第3章 語法を意識しよう
56,主語を示す「は」「が」の使い分け①
原文 昔々、ある所におじいさんとおばあさんは住んでいました。おじいさんが山へ芝刈りに、おばあさんが川へ洗濯に行きました。↓
改善例 昔々、ある所におじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。 |
→主語が新情報なら「が」、旧情報なら「は」
誰もがよく知る昔話の出だしです。原文を読んで、あれっ、なんか変だと思ったことでしょう。私たちは「は」「が」を自然に使い分けているので違和感をもつのです。でも、それがどんな使い分けなのかまでは知らないでしょう。
「が」の前には未知のもの、「は」の前には既知のものが来る。
未知(初めて知る)が~/既知(すでに知っている・すでに登場している)は~
例文であれば、昔々ある所にで始まる第1文のおじいさんとおばあさんが読み手には未知の存在なので、「が」になります。第2文になればもう2人とも既知の存在になるので、「は」で受けるのです。
これを情報という側面から解釈すれば、既知=旧情報、未知=新情報となります。疑問文とそれに対する回答文で考えると、わかりやすいでしょう。
(質問)イチローは何をしているの?→(答え)イチローは走っています。
この質問者と相手はイチローがいることはわかっている(旧情報)のですが、「何をしているか」がわかりません。その「何を」に対する答え(走っています)が新情報です。「は」の前には旧情報、後に新情報が来るのです。
(質問)誰が走っているの?→(答え)イチローが走っています。
こちらは、誰かが走っているのが見えているのに、それが誰なのかわからないケースです。「誰が」に対する答え(イチロー)が新情報です。「が」の前に新情報が来て、後に旧情報がきています。まとめると、次のようになります。
新情報 が 旧情報 / 旧情報 は 新情報
57、主語を示す「は」と「が」の使い分け②
原文 台風は近づき飛行機はストップしたので、肝心の講演者は会に欠席した。↓
改善例 台風が近づき飛行機がストップしたので、肝心の講演者が会に欠席した。 |
→従属節(~したので)の主語には「が」をつける。見たり聞いたりしたままの事実を素直に表現するとき、主語には「が」をつけます。
[従属節(~が~したので、)]主節(~した)
従属節の中では主語につく助詞は「が」です。
●戦争が終わった時、父は外地にいた。●夏が来ると、ビールが売れる。
●交流が進めは、理解がいっそう深まるだろう |
58,主部と述部「~したのは~からだ」「~は、~だ」のパターン
原文 A市で町おこしが成功したのは、住民にやる気があったのだ。↓
改善例 A市で町おこしが成功したのは、住民にやる気があったからだ。 |
→パターンを知って主述のねじれを克服
「~は、~にある」のパターン前半の~には秘密、カギ、キー、コツ、秘訣、極意などが入ります。
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「~は、~ことだ」のパターン前半の~には夢、希望、計画、念願など将来の願望が入ります。
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「~することは、~ことだ」「~するのは、~ことだ」のパターン
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「~には、~がある」のパターン
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59、行く先を示す「へ」「に」「まで」
原文 その事件が会社倒産までの引き金になった。
↓ 改善例 その事件が会社倒産への引き金になった。 ※原文の述語はその事件が会社倒産へ向かうわけですので「方向」を表しています。 |
→「へ」は方向、「に」は目的地、「まで」は過程
へとには移動先を示す助詞です。
「へ」は移動の方向を表し、
「に」は移動先(帰着点、目的地点)を表し、
「まで」は移動のプロセスに重きを置く。
「へ」と「に」の使い分け
●指先を人の顔へ向けてはいけない。(向ける立場からの発言) ●指先を私の顔に向けないでください。(向けられる立場からの発言) (例)
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「まで」と「へ」「に」の使い分け
刑事に追われている犯人が吐いたセリフとして
