株式譲渡契約書・株式譲渡承認請求書・株主名簿の名義書換請求書とは?

株式譲渡契約書とは?

昔は株券を譲渡するだけでよかった?株券なんて発行してないけど?

株式を売買するための契約書、それが「株式譲渡契約書」です。

株式を売買するには、売手となる株主が保有している株式を買手に譲渡し、買手は株式の対価として現金を支払うことになります。

昔は「株券」を発行することが原則であったため、実際に「株券」を売手(譲渡人)から買手(譲受人)に譲渡することにより株式譲渡されていました。

しかし、現在では株券を発行している会社はほとんどありません。

「株券」を持っていませんので、株式を譲渡する旨の意思表示のみで株式は譲渡されます。

つまり、売手と買い手の意思表示のみで株式を譲渡することが可能です。しかし、ビジネスにおいて口頭で売買するのは現実的ではないため、契約内容を記載した書面を作成します。

これが「株式譲渡契約書」です。

ただし、株式を譲渡することについて会社の承認を要する規定がある会社(譲渡制限会社)では、株主が会社の承認を得ないで勝手に株式を譲渡した場合は、当事者間でのみ有効な売買契約であっても、会社に対しては効力を生じませんので、注意してください。

譲渡制限会社では、会社が株式を譲渡することを承認した場合に初めて株主は株式を譲渡することができます。

株式を譲渡するにあたっては事前に会社の承認(株主総会や取締役会)を得ることが重要です。

株式譲渡契約書の主な記載事項

株式譲渡契約書には、譲渡する株式の内容、譲渡価額等はもちろん、支払い後には株主名簿の名義書換を請求する旨を必ず記載するようにします。

  • 譲渡する株式の内容
  • 譲渡の合意、譲渡日
  • 譲渡価額
  • 支払い方法、支払い期限
  • 契約解約
  • 賠償責任
  • 株主名簿の名義書換請求

株式譲渡契約書に収入印紙は必要?

一般的に契約書は印紙の貼付が必要ですが、株式譲渡契約書は課税文書に該当しないため、原則、印紙を貼付する必要はありません。

ただし、株式譲渡契約書に「すでに代金を受け取った」旨の記載がある場合には課税文書に該当しますので、印紙を貼付しなければなりません。ただしこれにも例外があり、売主である株主が「個人」であれば非課税となります。

<課税文書に該当する場合>
  • 売主である株主が法人または事業を行なう個人→印紙必要
  • 売主である株主が個人→印紙不要

 

株式譲渡承認請求書とは?

本来、株式は自由に他人に譲渡できます。

上場会社等の株式を公開している会社「公開会社」は、発行する株式に対して「譲渡制限」をつけていないので、その会社の株式を自由に他人に売買できます。

しかし、自由に株式を売買されると会社の望まない者が株主となる恐れがありますので、中小企業等には株式を公開していない会社が多くあります。

この株式を公開していない会社「非公開会社」は、会社の許可なしに株式を他人に譲ってはいけないという「譲渡制限」をつけていますので、株式を自由に売買することができません。

例えば、非公開会社A社の株式を持っている株主Bさんが知人のCさんへ売りたい場合、売る前にA社の許可が必要です。

この会社の許可を得る行為が「株式譲渡承認請求」です。

会社が譲渡制限をつけているかいないかは、会社の定款または登記事項証明書(登記簿謄本)を確認すると分かります。

「当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を得なければならない。」

上記のように規定されているのであれば、株式を売る前に「株主総会」で承認を得なければなりません。

譲渡承認請求は、書面をもって行います。まずは株主が会社に対して「株式の譲渡承認請求書」を提出します。

株式譲渡承認請求書に記載する事項は、

  • 譲渡する株式の種類及び数
  • 株式を譲渡する相手方の氏名又は名称

です。もし会社が承認しない場合は、会社若しくは会社が指定した人に買い取ることを請求することもできます。

会社は株式譲渡承認請求書を受け取ったら、2週間以内に譲渡承認機関による決議を行い、その結果を株主に対して通知しなければいけません。

もし2週間以内に通知しなかった場合は、承認したものとみなされます。会社の承認があって初めて第三者へ株式を譲渡することが可能になります。

会社の譲渡承認機関は、会社によって異なりますが、取締役会を置かない会社であれば「株主総会」、取締役会を置く会社であれば「取締役会」とする会社が多くあります。

会社のオーナーが変わることになりますので、「株式譲渡承認請求」をいきなり行う事はなく、事前に譲渡することについて会社と株主間で話し合いを設けますので、承認を得られない事は実質的にほとんどないでしょう。

