ロボアドとは?
Fintechの中でも少々馴染みが薄いであろうサービスが、この「ロボ・アドバイザー」、通称「ロボアド」。
一体何がロボに大体されているかというと、金融資産運用の提案がロボによって行われるという仕組みです。
ロボ・アドバイザリーは、一体どこまでがロボ=機械によって行われ、一体何が便利になるのでしょうか。
そもそも、リテール(個人)における金融資産運用において、既存のプレイヤーが提供しているものは、どのようなものなのでしょうか。
金融資産運用と聞いて、個人の方、特に日本でまず思い浮かぶのは「預金」だと思います。
ゆうちょや銀行における定期預金や普通預金についている金利分、預けたお金に比例して返ってくる・・・というイメージです。
一方、価格変動する性質を利用して、売買差額で儲けようとするものがあります。それが株と為替です。
安く買って高く売れば、その差額が自分の利益となります。一時期流行した、古本屋さんなどで行う「せどり」などと同じ原理です。
最近はAmazonの個人出店などでもそれが可能になりました。
株も同じで、証券会社に口座を開設し、安い価格で購入して、高い価格で売却すれば、その差分が自身の資金口座に溜まっていくという仕組みです。
為替は一定の価格がついていないためにイメージしにくいかもしれませんが、例えば1ドル=90円のときに100ドルを9,000円で購入し、1ドル=120円のときにその100ドルを12,000円で売却すれば、差額の3,000円が自身の為替利益となります。
金利という観点からは、債券や預金が挙げられます。
円預金の利率は現在かなり低いため、多くの金額を口座に預けても、1年経っても大した額は返ってきません。
一方、金利というのは各国の金融政策によって異なるため、金利の高い国の通貨の預金に預ければ、高い預金利子が得られます。
先ほどの為替と合わせると、まず為替を外貨に変え、高い国の預金に預け、満期となり返ってきた資金を円貨に戻せば、その差分が自身の利益となります。
債券は、途中売買もできるし、満期まで保有すれば、債券金利の分のクーポン収入も得られるという仕組みです。
仮に償還利回り1%の1年債券を10,000円分購入し、1年経過すれば、10,100円が返ってきますので、この100円が自身の利益となります。
また、途中で価格が12,000円になれば、100円の償還利子は得られませんが、売却益2,000円を得ることができます(実際は中間利払いなど利子の仕組みが複雑なので、ここでは簡略的な説明とします)。
では、ロボアドが現在主に活躍している分野はどこなのでしょうか。
1.ラップ口座の自動化
金融機関が提供するサービスに「ラップ口座」というものがあります。
生活スタイルや資産状況について答えていくと、金融機関の人が最適な運用を提案したり行ったりしてくれるというものです。
ロボアドは、これを金融機関の窓口で申し込むのではなく、Web上のサービス提供者のページやアプリなどから申し込むというサービスと言えます。
2.商品はETF
ラップ口座の場合、主に用いられる投資商品は投資信託になります。長期保有目的で、毎月決まった時期に買い増す積立型などが人気です。
一旦払い戻しを行い、都度現金化するタイプと、その月の収益と元本をそのまま再投資する複利タイプがあります。
一方、ロボアドが取り扱う商品はETFになっています。ETFというのは上場投資信託で、日中でも売買が可能になっています。
個別株も上場され日中取引ができますが、ETFは個別の塊となっており、日経225、TOPIXといった株式指標をベンチマークとして、同様の値動きをするような配分になっているものもあるので、個別株ほどのリスクをとりたくない人に向いています。
3.運用の仕組みはアルゴリズム
