資金繰り表とは?
※会社法(設立)から見た資金繰り表。参考サイト。
資金繰り表とは、簡単に言うと現金の出入りを管理するための帳簿で、中小企業では1か月単位で作成(月次資金繰り表)する事業者が多いのではないと思います。資金繰りが非常に厳しい事業者では1日単位で作成(日次資金繰り表)する場合もありますが、通常は1ヶ月単位です。
資金繰り表には、売上など会社に入ってくる現金と、仕入れなどの支払わなければいけない予定額、実際に支払った実績額を記載します。
会社運営するに当たっては必ずや仕入れや給与などを含む経費の支払いが生じます。
その支払いが滞ることなく円滑に行えるように金銭の工面したり、やりくりするための帳簿です。
一般のご家庭でいうならば、家計簿に似ているかもしれません。
家計簿も支払った金額を記載したり、1か月の収入に対して1か月の支払額を予測し、食費・教育費・居住費・日用品・ローン・保険料・税金・レジャー費などといった費目に分けてお金を割り振り、やりくりしているご家庭が多いのではないでしょうか?
費目によってやりくりするご家庭もありますが、居住費やローン、教育費など自動引き落としや振り込みする以外のものは、1週間ごとに予算を決めている方もいるようです。
会社でも一般のご家庭同様、入ってくる金額と支出額の予測を立て、実際の収支をしっかりと把握しておくことで、健全な会社運営ができます。
いわゆる「どんぶり勘定」では家計も会社運営も同様、破たんしてしまいます。
特に飲食業など、毎日の現金売上で運営している企業は、予定も立てずどんぶり勘定でいると自転車操業になってしまいがちです。
損益計算書との違いとは?
会社の経営で損益を把握するには、損益計算書で利益が出ているか判断しますが、損益計算書で出た利益は、発生主義で出た帳簿上のお金であるのに対して、資金繰り表は実際のお金の出入りを表したもので現金主義の帳簿になる為、損益上利益が出ているのに毎月の支払いが大変という企業にとっては特に作成するべき帳簿です。
資金繰り表が融資に効く?
資金繰り表を作成することで、帳簿上出た利益がどこに流れてしまっているのかなど把握することができます。
黒字なのに資金繰りが悪化している企業のケースとして多いのは、借入金が多く毎月の返済金額が大きい企業です。
会社を運営するに当たって借入金は必須です。
借入金なしで起業し経営している経営者の方も少なからずいるとは思いますが、多くは金融機関などの融資を受けている方が多いと思います。
そうなると毎月返済していくことになるのですが、その返済額すべてが経費になると思っている経営者の方が多く、それが落とし穴です。
例えば返済金額が毎月20万円支払いをしていたとして、その内2万円が支払利息とすると、経費として計上できるのは2万円だけで、残り18万円は借入金の元金が減り負債額18万円減るということになります。
負債額が減っても経費として計上されるわけでは無いので、18万円は利益という事になってしまいます。収入に対して返済額の割合が多いほど、資金が回らなくなってしまうという事態が起きてしまいます。
そうならない為にも、資金繰り表を作成することでお金の出入りの予定と実績を管理し把握できるので、追加融資やつなぎ融資など資金調達の工面もしやすくなりますし、どこを押さえたらいいのかというポイントを掴むこともできます。
まとめ
資金繰り表にも似ているキャッシュフロー計算書は、過去の金銭の流れを表記した帳簿で、上場企業であれば作成義務のある帳簿であるのに対して、資金繰り表は内部資料で作成義務も公表する義務もない帳簿ですが、中小企業にとっては特にとても重要な役割をする帳簿であると思います。
キャッシュフロー計算書とは?