 

                   株式譲渡承認請求書(記載例)

株式会社●●
代表取締役●●●●殿

私は、貴社の株式を下記の通りに譲渡したいので、会社法第136条により株式の譲渡について承認を請求いたします。

なお、不承認の場合は譲渡の相手方をご指定ください。

1 譲渡する株式の種類及び数
普通株式 ●株

2 譲渡する相手方
(住所)●●県●●市●●町●●番地
(氏名)●● ●●

平成●年●月●日

譲渡人(株主)
(住所) ●●県●●市●●町●●番●号
(氏名) ●● ●● 印

 

 

 

株主名簿の名義書換請求書とは?

株主名簿という書類をご存知でしょうか?

株主名簿は、会社のオーナーである株主を管理する為の重要書類です。株式会社を設立したあとに会社が自ら作成することが求められている書類の一つです。株式会社の社長さんであれば、例えお一人の会社であっても知っておくべき書類です。

新会社法が施行されるまでは、全ての会社は「株券」を発行していましたので、「株券を持っている人=株主」でした。

しかし、現在は、原則として株券は発行されないため(株券を発行するには、あえて発行する旨を定款に記載し、登記をしなければなりません)、株券に記載されていた事項等を「株主名簿」という書類に記載して、管理する必要があります。

株主名簿の記載事項は、下記のように決まっています。

【株主名簿の記載事項】

  • 氏名、法人の場合は名称
  • 住所
  • 保有する株式の数
  • 株式の種類(普通株式や種類株式など)
  • 株式を取得した日
  • 株券を発行している場合は株券の番号

株主名簿には決められた書式はありません。

これらの記載事項を書いたものを紙で管理しても、ワードやエクセルなどの電子データで管理しても構いません。

会社はこの株主名簿に記載されている人をもって、株主として扱います。

株主は、会社の株主名簿に自分の名前が載っていなければ株主であることを会社に主張できません。株主であることで配当金を受け取ったり、株主総会での議決権を行使することができます。

株主が第三者へ株式を譲渡した場合は、会社に対して株主名簿の記載事項を変えてもらうように言わなければなりません。

この株主名簿の記載事項を書き換えてくれと会社に請求することを「名義書換請求」と言います。

あくまでも株主から会社に対して請求することが必要です。会社が勝手に書き換えることはありませんので注意してください。

株券を発行していない会社の場合、株主(譲渡人)と取得者(譲受人)が共同して、「株式名義書換請求書」を提出して株主名簿の書き換えを請求します。

株式名義書換請求書に決まった様式はなく、会社の定款で「会社指定の請求書を用いる」と定めて、株主名簿と同様に会社が自ら作成します。

株式名義書換請求書には、名義書換請求株式数、株主と取得者それぞれの住所、氏名を記載して、両者が記名押印する書式が一般的です。認印ではなく実印による押印を求めたり、印鑑証明書の提出を求めるようにすることも可能です。

通常、株式を譲渡(売買)する場合、譲渡人と譲受人で「株式譲渡契約」を締結します。株券を発行していない場合は、当事者間の意思表示だけでも株式譲渡の手続は終了しますが、株主名簿の名義書換が行われていなければ、会社や第三者に対して、自分が新しい株主であることを主張することができません。

株式の譲受人は、対外的に自分が株主であることを主張できるように、株主譲渡契約を結ぶだけで手続きを終わらせるのではなく株主名簿の名義書換請求まで必ず行うようにしましょう。