押さえておきたい銀行融資審査のポイント(債務者区分・決算書・資金繰り)+金融機関(銀行・公庫など)からの資金調達・融資と税理士の有効的な活用法+過度な節税は命取りになりかねない!?

押さえておきたい銀行融資審査のポイント(債務者区分・決算書・資金繰り)

1.債務者区分

債務者区分とは、金融機関が定めるマニュアルに従って、融資者の企業に対してランク付けを行ったものです。

この債務者区分は五段階にランク付けされており、上から正常先、要注意先、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先となっております。

現状として、融資を受けることができているのは、「正常先」となっております。

まれに要注意先の企業でも融資を受けることができますが、正常先以外は厳しい状況と言えそうです。

従って、この債務者区分のランクを意識した準備が必要になってきます。

2.決算書

債務者区分のランク付けにあたって、この決算書の内容は非常に重要になってきます。

決算書の内容から分析してランク付けを行うことを定量的分析といいます。

この分析からの結果が債務者区分のランク付けにおいて8割くらい占めてきます。

残りの2割は定性的分析といい経営者の人間性、市場の動きなどから判断されます。

しかし、言ってもたかが2割です。

やはり重要になってくるのは決算書の内容になってきます。

毎日の記帳をおろそかにせず、財務の動きは細かくチェックする必要があるでしょう。

税理士任せのやり方や数ヶ月分をまとめて行うような記帳のつけかでは金融機関が求めている決算書を作れませんので、毎日の努力を怠らないようにしましょう。

3.資金繰り表

資金繰り表とは、毎日の現金の収入と支出の流れを確認するための表です。

会社の損益状態を表す損益計算書は、売上や仕入が発生した時点で計上するため、売上=現金回収とはいかず、損益計算書ではうまくいっているように見えても、現金の回収が全くであれば資金繰りは苦しくなってきます。

このような状況を避けるために、資金繰り表によって、現金の流れを把握し、それを元に計画を立てていきます。

また、資金繰り表は金融機関からの融資を受ける際に、必ず必要になる書類です。

この資金繰り表をみて金融機関の担当者はいくらお金が必要そうなのか、なぜ必要になったのかなどの経緯を元に判断をします。

最低でも6か月分の資金繰り表は用意したいところですので、こちらの方も毎日しっかりと記入していきましょう。

 

 

金融機関(銀行・公庫など)からの資金調達・融資と税理士の有効的な活用法

【目次(もくじ)】

  • はじめに
  • 税理士を活用するとなぜ金融機関の評価が高まるのか?
    |-普段から顧問先の数字を見ているから
    |-税務面で問題のないことを証明することになるから
    |-いくらまで融資を受けることができるかを正しく判断することができるから
    |-金融機関が納得するポイントを熟知しているから
  • 税理士から紹介された金融機関は審査が通りやすい?
  • 試算表をすぐに作ってもらえるので急な資金繰りにも対応できる!
  • 税理士が作った決算書と自分で作った決算書の決定的な違いとは?
  • 資金調達・財務戦略に精通した税理士に依頼すべき理由とは?
    |-事業計画書や試算表を正しく作成することができる
    |-金融機関を説得するために必要なデータと論拠を提示することができる
    |-急な資金繰りにも圧倒的なスピードで対応することができる
  • 会計参与になってもらうメリットはある?デメリットは?
    |-税理士を会計参与として顧問契約するメリット
  • まとめ

はじめに

金融機関から資金調達・融資を受けるときにもっとも大切なことは何かを、あなたはご存じですか?

もし何も考えずに書類を作成して資金調達・融資の申込手続きを進めてしまうと、融資を受けることができずに大型案件を逃してしまうかもしれません。

今回は、起業家や中小企業経営者が知っておきたい金融機関から資金調達・融資を受けやすくなる税理士の活用法をご紹介していきます。

また、資金調達に精通した税理士との顧問契約を考えている経営者は、税理士に会計参与になってもらうメリットとデメリットについても、是非知っておいてもらいたいと思います。

税理士を活用すれば、

  • 金融機関からスムーズに融資を受ける
  • 企業の会計参与になってもらう

といったことが可能になります。

税理士を活用するとなぜ金融機関の評価が高まるのか?

