起業家・中小企業経営者のつよい味方。日本政策金融公庫とは?
- 公的融資を行う特殊会社(政府系金融機関)、それが日本政策金融公庫!
- 日本政策金融公庫の業務内容
|-民間金融機関、特に銀行の貸し渋りに一石を投じる役割も - 日本政策金融公庫の特徴
|-1.無担保・無保証で利用できる(新規創業融資の場合)
|-2.利子が安い - 高まる役割
- 融資申請から融資実行までの流れ
|-1.融資の下調べ・相談
|-2.融資の申込
|-3.面談
|-4.融資の決定
|-5.金銭消費貸借契約を交わす
|-6.融資の実行・資金の振込 - もう一つの公的融資→制度融資(信用保証協会)とは?
- まとめ
公的融資を行う特殊会社(政府系金融機関)
日本政策金融公庫とはいわゆる公的機関、国によって運営されている政策金融機関です。
中小企業やベンチャー企業に対して行われる「公的融資」と呼ばれる融資の多くがこの日本政策金融公庫によって行われているほか、国民を対象にしたさまざまな融資も行っています。
もともとは国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫という独立して運営されていた3つの公的機関を統合し、2008年に財務省所管の特殊会社として再スタートさせたものです。
そのため現在でも元となった3つの機関の業務を引き継ぐ形でさまざまな取り組みを行っています。
そのため現在でも業務では「国民生活事業」「中小企業事業」「農林水産事業」の3つを柱としており、それらを通して経済の発展や地域経済の活性化、グローバル化などを目指しています。
日本政策金融公庫の業務内容
実際の業務内容ではまず広く国民を対象としたものとして小口の事業資金の融資、創業支援、国による教育ローンや共済年金などが実施されています。
とくに創業支援は経済のグローバル化を推進する重要な要素として、積極的に行われています。
また、中小企業を対象にした事業資金の融資も積極的に行っています。長期的な融資のほか、ベンチャー企業や新規事業への進出、海外進出に対する融資など。
さらに、資金繰りの悪化や経営危機に陥った企業に対する支援も行っています。日本の中小企業のセーフティーネットを支えています。
民間金融機関、特に銀行の貸し渋りに一石を投じる役割も
銀行の中小企業への「貸し渋り」が大きな問題となっているなか、この日本政策金融公庫の役割が現代のビジネスシーンにおいて重要になっている面もあります。
また担保・保証人不要で融資が受けられる制度を用意している点も中小企業にとっての大きなメリットです。
農林水産事業では食の安全の確保や関連企業の支援のほか、人材育成に関わる事業・プロジェクトに対する融資なども行っています。
日本政策金融公庫の特徴
日本政策金融公庫の特徴を見てみましょう。
1.無担保・無保証で利用できる(新規創業融資の場合)
日本政策金融公庫には、「創業融資」という制度があります。これは、なんと担保もなし、保証人もなしで利用できるのです。民間の金融機関では、担保と保証人を提供したとしても取引すらさせてくれないケースが大半を占める中、大変嬉しい制度ですね。
創業融資には制度融資(信用保証協会付き融資)もありますが、これは信用保証協会の保証が利用条件となります。日本政策金融公庫の場合は、この信用保証協会の保証も必要ありません。起業家の「信用」だけで融資をしてくれます。
ここでの信用とは、起業家自身の人となり、知識、事業経験、自己資金の有無及び多少、事業計画の有無及び良否など全てを総合的に考慮された結果を言います。この結果が良ければ、信用があるということで、無担保・無保証で融資をしてくれます。
2.利子が安い
融資の利率は、創業融資が年利で2.5%程度です。創業融資以外ですと1%台のものまであります。サラ金とは比べ物になりませんね。比較的融資が下りやすいと言われている銀行のビジネスローンですら6%~17%ですから、どれだけ利率が良いかお分かりになると思います。
制度融資の場合も同程度まで利率は低く抑えられていますが、別に保証料がかかります。日本政策金融公庫のほうが金利でも有利なことが見てとれます。
また、日本政策金融公庫の場合は、多くの融資制度で固定金利で採用されています。変動金利であれば金利上昇局面で利息が増える可能性がありますが、固定金利だと、逆に緩やかに減少していくので安心です。
その他にもメリットとして、借入期間が長く設定されている(毎月の返済額が安い)、融資実行までの期間が短い(3週間~1ヶ月。制度融資はもっとかかります)、日本政策金融公庫と付き合いをすることで信用力が上がってプロパー融資も受けやすくなる。などがあります。
高まる役割
中小企業の疲弊とその改善が日本経済の大きな問題となっているなか、日本政策金融公庫では上記のほかにもさまざまな取り組みを行っています。
地域金融機関との連携による融資、さらに証券化の支援などよりさまざまな企業が融資を受け、事業の推進や経営の健全化に役立てるよう柔軟性の向上が進められています。
平成27年現在ですでに430行以上もの金融機関と連携を果たしてきた実績もあり、今後ますます地域経済と中小企業の活性化における役割が期待されています。
また2000年以降世界規模での金融不安や災害・戦乱などによる市場の混乱に対する対処、支援なども政策金融機関の大きな役目として求められている状況です。
融資申請の流れ
1.融資の下調べ・相談
全国に日本政策金融公庫の支店があり、そこに窓口がありますので、まずは相談へ行くと良いでしょう。
自分にあった融資制度を案内してくれることもありますし、支店内には融資制度のパンフレットなども用意されています。
公庫の公式ページにも案内はありますから、まずはどのような制度があるかを確認しましょう。各融資には特徴がありますので、自分に適した融資制度を選択しましょう。
最近は公庫内に専用ダイヤルもあるようですので、こちらから電話してみても良いでしょう。
2.融資の申込
借入申込書などを提出します。創業融資の場合は、事業計画書や設備資金の見積書などを添付書類とし、その他の借入の場合は、決算書なども合わせて用意します。窓口に出向いて申込を行います。
3.面談
融資の担当者と実際に面談を行います。事業計画や決算書の内容に基いて様々なことを質問されます。融資の可否を決める重要なポイントです。
ここでは、会社の経営状況などはもちろんのこと、経営者であるあなたの「人となり」も見られますので、きちんとした服装・態度で臨みましょう。
窓口での面談だけでなく、実際に会社の店舗や工場などに視察に来る場合もあります。
4.融資の決定
融資OKの場合、契約に必要な書類が送られてきます。NGの場合は、担当者から更なる追加資料や担保を求められるケースもあれば、一刀両断でいきなり断られるケースもあります。
5.金銭消費貸借契約を交わす
借入者本人の個人実印や、会社法人実印などの押印が必要になります。契約内容は精査・確認しておきましょう。
6.融資の実行・資金の振込
融資金が振り込まれます。銀行口座はこちら側から指定できます。通常は普段から決済などに使っている口座で良いでしょう。
なお、ケースバイケースですが、融資の申込から実行まで最短で1ヶ月程度になります。急な資金が必要な場合は早めに申込を行いましょう。
ただし、急いで申込を行う場合でも、借入申込書や事業計画書、決算書などの書類がおざなりではいけません。急いでいると言えど、そもそも必要な資金を借りられなければ、意味がありません。
融資を断られた場合でも、再度の申請は可能ですが、担当者の心証はよくありません。公庫での融資申請にあたっては、細心の注意を払いつつ、迅速に行いましょう。
ときには税理士や行政書士、中小企業診断士などの専門家の知識・経験を借りなければならないときもありますので、その場合は速やかに相談しましょう。もう一つの公的融資→制度融資(信用保証協会)とは?
