あなたもスグに定款作成できる!1番くわしい定款作成・認証ガイド

 

【目次(もくじ)】

  1. 株式会社の定款(ていかん)とは?
  2. 電子定款と紙定款の違いは?
  3. 定款認証とは?
  4. 公証人・公証役場とは?
  5. 定款認証手続きの流れと注意点
  6. 決定版!誰でも分かる!新会社法対応の定款逐条解説。

株式会社の定款作成

1.株式会社の定款(ていかん)とは?

会社の根本規則集、それが定款です。

うちは、こういう社名です、こういった事業を行う予定です、株主総会を開くときにはこういった手順で行います・・・など、その会社の基礎となるべく決定された事柄が記載されています。

いうなれば、会社内の法律のようなもので、その規律に則って会社は活動を行っていかなくてはなりません。

会社法が改正されてから「定款自治」が拡大され、会社の経営の基盤を、比較的自由に且つバリエーション豊かな内容で決められるようになりました。

新しく会社を始めるときには、法務局に設立登記の申請を行います。様々な書類が必要なのですが、定款もそのひとつです。どういった会社を興す予定なのか定款を見れば一目瞭然で、逆に言えば、定款がなくては会社は始まらないと言ってもいいでしょう。

会社を作るぞ!と決めたら、まず最初に定款作成に取り掛かりましょう。

定款には絶対に書いておかないといけない【絶対的記載事項】と、絶対ではないけれど書いておいたほうがいい【相対的記載事項】と、書いても書かなくてもどちらでもいい【任意的記載事項】とがあります。

絶対的記載事項は、法律上必ず記載しなくてはならず、万が一記載されていなければ定款自体が無効となります。

相対的記載事項は、各条項に一応の法律の定めがある事項ですが、定款に別段の定めとして記載することにより効力を発揮できます。

別段の定めを置くか置かないかは会社の自由ですが、記載されていない限りは効力を発生させることはできません。

また、記載がなくても、定款自体が無効となることはありません。

任意的記載事項は、絶対的記載事項と相対的記載事項以外のもので、会社法に違反しないものである限りは、定款に記載することによって、株主や会社内部の人を拘束することができます。

2.電子定款と紙定款の違いは?

定款には多くの記載事項があるものなので、数ページに渡ります。

これをホチキスなどで留め、冊子の形にします。これを作成し、公証役場というところに持って行き、定款の認証を受けます。

近年インターネットが普及したことで、公証制度も電子化で行われるようになりました。その一環として、定款をデータ化した電子定款の認証も認められるようになりました。

紙の定款

紙定款は、通常A4判の用紙を横書きで使います。表紙・本文・裏表紙の順番に並べ、袋とじなどにします。

手書きでも良いのですが、現実的ではありません(笑)。定款は求められれば利害関係人など、多くの人が閲覧できるものであることを考慮し、見やすく記載しなくてはなりません。

作成した定款に、発起人全員が署名し記名押印をします。

定款内容に修正が生じることがありますので、捨印を押しておくと後々便利です。

電子定款

電子定款は、パソコンの文書作成ソフトを使って定款原案となる文書を作成します。

それをPDF形式に変換した後、電子署名を行います。電子署名を付けた文書をフロッピーディスクに入れ、公証役場へ持って行きます。

電子署名は誰でもできるものではなく、形式などは法務省で定められており、電子署名システムを購入する必要があります。

紙定款と電子定款で決定的に違う点は、印紙代が必要か否かという点です。

定款認証には、認証手数料が約5万円必要です。これは紙定款でも電子定款でも変わりはありません。

ですが、紙定款の場合それとは別に印紙代として4万円が必要です。電子定款では、その印紙代はいりません。

ただし、上記でもあるように、電子定款の形にするためには、専用のシステムやソフト等の準備が必要です。一度の定款認証のために、そういった環境を整えていては、費用も掛かりますし、何より時間がもったいないです。

電子定款の作成を検討しているのならば、認証業務を行っている行政書士等の専門家に依頼する方がよいでしょう。

3.定款認証とは?

