1、クロージングの進め方とポイント
クロージングとは買ってくださいと言うこと。あせらず行うことが重要。
■クロージングの3つのステップ
お客様に「ご購入ください」といって契約にいたるまでには、3つのステップがある。
STEP1 見極める
クロージングをかけてよい時期かどうかを見極めるお客様は買ってもいいかなという状態になると、それとなくサインを出します。これを「バイイング・シグナル」といいます。それに応じてクロージングするべきです。
「買おうかな」のサインの例
- <言葉>
- ・質問が増える(仕様・価格・納期)
- ・細かい条件を打診してくる
- ・置き場やダンドリ、アフターサービスについて詳細に聞いてくる
- <表情>
- ・柔和になる
- ・(理由もないのに)険しくなる
- <行為>
- ・関係者に電話をして相談する
- ・(資料を持って)席をはずす
- ・カタログや見積書をよく見直す、考え込む
STEP2 確認する
買う気があるか、障害は何かを、さりげなく確認する。寸止めの意思確認(=テストクロージング)が重要です。
●確認する=テストクロージングの方法
選択 | 契約するとなった時の選択をさせてみる「色は赤、青、緑のどれがよろしいですか?」 |
ダンドリ | 契約を前提として、ダンドリを前に進める「お使いになる方への説明会ですが、いつ頃がご都合よろしいでしょうか」 |
累積 | 1つ1つ、メリットを再確認して同意させていく「コピー機の横の隙間にぴったり入りますね」「消耗品費が30%削減できます」「検収の締め日までにお届けが可能です」 |
結果 | 契約するメリット、しないデメリットを対比し、判断を迫る「今なら25%オフでてに入ります」「あと1週間後には満額でお買い上げいただかねばなりません」 |
沈黙 | 必要なことを話した後は沈黙し、相手に一歩踏み出させる「いかがでしょうか」 |
直球 | 「買ってください」とストレートに迫る「どうか決めてください。お願いします」 |
STEP3 対処する(処理する)
確認した際の反応別に、適切な対処を行う。テストクロージングの反応別に対応する。
●相手の反応別の対処法
相手の反応 | 反応の例 | 対処法 |
同意 | 「契約しましょう」「ヨロシク」 | 一気に契約を締結し、長いをせずに丁重にお礼を言って帰る。 |
引き延ばし | 「もう少し考えさせて」「まだ決まっていないことがある」 | 何を考えるか、何がきまらねばならないのかをはっきりさせ、解決の方法・時期を一緒に明らかにする |
不信 | 「耐久性がねぇ」「実績あるの?」 | 不信や疑問を、証拠を提示して解く |
無関心 | 「ところで来月の商談会は」「まあ、それはそれとして」 | 丁寧に無視して、もう一度テストクロージングする |
拒否 | 「今はいらない」「やめとく」 | 拒否した理由を無批判に聞き「それが解消されれば考えてもらえるか」「ほかに理由はないか」を確認する |
■クロージング例(本当のニーズを探りながらクロージングする)
①お客様の「バイイング・シグナル」を確認する
②テストクロージング
③お客様から「耐久性が心配」という反応が出た
④「耐久性データ」を見せながら「大丈夫」と対処した
⑤再度テストクロージングする
⑥「導入実績はどうか?」との別の反応が出た
⑦実績表を示して説明した→お客様が示した別の反応に応じた適切な対処をした/さらに、「何か、別の大きな疑問がおありですか」と尋ねる
⑧再度テストクロージングする
2、成約率を高める2つの軸
■商品自体の価と営業の価(購入は価格だけでは決まらない)
- A商店
- ・価格は100万円
- ・販売員の商品知識が乏しく、接客態度も悪い
- B商店
- ・価格は105万円
- ・販売員は商品知識が豊富、お客様に新設
→実はB商店で買うお客様のほうが多い
3、テストクロージング後のセールストーク
■クロージングの各段階で確認する事
段階 | すべきこと | 目的 |
バイイング・シグナル | バイイング・シグナルを見極める | クロージングの旬を判断する |
ニーズ確認 | お客様の問題・ニーズをまとめる | お客様と問題・にーズを共有する |
ニーズ適合確認 | お客様のニーズを自社の製品・サービスと突き合わせていく | お客様の問題解決に役立つことを確認していく |
テストクロージング | 購入の意思を問う | 購入の可否、阻害要因を絞り込んでいく |
反応への対処 | お客様の反応に適した対処する | ネガティブな要因をなくしていく |