実際、ロボットが運用を行うといっても、どのように行っているのでしょうか。
その仕組みは「アルゴリズム」と呼ばれる、自動売買システムによって構築されています。
実際に運用を行う人、ファンドマネジャーがどのように売買を決めているかというと、日経平均株価などの株価指数、長期金利などの金利動向、為替、中央銀行会合などの金融イベント、選挙などの政治イベント、投資をしようとする国の格付け(カントリーリスク)など、様々なものを見て判断をしています。
株などは、世界的不況になれば企業の業績悪化を意味するため売られ、投資したい人たちのお金は、企業よりも安全な国、すなわち国債などに流れるため、債券が買われて金利が下がっていきます。
すなわち、経済局面悪化時は株安債券高となることが想像できます(近年は必ずしも相関しなくなり、各指標の動向予測はより難しくはなりましたが)。
また、過去の金融危機、例えば日本のバブル経済崩壊、アメリカのITバブル崩壊、サブプライムショック、リーマンショック、バーナンキショック、2015年の中国ショック・・・
株価が大暴落した際に、その予兆はなんであったのか(株価下落の予兆はあったのか、債券が密かに購入され始めていたのか、為替がどこかで高騰または暴落していなかったなど)を、ファンドマネジャーは過去に遡って調査します。これをバックテストと呼びます。
今までの相場と照らし合わせて、現在の相場は今後上昇局面なのか、下落局面なのか。
こういった判断は、人間の勘もあるのかもしれませんが、数字の検証の上で判断が行われている以上、システム化が可能であるという考えに基づき、アルゴリズムが生成されるようになりました。
4.ロボアドのフェーズは様々
現在、ロボアドと一口に言っても、その種類は様々です。
質問に答えていくと、既存のETFの中からオススメ度の高い順にランキングで教えてくれるもの、カントリーリスクなどを組み合わせてポートフォリオまで組成してくれるもの、売買がそもそもアルゴリズムで行われているもの、個人投資家がアルゴリズムを公開しその利用料を得ることができるもの・・・過去調査、指標分析、バックテスト、ファンド組成、購入、売却、利益管理・・・、ETFの販売元である証券会社およびファンドマネジャーの仕事のどこを代替してもロボアドと総称されているようです。
今後は、こういったサービス同士のM&Aや、各社の技術進歩により、全てを包括するロボアドETFも登場してくるかもしれません。
一方で、「この政治家が勝ちそうだ」「この国は実はこういった背景があるから、現在の格付けは割りにあっていない」など、システムだけではデータの取り込みが追いつかなかったり、感覚値の方が上回っている部分ももちろんあるでしょう。ロボアドに代替されることが必ずしもパフォーマンスを保証するという訳ではありません。
金融商品のそもそもの存在意義は、リスクを抑えて、最大限のパフォーマンスを出すことです。ファンドマネジャーの負担を減らしながら、それを実現サポートできるサービスが生き残っていくことでしょう。
ロボアドの精度は今後も上がっていくと考えられます。
みなさまも「よくわからない」と恐れることなく、自身のファンド比較研究時間の短縮化などに積極的に活用してみてはいかがでしょうか。
PFM(個人的な資産管理)とは?
10年ほど前、金融関係の作品も多いある作家が、「学校で教えて貰えないのは(男性から見て)女性の口説き方とお金の稼ぎ方」と述べ、話題になったことがありました。
前半は本旨から外れるため割愛しますが、お金の稼ぎ方、そして稼いだお金の管理の仕方、そして殖やし方。
これらは日本人が元来ずっと苦手としてきたものです。
これらお金の管理に対して、ここ数年、解決策のひとつとなる考え方が生まれています。それが、PFMというものです。
1、PFMとは?
