経営革新計画とは?信用保証協会の保証枠が拡大されます
経営の革新を支援する制度
中小企業の多くは、常にギリギリの状況の中で経営を行っています。
先行き不透明な経済状況、不穏な国際情勢などの影響を受けながらも何とか生き残りをかけて資金繰りや経営の改善などの取り組みを行っているわけですが、どうしても資金力の壁にぶつかってしまうことも少なくありません。
経営革新計画はそうした中小企業の努力をサポートし、経営の安定化や業績アップのための融資などの支援を行う制度です。
中小企業が業績アップを目指すためには、新事業への進出が重要な鍵になります。
市場が飽和状態になっていることもあり、ひとつの事業で安定した業績を向上させていくのが難しい時代です。
一方でニーズの多様化が進み、複数の事業を並行して進めていくことでリスクを分散させることができるほか、相乗効果やコスト削減といった効果も期待できます。Aの事業で培ったノウハウをBの事業にも活用する、といった工夫をすれば、限られた人員、コストで幅広いビジネスを行っていくことも可能なわけです。
先行き不透明な経済状況が続いている一方、「何がきっかけでヒットするかわからない」未知数な部分を抱えている現代ビジネスにおいては積極的な新事業への進出、活動が一気に業績を伸ばすチャンスともなっているのです。
ただ相乗効果やコスト削減が実現できるといっても、新しい事業をはじめるためには資金力が必要です。
また新しい分野に乗り出してすぐに経営が軌道にのるといったことはほとんどなく、当面の間は我慢の経営が求められますし、その間を持ちこたえる体力も欠かせません。
中小企業の新事業への進出を阻んでいるのはまさにこの資金力と体力にあります。
経営革新計画はそんな根本的な問題をサポートするものなのです。
どんな計画が求められるのか
この制度を利用するためには新たな事業をはじめるにあたっての計画を作成し、都道府県、国、自体体等から承認される必要があります。
もちろんどんな計画でもよいというわけではなく、一定の条件と基準をクリアしている必要があります。
その主なポイントは二つ、まずこれまで行ってきた事業とは異なる新規事業への進出を目指す計画であること。
それから十分に実現性がある内容、そして数値目標を立てていること。つまりこれまでの事業とあまり変わらない事業や、理想ばかりが先走りして現実味がない内容では承認されないのです。
また、いくら斬新で実現性が高い計画でも関係法令に反していること、公的な支援を行うのが適当ではない判断された場合、公序良俗に反している恐れがある場合なども不承認となります。
なお、経営革新計画が承認されると、政府系金融機関による低利融資や信用保証枠の拡大といった恩恵を受けることができます。
信用保証協会の「経営力強化保証制度」とは?
経営力の強化に必要な資金調達のために
中小企業をはじめとした企業では経営力を強化するための取り組みを日ごろからさまざまな形で行っていく必要があります。
いざというときにも持ちこたえられる資金力・体力がある企業ならよいですが、大半の企業ではギリギリの資金力での経営を続けているものです。
それだけに万一会社の経営に大きな不利益をもたらすような事態が起こった場合、あるいは景気の動向や国際状況などの変化によって経営状況が動揺したときに、対応できるだけの経営力を高めていく努力が欠かせないのです。
起業した会社の大半が5年以内につぶれてしまうといわれますが、その理由のひとつが弱い経営力によるもので、うまく行っているときはいいものの、少しでも逆風が吹くとたちまち持ちこたえられない状況に追い込まれてしまい、続けられなくなってしまうのです。
保証料金の壁
そんな経営力の強化の基本はやはり資金力です。
ピンチに陥ったときにいかにうまく資金を調達することができるか。いくら優れた経営手腕があっても、ピンチを乗り切るだけの優れたアイデアがあっても、資金力が不足しているとそれらを活かすことができません。
しかし中小企業の場合は銀行から融資を受けるのがなかなか難しく、思うように資金調達ができないものです。
信用保証協会はそんなときに経営力の強化や経営改善のために必要な資金を調達するための保証を行っています。
そんな信用保証協会のメリットをさらに一歩推し進めたのが経営力強化保証制度なのです。
保証を受ける際には保証料が必要です。
じつはこの保証料が信用保証協会を利用するうえでの大きな壁となっています。
そもそも経営難に陥るなど資金状態が厳しい企業では保証料を確保するのも難しく、それが原因で必要なだけの融資を受けることができなくなってしまうのです。
経営力保証制度のメリット
経営力保証制度を利用すればそうした問題をクリアしやすくなります。
この制度の利用が可能になることで「概ね0.2パーセント」信用保証料率の引き下げが行われます。
さらに保証限度額は担保付で2億8000万円、無担保なら8000万円まで。外部の専門家(金融機関・弁護士・税理士・行政書士など)のサポートを受けながら経営改善に取り組んでいるという条件をクリアする必要がありますが、資金調達の選択肢として役立ってくれるはずです。
もし経営がピンチに陥っている場合にはまず改善のために必要な取り組み、環境を整えたうえで全国信用保証協会のこの制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
信用保証協会の「提携保証制度」とは?
金融機関と提携して融資しやすくする制度
中小企業にとって最大の問題は融資を受ける際に信用を得られるかどうか、そしてスムーズに資金調達を行っていけるかどうかです。
そもそも経営状況が厳しく、資金力に不安があるからこそ融資を必要としているにもかかわらず、信用がない、担保を確保できないといった理由で審査をクリアすることができない。
このジレンマが中小企業の経営状況を圧迫している面もあります。
2000年前後に大きな問題となった黒字倒産も、こうした資金調達の手段を思うように確保できない全国の中小企業の悩みを浮き彫りにしたものといえます。
こうした資金力と信用の問題をカバーするために信用保証協会ではさまざまな保証制度を設けているのですが、その中にはこの協会が単独で行うものだけでなく、金融機関と協力・提携して行われているものもあります。
すべてを信用保証協会で行おうとすると資金力の問題で大きな負担になってしまうため、負担の一部を金融機関に負ってもらうわけです。
そんな金融機関との提携によって成り立っているのが提携保証制度です。
銀行が認める企業を保証する制度
簡単に言えば「銀行が融資してもよさそう」と判断した企業に対して、信用保証協会が保証を行う制度です。
通常では銀行の方が融資を希望する中小企業に対して担保や信用の不足から融資を断ってしまうケースが多いのですが、この制度では、逆に銀行側が担保や保証が用意できない企業に対して「保証さえあれば融資しても大丈夫そうだ」と判断し、信用保証協会に対して保証するよう呼びかける形となっています。
こうした特殊な制度のため「銀行による企業推薦枠」と呼ばれることもあります。
ですから具体的な融資内容や融資にいたるまでの経緯は、全国各地の信用保証協会や各金融機関によって異なってきます。
たとえば東京では非常に幅広い範囲の金融機関と提携保証制度を結んでおり、都内を中心に30行以上の金融機関との提携によって、5000万円程度の無担保での保証枠を設けています。
銀行から推薦を受けた企業に対して5000万円までは担保もなしに無条件で保証する、というわけです。
当然、銀行側に「この企業は融資しても大丈夫だろう」と思わせる健全な経営状況や将来性が求められます。
ただ担保がなく、預金残高が心もとない企業にとっては健全性や将来性をアピールして利用できる魅力的な制度ともいえます。
本社・事業所を置いている都道府県の信用保証協会がどのような形でこの制度を導入しているのか、確認してみてはいかがでしょうか。