キャッシュフロー計算書というと、経営をされている企業者や経理事務員であれば聞きなれたワードかもしれませんが、そういったものに無縁の人にとっては「何の計算書?キャッシュだからなんとなくお金に関する計算書かな?」程度に感じるかもしれません。
キャッシュフロー計算書とは、キャッシュ(現金)フロー(流れ)の計算書であって、お金などの資産の流れを計算するための財務諸表のことをいます。
財務諸表というと、貸借対照表や損益計算書が一番に思い浮かぶと思いますが、キャッシュフロー計算書も、財務諸表のうちの一つです。
貸借対照表は一会計期間の企業の資産や負債の残高が表記され、損益計算書は売上や仕入・経費等を差し引きした利益額が表記されるのに対して、キャシュフロー計算書はお金の入出金はもちろん、建物や什器備品などの有形資産や、受取手形や売掛金などの無形資産などの流れや前月、前年比での増減を把握することができます。
資産だけではなく借入金や買掛金などの負債も同様、増減を把握することが可能となります。
経営者の方々にとって、どうしても気にかけるところは最終的な損益や、納税しなくてはならない法人税額を重視しがちです。
会社の損益がすべての結果と言っても過言ではありませんが、その損益額とキャッシュフロー計算書が深く関係しています。
ただ、損益の数字だけを見ていても、何を抑えたらいいか、またあとどれだけ投資や借入などの資金調達をしてもよいかなど分かりづらいですが、キャッシュフロー計算書を参考にすることで分かりやすくなるので、よりよい計画を立てることが可能となります。
キャッシュフロー計算書は大企業であれば当たり前の様に作成されているものになりますが、中小企業になりますと全ての会社が作成している訳ではないようです。
ですが中小企業こそ作成することで、資金などの流れを把握することができる為、今後の計画が立てやすくなるのではないかと思います。
また、最近では金融機関の融資審査においても、貸借対照表・損益計算書と同等、あるいはそれ以上にキャッシュフロー計算書が重視されています。キャッシュフロー計算書はお金の流れをただ記載している計算書ですので、粉飾がしにくいからです。
それでは、キャッシュ・フロー計算書とはどんなものなのか、具体的に見ていきましょう。
3つのキャッシュフローに注目
キャッシュフロー計算書は具体的には3つに分類し、構成されています。
- 営業活動によるキャッシュフロー
- 投資活動によるキャッシュフロー
- 財務活動によるキャッシュフロー
それぞれ解説していきます。
営業活動キャッシュフロー
まず、営業活動キャッシュフローです。その名の通り、会社の営業(商品やサービスを売ること)によって得たキャッシュの流れを示した表です。本業での儲けとお考えください。
投資活動キャッシュフロー
次に、投資活動キャッシュフローですが、こちらは本業とは別、土地や建物などの不動産その他の動産の売買によって得たキャッシュの流れを示した表。
財務活動キャッシュフロー
最後に、財務活動キャッシュフロー。金融機関からの借入や返済によるキャッシュの流れを示した表になります。財務活動キャッシュフローについては、中小企業の場合は大半が借入金(銀行融資・社長貸付)などによるものですから、一旦プラスになっても、返済していけばまたマイナスになっていきます。
企業が自由に使えるお金、フリーキャッシュフローとは?
なお、1.営業活動と2.投資活動によるキャッシュフローを合計したものを「フリーキャッシュフロー」と言います。
1.営業活動と2.投資活動によるキャッシュフローは、基本的には会社が「自由に」使えるため、「フリーキャッシュフロー」と呼ばれています。
中小企業が資金繰りを考える上で重視すべきなのは、このフリーキャッシュフローになります。自由に使えるお金が潤沢にあれば、もし仮に取引先の倒産や急激な景気の冷え込みが起こっても、即倒産とはなりません。
優良な会社は、中小企業・大企業を問わず、営業キャッシュフローがプラスで、投資・財務はマイナスになっています。本業で稼ぎ、将来の為の設備投資も積極的に行い、借入金があっても滞りなく返済を行っている健全な状態です。
やはり、会社は本業が儲かってなんぼです。
営業活動によるキャッシュフローが潤沢だからこそ、必要な投資もできますし、金融機関からの借入も行いやすく、結果、財務状態もよくなるのです。
社長であるあなたの仕事は、本業で儲けると同時に、いつでも金融機関からお金を借りれるように、健全な財務状況を常日頃から整えておくことであると言えます。
どうやって作ればいいの?
いざ作成しようと思ってもどのように作成したらよいか分からない経営者の方々も多く、会計事務所や税理士事務所に関与しているのであれば、お願いすれば作成してもらえる書類ですが、そうでない場合は自身で作成することになります。
そのような企業向けに「中小企業のためのキャッシュ・フロー計算書作成シート」が日本公認会計士協会のホームページより無料でダウンロードできるようになっています。
貸借対照表と損益計算書の数字を入力することで、キャッシュフロー計画書も連動しているので、これであれば経営者の方でも、簡単に作成することができるのではないかと思います。
キャッシュフロー計算書の作成は、中小企業経営者が自社の健全な経営を推進していくために欠かせないもので、将来に向けてキャッシュフローが改善されていくような経営になることを目的とした「キャッシュフロー計算書作成シート」並びに過去の経理データと今後の投資や資金の調達や返済、損益等のデータを入力することで経営計画が作成される「短期経営計画書作成シート」と「中期経営計画書作成シート」までも作成することが可能になります。
合わせて資金繰り表も作成することで、より健全な経営をする手助けとなるのではないかと思います。
金融機関は貸借対照表のココを見る!