定款を作成したら、公証役場へ持って行き、公証人にチェックしてもらいます。

チェック後、問題がなければ認証を受けます。認証を受けた定款には、公証人のサインが入り、正しく認証されたことを証明します。

最初に作成した定款を「原始定款」と呼びますが、原始定款は公証人の認証を受けなければ、その効力を持ちません。

原始定款を一度作成しても、認証を受けるまでは何度でも変更することができます。変更し確定したものを以って、公証人の認証を受けます。

認証を既に受けた後の定款に変更点が生じた場合、認証手続きが最初からやり直しとなります。

その際には、改めて認証手数料が必要となりますので、定款作成はじっくり慎重に、発起人が数名いる場合は話し合いをしっかり行い、確実に行いましょう。

認証ができるのは公証人しかできず、認証を受けていない定款を法務局へ提出しても受理されません。

4.公証人・公証役場とは?

定款の認証ができる公証人は、会社の本店所在地を管轄する法務局(または地方法務局)に所属しています。

例えば、大阪法務局所属の公証人は、兵庫県や京都府等に本店を置く会社の定款を扱うことはできません。

設立する会社の本店所在地を管轄する法務局内にある公証役場を探します。公証役場は各都道府県に数々置かれており、複数ある場合はどこで認証手続きを行うかを決めます。

公証人は、定款認証だけでなく、様々な公証業務を行っています。

行けばすぐに定款認証をしてもらえる、とはなりませんので、公証役場へは、事前に電話予約を取り、株式会社の定款認証を受けたい旨を伝えておきましょう。

 

5.定款認証手続きの流れと注意点

初めて定款を作ることとなると、数カ所に修正箇所が発生することも予想されます。

そのたびに持ち帰って修正し、また公証役場へ出向く・・・というのは、とても時間がかかります。

そういった事態を避けるために、公証役場へ電話予約を入れ、定款認証手続きを受けたい旨を伝えるときに、定款の事前チェックを受けられる聞いてみましょう。

公証役場によっては、定款原案をFAXで送ればチェックをしてくれ、修正箇所を教えてくれます。認証手続きの予約日には、修正後の定款を持って行くと、定款認証業務は数十分で終わることができます。

公証人は、定款の内容に違法な点がないか、絶対的記載事項は不足なく記載されているかどうか等、定款の形式や無効でないかを審査し、指摘したり補正したりします。

その全てにおいて問題がなければ、無事に定款の認証を受けることができます。

6.決定版!誰でも分かる!定款逐条解説。

ここまで、ひと通り定款・定款認証とはどんなものか?を見てきましたので、概要については、ご理解を頂けたと思います。

さていよいよここからが本番です。定款の逐条解説に入ります。

定款に記載する内容は多岐に渡ります。条文数も多く、これらの条項を隅々まで解説している他サイトは少ないと思われますので、当ページでしっかりと解説していきます。

株式会社の社長になるのであれば、この位のことは最低限知っておいておきたいところです。

設立時に自分で定款を作成する場合はもちろん、行政書士や司法書士などの専門家に作成や認証を依頼する際も、会社の根本規則である定款のこちら内容を押さえておけば、やり取りがスムーズになります。

定款には何を記載しなければならず、何に注意をしなければならないのか?

この点を意識しながら、読み進めてみてください。

定款に出てくる登場人物は、この3者です。

発起人(会社立ち上げオーナー)、株主(会社のオーナー)、役員(取締役や監査役など)。

発起人がどんな会社を作るのかを決めて、定款を作成し、選ばれた役員がその会社を運営していきます。

その過程の中で、新たに株主や債権者になる人が出てきます。

これらの人物はステークホルダー(利害関係人)と呼ばれ、定款は、このステークホルダーの為の規則集なのです。

誰が会社の発起人なのか?株主になるためにはどうすればいいのか?株式の取扱いはどうなっているのか?役員は何名いる会社なのか?役員報酬の決め方はどうなっているのか?事業年度はいつからいつまでなのか?株主配当はどうなっているのか?

株式会社のオーナーであり、かつ、実際にお金を出す株主の立場に立ってみると、非常に気になることが、定款には書いてあるのです。

発起人・株主・役員、この3者の立場とそれぞれの関係性を考えつつ、逐条解説を読めば更に理解が深まります。

なお、当ページで逐条解説している実際の定款の雛形は、下記からダウンロードして頂けます。無料ですので、ご自由にお使いください。リンクをクリック頂くとダウンロードが始まります。

下記が取締役会非設置、監査役非設置、株券不発行の雛形です。当ページで逐条解説しているそのままの定款雛形になります。

昨今、大規模の会社でない限り、取締役会を設置する必要性が無くなってきており、運営コストもかかるため、大半の会社が取締役会を設置していません。

1人で会社を立ち上げるオーナー会社の場合はこちらをご利用ください。

その他の機関構成の雛形についても、下記に掲載しておきますので、ご利用いただければと思います。取締役2人以上ver.・取締役会設置会社ver・現物出資ver.もございます。