制度融資とは、中小企業の資金繰りをサポートするために国・自治体が主となり、資金を融通する制度です。
国・自治体が資金を提供し、銀行がその受け皿となります。銀行が窓口(地域によっては自治体がそのまま申込窓口になるケースもあります)となって融資を行い、その融資に信用保証協会が保証を付けます。
窓口となる銀行は、信用保証協会の保証がありますので、仮に金融事故を起こされても、信用保証協会が代位弁済するので、銀行の懐は痛みません。銀行は基本はお金を貸したがりませんから、貸し渋り等といった社会問題も引き起こしてしまうのですが、それを回避し、地域経済を活性化させたるために、この制度はあります。
もし、日本政策金融公庫に融資を断られた場合でも、制度融資では普通に融資が通る場合もあります。
信用保証協会については、下記ページでも詳細解説していますので、参考にしてみてください。
まとめ
日本政策金融公庫の成り立ち、融資制度の概要、特徴など基本的な部分をそれぞれ見てきました。
起業家・中小企業経営者が資金調達を考えるときにまず利用すべきは、敷居が低く、利用条件も有利な政府系金融機関です。
下記ページにて、日本政策金融公庫と信用保証協会について、更に詳しく解説していますので、ぜひご参考いただければと思います。当ページがあなたのお役に立てれば何よりです。
【保存版】即効資金調達!日本政策金融公庫活用まるわかりガイド
はじめに
当ページでは、起業家及び中小企業経営者の方々のために、「日本政策金融公庫」の賢い活用法について解説しています。
低利で、かつ、無担保・無保証人制度も充実している日本政策金融公庫ですが、融資を獲得出来る人は5人に1人の狭き門と言われています。
ですが、見方を変えれば20%もの確率で融資が下りる可能性もあるということです。
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」です。
確実に融資をおろしたい場合、まずは日本政策金融公庫について徹底的に調べ上げましょう。
なぜみんな日本政策金融公庫を利用するのか?公庫は銀行に比べて借りやすいのか?利率は?担保はいるのか?保証人は付けなければならないのか?借り入れる為のノウハウは?公庫がダメだった場合はどうすれば良い?など。
当ページでは、これらの疑問に全てお答えしています^^v
融資の申請先である日本政策金融公庫の情報を得ずして、融資を引き出すことは不可能です。
公庫という機関を初めて聞いたという方も、知っていたという方も、両者ともにお役立ていただける内容になっていますので、ぜひご覧いただければと思います。
目次(もくじ)
- 1. 日本政策金融公庫の概要
|-なぜみんな日本政策金融公庫を利用するのか?
|-国民生活金融公庫から何が変わったの?
|-あなたにぴったりなのはこの貸付制度
|-必要書類の集め方
|-民間金融機関と徹底比較【金利と融資実行まで】 - 2. 日本政策金融公庫からの借入ノウハウ
|-自己資金の重要性
|-融資のおりやすい事業計画書とは?
|-実際に面談でどんなことが聞かれるの?
|-融資を受けやすい人物像
|-新規融資と追加融資の違い - 3. 融資実行までの流れ
|-申し込み
|-面談
|-融資実行 - 4. 日本政策金融公庫がダメだった場合
|-そもそもなぜ断られたのか?
|-制度融資を検討しよう
|-ファクタリングを検討しよう
|-クラウドファンディング(出資)を検討しよう
|-低利のカードローンを検討しよう
|-借りない勇気も持つ - 5.まとめ
- コラム
|-日本政策金融公庫と付き合っておく大きな利点とは?
|-連帯保証人や不動産担保を求められた融資実行のチャンス!?
|-融資の審査では具体的に何を見られるのか? - 日本政策金融公庫・よくある質問Q&A
1. 日本政策金融公庫の概要
日本政策金融公庫は、国民生活金融公庫・農林漁業金融公庫・中小企業金融公庫が統合し2008年に設立された政府系金融機関です。
株式会社の形態を採用しています。国が100%出資の株式会社です。
統合前の略称は「国庫」という言い方が一般的でしたが、最近では「公庫(こうこ)」という呼び名が一般化しています。
設立の目的は銀行などの民間の金融機関が貸しにくい、主に農業や漁業、商工業者(中小企業)の資金需要に対して、融資を行うことです。
公庫の貸付には様々な形態がありますが、金利は概ね抑え目で貸付期間も長く設けられています(毎月の返済額を抑えることができる)。
経営者、特に創業直後の財務的に不安定な起業家にとって、頼りになる融資制度が充実しています。
(1)なぜみんな日本政策金融公庫を利用するのか?