PFMとは、Personal Financial Managementの頭文字をとった略語です。直訳すると、「個人的な資産管理」という意味を持ちます。
もともとアメリカで発達した概念で、預貯金や保険の加入状況、不動産管理などを一元管理する考え方やテクノロジーを指します。
現在の日本において代表的なPFMサービスの要素はふたつ。家計簿アプリと、アカウントアグリゲーションシステムです。
2、家計簿アプリ
家計簿アプリはマネーフォワード社の展開する「MoneyForward」、Moneytree社、Zaim社などが展開しているサービスです。
毎月の収入を入力し、一方で食費や交際費、住居費などといった支出項目を記載することで毎月の「収支」を自動的に算出します。
この作業を何か月か継続すると、現在の生活をしていて家計は問題ないのか、それとも大規模な節約などの「見直し」が必要なのかを判定することができます。
3、アカウントアグリゲーション(ID連携)
PFMサービスにおいて、もうひとつの代表格がアカウントアグリゲーションシステムです。ID連携ということもあります。
銀行の貯蓄情報やクレジットカード・デビッドカードの使用情報を一元管理できるサービスの基盤システムです。
これらは通帳やカードの利用明細を見ながら利用者がせっせと入力していくものではなく、「自動的にデータが送られてくる」のがアカウントアグリゲーションの大きな特徴です。
利用者はそのデータが誤っていないかを確認するだけでよく、極めて少ない労力で家計の状況推移がどうなっているのかを確認することができます。
先に名前を挙げた各社はアカウントアグリゲーションと家計アプリの特徴を兼ね備えたものをPFMサービスとして提供しています。
4、これからのPFMサービスは?
それではこれから、PFMサービスにはどのような機能が追加されていくのでしょうか。
もちろん現在のPFMサービスはとても魅力的ながらも、まだまだ発展途上といえます。
これからのPFMサービスを語るにおいて、キーワードとなるのは「不動産」と「保険」です。
銀行口座とリンクしたアカウントアグリゲーションの進歩によって、預貯金や証券の金額(証券は評価額)をまとめて管理できるようになりました。
この次の段階として、不動産や保険がアカウントアグリゲーションで管理できないか、が期待されています。
まずは不動産。不動産の価格は周辺環境や建物の年数によって変わってきます。
不動産を所有するどこかのタイミングで売却をするとき、その売価は資産に計上されます。
そのため、不動産を含めてPFMサービスを開発するのは、更に一歩踏み込んだ「お金の管理」が実現できるということです。
不動産の先は、「保険」といわれています。日本の家計では終身保険に加入し、20年後や30年後といった長期間の後に「解約」することでまとまったお金を得て、老後資金として活用します。
特にこれまでは高い金利がつくことで終身保険料として投資したお金は110%や120%といった利息がついて解約することができたため、とても有効な資産管理方法でした。
この終身保険は金利低下、そして昨今のマイナス金利の影響で随分と人気がなくなってきたのですが、現在も資産としてしっかりと所有している家計はとても多いです。
そして、それらを一括管理するアカウントアグリ上げ―ションを開発して、PFMサービスとして提供することができれば、更に充実した家計の管理が可能になるといえるでしょう。
5、PFMサービスには欠かせない強固なセキュリティ
PFMサービスが消費者に受け入れられる一方で、これらのサービスに不安感を覚える消費者もいます。
預貯金額をはじめ銀行など金融機関に預けている、さまざまなセンシティブな情報。
PFMサービスを運営する会社は、極めて強固なセキュリティ機能を実現していますが、多少否定的に書くと、だからといってこれらの個人情報が漏えいしない保証などありません。
PFMサービスを「何となく恐い」という人たちは、この部分に漠然な不安を抱いているといえるでしょう。
今後のPFMサービスは、この不安を解決するサービスを生み出した業者がさらなる支持を集めることは間違いないと思います。
一からわかるブロックチェーン技術
ブロックチェーン技術。Fintech(Finance×Technology)のなかでも突出して複雑な技術であり、Fintechに関して造詣の深い方でも「ブロックチェーンはわからない」という声さえ聞こえてきます。
今更ながら、誰にも聞けない一からのブロックチェーン技術をお伝えしましょう。
1、ブロックチェーンの定義