※当事務所で500社以上の定款認証を受けてきた実績のある雛形にはなりますが、公証人によっては簡単な文言修正が入る場合もございます。ご利用に際しては自己責任でお願いいたします。

では、第一条から順に見ていきましょう。

第一章 総 則

(商 号)
第1条  当会社は、株式会社○○○商事と称する。

【絶対的記載事項】です。

「株式会社」という文言を必ず入れなくてはいけません。商号調査は各管轄の法務局にてチェックをすることができます。公序良俗に反しなければ、比較的自由に決めることができます。

ただし、使う文字によっては禁止されているものがあります。次のことに注意しましょう。

1.本店所在地の同一場所に同一商号があってはいけない

本店所在地として登記する住所に、同じ商号を登記することはできません。

近隣に全く同じ商号があったとしても(又は非常によく似た商号があったとしても)、「同じ住所」内でなければ登記することができます。

逆を言えば、同じ住所で一文字でも「違う」商号であれば、登記することができます。

ただし、近隣に似たような会社名が存在する場合は、郵送物の誤配や、顧客の認識違いなどの問題を引き起こすことがありますので、商号調査は必ず行い、慎重に決める必要があります。

また、大きい商業施設などに本店を構える場合には、本店住所が同一である法人が多い可能性が考えられますので注意してください。

2.誤認されるような名前はつけてはいけない

例えば「株式会社◯◯銀行」等と商号を付けてしまうと、銀行と誤認されるケースもあるかもしれません。

そういって事態を防ぐために、他の会社として間違って認識されるような商号は付けることを禁止されています。

また、誤認されると分かっていながら、悪意を持って他とよく似た商号を付けることも原則禁止とされています。

3.記号は使用できない

使える文字は、漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字・アラビア数字です。「@」(アットマーク)等の記号は、使うことはできません。

ただし、文字と文字を区切る記号は使用できます。

具体的には「&」「’」「,」「-」「.」「・」の5種類を使うことができますが、あくまで文字と文字を区切るための記号なので、先頭・末尾に用いることはできません。

ただし例外として、「.」(ピリオド)については、末尾に付けることができます。

また、空白(スペース)は、ローマ字を用いたときのみ使うことができます。漢字やひらがな・カタカナ表記の場合は、スペースは使えません。

4.ローマ字や数字を使用する場合の注意

大文字・小文字またはそれらを組み合わせたり、ローマ字と漢字やひらがななどを組み合わせて表記することができます。

また、「株式会社888」のように数字だけを使うこともできます。

株式会社は、「CO.,LTD」などと英語に直し、定款に記載することはできますが、そのまま登記はできません。

具体的には、「当会社は、株式会社◯◯と称し、英文では◯◯CO.,LTD.と表示する」と定款に表記することができますが、登記上は「株式会社◯◯」しか記載されません。

(目 的)
第2条  当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
1 ○○の経営
2 ○○事業
3 ○○及び○○販売
3 前各号に附帯する一切の業務

【絶対的記載事項】です。

設立する会社が何の事業を行おうとしているかが分かるように記載します。注意点としては①適法性②営利性③明確性④具体性があるかを基準に判断されます。

【適法性】・・・公序良俗や法律に違反していないかをチェックされます。例えば「犯罪の手伝い」などはもってのほかということです。

【営利性】・・・株式会社を設立するということは、事業活動によって得た利益を株主に分配するという営利目的があるはずです。ですので、堂々と「ボランティア」などという文言が入っていると、株式会社の事業目的としてはふさわしくないとみなされます。

【明確性】・・・事業の内容がよく分かるように記載します。長々と記載したり、難解な言葉を用いて理解され難い表現はやめましょう。

【具体性】・・・明確性に通じますが、何をやるかを分かりやすく書きましょうということです。例えば「世界平和への貢献」と書いても、具体的な内容が伝わってこないのでダメとなる恐れがあるということです。


