マル経融資とは?+今、注目されている新規開業者も利用が可能な「資本性ローン」とは?+経営環境の急激な変化で資金繰りに困ったときに役立つ「セーフティネット貸付」とは?

日本政策金融公庫の「マル経融資」とは?

商工会議所とタッグを組んで中小企業を助ける制度

マル経融資とは、正式には「小規模事業者経営改善資金融資」といい、日本政策金融公庫が行っている公的融資制度の一つです。

創業時融資等とは異なり「商工会議所に加入している事業者」が対象者とされているのが特徴です。

この制度を利用して融資を受けるには、大前提として商工会議所に加入していなければなりませんので、まずは全国各地にある商工会議所に加入することが必要です。

商工会議所とは、一度はその名を聞いたことがあるかと思いますが簡単に言うと中小企業を支援してくれる公的団体です。

都道府県の各地域に置かれいますので、その区域内で事業を行っているのであれば、法人・個人事業を問わず入会できます。

商工会議所には経営支援専門員が配置されていますので、中小企業向けの経営相談、資金調達等の融資相談を受けることができ、記帳指導等のサービスも無料で受けることができます。

経営セミナー、交流会等も積極的に行われており、経営者との情報交換や交流の場としても活用されています。

地域の商工会議所によって異なりますが、加入金が数千円、年会費は従業員数が10名未満であれば年間15,000円程度で済みます。

加入金と年会費は必要ですが、その全額を損金または必要経費に算入することができますので、マル経融資を考えていなくても加入するだけのメリットはあります。

マル経融資の概要

マル経融資は経営改善のための運転資金や設備資金として2,000万円を融資限度額として、審査で認められた資金が融資されます。

返済期間は運転資金であれば7年、設備資金であれば10年以内と返済期間が長く設定されており、保証人や担保が不要、信用保証協会の保証も不要である事と低利(平成28年11月現在年利1.16%)である事が大きな魅力です。

<融資対象者>
  • 従業員が20人以下の法人または個人事業主であること(商業・サービス業は従業員が5人以下)
  • 1年以上、同一商工会議所の区域内で事業を行っていること
  • 商工会議所の経営・金融指導を6ヶ月以上受けて事業改善に取り組んでいること
  • 確定申告を行い、税金(所得税、法人税、事業税、県・市民税)を完納していること
  • 商工業者であり、日本政策金融公庫の融資対象業種を営んでいること(※)

※ほとんどの業種が対象ですが、銀行業、競輪競馬・パチンコ等の娯楽業、取立業などは非対象業種です。

<融資条件>
  • 融資限度額2,000万円
  • 返済期間:運転資金7年以内、設備資金10年以内
  • 保証人:不要
  • 担保:不要
  • 年利1.16%(特利F:平成28年11月現在)
<必要書類・法人の場合>
  • 前期、前々期の決算書と確定申告書
  • 決算後6ヶ月以上経過している場合は最近の試算表
  • 税金(所得税、法人税、事業税、県・市民税)の領収書又は納税証明書
  • 登記簿謄本(3ヶ月以内のもの)
  • 設備資金を申込む場合はその見積書、契約書、カタログ等
  • 現在の借入金に関する書類

※申込先の商工会議所によって多少異なります。

<必要書類・個人事業の場合>
  • 前年、前々年の決算書と確定申告書
  • 決算後6ヶ月以上経過している場合は最近の試算表
  • 税金(所得税、事業税、県・市民税)の領収書又は納税証明書
  • 設備資金を申込む場合はその見積書、契約書、カタログ等
  • 現在の借入金に関する書類

※申込先の商工会議所によって多少異なります。

マル経融資は1年以上事業を行っている方が対象となりますので、創業時にこの制度を利用することはできません。

創業時に融資を考えているのであれば、同じ日本政策金融公庫が行っている「新創業融資制度」が該当しますので、そちらを検討してみてください。

 

 

どこよりも分かりやすく解説!日本政策金融公庫の資本性ローンとは?

はじめに

日本政策金融公庫には、資本性ローンと言う融資制度が用意されています。

この資本性ローンは新規開業者でも活用できる制度ではあるのですが、利用できるのは「新規性及び成長性がみられる事業」に限られています。

資本性ローンは無担保・無保証人で利用ができ、借入期間も長く、借入金自体を金融検査上の自己資本としてみなしてくれるなど、借り手にとっては非常に多くのメリットがある反面、事業自体が斬新なビジネスモデルでかつ、成長性が認められるものでなければ、利用はできなくなっています。

当ページでは、ここ数年注目されている日本政策金融公庫の「資本性ローン」について解説しています。

日本政策金融公庫の資本性ローンの特徴をより深く理解するためには、そもそものところで「資本性ローン」「劣後ローン」という言葉の意味を理解しておく必要があります。

まずはこれらの解説をして、その後から、日本政策金融公庫独自の資本性ローン制度について見ていきたいと思います。では、どうぞご覧ください。

【目次(もくじ)】

  • まずは「資本性ローン」そのものを理解しよう!
  • 劣後ローンとは?
  • 日本政策金融公庫の資本性ローン(挑戦支援資本強化特例制度)の特徴
    |-「国民生活事業」と「中小企業事業」の資本性ローンの違い
  • 資本性ローンのメリット・デメリット
  • まとめ

まずは「資本性ローン」そのものを理解しよう!