ブロックチェーンを日本語訳すると「分散型台帳」といいます。
ブロックチェーンには仮想通貨の代表格であるビットコインの存在が深く関わっており、ビットコインを正確に管理するために登録をするプラットフォームとして誕生しています。
この背景にはビットコインの持つ特徴であるピアツーピア技術というものがあります。
ビットコインを生活にも浸透している電子マネ―である「Suica」と比較してみましょう。
SuicaはJR東日本による中央集権的な管理体制によって管理されていますが、このような中央管理者がビットコインには存在しません。
その代わりに、セキュリティ機能の強いブロックチェーンというシステムが、インターネット上で情報を管理し、外部に漏洩しないようにしています。
ビットコインのデータを連結しているため、ビットコインデータの偽造(特に所有者のデータや売買記録)を防止することができるほか、一定のタイミングでデータを集約して「ブロック」を作成します。
このブロックが過去に作成されたものと積み重なって、ブロックチェーンという技術を構成しています。
ここまでが「現段階でのブロックチェーン」といわれるものです。
ところが将来、ブロックチェーン技術は1990年代にインターネットが誕生したときのように、世界を大きく変える基盤システムになるのでは、といわれています。
それは、ビットコインを管理するこの技術が、世の中のさまざまなものに「応用できる」という点です。
2、ブロックチェーンの未来
2016年3月、メガバンクのみずほ銀行のほか、富士通、富士通研究所の3社は国境を越えて証券を取引する「証券クロスボーダー取引」にブロックチェーン技術を適用することで、証券取引の決済に必要な時間を短縮する実験を行った、と発表しました。
ビットコインに関係のないブロックチェーンの実証実験が行われた歴史的なニュースといえます。
そして、今後はこの証券の動きが、「不動産登記」分野に拡大すると見込まれています。
個人情報との距離が近く、強いセキュリティ性が要求されるブロックチェーンのテクノロジーは、所有権や抵当権といった財産権の情報を管理するのにあたりとても適しているといわれます。
嗅覚の鋭い一部の司法書士などは、「これからはブロックチェーンの知識を身に着けた司法書士が必要になる」として情報収集を進めているようです。
証券と登記においてブロックチェーンが基盤となったインフラ構築が固まると、ブロックチェーンはいよいよ「生活インフラの革新フェーズの段階に入ります。
すると利用者はインターネット上にそれぞれの財布(ウォレット)を使って生活用品の補充をするようになります。
- 自動車のガソリンが少なくなったら補充
- 冷蔵庫から指定した食品が少なくなると注文
- 家が掃除道具を注文
ここで驚くべきは、少額取引の場合。ウォレットの持ち主(利用者)の認証は必要としません。
その代わりに、割り振られているシリアル番号にもとづいてデバイスが「自動的に」認証を行っていきます。
あらかじめ高額の取引や多数の取引が発生した場合のみ、管理者としてウォレットの持ち主に認証を求めるというものです。
たとえるならテレビで放送されたネコ型ロボットが生まれた未来のような、人間の行っている、ありとあらゆる「煩雑な作業」が人間の意思決定を必要とせず、充足するようになります。とても革命的なことですね。
もちろん、現段階で超えるべき課題はとても多いです。
セキュリティ技術も更に発展していかなければなりません。10年先、20年先を見るブロックチェーンやFintechに関わる企業は、現段階でそれを想定し、来たるべき時代に備えています。
今から20数年前、インターネットがここまで人々の生活に定着することを予想した人はどれくらいいたでしょうか。
その意味では、ポスト・インターネットとなるべき存在が、このブロックチェーン技術です。
この時代変革を理解するとき、もうひとつの根本的な考え方として覚えておいて頂きたい言葉がIOT(Internet of thing)です。
IOTとは、ありとあらゆるものがインターネットに繋がる技術を指します。IOT社会実現の主役となる存在のひとつが、ブロックチェーン技術になるといわれています。
最新状況にも触れておきましょう。
2016年にはあるメガバンクが独自の仮想通貨を開発すると発表し、大きな話題となりました。
世界は日本のように通貨が安定している国ばかりではありません。
今後、決済制度に不安を持つ国で革新的な決済方法が導入されていくといわれています。それが時代に歓迎されて、ブロックチェーン技術を応用したIOT社会の実現となるのに、それほど時間はかからないかもしれません。