事業目的の審査は、各登記官の裁量に大きく委ねられています。

現在は緩和されていて、一般的に分かりやすい内容であれば概ね通ると言われています。

例えば、以前は「LANケーブル」など、英単語表記について厳しかったものも、現在では広く認知されているものであれば、使用してもよいとされています。

とは言え、絶対的記載事項であり重要な項目であるので、事前にチェックを受けることを強くおすすめします。

各法務局では、登記に関する相談窓口がありますので、考えた事業目的を元に確認してみましょう。

その際は、まずは形をきちっと作っておくこと(相談窓口で一緒に考えてもらう、ということはできません)、そして必ず「管轄の」法務局に出向いてください。

既出のとおり、各登記官ひいては各法務局によって見解は違いますので、注意が必要です。

(本店の所在地)
第3条  当会社は、本店を○○県○○市に置く。

【絶対的記載事項】です。

どこに本店を置くのかを明瞭にします。

本店とは、その会社の主となる営業所のことです。登記上では、会社の「住所」を記載することとなっています。

その会社の住所は、本店の「所在地」にあるとされています。

会社の住所は、◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番◯号、のように詳細に登記をされますが、定款に記載する「本店所在地」は、最小行政区画(またはそれに準ずる地域)までの記載でよいとされています。

定款上は「◯◯県◯◯市」までのような記載でもよいということです。最小行政区画はその地域によって違いますので確認してください。

また、政令指定都市の場合は都道府県名を省略してもよいとされています。

例えば、「兵庫県神戸市」は政令指定都市なので、「神戸市」だけの記載でもよいです。

もちろん、省略せずに会社の住所のまま番地や号数まで書くこともできます。

ただし、将来、定款の内容に変更が生じた場合は、「定款変更に関する決議」として、株主の同意を得なくてはなりません。

例えば、「東京都港区」と記載した場合と「東京都港区赤坂2丁目3番5号赤坂ビル203」と記載した場合とでは、同じ赤坂ビル内の203号室から205号室へ移転した際には、後者の場合だと定款内容が変わってきますので、株主総会を開かなくてはなりません。

(公告の方法)
第4条  当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。

【任意的記載事項】です。

書いても書かなくてもという事項ですが、登記事項ではあるので、定款に記載がない場合は「官報に掲載する方法」と登記されます。

公告方法は3種類あり、官報に掲載する方法・日刊新聞に掲載する方法・電子公告を使う方法があります。

この中で、日刊新聞に掲載する方法もしくは電子公告を使う方法の場合には、定款にその旨を記載しなくてはなりません。記載がない場合は、上記の通り「官報に掲載する方法」を採用したと判断されます。

電子公告を採用する場合は、電子公告に障害が生じた場合を考慮して予備的公告を定めることができるとされています。

当社は電子公告を採用しますが、何かが起きて公告できない場合は官報に掲載します、というものです(官報に掲載するか日刊新聞に掲載するかは選べますが、「官報又は日刊新聞」と両方を記載することはできません)。

また、電子公告を採用するとだけ記載し、予備的公告の定めをしなくても構いません。

第二章 株 式

(発行可能株式総数)
第5条  当会社の発行可能株式総数は、○○株とする。

【絶対的記載事項】です。

会社が発行できる株式の上限を決めます。現在、多くの会社は株券を「不発行」に定めていますが、不発行の場合も必要な項目です。定めた上限を超えて、株券を発行することはできません。

また、発行可能株式総数は登記事項でもあります。

株券を発行する=資本金が増える=増資です。将来的に会社が軌道に乗り、資本金を増やすチャンスが訪れたとき、既に上限ギリギリまで株式を発行されている場合は、そのままでは増資手続きを行うことができません。

まずは、発行可能株式総数を変更し、上限をあげてからの増資手続きとなります。

登記変更となりますので、それぞれに登録免許税が必要になります。

それらを踏まえて、あらかじめ上限を高めに設定しておくほうがよいでしょう。

(株券の不発行)
第6条  当会社の株式については、株券を発行しない。

【相対的記載事項】です。

親族内で経営している会社など、多くの中小企業ではわざわざ株券を発行していないだろうという認識から、現在の会社法では、原則として株式会社は株券を「発行しない」ものとされています。

