はじめに
法人設立後すぐに銀行口座を解説しておかないと、お客様からの入金や契約のチャンスの際に困ることになります。
まずは法人設立から、口座開設までのスケジュールを把握し、スムーズに手続きが行えるように準備をしましょう。
目次(もくじ)
- 1.口座開設までのスケジュール
- 2.どの銀行で口座を開設するか
|-都市銀行の特徴
|-地方銀行の特徴
|-ネット銀行の特徴
|-身元確認や必要書類の提出は厳格になってきている - 3.法人口座開設に必要な書類とは
|-特定の状況において必要な書類 - 4.何を審査されるのか
|-資本金の額
|-バーチャルオフィスではないか
|-固定電話を設置しているか
|-事業目的で会社の実態を把握できるか - 5.何を質問されるか
- 6.会社設立前に気をつけること
- まとめ
1.口座開設までのスケジュール
法人の設立登記申請を法務局に対して行います。
ただし、これは「申請」ですので、登記が完了する(登記簿に反映される)までには審査期間があります。
各法務局のスケジュールによりますが、申請した日から約1週間程はかかることが多いです。もちろんそれよりも前後することがあります。
設立登記が完了すれば、いよいよ会社として稼働開始です。法人名義の口座を作ることができます。
しかし、個人口座のように、銀行に行くとその場で開設とはなりません。必要書類を提出し、必要事項を記入をしたら、こちらも審査をされます。審査期間は約2週間です。
提出する書類は、各銀行によって多少の違いがあります。
設立登記完了になって初めて口座開設に動き出すと、それだけ時間にロスが出てきます。
登記申請をしている間に、開設しようとしている銀行に赴き、法人口座開設に必要な書類や注意すべき点などを問い合わせて準備をしておくとよいでしょう。
2.どの銀行で口座を開設するか
口座開設にあたり、都市銀行・地方銀行・ネット銀行の中からどの銀行にするかを考えましょう。
それぞれに都合の良し悪しがありますので、現状にあわせて選ぶようにします。
2-1 都市銀行
何と言っても、信用度が高いです。それだけに口座開設に対する審査も厳しいです。
大手企業との取引を予定しているのであれば、都市銀行の方が信頼を得やすいでしょう。
銀行の数も多いですので、日本各地にクライアントを抱えるようであれば、断然使いやすいでしょう。
ただし、他の銀行と比べると、振込手数料が高いです。
2-2 地方銀行
地域に根づいた銀行です。その地域内での事業が主であれば使いやすいでしょう。
都市銀行よりは、比較的審査が通りやすいとされています。首都圏との取引だと使いづらいかもしれません。融資や新規事業の相談にのってもらいやすいというメリットもあります。
2-3 ネット銀行
振込手数料が安いです。また、24時間リアルタイムで決済をすることが可能ですので、ネットショップ等のネット事業を予定しているのであれば、使い勝手が良いでしょう。都市銀行や地方銀行よりも信用度は低いとされています。
身元確認や必要書類の提出は厳格になってきている
ニュースでも度々話題になっているように、法人名義の銀行口座が振り込め詐欺の振込先になっていることもあり、法人名義の口座開設の審査は以前より厳しくなっています。
どの銀行でも、身元確認や必要書類の提出は厳格なものなので、銀行が求めているものをきちんと提示できるように準備をしておきましょう。
3.法人口座開設に必要な書類とは
それぞれの銀行ごとに必要書類は違うので、事前に開設を予定している銀行で必ず問い合わせをしましょう。
どの銀行でも必要だといわれているものは以下の通りです。
- 履歴事項全部証明(登記簿謄本)
- 法人印鑑証明書
- 開設手続きをする人の免許証など、公的な本人確認証明書(免許証やパスポート等)
履歴事項全部証明と法人印鑑証明書は、設立登記が完了してからでないと取得することができません。
当然ながら原本を求められますし、提出すると返却されない場合も多いです。