政府系金融機関というバックグラウンドを活かして、民間金融機関よりも低金利で貸付を行うことができるからです。
一定の条件はつきますが、無担保や無保証人でOKな融資、一定期間元金の返済が猶予される据置制度等も整備されています。
融資実行までの時間はビジネスローンと銀行のちょうど間くらい
民間のビジネスローンやカードローンは、金利の高さや(借入側から見た)返済条件が厳しい一方で、短期間での融資が可能で即時性に優れています。
銀行融資は、金利こそ比較的抑え目の分、融資実行が申請から2~3カ月先になるなど、資金需要との間に大きなタイムラグが生じます。つなぎ資金が足りない場合は、1ヶ月返済が遅れるだけで倒産の憂き目に遭う可能性もあります。即時性という面ではカードローンやビジネスローンに比べると劣ります。
金融公庫の融資は、この両者のあいだに位置し、低金利(銀行よりも安い)と、短期期間の融資実行(が、ビジネスローンよりも遅い)の両立という面から、多くの経営者から支持を得ています。
(2)国民生活金融公庫から何が変わったの?
前身の国民生活金融公庫(国庫)の時代から、この低金利融資が銀行など民間への民業圧迫になるのではないかと問題視されていました。
これにより、類似した資金提供を行っていた関連団体が統合、かつ教育資金の貸付については、低所得者へのニーズを鑑みながら、再編という形になりました。
銀行に比べて公庫は借りやすいのか?
政府系金融機関というと、「審査もそこそこに簡単に貸して貰える」という先入観をお持ちの方が非常に多いのですが、そうでもありません。
公庫の審査自体ははっきり言って厳しいです。
実現可能性が少ない杜撰な事業計画での融資申込は即ハネられます。また、事業規模や事業計画に見合わない額の融資申請も、希望額から大きく削減されるか、悪質と判断されてそもそも融資不可となるケースも見られます。
前述の通り、貸付金の原資は国民の税金です。融資の審査が厳しくなるのは当然ですね。
また、民業圧迫とならないように一定以上の要件をクリアした者にしか、融資は行いません。
(3)あなたにぴったりなのはこの貸付制度
公庫には複数の貸付制度があります。
公庫のホームページで「融資のご案内」から検索すると、さまざまな貸付制度を調べることができます。一部を抜粋して、日本公庫の貸付制度をお伝えします。
融資制度 | 利用可能者 | 融資限度額 | 融資期間(据置期間) |
---|---|---|---|
普通貸付 | 事業経営者 | ・4,800万円 ・特定設備基金は7,200万円 |
・設備資金10年以内(2年以内) ・特定設備資金20年以内(2年以内) ・運転資金7年以内(1年以内) |
生活衛生貸付(一般貸付) | 生活衛生関係の事業を営む者 (※具体的には飲食店・喫茶店・理容業・美容業・旅館業・食肉販売業などを営む者) |
7,200万円~4億8,000万円 | 13年以内 |
再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資) | 廃業等の経験がある方などで、事業を始める経営者および開業7年以内の経営者 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) | ・設備資金20年以内(2年以内) ・運転資金7年以内(2年以内) |
上記の普通貸付、再挑戦支援資金のほかにも、公庫には様々な種類の貸付制度があります。以下の公式ページをご参照ください。
→https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/index.html
【関連解説ページ】
飲食店や美容院など生活衛生関係の事業を行っている方は、当サイト内のこちらのページもぜひ参考にしてください。→日本政策金融公庫の生活衛生貸付を徹底活用!まるわかり8つのポイント
公庫には経営再建を支援する制度も充実しています。
さまざまな事情により経営環境が落ち込んだ際に、事業転換を仕掛けたり、再起を図るのに必要となる原資を融資します。
その最たるものが上記表にも記載した再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)です。
一度失敗した経営者にとって、復活するための大きな壁になるのが、「一度会社を倒産させた経営者に(一般的に)事業資金は貸せない」という日本の風土です(すべての経営者が借りられないというものではないですが)。
公庫は再チャレンジする経営者に対する貸し付けも制度として整えています。
一定の条件のもと、7,200万円(うち運転資金4,800万円)の貸付を行います。
また設備資金の返済は20年以内(うち据置2年以内)、運転資金は7年以内(うち据置2年以内)と、返済期間が長くなっているのも魅力の一つです。
なお、これとは別に大規模災害で事業継続が困難になった場合でも、公庫には救済策が用意されています。
東日本大震災復興特別貸付 | 東日本大震災により被害を受けた経営者 | 各融資制度の限度額に上乗せ6,000万円。その他震災の影響を受けた経営者は別枠で4,800万円(生活衛生セーフティネット貸付は別枠で5,700万円)。 | 直接被害は設備資金20年以内(据置5年以内)、運転資金15年以内(据置5年以内)。間接被害は設備資金20年以内(据置3年以内)、運転資金15年以内(据置3年以内)。その他災害の被害を受けた方は設備資金15年以内(3年以内)、運転資金8年以内(3年以内)。 |
---|---|---|---|
平成28年熊本地震特別貸付 | 平成28年熊本地震により被害を受けた経営者 | 各融資制度の限度額に上乗せ6,000万円。その他震災の影響を受けた経営者は別枠で4,800万円(生活衛生セーフティネット貸付は別枠で5,700万円)。 | 直接被害は設備資金20年以内(据置5年以内)、運転資金15年以内(据置5年以内)。間接被害は設備資金20年以内(据置3年以内)、運転資金15年以内(据置3年以内)。その他災害の被害を受けた方は設備資金15年以内(3年以内)、運転資金8年以内(3年以内)。 |
自然災害によって大きな被害を受けたときも、公庫の存在は頼りになります。災害はいつ何時、発生するかわかりません。このような貸付があることも、知っておきましょう。