資本性ローンとは、「資本性借入金」とも呼ばれます。ローンに変わりはないのですが、その性質が一般のローンとは異なります。

融資などのローンは帳簿上「負債」として計上されます。いわゆる借入金があることになります。

しかし、借入金を「負債」とせず、「資本」とみなすことができる特殊なローン制度があります。

これを「資本性ローン」といいます。

負債が大きいと金融機関は融資に消極的になりますので、借入金が増加することは経営者にとって好ましい事ではありません。

しかし、資本性ローンは、借入金でありながら金融検査上自己資本とみなされる(=負債でないとみなされる)ため、金融機関から追加で融資を受ける際には非常に有利になります。

負債なのになぜ資本とみなされるのか?それはこの資本性ローンが自己資本に近い性質を持っているからです。

自己資本とは返済を必要としない株主からの出資金などを指します。もちろん資本とみなされていても借入金であることに変わりませんので、返済しなければならないのですが、他の融資と異なる特徴があります。

  • 無担保、無保証人であること
  • 借入期間が長期であること
  • 元本は期日一括返済であること
  • 業況悪化時は金利が低くなること

融資をするのではなく、出資をするという考え方に近いため資本性ローンと呼ばれています。

劣後ローンとは?

会社がお金を借りたまま倒産すると、融資元である金融機関は貸したお金の回収を図ります。

会社は倒産後に残った資産で債権者に返済を行っていきますが、返済には順番がありますので優先順位の高い方から順次支払われていきます。

例えば、未払いの税金や従業員に支払う給与は残っている財産から優先的に支払われます。

「劣後ローン」とは、他の債権よりも返済の優先順位が低く設定されているローンのことです。

優先順位が低いといざ回収する順番になった時には、既に回収できる資産がないということもあります。支払いの順序があとになる(劣後する)ので「劣後ローン」と呼ばれています。

会社が複数の金融機関からお金を借りている場合、倒産した時は劣後ローンで借りている返済を後回しにして、他の金融機関への借入金を優先して返済してかまわないということになります。

貸す側の金融機関にとっては回収できないリスクが高いので、通常の融資よりも利息を高く設定しているのが一般的です。

劣後ローンは借入期間が長期間になることが多いので、貸す側の金融機関からすると長期間高い利息を払ってもらえるというメリットがあります。

このように金融機関側からすると利息は毎月支払われますが、貸した時点で返済されないリスクがあることがわかっているため、会社にお金を貸すというよりも、その会社が倒産したときは回収の可能性がほとんどないという点で株式取得と似ています。

そのため、劣後ローンは借入金でありながら金融検査上は自己資本とみなされるという特徴があります。

日本政策金融公庫の資本性ローン(挑戦支援資本強化特例制度)の特徴

日本政策金融公庫が提供している資本性ローン「挑戦支援資本強化特例制度」があります。

「挑戦支援」「資本強化」と呼ばれるように、新規性・成長性があるビジネスを今後展開する中小企業や事業再生に取り組んでいる中小企業等が対象とされています。

通常の資本性ローンと同様に「無担保、無保証人」の融資であり、事業そのものが担保であるとされますので、将来成長が見込まれる事業であることが必要です。

資本性ローンですので、金融検査上自己資本とみなされるのはもちろんですが、会社が倒産した場合、他の全ての債権よりも返済の優先順位が低く設定されている劣後ローンの性質もあるのが特徴です。

無担保・無保証人で借りられる等、資本性ローンは特殊な融資制度であるため審査が厳しく、誰もが簡単に利用できる制度ではありません。

新規性や成長性が求められるため、事業計画書作りが非常に重要です。事業計画書や税務申告書の提出、四半期ごとに経営状況の報告が求められますので、顧問税理士さんに相談しながらしっかり手続きを行うことが大事です。

日本政策金融公庫が行っている資本性ローンは、「国民生活事業」と「中小企業事業」が実施する2種類あります。

「国民生活事業」と「中小企業事業」の資本性ローンの違い

どちらも同じ資本性ローンですが、「国民生活事業」は創業時や新規事業を始める小規模な企業を対象にしているのに対し、「中小企業事業」は新規事業や企業再建等に取り組むやや事業規模の大きい企業を対象にしています。