貸借対照表とは?
貸借対照表は、会社の財政状態を表した決算書を言います。
貸借対照表を一から作成するのは簿記の知識が必要ですが、会計ソフトを使って日々の取引をきちんと処理しておけば、貸借対照表は自動的に作成されます。
貸借対照表は、「資産」「負債」「純資産」から構成されています。
簡単に言いますと、
「資産」は、現金・預金、売掛金、土地・建物・車など会社が保有しているもの
「負債」は、借入金、買掛金など返済しなければならないもの
「純資産」は、資本金や利益など返済や支払い義務のないもの
です。
資産は、負債と純資産を足した額と必ず一致します。
「資産=負債+純資産」
例えば、手持ちに現金が1万円あって(純資産)、銀行から2万円借りている場合(負債)、会社の「資産」は3万円になります。
会社の「資産」には「純資産(手持ちのお金)」はもちろんのこと、「負債(借金)」も含まれているという事です。
逆に「資産」から「負債(借金)」を引くと会社の「純資産」が分かります。この純資産が「マイナス」だと、会社には利益が出ていない事がわかります。この状態を「債務超過」といい、融資を受けるのは厳しくなります。
銀行は自己資本比率を見る
自己資本比率とは、どのぐらい自分の会社の力だけで経営をしているのかを示す値であり、下記の計算方法で算出できます。
「自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100」
上記の例で言うと
「(純資産)1万円÷(資産)3万円×100=自己資本比率33%」
になります。
会社の資産には負債も含まれているため、純粋に自己資本がどのぐらいの割合で経営できているのかを知ることができます。
自己資本比率は、手持ちのお金にあたる「純資産」が低ければ低いほど、数値が下がります。
逆に「純資産」が高ければ、自己資本比率も高くなります。
つまり、会社の財産基盤が安定しているかどうかは、自己資本比率を見るとわかるのです。
一般的に自己資本比率が30%以上であれば優良な財務状態であると言われます。
もし、自己資本比率がマイナスの場合は「債務超過」の状態(会社が保有している全ての資産を売り払っても借金を返すことができない状態)ですので、会社が倒産するリスクが高く、銀行は融資を控えます。
流動資産の中身にも気を付けよう
流動資産には次のようなものがあります。
- 現金
- 預金
- 売掛金
- 受取手形
- 有価証券(株式など)
- 棚卸資産(商品・製品・原材料など)
- 固定資産
- 繰延資産
- 前渡金
- 短期貸付金
- 未収金
- 仮払金
- 立替金
- 前払い費用 etc
金融機関は、これら流動資産の中身も疑います。
例えば、現金預金については、本当に保有しているのかどうか(見せ金ではないか?自己資金じゃないのでは?)、売掛金や貸付金に関しては、回収の見込みはあるのかどうか(あるいは売掛金の回収サイトは適正か、貸付金は誰にどのくらいの利率で貸しているのか)、有価証券は適正な評価のもとに計上されているか、棚卸資産に関しては在庫額や評価は適正か、繰延資産に関しては開発費などの計上できる範囲が曖昧になっていないか、固定資産に償却漏れはないか、など、全ての過科目において細かく見てきます。
実際に金融機関から借入を行う際は、事前にこれらの質問に答えられるようにしておきましょう。
また売掛金や貸付金については可能であれば融資の相談へ行く前にできるだけ回収しておくのが賢明です。
場合によっては、売掛金を買い取ってくれるファクタリング会社の活用も検討しましょう。
流動負債・固定負債の中身にも気を付けよう
流動負債・固定負債には次のようなものがあります。
- 買掛金
- 未払い費用
- 仮受金
- 役員借入金
- 短期借入金
- 長期借入金 etc
前述の流動資産同様、金融機関は「負債」項目についても中身を疑います。
買掛金の回転月数に偽りはないか、高利貸しやノンバンクからの借入は混じっていないか、仮受金と称して事業と関係のない個人からの借入や、税金の滞納なども含めていないかなど。
なお、役員借入金については、負債ではなく、自己資本としてみてくれるケースもありますので、さほど心配する必要はありません。債務超過の会社であっても、役員が債務免除を行うことによってバランスシートが改善されるのです(とは言え、債務免除益による税負担が発生する場合もありますので、債務免除を行う場合は税理士に相談しましょう)。
債務超過の会社にはお金を貸さない。