(4)必要書類の集め方
日本公庫の貸付を希望する場合、主に以下の書類が必要です(希望される貸付の種類によって、一部不必要になる書類もありますし、逆に追加を求められる書類もあります)。
借入申込書 | 申込社の基本的な情報、代表者の情報など |
---|---|
創業計画書又は事業計画書 | 融資資金の使用用途、今後の会社のビジョン、詳細な事業計画 |
身分証明書 | 身分を証する公的書類。運転免許証やパスポートなど |
履歴事項全部事項証明書(会社の場合) | 会社の状況を客観的に証明する公的資料 |
印鑑証明書(会社の場合) | 会社の公的な証明 |
銀行通帳コピー | 会社の場合は、会社名義及び代表個人の銀行通帳コピー |
オフィス情報 | オフィス移転が融資目的の場合は、広告や募集要項など |
見積書(設備資金を借りる場合) | 支払需要のある場合は、取引先の見積書など具体的金額の明記されたもの |
不動産の登記事項証明書 | 不動産を所有している場合。その他権利書・固定資産税の領収書など |
資格証明書・許可証など | 事業を行うために資格や許可が必要な場合 |
決算書類(新創業融資以外の場合) | 確定申告書やその他の財務書類(貸借対照表・損益計算書・資金繰り表・直近の試算表など) |
新創業融資の場合、上記の書類の中で最も重要になるのが「借入申込書」と「創業計画書」です。この2種類の書類で融資可否が決まるといっても過言ではありません。
また、自己資金を確認する書類として銀行通帳のコピーが必要になるわけですが、これもタンス預金などは自己資金としては認められません。
(5)金利と融資実行までの期間(民間金融機関との比較)
日本公庫と民間金融機関を比較したとき、最大のメリットは金利水準の低さです。
貸付の種類にもよりますが、金利は最大でも2%-3%が平均です。この利率は不動産担保の有無などによっても変わります。
また、融資実行までの期間が1カ月前後と短いのも日本公庫の特徴。3カ月前後かかるといわれる金融機関の貸付期間よりも短期での借り入れが可能で、資金調達の強い味方です。
2. 日本政策金融公庫からの借入ノウハウ
この項では、借入を成功させる為のノウハウをおさえていきましょう。
(1)自己資金の重要性
自己資金がなくても借りられるのは日本公庫の特徴ですが、同時に自己資金は「ないよりもあったほうが絶対にいい」です。
たとえば事業計画書において。借入を含めて作る事業計画に自己資金も含めて計画を立てます。
この時に、自己資金がない場合は金利が高くなる可能性もあります。日本公庫に借りるから自己資金は必要ない、ではなく、自己資金を可能な限り準備したうえで、金利条件のいい日本公庫の借入を引き出すようにしましょう。
(2)融資のおりやすい事業計画書とは?
融資のおりやすい事業計画書とは、何よりも「先の見通せる事業計画書」です。
融資を受けたあと、どのように収益モデルを成長もしくは改善していくかが纏められている計画書の作成を意識しましょう。
もちろん、書面のみですべてを伝える必要はありません。プレゼンのなかで言葉にて「熱意」を伝え、書面と合わせて融資を勝ち取るようにしたいもの。
事業計画書の作成に関しては下記ページと雛形もご参考ください。
(3)実際に面談でどんなことが聞かれるの?
面談では、事業計画の内容を、経営者がどこまで「自身の言葉」で語ることができるかが問われます。
面接は1対1の個別面接も、日本公庫の審査担当が複数名の場合もあります。
暗記して話すことよりも、経営者自身がビジネスをどう捉えているのか、あなたの「熱意」を第一に、自分の言葉で伝えることの方が大事です。
具体的にはどんなことを聞かれるのか、こちらのページからレポートをレポートをダウンロードできますので、活用ください。
(4)融資を受けやすい人物像
合わせて融資を受けやすい人物像についても考えてみましょう。これは漠然としていますが「面接官を味方につけられる経営者」というところでしょうか。
決して絶対的なノウハウがあるものではありませんが、計画書に記載した内容やプレゼンから「熱意」を伝えるようにしたいもの。
(5)新規融資と追加融資の違い
日本公庫は融資の形態にも特徴があります。民間融資の多くは最初の融資を「いったん返してから」次の融資を組むことが多いのですが、日本公庫は「当初の融資を拡大・追加」するという特徴があります。
新しい融資を組む場合とは、返済時期や金利の設定方法で大きな違いがあります。
日本公庫からの最初の融資において、低金利で借りることができた経営者の場合は、その元本が増える「だけ」ですから、新しく借入れる経営者にとって大きな味方です。
3. 融資実行までの流れ
大まかには、
- 申し込み
- 面談
- 融資実行
の3ステップです。
(業種によって生活衛生協同組合を経由して申し込みをしたり、若干手続きの流れが変わる場合があります)
1の申し込み時点で原則として借入申込書、事業計画書、決算書(試算表)の3つの書類が必要になります(創業前の方は、決算書は必要ありません)。
この申し込み手続きは現在ではインターネットで行うことも可能です。
その後、1週間程度面談日時と追加書類(通帳、見積書、その他事業の概要や計画を補足説明する資料や法人の場合は履歴事項証明書)の連絡が来ます。
普段郵便物を確認しない人ですとこの連絡に気づかないまま面談をすっぽかして悪印象を与えることになるので注意しましょう。
日本政策金融公庫の担当者との面談から3週間から4週間程度で融資果皮の連絡が書面で届きます(結果が届くまでの間も必要に応じて追加書類の提出や細部の質問を電話でされる場合や、既に開業している方には事業所訪問等があります)。
カードローンやキャッシングのような即日融資や最短30分でスピード融資なんてことは絶対にありませんので、日本政策金融公庫からの融資をお考えの方は、「最低1ヶ月」は見ておくことをお勧めいたします。
4. 日本政策金融公庫がダメだった場合
日本公庫の審査は、年を経ることに厳しくなっていると言われています。
資金調達は時間の猶予がないことも多いもの。日本公庫からの借入がダメだった場合は、他の借入れ方法が選択できるよう、同時に他の方法を把握しておきましょう。
(1)そもそもなぜ断られたのか?