会社法では定款に記載がなければ、その会社は「株券不発行会社」とみなされます。

逆に株券を発行したい場合は、定款に株券を発行する旨を記載しなければ、その効力は発生しません。

不発行については、登記事項ではありませんが、株券発行会社である旨の定めは登記事項です。

(株式の譲渡制限)
第7条  当会社の発行する株式は、すべて譲渡制限株式とし、当会社の株式を譲渡により取得するには、当会社の承認を得なければならない。

【相対的記載事項】です。

株式(株主としての権利)が、自由に行き来できたとすると、会社にとっては望ましくない人が大株主として経営を掌握してしまう可能性が出てきます。

そういった事態を防ぐために、株式を譲渡するにあたっての制限を設定することができるようになりました。

そうして、譲渡又は譲り受けるためには、決まった機関の承諾をもらわなくてはいけないことを定めることができます。

原則は、取締役会を置かない会社(取締役会非設置会社)は、「株主総会」が承認機関であるとみなされています。

取締役会設置会社はもちろん、取締役会が承認機関です。

この承認機関は自由に設定することができ、例えば代表取締役の承認がなければ譲渡はできないと定めることもできます。

こういった場合は、定款に別段の定めとしてその旨を記載しなくては、効力は発生しません。

(株式の売渡し請求)
第8条  当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。

【相対的記載事項】です。

会社として望ましくない人が株主となることを防ぐために、株主譲渡に制限を付けたのが前条文の「株式の譲渡制限」です。

これは株券の売買などでは効力を発揮しますが、相続などで株式を一般継承する場合にはカバーしきれません。

こういった、相続などで株式を取得した人が新たな株主となることを防ぐために、その人に対して売渡しを請求できる条項となっています。

定款に記載がない限り、この効力は発生しません。ただし、売渡し請求ができる対象は、譲渡制限株式に限られています。

(株主名簿記載請求)
第9条  当会社の株式を取得した者は、その取得した株式の株主として株主名簿に記載又は記録された者又はその相続人その他の一般承継人と共同して、当該株式に係る株主名簿記載事項を株主名簿に記載又は記録することを請求できる。ただし、法務省令で定める場合は、株式を取得した者が単独で請求できる。

【任意的記載事項】です。

会社法においては、株式を取得した者が会社に対して、株主名簿に必要事項を記載することを請求できると規定されています。

その請求を行使できる要件は、法務省令によって規定されていて、株式を取得しても、その株式取得の承認を受けていないと、名簿の記載請求はできないとされています。

なお、株式会社は①株式を発行した場合②株主が株式を取得した場合③自己株式を処分した場合には、その株主の請求がなくても株主名簿に記載をしなくてはならないと規定されています。

(質権の登録及び信託財産の表示)
第10条  当会社の株式につき質権の登録又は信託財産の表示を請求するには、当会社所定の請求書に当事者が署名又は記名押印して提出しなければならない。その登録又は表示の抹消についても同様とする。

【任意的記載事項】です。

この条項では、登録質及び信託財産の表示に必要な手続きの定めを設定しています。

株式に質権を設定する方法には、「略式質」と「登録質」の2種類があります。

略式質とは、株主から質権者への株券の交付によって設定されるもので、登録質とは、その株券の交付に加えて質権者に関する事項を株主名簿に記載・記録をされるものです。

これらの手続き方法は、株券発行会社か株券不発行会社かによって異なりますので、条文もそれに合わせて変えることとなります。

上記条文例は、株券を発行しない会社用です。

(手数料)
第11条 前二条に定める請求をする場合には、当会社所定の手数料を支払わなければならない。

【任意的記載事項】です。

「株主名簿記載記載請求」及び「質権の登録及び信託財産の表示」にかかる費用を手数料として設定したものです。

「株券の再発行請求」に対しても適用できますので、「前◯条に定める~」と、条文の数に合わせて記載します。

株券を持たない申し出をした株主が、その後株券の再発行を請求した場合等には、費用は請求者が負担するものとしています。

(株主の住所等の届出)
第12条 当会社の株主及び登録株式質権者又はその法定代理人若しくは代表者は、当会社所定の書式により、その氏名又は名称及び住所並びに印鑑を当会社に届け出なければならない。届出事項に変更を生じたときも、その事項につき、同様とする。

【任意的記載事項】です。

会社法では、株式会社は株主名簿を作成し、それに株主の記録をしなくてはならないと定められています。

株主名簿に記録や質権の登録には、記載しなくてはいけないと法定されている事項があり、氏名・住所もそのひとつです。

本人確認も必要となるので、印鑑も届け出なくてはいけなく、このような手続方法を定めて記載しているのが、本条文です。

(基準日)
第13条 当会社は、毎事業年度末日の最終の株主名簿に記載又は記録された議決権を有する株主をもって、その事業年度に関する定時株主総会において権利を行使することのできる株主とする。
②  前項のほか、株主又は登録株式質権者として権利を行使することができる者を確定するために必要があるときは、取締役の過半数の決定をもって臨時に基準日を定めることができる。ただし、この場合には、その日を2週間前までに公告するものとする。