当ページをご覧になっている方の大半は国民生活事業の方に該当されていると思います。

国民生活事業
  • (利用対象者)創業、新事業展開等に取り組む企業
  • (適用対象)地域経済の活性化に寄与できる事業等
  • (融資限度額)4,000万円
  • (融資期間)5年1ヵ月~15年
中小企業事業
  • (利用対象者)日本政策金融公庫の新企業育成貸付、企業活力強化貸付、企業再生貸付を利用している企業
  • (適用対象)雇用の創出など地域経済の活性化に貢献できる事業等
  • (融資限度額)1社あたり3億円
  • (融資期間)5年1ヵ月、7年、10年、15年

資本性ローンのメリット・デメリット

<メリット>

  • 無担保・無保証人である
  • 融資を受けた借入金が金融検査上、自己資本とみなされる
  • 株式ではないため既存株主の持株比率を低下させることがない
  • 倒産した場合には他の債務より返済順位が劣後するため、追加融資が受けやすくなる
  • 返済期限までは金利のみの支払いであるため、借入期間中の資金繰りが改善される
  • 企業の決算状況に応じて利率が見直されるため、利益が少ないと低利率になる

<デメリット>

  • 四半期ごとに事業計画書の提出や経営状況の報告をしなければならない
  • 元金は返済期限日に一括返済であり、原則期限前の返済はできない
  • 借入期間中は利息を払い続けなければならない
  • 企業の決算状況に応じて利率が見直されるため、利益が出ると金利が上昇する

まとめ

以上、いかがでしたでしょうか。

日本政策金融公庫の資本性ローンは、既存企業だけでなく新規開業者にも門戸は開かれています。我こそはと言う方は、積極的にチャレンジんしていきましょう。

 

 

経営環境の急激な変化や資金繰りに困ったときに役立つ日本政策金融公庫の「セーフティネット貸付」とは?

「セーフティネット貸付」は、日本政策金融公庫が実施している融資制度の一つです。

経営環境の悪化や金融環境の変化等の影響を受けて売上が減少したり、資金繰りに支障をきたしている中小企業や小規模事業者に対して融資を行うことで、経営の安定を図ることを目的としています。

セーフティネット貸付は、もちろん審査はありますが、社会情勢の影響等、外的要因により一時的に資金を必要とする企業等を対象としている制度ですので、要件に該当すれば融資を受けられる可能性が高くなります。

融資の使いみちは「設備資金・運転資金」と限定されていますが、設備資金の場合であれば融資期間は最長15年と長期間の借入も可能であり、一定期間(据置期間)の間は元金の返済を据え置くこともできるため、安心して利用することができます。

また、金利は「固定金利」ですが一定の要件を満たすと基準利率から引かれた特別利率が適用されるので、金利面でも優遇された融資制度と言えます。

日本政策金融公庫が実施しているセーフティネット貸付は、「経営環境変化対応資金」「金融環境変化対応資金」「取引企業倒産対応資金」の3種類があります。

(1)経営環境変化対応資金

一時的に売上が減少するなど業況が悪化している企業・個人事業が対象。短期的に売上は落ちているが、中長期的には業況が回復する見込みがあることが必要。

【資金の使いみち】設備資金・運転資金
【融資限度額】国民生活事業:4,800万円 中小企業事業:7億2千万円
【融資期間】
・設備資金 15年以内(据置期間3年以内)
・運転資金 8年以内(据置期間3年以内)
【利率】基準利率(一定の条件を満たした場合、特別利率の適用有)
【保証人・担保】要相談

(2)金融環境変化対応資金

取引先金融機関が経営破綻した、業務停止命令を受けた等、金融機関との取引状況が変わることにより、一時的に資金繰りが悪くなっている企業・個人事業が対象。

【資金の使いみち】設備資金・運転資金
【融資限度額】国民生活事業:4,000万円 中小企業事業:3億円
【融資期間】
・設備資金 15年以内(据置期間3年以内)
・運転資金 8年以内(据置期間3年以内)
【利率】基準利率(一定の条件を満たした場合、特別利率の適用有)
【保証人・担保】要相談

(3)取引企業倒産対応資金

取引先の企業などが倒産したことによって、一時的に資金繰りに支障をきたしている企業・個人事業が対象。

【資金の使いみち】運転資金
【融資限度額】国民生活事業:3,000万円 中小企業事業:1億5千万円
【融資期間】運転資金 8年以内(据置期間3年以内)
【利率】基準利率(返済期間、担保の有無などによって異なる)
【保証人・担保】要相談