クロージング | 契約を締結し、喜び合い、深く感謝する | 後戻りしない、契約を後悔させない |
■同意を得たときの対応/引き返さない
営業「ありがとうございます。私どももトルクが自慢なんです。それでは、こちらの御申込書にご記入をお願いいたします!」
→同意をもらった時はすぐに丁寧にお礼をし、相手が認めてくれた点を復唱する。その後、速やかに契約の実務に移る。
■引き延ばしへの対応/はっきりさせる
営業「また決めかねていらっっしゃることがあるのですね。大きい契約ですから、もっともだと思います。あとは、何が決まれば結論が出るのか、教えていただけますでしょうか。私にお手伝いできることがあるかもしれません」
→ひきのばしは、単に意思決定を遅らせたい場合と、その時点で決定できない事情がある場合とがある、いずれにしても「何が未確定要因なのか」をクリアにすることが大切。その際に、「私がそれを聴くことが、あなたのメリットになる」という心証を相手に与えられればベスト。これば単に優柔不断で決められない人にも効果あり。
■無関心への反応お客様に貸しを作らせる
営業「申し訳ございません。どうやら私の説明がまずくて、大事なことをしっかりお伝えできていないようで」お客様「そんなこともない」営業「ではもう一度チャンスを」
→こちらの情熱とは裏腹に、相手に関心をもってもらえなかった、忘れられてしまった、とうケースは意外に多い。ここは自分の技術不足に思いを至らせる。そして相手に「申し訳ないことをした。今日は集中して聞こう」とおもわせる。
■拒否への対応/異なる価値に共感する
・営業「高いとお感じでしたら、それは当社の努力不足です。この製品の性質では、いくらぐらいが妥当なのか、お聞かせ願えませんでしょうか」
→高いか安いか、良いか悪いかはお客様が感じること、つまりお客様の価値観。それを否定してしまったは交渉は続けられない。お客様の価値観を認めた上で、速やかに次の対応策を考えるのが上策。
・営業「○○でしたら、もう一度ご検討いただける予知はほんの少しでも残っていますでしょうか」
→成約に至らずとなっても、リターンマッチの可能性を探る。向こうも多少罪悪感を感じて商談中おしえてくれなかったことも教えてくれるかもしれない。それを引き出す。
4、契約と代金回収のポイント
■支払い条件と代金回収
契約時に書面による条件明示をすることが大切。
●契約時の主な内容と留意事項の例
期日 | 支払日 |
支払い方法 | 現金、振り込み、小切手、手形など。 |
付帯費用 | 振り込み手数料などの負担者 |
そのた | 遅延時の場合の遅延料規定など |
■契約書で発注内容を確認する
●契約時の主な内容と留意事項の例
項目 | 留意事項 |
日付 | 契約の日付と、サービス開始や権利移転の日付 |
商品名 | 仕様、オプションなどの正確な記載 |
数量 | 本体、付帯物の数量とともに明記 |
金額 | 単価、数量、単位、税額 |
アフターサービス | 保証内容、保証期間 |
■買ってよかったと再認識させる
この契約を一番喜びたいのはお客様です。本当に良い選択をしたと勇気づける。
お客様の不安例 | 営業の対応例 |
この仕様でよかったんだろうか? | お客様のニーズと契約内容の合致をそれとなく具体的に話す「この機能で長年の○○が解決できますね」 |
周囲の人は何ていうだろか | 先行するユーザーの声などを資料にして見せる「これは御社と同じ悩みをおもちだったお客様からの感謝の声です」 |
もっと安く買えたのでは? | 値引きの勝利者感をあげる「じつはあの価格でダメなら、あきらめなくてはなりませんでした。良いお買い物をされましたね」 |
5、アフターフォローでやるべきこと
売った後をむしろ大切にする。商品が期待通りに役立っているか、確認し次の営業につなげる。
■理由を作って訪問する
電話やメールでもいいが、契約が取れた瞬間すぐに訪問しなくなるのは失礼。商品チェックなど何かしらの理由をつけて訪問する。
■納品時のポイント
御礼の述べる | ・時にはお祝いをのべる ・できれば上司と同行し、先方の上席者にもご挨拶する |
契約条件通りか確認する | ・契約書や仕様書の控え持参し、照合する ・その場で検収(仕様通りかの確認)となる場合もある。検収合格は支払いの大前提 |
使用方法を説明する | ・次のことを事前に聞いておく・・・人数、どの程度の知識があるか、説明時間、キーマン |
アフターサービスの案内する | ・サービス規定を説明する ・分かりやすい所にマニュアルや連絡先を置いておく |
■購入後、数日間のアフターフォロー
