第4章 組み立てのノウハウ
68、必要な材料を集める
→書く内容・そのために必要なものを把握する
テーマが決まっていれば、最初にすべきは「材料集め」です。そのテーマのより具体的な何について、どんなことを書くのか、そのために必要な材料は何なのか、それらをつかむことから始めましょう。
①「具体的論点の確認」・・・すでに決まっているテーマのより具体的論点をつかむ
②「材料の点検」・・・何が必要か、ある程度の内容展開を考えながら、手持ちの材料と不足の材料を確認。
③「不足分を取材で補足」・・・不足材料を、必要な方法で入手、材料はより多くあつめよう
④「総材料の再点検」・・・必要十分な材料がそろった、と確信できるまで行う
具体的論点とは・・・
たとえば、テーマが少子化高齢化問題とします。これはとても広い内容を含んでいるので、どこに焦点を合わせるかで書く内容が大きく変わります。「原因は何か」「このままだとどんな困った事態になるか」「対策はどうすればよいか」というように、具体的な問いが立てられます。さらに、年金財政との関係、福祉や医療との関係などで論ずることもできます。 包括的・抽象的テーマ「少子高齢化問題」 ↓ 具体的論点
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69、書く前に徹底的に考える
→考えること書くことは全く別
実用文では書く前に徹底的に考えるのが正しい作法です。考える作業に極力時間を費やし、書く作業に充てる時間は少なくするように心がける。
70、話を組み立てる
→頭の中の材料を出し切る(材料の棚卸)→材料の選別→筋道の作成(最適な流れをつくる、本筋に関係ないものは捨て、同類項は段落にまとめる)
71,平べったい内容を立方体に
→話の視点を移動させる
文章の内容がどうにも平板な感じがする、そんな場合は視点を移動しましょう。「複眼的」に考えるのです。
たとえば、インフォームドコンセントは医者の立場だけでなく、患者の立場や患者家族の立場から論じれば、捉え方がダイナミックになります。
→視点の移動方法
- ①相手のある問題なら、相手の立場にも立って考える
- ②対立意見のある問題では、対立意見にも目を向ける
- ③当該分野から他の分野に広げられないか、さらに一般化・普遍化ができないか考える。
- ④部分から全体へ、全体から部分へ視点を移動させる。
- ⑤現在の話でも、過去からの経緯、将来の行方を考えるなど、時間軸を移動させる
- ⑥外国や隣接分野などの先行事例、類似事例、関連事項にも目を向ける
72、実用文の基本は”結論先行”
→大事なことから先に書く(逆三角形の文章)
実用文は情報や主張を読み手にいかに分かりやすく伝えるか。そのために実用文は大事な中身から先に書くスタイルが有効的です。「言いたいこと」を出し惜しみせず、ずばり核心から話にはいるのです。
→いちばん大事なものは何か
何についてどう論ずるか(論点と論点の方向付け)、考えた結論は何か(主張)、その結論を導いた根拠は何かをまずしっかりつかんでください。魅力的な出だしをどうするかは、その次に考える。
→逆三角形の文章とは?<頭でっかち→尻すぼみ>
- ●大事なもの(論点→結論・中心主張)
- ↓
- ●絞り込みが利いているので、論点をしっかり展開できる
- ↓
- ●細部は状況(字数や論の展開)に応じて膨らませたり縮めたりする。結びを無理につけなくてよい。
→冒頭部以降の内容
冒頭部以降では、なぜその結論(主張)を導いたかの根拠づけ(論証)が中心となります。具体的には
- ●データ・参考資料の引用
- ●関係者の談話・専門家の意見
- ●実態・経緯・原因・背景の紹介や分析
- ●将来予測(見通し)、先行例や類似例への言及
などで構成されます。
73、前文(リード)を立てる
→前文(リード)で全体の大筋が見える
前項で紹介した逆三角形の文章を徹底すると、「前文を立てる」ことになります。本文のエッセンスを前文に詰め込むのです。雑誌や新聞の記事には、前文が立てられ、読み手を上手に誘導しています。
記事が何に的を絞ったものか、ニュースバリューがどれほどあるのかなどを簡潔に教えてくれます。
前文の意味
- ①記事の方向付け(書く観点と、内容の展開方向を示す)
- ②本文のエッセンスの前出し
- ③重要ポイント
- ④読み手のスムーズな誘導
本文のエッセンス→本文のエッセンスを前文へ→前文のキーワードを見出しへという構築も可能。
→前文の要素は中心論点・その背景・読ませ所
前文の立て方として・・・
- ①(中心論点)論点をひとつに絞り込む(疑問文「~は~か」で示す方法もある)。
- ②(絞って背景)なぜその論点に絞ったのか、理由(必然性)を要領よく説明する
- ③(読ませ所)本文の読ませ所を、キーワードを交えて明らかにする
ペットブームの行き着いた先に、ペットの高齢化問題が浮上してきた。ペットの葬祭を請け負う業者が次々と登場し、至れりつくせりのサービスを展開する一方、移動者による死体焼却などが新たにトラブルを発生させている |