税理士を活用すると金融機関からの評価が高くなる理由は、以下の4つが挙げられます。

  1. 普段から顧問先の数字を見ているから
  2. 税務面で問題のないことを証明することになるから
  3. いくらまで融資を受けることができるかを正しく判断することができるから
  4. 金融機関が納得するポイントを熟知しているから

それぞれの内容を詳しく解説していきます。

<普段から顧問先の数字を見ているから>

顧問先の数字を普段から見慣れていることは、金融機関にとって安心できる材料となります。

税理士を活用して資金調達・融資を受けるということは、

  • ROA(資本経常利益率)
  • ROE(自己資本当期利益率)
  • 損益分岐点分析
  • 原価管理

といった分析を経て、返済できる見込みがあるという何よりの証拠となります。

普段から顧問先の数字を見ている税理士であれば、説得力のある資料を作成することができます。

そのため、金融機関からの評価が高くなるのです。

<税務面で問題のないことを証明することになるから>

税理士は、顧問先が行うすべての取引を把握したうえで確定申告書や法人税申告書を作成します。申告書を作成するためには、

  • 不正取引がないか
  • 節税ではなく脱税になっていないか

という点を当然考慮することになります。

そのため、税理士が作成した決算書や申告書であれば、税務上問題がないことを証明することになるのです。

<いくらまで融資を受けることができるかを正しく判断することができるから>

税理士を活用すれば、いくらまで融資が受けられるか正確に判断することができます。

もし税理士を活用せずに資金調達・融資を受けようとした場合、失敗に終わることも考えられます。

一度失敗してしまうと再審査までに時間がかかります。

大型案件を獲得できなければ、大きな損失となってしまうでしょう。

初めから専門家のサポートを得れば、安心して資金調達・融資を受けることができるのです。

<金融機関が納得するポイントを熟知しているから>

税理士も金融機関も、お金に関するプロの専門家です。

税理士だからこそ、金融機関が納得するポイントがわかるのです。

とくに金融機関の融資担当者が納得する形でデータを盛り込むことができるのは、税理士ならではの魅力であるといえるでしょう。

税理士から紹介された金融機関は審査が通りやすい?

税理士から紹介された金融機関は審査が通りやすいのが一般的です。

なぜなら、金融機関は確実に返済してくれる企業にお金を貸したいと、税理士事務所へ営業を行っているからです。

金融機関から税理士へアプローチしている場合は、融資を受ける側が主導権を握りやすくなります。

また、顧問先と取引が長い地元の信用金庫などであったとしても、慎重に審査するため迅速に融資してもらえない可能性もあります。

そんなとき税理士から紹介される金融機関であれば、スムーズに資金調達・融資を受けることが可能となるのです。

試算表をすぐに作ってもらえるので急な資金繰りにも対応できる!

税理士を活用すれば、金融機関から資金調達・融資を受けるための試算表をすぐに作成してもらうことができます。

決算書や申告書などの書類を作成することが税理士業務の1つであるため、専門家に依頼すればあっという間に正しい数字の試算表を作成してもらうことができるのです。

急な資金繰りに対応することができるため、大型受注を逃してしまう心配をする必要はありません。

税理士が作った決算書と自分で作った決算書の決定的な違いとは?

税理士が作った決算書と自分で作った決算書の決定的な違いは、勘定科目で見極めることができます。

税理士は経理のプロであることから、どのような取引をどのような勘定科目を使って仕訳を起こせばいいのか、正確に把握しています。

たとえば、仮払金と前払金の違いを正しく答えられる起業家や中小企業経営者はいないのではないでしょうか?

また、その年は支払手数料で処理していた取引を次の年から新しい科目を作って経理処理していくことは、原則として認められていません。

会計学の7つの基本原則の1つである「継続性の原則」に反することになるからです。

会計学の基本原則を守れていない決算書は、金融機関の融資担当者の目にはどのように映るでしょうか?

いい加減な経理処理をしているのかもしれない…と融資することに躊躇してしまうかもしれません。

税理士であれば金融機関が目をつけやすい勘定科目のポイントがわかるからこそ、融資の受けやすい決算書を作成することが可能となるのです。

資金調達・財務戦略に精通した税理士に依頼すべき理由とは?

税理士に資金調達・融資を依頼すべき理由は、以下の3つがあります。

  1. 事業計画書や試算表を正しく作成することができる
  2. 金融機関を説得するために必要なデータと論拠を提示することができる
  3. 急な資金繰りにも圧倒的なスピードで対応することができる

<事業計画書や試算表を正しく作成することができる>

数字のプロである税理士であれば、日々の仕訳データ取引から試算表や決算書、事業計画書を作成するのは難しいことではありません。

しかも、間違いなく正確に作成することができるのです。

<金融機関を説得するために必要なデータと論拠を提示することができる>

税理士に資金調達・融資を依頼すれば、金融機関が納得できる形で資料を作成することができます。

それは、税務調査や監査で長年培ってきた経験があるからです。

<急な資金繰りにも圧倒的なスピードで対応することができる>

資金調達・融資を受けるために必要な資料をすぐに作成しなければ、急な資金繰りに対応することできません。

税理士に依頼すれば、素早く対応することが可能になるのです。

会計参与になってもらうメリットはある?デメリットは?

