公開会社と非公開会社(株式譲渡制限会社)の相違点
非公開会社(株式譲渡制限会社)と公開会社の相違点
非公開会社(株式譲渡制限会社)とは→
定款上、すべての種類の株式について譲渡制限が付けられている株式会社が非公開会社(株式譲渡制限会社)となります。
公開会社とは→
その会社の発行する株式の種類の全部または一部が、譲渡自由である場合には、当該株式会社は、公開会社となります。
【非公開会社と公開会社の主な相違点】
非公開会社 (株式譲渡制限会社) |
公開会社 | |
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株主総会の招集通知の期限 | 原則として1週間 | 原則として2週間 |
株主提案権 | 株式保有期間の制限無し | 株式保有期間の制限有り 6ヶ月以上 |
取締役会の設置 | 設置しなくてもよい | 設置しなければならない |
監査役の設置 | 取締役会設置会社でも、会計参与を置けば監査役は置かなくてもよい (原則として、取締役会設置会社は監査役を設置しなければなりません) |
例外なく設置しなければならない |
取締役の任期 | 10年までの伸長が可能 | 最長2年 |
会計監査権限のみの監査役 | 設置可能 | 設置付加 |
大会社(委員会設置会社以外)の監査役 | 監査役のみで足りる。監査役会は不要 | 監査役会は設置義務有り |
授権株式の数 | 4倍制限なし | 4倍制限有り |
取締役等選任種類株式 | 発行が可能 | 発行は不可 |
株主ごとの格別の定め | 可能 | 不可能 |
株券の発行時期 | 請求時まで不発行が可能 | 発行後遅滞なく |
新株発行無効の訴えの提訴期間 | 1年間 | 6ヶ月 |
通常の株式募集の決定 | 株主総会の決議 | 取締役会の決議 |
株主への通知の広告による代替 | 原則として不可 | 原則として可能 |
株主代表訴訟の提起権 | 株式保有期間の制限無し | 株式保有期間の制限有り 6ヶ月以上保有 |
代表取締役を2人で登記できる?
株式会社の代表取締役は通常1人ですが、複数名を代表取締役として登記することが可能です。
そもそも取締役会を置かない会社では、原則、取締役「各自」が代表取締役になります。この制度を「各自代表」といいます。原則は各取締役が代表権を持っており、それぞれが代表取締役なのです。これに制限を加える形で、定款にて「取締役の中から1人、あるいは複数名定める」等と定めることによって、代表取締役を限定することができるのです。
よって、取締役会を設置しておらず、取締役が複数名居る会社においては、
- 取締役全員が代表取締役→原則
- 取締役のうち1名又は複数名のみが代表取締役→例外
となります。
※ここでは取締役会を設置しない会社で説明をしていますが、取締役会設置会社でも代表取締役を複数名選ぶことはもちろん可能です。
上場企業などの大企業でなくとも、中小企業でも複数代表制をとっている会社はあります。
中小企業では、「出資者(株主)=代表取締役」であることが多く、例えば2人で共同出資をして会社を設立し、2人で代表取締役に就任するといったケースです。
法人実印はどうなる?
代表取締役を複数名置く場合、会社の印鑑(代表者印)は、代表取締役の内1人が印鑑登録をしてもいいですし、各代表取締役がそれぞれ印鑑を登録しても構いません。ただし、同じ印鑑を登録できませんので、異なる印鑑を用意して各代表取締役でそれぞれが印鑑登録することになります。
例えば、代表取締役AとBの2人の場合、A一人が印鑑登録した場合はAが印鑑を管理することになりますので、Bは使うことができません。
代表取締役AとBがそれぞれ印鑑登録した場合は、Aが登録した印鑑はAが、Bが登録した印鑑はBが管理することになります。
では、代表取締役を複数名置く場合のメリットは何でしょうか?