会社の設立後は、履歴事項全部証明や法人印鑑証明書を提出しなくてはいけない手続きが何かとありますので、最低でも2通づつは準備しておくほうがよいでしょう。
また、開設審査の厳格化により以下のような書類も求められるケースがあります。
- 税務関係の法人設立届出書の控え
- 定款(公証役場での認証を受けたもの)
- 株主名簿
- オフィスの賃貸契約書
- オフィスで使用している固定電話の契約書
- 会社の注文書や見積書、契約書等
- 会社案内用のパンフレット類
- 会社ホームページをプリントアウトしたもの
特定の状況において必要な書類
・日本国籍を持たない人が法人口座を開設する場合
→在留カードや特別永住者証明書又は外国人登録証明書
・許認可が必要な事業を行う予定の場合
→各登録・届出の手続きが完了している旨の証明書(許可証など)
書類以外にも、法人実印と銀行印ももちろん必要です。
法人実印は設立登記の際には必要ですので作成しているはずですが、銀行印の作成を忘れていないかを確認しましょう。
なお、法人実印・銀行印の作成は弊所でも承っております。法人設立前の方はぜひご利用いただければと思います。最短即日発送です。→モヨリック行政書士合同事務所の法人実印作成サービス
4.何を審査されるのか
審査が厳格といっても、何を見られるのかは銀行それぞれ。共通していえることは、「この口座が悪用されないか」ということ。
生まれたての会社は、そもそも信用度がゼロからの出発です。
だからと言って、銀行側もみすみすお客様を逃すことはしません。
それぞれの審査基準を満たせば、どうぞ開設してくださいというものです。
では、基本的に何を見られるのでしょうか。
資本金の額
1円の資本金から会社は作ることができます。しかし、資本金というのは会社の運営費です。
それが1円だと、当然ながら稼働できないとみなされます。
1円とまでは言わずとも、資本金額が低いと、それだけ信用もできないということになります。
また、銀行によっては、資本金最低額というものが設定されており、それを下回る場合は審査すら不可となるようです。
バーチャルオフィスではないか
振り込め詐欺等の詐欺グループのほとんどが、バーチャルオフィスを使って犯罪を行っていたことを踏まえて、バーチャルオフィスでの登記をされている会社は、口座開設することが非常に難しくなっています。
もちろんゼロではないのですが、万が一犯罪が発覚した場合、銀行にとってはなんのメリットもありません。
そういったところから、バーチャルオフィスを使用している場合は画一的に審査不可としている銀行が多いようです。
固定電話を設置しているか
バーチャルオフィスの話にも通じますが、本当にこの会社は実態があるのかどうかを見られます。
バーチャルオフィス等の場合、実際は会社として機能しておらず、「場所」だけのものなので、そこにわざわざ固定電話の契約を行いません。
ですので、会社で使用している固定電話があるかどうかだけでも、信用度が増すと言われています。
事業目的で会社の実態を把握できるか
その会社がどういった事業を行う予定なのかが見られます。
明らかに怪しい事業であったり、リスクが高そうな事業に対しては、銀行側も慎重にならざるを得ません。
また、事業内容以前の問題で、事業項目が多い会社に対しても厳しい目が向けられます。
20個30個と事業目的が並んでいる会社は「で、結局何をする会社なの?」ということになるからです。
その上、業種が様々で一貫性がない事業内容も不明瞭なので、審査対象としては厳しくなるでしょう。
「で、結局何をする会社なの?」と尋ねられたときに答えられるように、会社のホームページをプリントアウトしたものであったり、顧客との契約書や注文書、会社案内などのパンフレットがあれば準備をしておくようにしましょう。
5.何を質問されるか
提出した書類だけでは把握できないことは、質問という形で尋ねられます。
例えば、事業内容についてはよく質問が起こります。どういった目的で今回会社設立にあたったのか、口座を開設すれば顧客となる相手ですので、将来性はあるのかどうかもポイントとして見られます。