まずは日本公庫がなぜダメだったのか。それをしっかり分析しないといけません。
ここが中途半端だと、ズルズルと引きずってしまいます。事業計画の内容か、現在の財務内容か。日本公庫が貸し付けの種類がとても多いため、希望する貸付とニーズが合わないままに、申し込んでしまった可能性もあります。
断られた理由をしっかり分析し、次の融資機会に挽回するようにしたいもの。
(2)制度融資を検討しよう
制度融資とは、区など自治体が仲介して行う、日本公庫と同等の低金利による融資のことを言います。
細かい諸条件においては日本公庫に有利な部分もありますが、日本公庫の融資が希望通りにいかなかった場合も、第二希望の制度融資から融資を引き出せると経営者にとって一安心です。
日本公庫の手続きの流れによっては、制度融資の手続きも途中から並行して進めることで、経営者の安心感につながります。
制度融資(信用保証協会付き融資)については下記ページも参照ください。
(3)ファクタリングを検討しよう
取引先とのあいだに売掛債権のある場合は、売掛債権を業者が買取り、本来の回収時期より先んじて債権者に資金を渡す「ファクタリング」が効果的です。
日本ではまだまだ馴染みの薄い制度ですが、最近は仲介に入るファクタリング業者も増えてきています。
日本公庫の金利や、ビジネスローンの金利と比べても、ファクタリング業者の手数料こそ30%前後と割高ですが、本来自社で稼いだ売上のため、いわゆる「負債」にならないこともファクタリングのメリットです。
会計処理上も強い味方、賢く利用するようにしましょう。
ファクタリングを利用して資金繰りを改善してから日本公庫の融資に望めば融資実行の可能性・確率も上がります。
ファクタリングによる資金調達が可能かどうかの診断は下記サイトが便利です。
(4)クラウドファンディング(出資)を検討しよう
最近Fintechの言葉とともに知られるようになってきたクラウドファンディング。
それまで融資は「お金のあるところからの出資」だったのですが、インターネットを介して世界中の「一般の人」からお金を集めるサービスのことを指します。
民間企業の売上増加というよりも、その事業展開がどれだけ社会貢献面からの意味を持つかでお金の集まる傾向が強い側面も。
融資の場合も寄付や商品購入のケースもあるクラウドファンディングに対して、融資型のものを「ソーシャルレンディング」ということもあります。
(5)低利のカードローンを検討しよう
日本公庫の融資が難しい場合、カードローンを借りるのもひとつの方法です。
ただ、カードローンと一概に言っても千差万別で、出資法ギリギリの金利を課すところもあれば、低金利で経営者の強い味方になるところも。
カードローンだからと一概に選択肢から外さず、情報を得るようにしましょう。
(6)借りない勇気も持つ
もちろん会社経営においては、「借りない勇気」を持つことは重要です。
会社の経営者として、お金を借りるのは指をさされることではありませんが、必要のない借入は避けたいもの。借入が少ないと、いざ大きなお金が必要になったときに、貸し付ける期間が多くなるなどの恩恵も。
5.まとめ
以上、日本公庫との付き合い方から、日本公庫以外の借入への考え方までをまとめました。
資金借り入れは経営者にとって、一番と言っても過言ではないほど重要な仕事です。
まず日本公庫の特徴や手続きの詳細をしっかりと把握して、味方につけるようにしましょう。
合わせて、日本公庫がダメだった時を考えておくことも大切です。タイミングによっては同時並行で手続きをすることも考えましょう。
それぞれの周辺情報をしっかりと把握し、会社経営と向き合っていきたいものですね。
コラム
日本政策金融公庫と付き合っておく大きな利点とは?
日本政策金融公庫からの初回の融資は簡単ではありません。
融資実行されるのは、20%程度と言われています。
つまり5人の内4人は融資を断られます。金利1%台で金利固定、長期返済が可能と良いこと尽くしの本来ありえないくらいの好条件融資ですから、それは簡単にいかないのは当然です。
しかしこの20%の壁を超えて無事一度目の融資を成功させ、更に毎月の返済を遅れることなくしっかりと続けていけば、融資額の半分程度の返済を超えたところで日本政策金融公庫からの追加融資のオファーが来ることも珍しくありません。
もちろん「こちらから追加融資お願いできませんか?」と打診してもOKです。
初回融資が下りたことと、返済実績を時間をかけてコツコツ築いたことは、2回目以降の公庫からの融資をものすごく簡単にしてくれます。
最初の融資の際に提出した数々の書類は不要になり、決算書や試算表程度を提出して終わりということも少なくありません。
また、融資実行までのスピードも格段に早くなり2週間程度で振り込まれることも珍しくないのです。
これが経営において、いかに心強いかお分かり頂けますでしょうか?
事業をしていれば急に拡大するためのチャンスが訪れ資金が必要になることや、資金繰りの面から融資が必要になることも多々あります。
そのような際に、公庫との付き合いがあれば1%台の融資を迅速に受けられるわけです。
そして返済実績を積めば積むほど、会社の規模や必要資金に合わせて枠も大きくなっていきます。
私のお客様の中には最初の借り入れはたった100万円だったものが、2回目300万円の追加融資、3回目500万円、4回目1000万円と徐々に枠が大きくなっていっている方は多々いらっしゃいます。
日本政策金融公庫で融資を受けるということは、長きに渡る事業経営の中で非常に心強い資金調達手段を得ることに等しいのです。ゆえに、一度公庫から借り入れをしたら、何が何でも絶対に返済を滞らせてはいけません。
まずは初回融資を確実に成功させ、返済実績をコツコツ作り、融資枠を徐々に大きく育てていく。これが日本政策金融公庫との正しい付き合い方と言えるでしょう。
連帯保証人や不動産担保を求められた融資実行のチャンス!?