税理士を会計参与として顧問契約することによるメリットとデメリットを、それぞれ解説します。

<税理士を会計参与として顧問契約するメリット>

税理士を会計参与として顧問契約するメリットは、企業の信頼性を高めることができる点が挙げられます。

会社法第314条では、会計参与に株主総会における計算書類の説明義務があることが定められています。

専門家である税理士が決算書などの資料を作成するため、正確性が担保されることになります。

<税理士を会計参与として顧問契約するデメリット>

税理士を会計参与として顧問契約するデメリットには、報酬が挙げられます。

会計参与の報酬は、定款や株主総会の決議によって決めることが会社法第379条第1項にて規定されています。

そのため、企業と税理士との間で顧問契約料となる報酬を自由に決めることができないのです。また、株主総会で会計参与が自らの報酬について意見を述べることもできるため、株主総会がスムーズに進行しなくなる可能性が出てくるのです。

まとめ

金融機関から資金調達・融資を受けるために税理士を活用するポイントをまとめます。

 

 

過度な節税は命取りになりかねない!?

銀行からの新規借入には、会社の成績表でもある「決算書」(過去3年分ほど)が必要になります。

銀行は決算書の内容を最重要視します。

債務超過になっていか、自己資本比率はどうなっているかなどを見るのですが、この決算書、あなたの会社もおそらくは税理士さんが作ってくれているものと思います。

税金のプロである税理士に決算書を作ってもらっているのだから、完璧だろう。と思われていると思います。銀行の評価も高いはずだと。

実はそうではないのです。「銀行がよしとする決算書」と「税理士がよしとする決算書」は、そもそものベクトルがまったく異なるのです。どういうことか見ていきましょう。

税理士さんの多くはあくまでもその他の通り、「税金」の専門家であって「資金調達や財務」の専門家ではありません。

税務署向けの決算書を作ってくれるのですね。ですから、税金を安くすることをメインに考えて決算を組みます。

多くの中小企業では、如何に利益を圧縮して税金を少なくするかをいのいちばんに考えていますので、当然といえば当然です。

税理士も一生懸命会社のことを考えて税金を安くしようと頑張ってくれています。

でも、それがときとして命取りになることもあります。

弊所のお客様にも実際起こった事例を1つご紹介したいと思います。

この方自体は中小企業の社長ではなく、個人事業主の方です。

毎年、確定申告は顧問税理士さんに言われるがままに経費計上、固定資産も減価償却することなく一括償却を行っていました。目一杯経費計上を行い、所得を下げて申告をしていました。当然、税金は安くなります(顧問税理士も良かれと思ってやってくれています)。

あるとき、急な設備投資が必要になり、銀行へ融資の相談へ行きました。

確定申告書と決算書を持っていったところ、銀行員から「この所得では融資はできない。無理に所得を下げているのであれば、修正申告をした上でもう一度お越しになってください。そうすれば前向きなお話ができると思います。」と、こう言われたのです。

そのことを税理士に伝えたところ、「修正申告はできないこともないけど、税金は高くなるし、税務調査も入りやすくなってしまうよ。」と言われてしまいました。

結果としては、修正申告をして融資までこぎつけることができて事なきを得た(まあ、多額の税金を払うことにはなりました・・・)のですが、ここでの一番の問題点はなんだと思いますか?

銀行も税理士も悪くない。税理士を信じて任せていたこの方も悪くない。

何が一番の問題点かと言うと、この方と税理士とで密なコミュニケーションが取れていなかったことです。

将来、資金調達を考えているのであれば、そのことをきちんと顧問税理士に伝えておかなければなりません。

「銀行からお金を借りる必要があるから節税一辺倒の決算から銀行向きの決算へと会計処理を変更してください」とお願いすれば、普通の税理士さんであれば応じてくれます。

お金を借りやすい決算書を作る、あるいはその為の会計処理を行うよう軌道修正をしてくれるはずです。

ただし、顧問料の安さばかりに目がいって、税理士とまともにそんな相談もできない、記帳と決算だけを機会的にこなしているだけのような税理士と顧問契約を結んでいる場合は、そうはいきません。

やはり税理士も同じで、安いには安いなりの不利益を被る可能性があるということをここで知っておきましょう。

税金の専門家である税理士さんは悪気もなく、あなたの会社のことを思って税金を安くしようと努力をしてくれていますが、それが目的でない場合は、税理士さんの全てを信じ切って言いなりになっていてはなりません。

必要なときに必要なお金を借りられなくなります。

会社の経営者はあなたなのです。財務戦略の中長期計画を立てるのは、言わずもがな経営者であるあなたの仕事です。

税理士は万能ではありません。節税に長けた税理士もいれば、資金調達・財務に長けた税理士もいるのです。あなたが必要に応じて、使い分けていかなくてはならないのです。

ですから、新たに資金を調達する必要性が出てきた、あるいは数年後に出てくる可能性があるのであれば、その為の知識を自分自身で習得し、その上でそのプランを自ら顧問税理士に伝え、必要な対策を講じでいかなければなりません。