●購入後間もなくの訪問のポイント
・問題なく使われているか ・不良個所や不具合はないか確認する ・商品・サービスに対する評判を聞き出す
■入金時期のアフターフォロー
通常お客様が代金の支払いをする実務は経理担当が行う。お客様はいつ振り込みが終わったかわからないケースもある。そんな時営業がわざわざお礼を言いに訪問すれば、お客様は気が利く人・誠実な人と印象を持ってくれる。
・入金の御礼を言う ・お礼は、他の用事のついでにするのではなく、お礼を言うために伺ったことをアピールする
・お礼を言ったら、あまり長く話し込まない
■定期的なアフターフォロー
納品から半月~1か月がたつころには何度かの訪問によって信頼感がでてきます。そこであらたにビジネスをもちかける。
- ・使い勝手はどうか、故障はないかなど、商品・サービスの使用状況を確認する
- ・自社の新商品イベントなど、新しい情報を提供する
- ・今回、担当してくれたお客様に、社内の他部門で見込み客がいないかを聞き出す
- ・担当者以外の使用者から、新たな課題やニーズを聞き出す。
6、クレーム対応のポイント
■クレームの初動
タイミング | ・クレームを受けたら、一刻も早く駆け付ける ・当日中に対応できない場合は翌朝一番に訪問する |
スタンス | 不愉快な気持ちさせてしまった まだ解決できないでいることを詫びる |
話法 | お客様の話を聞くことに徹する。思っているままを吐き出してもらう |
●責任の所在にはふれない
この時に、どちらに責任があるかという話はいけない。例えばお客様がけがをした場合、その原因がお客様の操作方法に重大な誤りがあったのなら、こちらで責任をとるわけにはいかない。あくまでも「心配ごとがおきているのに、まだ解決できていない」という「状況」を詫びる姿勢で臨むこと。
■クレームの原因を推察する
原因はお客様にある可能性があるため、お客様から状況を確認する。
●クレームの原因を推察する「想像の枠組み」
モノ寄りの原因 | コト寄りの原因 | |
営業側に原因(責任)がある場合 | ・商品の欠陥 ・説明との違い ・発注仕様と納品物との違い | ・訪問頻度が下がった ・依頼されていたことを忘れて遅れた ・対応にミス・非礼があった |
お客様側に原因(責任)がある場合 | ・操作方法が間違っている ・マニュアルをよく読んでいない ・発注仕様の誤解 | ・契約外の過剰な要求 ・もっと安く変えたところを見つけて不満をもった |
■クレーム対応の仕上げ
- ・恒久対策を講じる
- ・資料にまとめて顧客に説明する
- ・上司とともにお詫びと報告に行く(恒久対策を講じたことを報告、もう二度とこのようなことはございませんと伝える」
■緊急対策を打つ
クレームの内容が分かったら、まず緊急対策を行う。目の前で起きている不具合に対してケアをする。かつ拡大を防ぐ。緊急対策で当面の対応ができたら、次に行うのは恒久対策する。
①クレーム発生→お詫びして、現状を把握する
②緊急対策を打つ→目の前の不具合をケアし、拡大を食い止める
③クレームの原因を解明する→問題の本質を分析する
④恒久対策を講じる→仕組みとして再発防止を行う
7、顧客管理の仕方
顧客管理情報としては3種類あります。
- ・事業内容や資本金額、売上高、競合会社、系列会社といった会社案内や「会社四季報」を見れば載っている情報。
- ・自社との取引実績や担当窓口など、自社内の顧客データベースに乗っている情報
- ・購買予測やお客様の志向、商談の経緯、あるいは担当者の誕生日や家族構成など担当する営業しか分からない情報(3つ目の情報が他社と差別化でき有利に働く)
■お客様ごとに「作戦カルテ」を作る
営業部門に置かれている顧客台帳や営業日報に書かれている情報は「いつ、何の商品を、いくら売った」といったものばかりで、いずれも過去にあった出来事が記録されている。お客様ごとにより詳しくする情報を作っていおくべき。
■キャリア面でのお客様の課題
営業の仕事の1つは「お客様を出世させること」だと言います。営業が行った仕事でお客様の業績伸ばすことができれば、さらなる取引が期待できます。またお客様が将来、上位の役職に就くことができれば、決裁権が増すことになり、自社にとって優位な状況が生ませます。お客様がどんなキャリプランをもっているのか、そのための課題は何かという情報を知ることも非常に大切です。
<お客様の課題>
- ・進みたい部門 ・取りた資格 ・経験したい職務 ・作りたいネットワーク ・身につけたい能力
- ↓
- これらの課題を自社の商品・サービスでどう解決できるかを考える。