「連帯保証人(不動産担保)を付けられませんか?」
融資面談後、このように公庫担当者に言われるとネガティブに捉える方が多々いらっしゃいます。
しかしこれは裏を読めば、「連帯保証人(不動産担保)さえ付けてもらえれば、融資は実行できます。」という言葉の裏返しでもあるのです。
もちろん希望額満額を必ずしも下ろすとは限りませんが、事業計画や人物評価は通過したものの、金額が大きいので最後の一押し(返済不能時の保全)としてお願いされているわけです。
事業計画自体が破綻しており、人物としての信頼性がゼロであれば公庫担当者はさっさと「融資不可」の郵便を送ればいいだけの話ですから。
従って、面談の席或いは面談後に連帯保証人や不動産担保を求められたらチャンスと捉えましょう。
そこでごねても仕方ありませんし、本来融資を無担保無保証人で借りようと考える方が図々しい面もあります(日本政策金融公庫自体が無担保無保証人制度を用意していますが、それを本当に利用できるのは融資が下りる一部の人達の中でも更にほんの一部又は100万円程度の超少額レベルの方がほとんどです)。
不動産担保は突然言われてもどうにもならない部分は大きいでしょうが、連帯保証人くらいは探す努力、頼める人間的信用や信頼関係を構築しておきましょう。連帯保証人に関する準備をしておくことは融資申請実務の一環と捉えておきましょう(その上で保証人なしで満額借りられたらそれはそれでラッキー)。
尚、どうしても保証人が用意出来ずに公庫からの融資が下りない場合には、原則連帯保証人不要である信用保証協会の利用を検討することになります。
審査では具体的に何を見られるのか?
その1.事業計画の妥当性
創業融資の場合、そもそもまだ事業は行っておらず、実績もありません。
ですから、融資の審査では、担当者は事業計画書の内容を信用するしかありません。
融資担当者は、具体的に事業計画書のどの部分を見て、信用するか否かを決めるのでしょうか?
次の2点です。
- 現実的で実現可能性がある事業計画を立てているか
- 数字のつじつまがあっているか
公庫の融資担当者は毎日のように様々な業種の事業計画書に目を通していますから、業種・業態ごとの売上や経費などといった数字は、完全に把握しています。ですから、適当に作った事業計画書などすぐに見破られてしまいます。
すぐさま修正を求められるか、あるいは、そのまま受理して申請を却下してしまうか、いずれかの対応がなされます。
売上見込みや経費見込み(人件費その他)の数字は大雑把ではなく、より具体的に示す必要があります。
販売計画なども、事業計画書の他に具体的な資料やデータなどがあれば、説得力が増しますので、資料の作成・収集は積極的に行っておきましょう。
その2.返済原資の妥当性
公庫としては、貸したお金は絶対に返してもらわなければなりません。事業計画書の数字を100%実現できるのであれば、それに越したことはありませんが、そうならないケースが大半です。
公庫の融資担当者もそのことは当然、理解しています。
ですから、事業計画書内で当初目標数字の70%しか達成できなかった場合でも、返済が可能であることを示さなければなりません。
例えば、売り上げから経費を引いて、税金を払い、残ったお金(税引後利益)から返済を行うわけですが、この税引後利益を50万円としていたケースで実際は35万円しか利益が出なかった場合。足りない15万円をどう賄うのか?これを説明できれば、融資の可能性は高まります。
自己資金以外に資産(不動産や金融資産)がある場合は、これらも融資担当者に提示しておくと良いでしょう。日本政策金融公庫の新創業融資は、担保も保証人も必要ありませんが、差し出せる担保や連帯保証人がいるのであれば、それだけ融資実行の可能性は高くなります。
新創業融資制度で事業計画書を作成する場合は、以上のことに留意しつつ、具体的でかつ実現及び返済可能性のある事業計画を作成し、面談に挑んでください。
融資の審査において事業計画書と同等に重要なのがあなたの人柄・経歴です。経営者としての資質、業界に対する知見と見識、業務経験なども融資審査では大きなウェイトを占めるのです。
当ページでも解説してきたとおり、融資審査に入る前に必ず面談が行われます。
そこではあなたの人となり、信用できる人間かどうかなどが審査されます。それゆえに、面談には服装や言葉使いなどにも十分に注意して臨むようにしましょう。
日本政策金融公庫・よくある質問Q&A
ここでは日本政策金融公庫に関する、よくある質問を元にして説明を行っていきます。
「よくある質問」ですので、日本政策金融公庫をお考えの方があまり理解していないポイントだと思います。これらのポイントをしっかりと理解して、日本政策金融公庫での融資を行っていきましょう。
金融機関側が行う、自己資金の確認方法とは?
自己資金の確認方法は通帳の原本で行われます。
それは、自己資金がどのような形で準備されたのかを確認したいからです。
残高確認だけであれば、前日に知人友人などからお金を借りて自分の口座に振り込めば、その場は自己資金に問題がないということでパスできそうですが、これは自己資金としてカウントされませんので注意してください。金融機関の担当者にすぐに見抜かれてしまいます。
タンス貯金も同じで、いくら真面目にコツコツ貯金していたとしても、それを証明できるものがありませんのでNGです。
日本政策金融公庫からの融資は自己資金の有無が非常に重要になってきますので、担当者に自己資金の流れを証明できる通帳をしっかりと準備しておきましょう。
融資を断られた場合、再申請が可能なのか?
融資の再申請は可能です。
特に何か月以上期間をあけなければいけないといった規定もありません。融資を断られて、すぐに再申請を行っても問題ないわけです。
ただ、融資を断られるということは、すぐに改善することが難しい何らかの問題があるために断られます。例えば、自己資金の問題や事業計画書などがそうです。
従って、再申請を行うのであれば、最低でも半年以上の期間をかけて問題点を改善していく必要があるでしょう。
新規開業者が融資を受けるための必要な自己資金額とは?
新規開業者が日本政策金融公庫からの融資を受ける際には、総事業費の3分の1以上、自己資金として準備しなくてはいけません。
(現在は10分の1まで緩和されていますが、現状、10分の1では厳しいと言わざるを得ません。自己資金は少しでも多いほうが融資は下りやすいですから、3分の1程度は用意しておきましょう)
総事業費の3分の1と言うと少しイメージしにくいかもしれませんが、借入希望額の半分は自己資金で準備することになります。500万円が希望額ですと、250万円の自己資金が必要となるわけです。
会社設立して2期を過ぎた場合、新創業融資が可能なのか?