【相対的記載事項】です。

基準日を定めたときは、当該基準日の2週間前までにその基準日のときの株主が行使できる権利の内容などを公告しなければなりません。

ただし、定款に当該基準日における定めが記載されているときには、公告をしなくてもいいとされています。

このことから、基準日については、定款にあらかじめ規定を定め置いておくことが一般的とされています。

第3章 株 主 総 会

(招集及び招集権者)
第14条 当会社の定時株主総会は、毎事業年度の終了後3か月以内に招集し、臨時株主総会は、随時必要に応じて招集する。
② 株主総会は、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役社長がこれを招集する。取締役社長に事故若しくは支障があるときは、あらかじめ取締役の過半数をもって定めた順序により、他の取締役がこれを招集する。
③ 株主総会を招集するには、会日より3日前までに、書面投票又は電子投票を認める場合は2週間前までに、議決権を行使することができる各株主に対して招集通知を発するものとする。ただし、議決権を行使することができる株主全員の同意があるときは、書面投票又は電子投票を認める場合を除き、招集手続を経ずに開催することができる。
④ 前項の招集通知は、書面投票又は電子投票を認める場合を除き、書面ですることを要しない。

【任意的記載事項】です。

定時株主総会は、毎事業年度終了後に定められた時期に開催しなくてはいけません。

そのために、定時株主総会の開催の招集はいつなのか、どういった段取りで招集されるのかが記載されています。

本条は、定款記載事項ではないのですが、株主にとって、株主総会の開催・招集については重要な事柄であるので、定款内でその招集の具体的な時期を明らかにしておくことが一般的です。

招集地については制限がないので、どんな場所であっても株主総会を開催することができます。

逆に、招集地を定款記載事項にしてしまうと、招集地として選択できる幅が極端に狭くなるので、一般的には招集地についての規定は記載しません。

(議 長)
第15条 株主総会の議長は、取締役社長がこれに当たる。取締役社長に事故があるときは、あらかじめ取締役の過半数をもって定めた順序により、他の取締役が議長になり、取締役全員に事故があるときは、総会において出席株主のうちから議長を選出する。

【任意的記載事項】です。

株主総会における議長は誰にするかを記載します。

通常は、取締役社長もしくは代表取締役社長と規定しています。

議長となると定めた人が、病気ややむを得ない理由で議長となれない場合のために、予備的取締役を定めておくほうが良いとされています。

なお、やむを得ない事情を「事故があるとき」と表現します。「支障があるとき」と表現してもよいです。

(決議の方法)
第16条 株主総会の決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合を除き、出席した議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって行う。
② 会社法第309条第2項に定める決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上をもって行う。

【相対的記載事項】です。

株主総会は、定款に別段の定めを置かない限り、議決権を行使できる株主のうち議決権の過半数を有する株主が出席し、さらに出席したその株主の議決権の過半数をもって決議される、というのが会社法上の規定です。

しかし、定款で別段の定めができるので、通常の定足数を排除し、決議が成立しやすいようにオリジナルの規定を置くことが多いです。

また、特別決議については、まずその株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、さらに出席した当該株主の議決権の3分の2以上の多数が必要、というのが会社法の原則です。

しかしこれもまた、定足数を3分の1まで軽減し、決議がしやすいように決めている会社も多いです。

(総会決議の省略)
第17条 株主総会の決議の目的たる事項について、取締役又は株主から提案があった場合において、その事項につき議決権を行使することができるすべての株主が書面によってその提案に同意したときは、その提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。

【相対的記載事項】です。

株主総会で決定する事項は、株主総会を開いてその上で決議を取るのが大原則です。

しかし、株主数が少なく、その提案に対して議決権を持っている株主全員の可決が見込める場合は、株主総会をわざわざ開催することなく、書面又は電磁的記録によって、株主総会で決議を取ったとみなされることができます。

こうすることによって、多くの中小企業のような株主数が少ない会社では、決議を迅速に行えるメリットがあります。

そのためには、定款上に明記しておくほうがよいでしょう。

第四章 取締役及び代表取締役

(取締役の員数)
第18条 当会社の取締役は、○○名以上とする。

【任意的記載事項】です。

取締役会を設置するかどうかで員数は変わってきますが、ここでは多くの中小企業で見られる「取締役会非設置会社(取締役会を置かない)」についてを説明します。

会社法では、株式会社には取締役は必ず置かないといけないとされています。

公開会社ではなく、取締役会非設置会社である場合は、取締役は1名以上置くとされていますので、1名でも問題はありません。1名以上の取締役を置けば足りるので、定款で自由に人数を定めることができます。