自分が今から立ち上げる事業はこういった内容だと、明確に回答することが大切です。言うなれば、銀行を相手に自分の会社をプレゼンすると考えてください。
また、実質的支配者が誰なのかを問われることもあります。実質的支配者とは、その会社の25%の議決権を所有する人(法人)のことです。その質問には、株主名簿を提出することで容易に答えることができます。
株主名簿は、株式会社には必要な書類です。一人会社だとしても、株主である人(法人)の氏名・住所・何株所有か・・・などの必要事項を記載してある株主名簿を準備しましょう。
6.会社設立前に気をつけること
法人口座を開設するにあたり、会社の設立前から気をつけておくことをまとめましょう。
- 本店となるオフィスの確保
- 固定電話の契約
- 資本金の額
- 事業目的の精査
- 提出する書類を揃える(会社パンフレットや名刺を作成しておく)
まとめ
審査が厳格といっても、銀行にとっては顧客が増えるチャンスでもあります。
みすみすお断りとうことはしませんので、銀行が求める書類や回答等を事前に確認をし、準備しておくことを徹底すれば、法人口座は問題なく開設することができます。
口座開設はビジネス成功への第一歩でもあり、会社設立後の最初の大仕事でもあります。
失敗のないように、しっかりと備えていきましょう。
なお、会社名義の口座ができたら、法人用クレジットカード取得も可能になります。
法人用クレジットカードは経費の支払いに便利ですし、会計ソフトと連携させることにより経理処理も大変スムーズになります。法人用クレジットカードの取得をお考えの方は、こちらのページも参考にして頂ければと思います。
会社設立後に行う官公署への各種手続
登記所での設立手続を終えると、次は、各役所への届出が必要になります。税務関係の届出、社会保険事務関係、各市町村役場への届出など、さまざまなものがあります。
会社設立直後は多くの役所に出向く必要がありますので会社設立後のスケジューリングはしっかりと行いましょう。
提出先 | 提出書類 | 提出期限等 |
---|---|---|
税務署 | 法人設立届出書 | 会社設立日から2ヶ月以内 |
青色申告承認申請書 | 第一期事業年度内もしくは設立から3ヶ月以内のいずれか早い日 | |
棚卸資産の評価方法の届出書 | 設立第一期の確定申告の提出期限内まで | |
減価償却資産の償却方法の届出書 | 設立第一期の確定申告の提出期限内まで | |
給与支払事務所等の開設届書 | 事務所開設の日から1ヶ月以内 | |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 特例を受けようとする月の前月末まで | |
都税事務所 | 事業開始等申告書 | 事業開始の日から15日以内 |
県(道府)税事務所 | 法人設立届出書 | 会社設立の日から1ヶ月以内 |
各市町村役場 (東京23区を含む) |
法人設立届出書 | 会社設立の日から1ヶ月以内 |
労働基準監督署 | 適用事業報告 | 労働者を雇用するようになったときは遅滞なく |
就業規則届出 | 常時10人以上の労働者を使用している場合は速やかに | |
労働保険保険関係成立届 | 労働保険関係が成立した日の翌日から10日以内 | |
労働保険概算保険料申告書 | 会社設立から50日以内 | |
労働時間、休日出勤に関する協定書 | 時間外、休日労働をさせる場合はすみやかに | |
公共職業安定所(ハローワーク) | 雇用保険適用事業所設置届 | 雇用保険の適用事業所となった翌日から10日以内 |
雇用保険被保険者資格取得届 | 雇用保険の適用事業所となった翌日から10日以内 | |
社会保険事務所 | 健康保険・厚生年金保険新規適用届 | 適用事業所となった場合はすみやかに |
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 | 被保険者の資格を取得した皮下5日以内 | |
健康保険被扶養者(移動)届 | 被保険者に扶養者がいる場合は速やかに |