2期を過ぎた場合は、新創業融資を利用することはできなくなります。
しかし、日本政策金融公庫には普通貸付、シニア起業家資金などの制度を利用してくことになるかと思います。しかし、これらの融資制度は新創業融資と異なり、原則、担保や保証人が必要となってきます。
もし、担保や保証人が準備できない場合は、「第三者保証人を不要とする融資」の制度を利用することになります。この制度を利用するには、法人であれば代表者の保証が必要になり、個人であれば、その個人は債務者として扱われます。
会社名義での借入の際は代表者しか保証人になれないのか?
会社名義での借入の場合、代表者以外の役員が保証人になるも可能です。
しかし、これには条件があり、その保証人となる役員が役員報酬以外の収入があることや代表者と同居していないことなどの条件を満たしていなければなりません。
会社名義での借入の際は代表者しか保証人になれないのか?
会社名義での借入の場合、代表者以外の役員が保証人になるも可能です。
しかし、これには条件があり、その保証人となる役員が役員報酬以外の収入があることや代表者と同居していないことなどの条件を満たしていなければなりません。
外国人でも融資を受けることは可能なのか?
外国人が日本の会社で代表取締役となって働いているケースもあります。
このような外国人でも日本政策金融公庫から融資を受けることは可能です。その外国人が会社経営できる在留資格があれば問題ないです。
制度融資と日本政策金融公庫の両方に申請することは可能なのか?
両方に申請することには何の問題もありません。
よくあるケースとして、日本政策金融公庫からの借入を断られて、制度融資を申請するパターンや、日本政策金融公庫からの借入はできたが満額下りなかった場合に残りを制度融資から引張ってきたりします。
返済期間はどのくらいなのか?
日本生活金融公庫の返済期間に関しては、運転資金の借入であれば5年、設備資金の借入であれば10年となります。
審査ではこの期間で返済能力が問われてきます。
【保存版】日本政策金融公庫の生活衛生貸付を徹底活用!まるわかり8つのポイント
はじめに
飲食店や理美容業などで開業しようとする場合、一番の悩みは「資金」です。
資金がないと何も始められません。
しかし、開業資金を全額自己資金で賄うのは大変です。かといって、起業段階では銀行からの融資を受けるのも簡単ではありません。
そこで強い味方になるのが日本政策金融公庫や信用保証協会です。
今回は、その中でも、飲食業や理容業・美容業などで活用することができる日本政策金融公庫の「生活衛生貸付」や「生活衛生改善貸付」について当ページで説明します。
目次(もくじ)
- 1.生活衛生貸付(一般貸付)とは?
- 2.利用のメリット
- 3.飲食店営業で借入する場合のポイント
|-事業計画書に記載する数字は細かすぎるくらいがちょうどいい?
|-自己資金はどのくらいあれば良い? - 4.理美容営業で借入する場合のポイント
- 5.生活衛生営業指導センターとは?
- 6.推せん書とは?
- 7.生活衛生改善貸付とは?
- 8.生活衛生同業組合について
- まとめ
1.生活衛生貸付(一般貸付)とは?
生活衛生貸付(一般貸付)とは、日本政策金融公庫の国民生活事業が行っているもので、生活衛生関係の事業者に対して店舗改装資金などの融資をしてくれるものです。
生活衛生関係の事業とは、飲食店・喫茶店・理容業・美容業・旅館業・食肉販売業などの生活に密着したタイプの事業です。
こういった事業を行うにあたっては、店舗を借りる費用や内装工事や設備工事費用など、いろいろな初期費用が必要です。
これをすべて自己資金で賄うとなると、独立開業や事業拡大のハードルはとても高くなってしまいます。
生活衛生貸付(一般貸付)はそれをサポートしてくれる制度なのです。
2.利用のメリット
生活衛生貸付(一般貸付)では、資金の使いみちが「設備資金」となっています。
設備資金には、店舗取得・機械購入・入居保証金などが含まれます。
融資限度額は多くの事業で7,200万円まで(旅館業では4億円など)となっており、起業・開業にあたって多額の設備投資が必要な場合にはうれしい制度です。
しかも、日本政策金融公庫が行っているので、起業まもない事業者や小規模零細の事業者でも借入しやすい比較的低い金利で融資を受けることができます。
また、返済期間も13年以内(金利据置期間、通常1年)と長めなので、じっくり着実に経営しながらの返済計画を立てることができるでしょう。
担保がある場合には金利を引き下げてもらうことができるほか、女性従業員の活躍推進に取り組む人や次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画を届けている人なども「特別利率」と呼ばれる有利な金利で融資を受けることができます。
3.飲食店営業で借入する場合のポイント
飲食店営業で開業する場合、どのようなことに注意すればいいでしょうか。
そのために必要なのが、開業にあたっての初期投資額と返済計画、そしてそれを支える事業計画です。
一般的に、個人で小規模な飲食店を開業するときには1,000万円程度の資金が必要と言われています。
もちろん、どのような規模でどんな場所に店舗を構えようとしているか、すでに飲食店として使われていた「居抜物件」を借りるのかどうか、フランチャイズシステムを利用するのかどうかなどによって、変わってきます。
さらに内装工事なども必要となるので、その費用も見積もっておかなければなりません。
1坪当たり20~50万円くらいはかかると考えておいた方がいいでしょう。
事業計画書に記載する数字は細かすぎるくらいがちょうどいい?
生活衛生貸付(一般貸付)を利用する場合、融資限度額は7,200万円までとなっていますから、開業にあたっての設備資金を融資してもらうには十分な金額です。
けれども、借入金ですから利息をつけて返済していかなくてはなりません。そこで、開業・借入の前に事業計画を綿密に立てておくことをおすすめします。
事業計画を立てるときには、「大体これくらいの売上がたつだろう」というおおまかな計算ではいけません。売上を次のような計算式に細かく分けて予測をしましょう。
売上=客単価×席数×1日あたり回転数×営業日数
さらに、平日と休日、ランチタイムとディナータイムでは客単価や回転数が大きく変わります。可能な限り、そういった点まで考慮して売上を予測しましょう。
次に、食材の仕入原価と人件費や水道光熱費を差し引いて利益を求めます。
そして、その利益で自分の収入と借入の返済を確保できるかどうかを考えておきましょう。
自己資金はどのくらいあれば良い?