この前文で示された中心論点→新登場したペットの葬祭業者の実態です。そこに絞った背景→ペットブームの果てのペット高齢化。読ませ所→至れり尽くせりのサービスの一方にある、移動車による死体焼却などの新たなトラブルの発生 です。
74、論文・小論文は序論→本論→結論の流れに
→論理的な文章には、3段型構成を用いる、論点をひとつに絞れば結論もひとつになる
3段型構成とは序論、本論、結論から成ります。大事なのは、序論で具体的論点をひとつに絞りこむことであり、論点がひとつであれば結論もひとつになります。本論もその論点がらみの考察に徹底するので、全体の趣旨が一貫します。本筋から外れた脇筋に入らないことが大事です。
(序論=導入部)
●テーマに即して絞り込んだ具体的な重要論点をひとつ示す。議論文を一つ立てると論点が示せる。
●その論点に絞った理由(必然性)を説明するとともに、どんな観点から論ずるかという大きな方向づけもする。
(具体例・少子高齢化問題)
「少子高齢化が急速に進んでいる。それはさまざまな分野に大きな影響を与えるが、特に、すでに破綻寸前の年金財政への影響は深刻だ。どう乗り切ったらよいのか」 |
(本論=論証部)
●序論で示した論点を受け止めて、具体例やデータ、論言、資料引用などによる多角的な考察に通じて根拠付けを行い、説得力ある主張(結論)を導く
●論理に一貫性をもたせることが大事。
具体例
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(結論=主張要約部)
●本論の論証で導かれた主張をまとめ直す。
●序論の疑問に対する答えに該当するが、本論で出てきた主張の単なる繰り返しではなく、一段深めた意味づけをしたり、問題解決のための提案などへ高めることもある。
具体例
●検討で得られた最善策と実施に必要なステップの提示 |
75、話はどこからでも始められる
→どこから書き始めても文章は成り立つ
書く中身が決まっている、つまり書く材料がそろっている場合、どの材料からはじめても文章は成り立ちます。大事なのは必要な5つの材料をすべて使い切ることです。
→工夫すればオリジナルな展開もできる
一筆書きの要領で、5要素のすべてを盛り込めばよいのです。
読み手にとって自然な流れ
①過去→現在→未来(時間の流れ) ただし、通常は今の問題を論じることが多いので、<現在→過去→未来>で組み立てることが多い。 ②大状況→中状況→小状況(空間的把握) 全景を映し出し、それから近景、さらに焦点となる核心へと絞り込む映像を思い浮かべると理解しやすい。ルボなどではいきなり小状況から入り、それから周囲の背景的な話に広げ、さらには時代・社会の全体状況も語るというように逆の道筋をとることも多い。 ③実態紹介→問題抽出→原因・背景の究明→改善策考察→結論(主張、提言) これは何かの問題解決を考える、新聞の社説などの典型的なパターン。 |
76、”出だし”で読み手をひきつける
→出だしで結論を出す、核心に迫る
出だしで読み手をひきつける共通の方法は、結論を先に出す、早く核心に迫るという手法です。
77、一つの段落に一つの話
→段落分けしなければ読み手・書き手双方に支障が出る。
→段落にはおのおの、中心となる話題が入る
各段落はそれぞれ一つの中心話題を持っています。その中心話題が変われば、段落を変えるべきです。字数的なもので変えるべきではないです。
たとえば、「電車の冷房が強すぎるので、もっと弱くするべきだ」と主張するとします。次のような展開が考えられます。
「電車の冷房が強すぎる」(論点提示)
- ●ある車両での体験(具体例紹介)
- ●ほかの人たちの証言(傍証)
- ●国の省エネ推進策との矛盾指摘(大きなレベルでの議論)
- ●改善の訴え(主張)
78、”同じ仲間”を同じ段落に集める
→不十分な段落分けで読み手は混乱する
同じ仲間=同類項は、同じ段落に集める
→同じ表現やキーワードが段落を超えて出てこないか
79、主題から目を離さない
→主題と関係ない話は捨てる
文章内のすべての要素を主題に集中させます。ゆえに起承転結は必要ない。
→素材はすべて本筋に集中させるイメージで
よい文章は、素材すべてが本筋へ集中しているので、話が進むほど本筋が太くなる。悪い文章は、脇筋へ話しが次々と分散し、話が進むほど本筋が細くなる。
80、”結び”をうまくつける
→結びには3つのパターンがある
①結びが要らない文章 「逆三角形の文章」がその典型です。結論を先に出しているので、再び結びをつける必要がありません。
②論理的な「3段型構成」の文章 これは最終段が結論ですので、その作法に則り、序論→本論の流れをきちんと受け止めた結論、つまりは論点に対する答えを出せば済みます。
③エッセイや投稿文、報告文など、定型のない文章郡です。実はこれも基本的考えは2番目と同じで、結論は本論の延長線上にあるというのが大原則です。
→本筋と関係ない結びは無意味