「当会社の取締役は、1名以上とする」や「当会社は3名以内の取締役を置く」など、比較的自由に記載することができます。

(取締役の選任の方法)
第19条 当会社の取締役は、株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の過半数の決議によって選任する。
② 取締役の選任については、累積投票によらない。

【相対的記載事項】です。

取締役の選任については、株主総会の普通決議によります。通常は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数が出席し、その過半数の決議をもって行います。

しかし、会社は定款によって、選任決議の定足数を、議決権を行使できる株主の議決権の3分の1まで緩和することができます。

この定足数の軽減は、株主数が増加し議案の成立が困難になったときに意味を持ちます。

(取締役の任期)
第20条 取締役の任期は、選任後○年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
② 任期満了前に退任した取締役の補欠として、又は増員により選任された取締役の任期は、前任者又は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする。

【相対的記載事項】です。

取締役の任期は、原則として選任後2年以内と定められています(厳密に言えば、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する株主総会の終結の時まで)。

この任期は定款で短縮することもできます。

また、公開会社でない株式会社は、定款によって取締役の任期を選任後10年以内に伸長することができます。

任期伸長のメリットとしては、取締役改選にかかるコストの低減があります。

取締役は、任期が切れると全員が再任する場合であっても、重任登記をしなくてはなりません。

ですので、1人会社や同族会社等で、取締役の改選を頻繁にしなくてもいい場合は、最長の10年に任期を伸長している旨を定款に記載しておくほうが良いでしょう。

(代表取締役及び社長)
第21条 当会社の取締役が1名のときは、その取締役を代表取締役とし、取締役を複数名置く場合には、取締役の互選により代表取締役を1名定める。
② 代表取締役を社長とし、会社の業務を統轄する。

会社法では、役員の報酬や賞与、その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益については、その名目がなんであれ、定款の定めか株主総会の決議が必要であるとされています。 これは、取締役が自分たちの都合のいいように役員報酬などを決めることがないようにという観点からです。 またこれにより、役員報酬だけでなく、例えば、ストック・オプションの付与についても、株主総会での具体的な価額や内容を決めなければならないとされています。

(報酬等)
第22条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として当会社から受ける財産上の利益は、それぞれ株主総会の決議をもって定める。

会社法では、役員の報酬や賞与、その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益については、その名目がなんであれ、定款の定めか株主総会の決議が必要であるとされています。

これは、取締役が自分たちの都合のいいように役員報酬などを決めることがないようにという観点からです。

またこれにより、役員報酬だけでなく、例えば、ストック・オプションの付与についても、株主総会での具体的な価額や内容を決めなければならないとされています。

(報酬等)
第22条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として当会社から受ける財産上の利益は、それぞれ株主総会の決議をもって定める。

会社法では、役員の報酬や賞与、その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益については、その名目がなんであれ、定款の定めか株主総会の決議が必要であるとされています。

これは、取締役が自分たちの都合のいいように役員報酬などを決めることがないようにという観点からです。

またこれにより、役員報酬だけでなく、例えば、ストック・オプションの付与についても、株主総会での具体的な価額や内容を決めなければならないとされています。

第五章 計 算

(事業年度)
第23条 当会社の事業年度は、毎年○○月○○日から翌年○○月○○日までの年1期とする。

【任意的記載事項】です。

決算期をいつにするかを記載しています。

事業年度は1年を超えることができません。

多くの会社で見られる、3月末決算を採用する場合は、その会社の事業年度は最長で「毎年4月1日から翌年3月31日まで」となります。

1年を超えなければ、決算期を短期間で何度も迎えることもできますが、その都度決算報告をしなくてはいけませんので、1人会社等ではそれは意味がなく、最長の1年で設定するケースがほとんどです。

事業年度の終期が2月にする場合は、「毎年3月1日から翌年2月28日まで」としてしまうと、うるう年の対応ができません。

記載は「毎年3月1日から翌年2月末日まで」とするようにしましょう。

また、1月1日を事業年度の初めとする場合は、「翌年12月31日まで」とすると1年を遥かに超えてしまします。記載は「毎年1月1日から同年12月31日まで」としましょう。

(剰余金の配当)
第24条 剰余金の配当は、毎事業年度末日現在における最終の株主名簿に記載又は記録された株主又は登録株式質権者に対して行う。
②  剰余金の配当がその支払提供の日から満3年を経過しても受領されないときは、当会社は、その支払義務を免れるものとする。