当然ですが、銀行は負債が多い会社にはお金を貸したがりません。債務超過だとな尚更です。このような会社は追加融資がないと資金繰りが回らなくなることがほとんどです。
とは言え、借入が多いからと言って絶対に融資をしないわけではありません。借入金月商倍率や本業の儲けが出ているのであれば、運転資金として貸付を行うケースもあります。
決算書の他に、キャッシュフロー計算書や資金繰り表、収支計画書なども用意して、具体的な数字を示して借入が多くても返済可能だという説明ができれば、融資の可能性はゼロではありません。
まとめ
このように金融機関にとっての貸借対照表は、その会社が融資を受けるに値する安全な会社のか、倒産リスクがあるのかどうかなどを瞬時に読み取ることができる重要資料です。
この重要資料を手弁当で専門家も雇わずに作成し、融資に臨もうとされる経営者がいらっしゃいますが、極めて融資の可能性は低いのが実情です。
金融機関の融資担当者は数字に粉飾がないかも細かくチェックしています。疑いの眼で見ているのです。専門家も介さず素人が作った貸借対照表など、まず信用されないと言っても過言ではないのです。
貸借対照表作成の専門家は税理士になります。もし、まだ顧問税理士を付けてない場合は、速やかに税理士と顧問契約を結び、会社の財務状況を整えた上で、融資の申請に臨むようにしましょう。
金融機関は損益計算書(P/L)のココを見る!
損益計算書とは?
損益計算書も貸借対照表と同じく決算書の一つです。
損益計算書は、会社の一定期間の「収益」及び「費用」がどのくらいあったのかが分かる書類で、収益から費用を引くことでどのくらい「利益」があったのか、またはどのくらい「損」をしたのかが分かります。
貸借対照表が会社の「財政状態」を表すのに対して、損益計算書は会社の「経営成績」を表しています。
損益計算書を見ると一目で会社が黒字なのか赤字なのかが分かるようになっています。決算ごとに作成するのはもちろんですが、例えば月末や四半期ごとに作成することで、その期間中にどれだけ利益=儲けがあったかを確認することができます。
損益計算書は、「収益」と「費用」に分けられます。
収益はその名の通り売上等の会社が得た利益であり、費用は会社が支払ったさまざまな費用です。この差額がプラスであれば「利益」、マイナスであれば「損失」となります。
利益は更にこまかく、「①売上総利益」「②営業利益」「③経常利益」「④税引前当期純利益」「⑤当期純利益」の5種類に分類されます。
各利益を分析することによって、どのような活動から発生した利益かが分かるようになっています。
①売上総利益
売上高から売上原価(仕入れ)を差し引いた利益、最も基本的な利益で「粗利」とも呼ばれています。単純にいくら儲けがあるのかが分かります。
②営業利益
①の売上総利益から売り上げを上げるためにかかった費用(販売費及び一般管理費)、いわゆるコストを差し引いた後の利益です。事業でいくら稼いだか、収益が出ているのかが分かります。
販売費・一般管理費とは:給与、報酬、旅費交通費、通信費、接待交際費、光熱費、租税公課、支払手数料、消耗品費など
③経常利益
②の営業利益と配当金や受取利息などの事業以外で得た利益(営業外収益)を足して、支払利息などの事業以外で払った費用(営業外費用)を引いた利益です。会社の事業全体から得られる利益が分かります。
経常利益がプラスであれば、利息などを払っても利益が出ているということで、金融機関の評価も上がります。
営業外収益とは:受取利息、受取配当金、有価証券売却益、その他の金融上の収益など
営業外費用とは:支払利息、社債利息、有価証券売却損、その他の金融上の費用など
④税引前当期純利益
③の経常利益と事業とは関係のない一時的に発生した利益(特別利益)を足して、一時的に発生した損失(特別損失)を引いた利益です。臨時的な損益を含めた利益が分かります。
特別利益とは:固定資産売却益、有価証券売却益、債務免除益、貸倒引当金戻入益など
特別損失とは:固定資産売却損、有価証券売却損、火災損失、盗難損失など
⑤当期純利益
④の税引前当期純利益から法人税などの税金を引いた後の利益、最終的に会社に残った利益が分かります。マイナスの場合は「当期純損失」と言います。
このように損益計算書は、大元の売上高から順番に費用等を差し引いて各利益を計算していきますが、損益計算書の中でも「経常利益」は、会社の事業全体から得られる利益ですので最も重要な数字です。
金融機関等が最も重視しているのがこの経常利益と言われています。