言い難し 何で日本では政権が短期でたらい回しされるのかと聞かれても、曰く言い難しとして言えない |
→表現できない理由に応じて使い分ける
<表現しようのないことを表す言葉>
- 「筆舌に尽くし難い」・・・書くことも話すことも難しいことなのだ。例文のように、苦労や困難などが盛りだくさんだったり、造絶であったりするがゆえに容易には言えない、というケースによく用いられます。経験したことの質量が、尋常でないことを表しています。
- 「曰く言い難し」・・・事情が複雑でかんたんには説明できないとき。
- 「言語に絶する」・・・想像を絶するが良く使われるが、言語に絶するもある。超えるという意味もある。(目の前に広がる言語に絶する雄大な光景に、一同は息をのんだ)
- 「言葉を失う」・・・驚きや恐怖、感動で何も言えなくなる。絶句する。(あまりに堂々として開き直りに、言葉を失ってしまった)
- 「言葉もない」・・・ショックの大きさを表す言葉が見つからない。相手の発言や行動に反論する余地がないの意。(震災と円高のダブルパンチに、経済界の重鎮は言葉もないと語った。
- 「言葉で言い尽くせない」・・・筆舌に尽くしがたいの平易版。(私の思いは言葉で言い尽くせません)
- 「なんとも形容しがたい」・・・形容するのがむずかしい。ひとがったり奇妙だったりする場合によく使う(現地の惨状はなんとも形容しがたい)