最後に注意しておくべきことは、自己資金の割合です。
いくら生活衛生貸付(一般貸付)で借入ができるからと言って、自己資金がほとんどないのに多額の借り入れをするのは危険です。
せっかく開業したのに、借入の利息返済負担が大きくなったがために、自分の収入が少なくなってしまっては意味がありません。
最初の計画に無理があったせいで、せっかくの自分のお店を閉めざるをえなくなるのは避けたいところです。
4.理美容営業で借入する場合のポイント
理美容営業で開業する場合も、前述の飲食店と同じように考えなければなりません(重複する部分は省いているため、理美容営業をお考えの方も、前述の「飲食店営業で借入する場合のポイント」もお読みください)。
こちらの場合も、開業にあたっての資金は1,000万円程度必要になると言われています。
もちろん、駅前ではないところで2席の店舗であれば5~600万円程度で開業することも可能ですが、その場合は客数が減ってしまうかもしれません。
事業計画を立てるときには、次のような計算式を用いて、売上を細かく分けて予測しましょう。
売上=メニューごとの料金×1日あたりの客数×営業日数
サービスメニューについては、カット・カラー・パーマ・ヘッドスパ・ヘアメイクなどそれぞれに分けて売上を計算すると計画を立てやすくなります。
その他、シャンプーやトリートメントなどの美容商品やワックスなどの整髪料も販売する場合は、上記の算式に加えましょう。
売上から水道光熱費や人件費(アシスタントを雇う場合)を差し引いて、自分の収入と借入の返済を確保できるかどうかを考えましょう。
また、面貸しする場合は、その分の収入がいくらくらいになって、水道光熱費がどの程度増えるかを考えておきましょう。
5.生活衛生営業指導センターとは?
生活衛生貸付(一般貸付)を利用するためには、生活衛生営業指導センターについても知っておかなければなりません。
生活衛生営業指導センターは、生活衛生関係の18業種(飲食業・理美容業・旅館業など)に対して衛生営業指導を行っている団体です。生活衛生業を営む業者に対して、さまざまな指導や経営アドバイスなどを行っています。
生活衛生貸付(一般貸付)とは融資申込にあたって関連する場合があります。
必要な書類の中に「衛生管理状況を確認するもの」があります。
その確認をしてもらうためには、各都道府県の生活衛生主管部(局)に依頼しなければなりません。
その業務が生活衛生営業指導センターに委託されている場合には、同センターに依頼する必要があるのです。
6.推せん書とは?
生活衛生貸付(一般貸付)を申し込むにあたって必要な書類に「推せん書」があります。
これは「誰かに推薦してもらう」というものではなく、「都道府県知事からの推薦を受ける」ためのものです。
借入申込金額が500万円を超える場合に必要となります。
推せん書を交付してもらうためには、各都道府県の生活衛生主管部(局)に申請する必要があります。
ただ、その業務が生活衛生営業指導センターに委託されている場合には、同センターに申請しなければなりません。
なお、推せん書を交付してもらうためには、申請に必要な書類が複数あります。
①推せん書交付願
②借入申込書
③衛生管理状況を確認するもの
④契約書・見積書・平面図など
⑤履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人の場合)
これらがすべて必要になります。
①と②は日本政策金融公庫の各支店でもらうことができますが、その他のものは自分で準備しなければならないので、早めに用意しておくようにしましょう。
推せん書が必要でない金額で融資を受ける場合には、この手続きは必要ありません。
しかし、上記5つのうち①推せん書交付願以外の書類は、融資申し込みの際にも必要です。
手続きが遅れて起業する時期も遅くなってしまっては大変ですから、計画的に準備しておくようにしましょう。
7.生活衛生改善貸付とは?
ここまで説明してきた生活衛生貸付(一般貸付)は、用途が「設備資金」に限られています。
そのため、開業後に運転資金が必要になった場合に活用することはできません。
そんなときに利用できるのが、「生活衛生改善貸付」です。
個人が運営する小規模店舗は、ちょっとした景気や事業環境の変化で大きなダメージを受けてしまう傾向にあります。
近隣に有名チェーン店が進出してきたことが理由で、一時的に業績が悪化して、資金繰りに苦労する羽目になってしまうこともあり得るのです。
そんなときに、店舗のリニューアルや一時的な資金繰りのための資金が必要であれば、生活衛生改善貸付が1つの選択肢となります。
生活衛生改善貸付は、後述の生活衛生同業組合の経営指導を受けている場合に利用することができます。
生活衛生同業組合の長の推薦を受けた、常時使用する従業員が5人(旅館業・興行場営業の場合は20人)以下の会社または個人であることが条件で、2,000万円の融資限度額が設定されています。
設備資金だけでなく運転資金としても活用可能で、しかも、無担保・無保証人で借入することができるので、事業がうまくいっていないときの強い味方になってくれるでしょう。
8.生活衛生同業組合について
前述の生活衛生改善貸付を利用するためには、生活衛生同業組合の経営指導を受けていなければならないのですが、その組合はどのようなものなのでしょうか。
生活衛生同業組合は、生活衛生の業種ごとに各都道府県に1団体ずつ設立されています。
生活衛生関連の事業者が安定した経営を行うために、資金面や事業経営についての情報提供やアドバイス等を行っています。
その他に、団体加入の保険や共済にも加入できるため、店舗運営を総合的にバックアップしてくれる存在だと言えるでしょう。
加入するかどうかは任意ですが、どのようなサポートが受けられるのかは開業前に確認しておくとよいでしょう。
まとめ
独立開業を目指す人が活用できる日本政策金融公庫の生活衛生貸付について解説してきました。
融資を受けるためには手続きをきちんと踏めば問題ないかと思います。
ただ、融資を受けることができたとしても、独立開業して失敗しないようにするには、リアルな事業計画書を作ることができるかが最も大切です。
とはいえ、売上や経費の予測はそう簡単にできるものではありません。
そんなときには、専門家の知識を借りるのが成功への近道です。