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60、「で」と「に」を使い分ける
原文 運動会の朝、すでに各チームの旗が校庭で並んでいる。
↓ 改善例 運動会の朝、すでに各チームの旗が校庭に並んでいる ※ |
→人の意志による行為には「で」、物の在りようには「に」「で」と「に」はどちらも場所を表す助詞です。
「で」と「に」はどちらも場所を表す助詞です。「で」は動作性の強い文、「に」は状態性の強い文に使います。と言っても、まだピンとこないでしょう。
動作をだいたいが人間の意志によってなされます。例として
- ・ホテルでパーティを開く
- ・レストランで食事をする。
- ・お寺で座禅を組む
- ・書店で本を買う
他方として、状態は人間よりも物品に関係することが多いです。例文の主語は各チームの旗(=物品)です。物が校庭に並んでいるので、「に」を使います。「生徒たち」だったら「生徒たちが校庭で並んでいる」となります。
人間の意志による行為(動作)→で
物の在りよう(状態)→に
61、「~がしたい」「~ができる」
原文 「映画を見たい」と言うグループと、「食事をしたい」と言うグループに分かれ、動きをとれなくなった。
↓ 改善例 「映画が見たい」と言うグループと、「食事がしたい」と言うグループに分かれ、動きがとれなくなった。 |
→「が」は意思や希望、可能、感情を表すときに使う
「映画」「食事」「動き」はそれぞれ、「見たい」「したい」「とれなくなった」という動詞の目的語なので、助詞は「を」だと思うでしょう。しかし、以下の特別な場合には、「が」が目的格の助詞となります。
気持ちや感情をストレートに示すときは「が」。
「~たい」で意思や希望を表す場合
改善例の「映画が見たい」「食事がしたい」がこれに該当します。「~がほしい」と願望を表す場合も「が」です。ただし、「たい」「ほしい」の後に「~と思う」「~と希望する」など別の動詞が加わると「を」になります。 ●本場のビールを飲みたいと思って、ドイツまで行ってきた。 ●外国の友人が京都を見物したいと希望しています。 |
「~できる」や「~れる・られる」で可能や能力を表す場合
例文の「動きがとれなくなった」がこれに該当します。「とれなくなった」と否定形にしていますが、本体は「とれる」という可能を表す動詞です。以下の文もこれに当たります。 ●ピアノが上手に弾ける ●片手で重い荷物が持ち上げられる |
好悪の感情を表す場合
好き、きらい、うれしい、悲しい、いとおしい、うらやましいなどは「が」伴います。
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62、対比を表す「は」の使い方
原文 雨が降っていますが、雪が降っていません。
↓ 雨は降っていますが、雪は降っていません。 |
→後の文を省略して含みを残すことも
助詞「は」の働きに対比があります。「Aは~、Bは~」と並べ、二つの事柄を対比して述べます。対比する二つは同等のものを並べ、その対照的な状態や性質について比べます。
63、64は不要のため省略
65、セットで覚える副詞と文末
原文 その風景は未だに昔のままだ。全然すばらしい。
↓ 改善例 その風景は未だに昔と変わっていない。とてもすばらしい。 |
→「未だに~ない」「おそらく~だろう」などセットで覚える。
否定(「ない」を伴うもの) | 未だに、全然、必ずしも、いっさい、今さら、何も、たいして、いっこうに、とうてい |
推量(「だろう」などを伴うもの) | たぶん、おそらく、きっと、必ずや |
否定の推量(「まい」「ないだろう」などを伴うもの) | まさか、よもや |
66、セットで覚える名詞と動詞
原文 自由時間は、将棋や碁をする者、麻雀をするものなどがおり、思い思いに楽しんだ。
↓ 改善例 自由時間は、将棋を指す者や碁を打つ者、雀卓を囲む者などがおり、思い思いに楽しんだ |
→特定の名詞には、特定の動詞がある
日本語には名詞と動詞がセットになった表現があります。この組み合わせを上手に使えば豊かな表現が可能になりますが、誤れば常識も疑われます。
詳しくは”使える言葉一覧に記載”。
67、特定の名詞には、特定の数え方
原文 彼と私は入社年が3個違うけど、年齢は1個しか違わない
↓ 改善例 彼と私は入社が3年違うけど、年齢は1歳しか違わない |
→何でも「1個、2個・・・」と数えない
詳しくは”使える言葉一覧に記載”。