取締役会設置のメリット・デメリット
~取締役会を設置した方がいい場合とは?~
株式会社を設立する際には、以前は「取締役会」を設置しなければなりませんでしたが、現在では取締役会を置くか置かないかは会社が任意で決められるようになっています。
取締役が何人いても取締役会を置く必要はありませんが、公開会社、委員会設置会社、監査役会設置会社に関しては、取締役会の設置が必要です。
では、取締役会を置くことによるメリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
そもそも取締役会とは?
取締役会とは、全ての取締役で構成されていて、会社の事業方針を決めて具体的な事業活動を行う機関です。
会社法上は、会社の「業務執行の決定機関」とされています。
取締役会を置かない会社であれば、業務執行の決定は「株主総会」で行いますので、その度にわざわざ株主に集まってもらう必要があります(1人会社の場合は大半が株主と取締役を兼ねているので問題にはなりませんが)。
実際に会社の経営を行うわけではない株主の意向をも伺わなければならず、円滑な会社運営が行いにくくなります。
取締役会を置くと株主総会を開催することなく、迅速な会社運営を行うことができます。
取締役会において業務執行の決定を行いますが、実際の業務執行は代表取締役が行います。他の取締役は取締役会に参加して意思決定を行うメンバーになります。
取締役会は3ヶ月に1回以上招集しなければなりませんが、すべての業務執行の決定を取締役会で決定することは大変な手間がかかりますので、重要事項以外であれば、取締役に委任することもできます。
その他の機能として、代表取締役の選定や解職、取締役の職務の執行を監督します。
なお、取締役会を置く場合は、取締役は3名以上、監査役は1名以上置かなければなりません。監査役は取締役が法令や定款違反していないか、職務執行が適切かどうかをチェックします。
取締役会を置くメリット
- 株主総会を開催することなく、取締役会において迅速な意思決定をする事ができる
- 取締役会を置くことにより対外的な信用度が高まる
- 取締役会を置くことにより銀行取引において有利になる場合もある
取締役会を置くデメリット
- 取締役が最低3人、監査役が最低1人以上必要になるため、人数を確保しにくい
- 役員が多いため役員報酬のコストがかかる
- 取締役、監査役は取締役会へ出席する義務があり、代理や書面出席は不可である
- 取締役会を3ヶ月に1回以上の割合で定期的に開催しなければならない
- 取締役会を開催後、議事録を作成して保管する必要がある
取締役会を設置した方がいい場合は?
以前は取締役会を設置する必要があったため、親族などにお願いして無理に人を集めている会社も多く見受けられましたが、取締役には対外的な責任も発生するため、無理に取締役会を設置することはお勧めしません。
最近では株主=代表取締役のような小規模の会社を設立することが多く、取締役会を設置する会社の方が少なくなりました。
特に同族経営などであれば取締役会を置くメリットはあまりありません。
会社を大きくして信用力を持たせたい、公開会社に移行することを考えている、といった場合であれば、取締役会を設置すべきと言えるでしょう。
取締役会廃止のメリット・デメリット
取締役会は、取締役3名以上と監査役1名以上から構成されている機関です。
会社の業務執行の意思決定機関であり、会社の重要事項を決めていきます。
上場会社などの株式譲渡制限がない会社(公開会社)では、取締役会を必ず置かなければなりませんが、それ以外の非公開会社では必ずしも置く必要はありません。
取締役会を置いたものの社長1名の会社にしたい、取締役や監査役が辞めることになったが後任者がいないといった場合、取締役会を廃止することができます。
取締役会を廃止すると監査役も必須の機関ではなくなりますので、同時に廃止することができます。
取締役会・監査役を廃止するには、株主総会で取締役会を廃止すること、監査役を廃止することの定款変更決議を行い、管轄の法務局へ変更登記申請を行う必要があります。
取締役会廃止のメリット
社長1人の会社にすることができるので、今まで以上に迅速な経営が期待できます。他の取締役、監査役は辞任してもらうので、役員報酬にかかるコストを軽減することができます。
取締役会を開くには、取締役・監査役に集まってもらって決議を行い、議事録を作成して、出席役員に押印をもらうなど、手続き上の手間がありましたが、廃止することでそのような煩雑さがなくなります。
会社法上は、株主総会の招集通知を書面で送付する必要がなくなることや招集通知の期間短縮が可能なことがありますが、今まできちんと招集手続きを行っていた会社でなければ、あまりメリットを感じることはないでしょう。
また、公開会社が取締役会を廃止して、非公開会社(株式譲渡制限会社)になれば、取締役の任期が最長10年に伸長することができます。
公開会社の場合、任期は最長2年でしたので2年ごとに法務局へ登記申請が必要でしたが、10年に1度になることで手間と費用の削減に繋がります。
取締役会廃止のデメリット
会社の重要な決議事項は原則株主総会での決議が必要になりますので、その都度、株主を招集して株主総会を開催する必要があります。
しかしながら、株主=社長であれば株主総会そのものが形骸化される可能性があります。なんでも社長1人で決めることができるため、対外的な会社への信用度に関しては、取締役会がある場合よりも一般的に低くなります。
社長以外の取締役や監査役を置かない場合、任期途中であれば辞任してもらうことになりますので、事前に本人の承諾を得る必要があります。勝手に辞めさせることはできません。
また、取締役会、監査役を廃止するためのコストが発生します。法務局へ登記申請するための登録免許税が取締役会の廃止に3万円、監査役の廃止に3万円、役員構成が変わりますので役員変更に1万円、合計7万円掛かります。
◆取締役会の廃止手続きについて、より詳細に知りたいという方は、弊所公式サイトのこちらのページも合わせてご覧ください。→取締役会の廃止手続き:株式会社変更手続きサポートセンター