代表取締役が複数の場合、各自が代表権を持っていますので、各自で契約を締結する等の行為が可能です。例えば、代表取締役の一人が長期間不在であっても、残っている代表取締役が契約行為を行えます。入院した場合なども滞りなく業務を執行することができます。
お互いが対等な立場で意見を交換できることにも価値があります。
反面、会社の意思決定権が複数存在するという事がデメリットとしてあげられます。
やはり人間ですので毎回お互いの意見が一致しているとは限らず、平行線で終わることがあるかもしれません。代表取締役は会社の業務を執行するのですから、その意見が異なると会社内部でどちらの意見に従えばいいのか混乱するかもしれません。
いずれかの代表取締役の印鑑があれば、代表取締役が単独でした契約は有効に成立するという事も理解しておく必要があります。
尚、代表取締役が法律上の名称であるのに対して、「社長」や「会長」などは会社が独自で決めている地位を表します。
ですので、代表取締役が複数名の場合、代表取締役の一人を「代表取締役社長」と呼び、他の代表取締役を「代表取締役会長」「代表取締役副社長」のように社長以外の呼称で呼ぶこともできます。
◇代表取締役を複数名にする手続き
代表取締役を複数名にする場合、代表取締役の選定手続きが必要です。
定款の規定により代表取締役を取締役の互選で定めている場合は、取締役の決定により代表取締役を選定します。
- 取締役の互選で代表取締役を選定(取締役会設置会社の場合は取締役会の決議)
- 代表取締役の就任承諾
- 管轄の法務局へ変更登記申請
ただし定款に代表取締役は「1名置く」との規定がある場合、「1名以上」は置けませんので、先に定款の規定を変更する必要があります。
定款変更は株主総会の決議が必要ですので、下記のような流れで手続きを行います。
- 株主総会で定款変更の決議
- 取締役の互選で代表取締役を選定(取締役会設置会社の場合は取締役会の決議)
- 代表取締役の就任承諾
- 管轄の法務局へ変更登記申請
まずは、株主総会で代表取締役を複数名置けるように定款変更の決議を行います。
その後、取締役の互選により2人目の代表取締役を選定します。
<定款変更の株主総会議事録記載例>
議案 定款一部変更の件
議長は、当会社の代表取締役を2名以上置く必要があるため、定款第○条を下記のとおり変更したい理由を詳細に説明し、その承認を求めたところ、満場一致をもって承認可決した。
(代表取締役)
第○条 当会社の取締役が2名以上ある場合は、取締役の互選により代表取締役を1名以上定め、内1名を社長とする。
2 社長は、当会社を代表し、会社の業務を統轄する。
もし2人目の代表取締役が既存の取締役の中から選ばれない場合は、先に「取締役」として就任してもらってから、代表取締役として選任する必要がありますので、注意してください。
この場合、定款変更を決議する株主総会において、取締役選任の議案を追加して決議を行えば手続きが1度で済みます。
<定款変更と取締役選任の株主総会議事録記載例>
第1号議案 取締役1名選任の件
議長は、取締役1名を選任したい旨を述べ、選任方法を諮ったところ、議場より議長の指名に一任したいとの発言があり、一同これを承認したので、議長は下記の者を指名し、その可否を議場に諮ったところ、満場一致をもってこれを承認可決した。
取締役 ○○ ○○
第2号議案 定款一部変更の件
議長は、当会社の代表取締役を2名以上置く必要があるため、定款第○条を下記のとおり変更したい理由を詳細に説明し、その承認を求めたところ、満場一致をもって承認可決した。
(代表取締役)
第○条 当会社の取締役が2名以上ある場合は、取締役の互選により代表取締役を1名以上定め、内1名を社長とする。
2 社長は、当会社を代表し、会社の業務を統轄する。
尚、新しい代表取締役で印鑑登録する場合は、法務局への登記申請の際に印鑑登録も合わせて行うことができます。
会社と取締役の関係
株式会社と取締役との関係は、会社法330条によって、民法643条から656条に規定されている「委任」に関する規定に従うこととされています。
委任の効力
当事者の一方(株式会社)が法律行為をすることを相手方(取締役)に委託し、相手方がこれを承諾することによってその効力が生じます。所有と経営の分離と言われる所以でもあります。オーナーが、経営者に会社の経営を委託し、受託者である経営者は、会社の経営を行います。
受任者(取締役)の注意義務
受任者である取締役は、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負います。
※善良な管理者の注意(善管注意義務)とは、善管注意義務とは、「委任を受けた人の、職業、地位、能力等において、社会通念上、要求される注意義務」のことを言います。
受任者(取締役)の報告義務
受任者である取締役は、委任者である会社の請求があるときは、いつでも委任事務の処理状況を報告し、委任が終了した後でも、遅滞無くその経過及び結果を報告しなければなりません。
これも当然の規定ですね。経営を任されている取締役は、会社に対して報告義務を負います。
委任関係の解除
委任は、各当事者(株式会社及び取締役)がいつでもその解除をすることができます。
実務上は、辞任届けを会社に提出し、会社が法務局へ役員変更登記を行います。変更登記を行うことで始めて登記簿から辞任した取締役の記載が削除されます。
なお、やむを得ない事由もないのに、相手方の不利な時期に委任契約の解除をしたときは、その相手方は損害賠償の請求をすることができます。役員任期を最長の10年にしており、任期途中にも関わらず、会社側が一方的に委任契約を解除した場合は、残任期間の役員報酬を請求される可能性がありますので、注意が必要です。
委任契約の終了
次に掲げる事由が発生したときは、委任関係は終了します。
- 委任者(株式会社)または受任者(取締役)の死亡
- 委任者(株式会社)または受任者(取締役)が破産手続き開始の決定を受けたこと
- 受任者(取締役)が後見開始の審判を受けたこと