会社法では、株式会社が株主に対して行う配当のことを「剰余金の配当」としています。

これは旧商法での「利益の配当」にあたるものです。会社の純資産が300万円を下回る場合は、剰余金の配当はできません。

また、1事業年度中に何度でも配当を行うことができます。

そういった剰余金の配当について規定している事項がある場合は定款に記載します。

第六章 附 則

(設立に際して発行する株式)
第25条 当会社の設立に際して発行する株式の数は、○○株とし、その発行価額は、1株につき金1万円とする。

旧商法では絶対的記載事項とされていた「設立に際して発行する株式」ですが、会社法では定款の絶対的記載事項とはされていません。

しかし、設立までに出資が行われない株式については、権利が無くなるとされています。

発起人の人数が多くなく、もしくは1人会社の場合は、発行株式数(出資額)が設立準備途中で変わることはほぼありませんので、あらかじめ定款に記載しておくほうがより良いでしょう。

(設立に際して出資される財産の価額及び資本金)
第26条 当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金○○万円とする。
② 当会社の成立後の資本金の額は、金○○万円とする。

【絶対的記載事項】です。

必ず記載しなくてはなりません。

各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を必ず1株以上引き受けなければなりません。

設立時発起人は、その会社が設立したあとは株主となります。

各発起人が出資した金額が、設立後その会社の資本金となります。

1株以上の引受けが条件ですので、1株=1円と設定し、資本金1円の会社を設立することもできますが、対外的に見ても1円会社というものは信用度が低いですのでお勧めではありません。

(最初の事業年度)
第27条 当会社の最初の事業年度は、当会社成立の日から平成○○年3月31日までとする。

設立をして最初の決算日を記載します。第23条の事業年度を、毎年4月1日から翌年3月31日までと設定したとしましょう。

本条の最初の事業年度は平成29年3月31日と設定します。

仮に、設立予定が大幅に遅れ、実際に設立登記ができたのが平成28年12月1日だとしても、最初の決算を平成29年3月31日に迎えることとなります。

設立から実質4ヶ月しか稼働していなくても、決算を迎えれば確定申告を行わなければなりません。事業年度は1年を超えることができませんので、第23条と併せて本条を設定してください。

(最初の事業年度)
第27条 当会社の最初の事業年度は、当会社成立の日から平成○○年3月31日までとする。

設立をして最初の決算日を記載します。第23条の事業年度を、毎年4月1日から翌年3月31日までと設定したとしましょう。

本条の最初の事業年度は平成29年3月31日と設定します。

仮に、設立予定が大幅に遅れ、実際に設立登記ができたのが平成28年12月1日だとしても、最初の決算を平成29年3月31日に迎えることとなります。

設立から実質4ヶ月しか稼働していなくても、決算を迎えれば確定申告を行わなければなりません。事業年度は1年を超えることができませんので、第23条と併せて本条を設定してください。

(設立時取締役)
第28条 当会社の設立時取締役は、次のとおりとする。
設立時取締役  法務 太郎

発起人は、出資の履行が完了した後、遅れることなく、設立時取締役等を選任しなくてはなりません。

設立時取締役等の選任は、発起人の議決権の過半数をもって決定します。

ただし、定款に設立時取締役を記載することができ、その場合には、出資の払い込みが完了した時点で、設立時取締役等に選任されたものとみなされます。

よく誤解されていることですが、発起人=取締役ではありません。

経営(株主)と実際の営業指揮(取締役)とが分かれていることが、株式会社の特徴といってもいいでしょう。

ですので、設立時に出資金を払い込んだ人(発起人)が、設立後当然に取締役になるとは限りません。発起人は、会社設立後はあくまで株主になるだけです。

また、出資をしていない人が取締役に就任することもできます。

もちろん、1人会社のように、出資をしながら自身が取締役となることも問題ありません。

取締役は登記事項として、氏名が登記簿に記載されることに対し、発起人=株主はいくら出資をしたとしても、登記事項ではありませんので登記簿に氏名等が記載されることはありません。

(発起人の氏名、住所、引き受け株式数等)
第29条 発起人の氏名、住所、発起人が割り当てを受ける株式数及びその払込金額は、次のとおりである。
○○県○○市○○町○丁目○番地
発起人 法務 太郎 ○○株 金○○万円

【絶対的記載事項】です。

設立にあたり、誰が発起人となるか、その人の氏名と住所を必ず記載します。また、その発起人がいくら出資をし、その出資に対して株式はいくら割り当てられるかも記します。

発起人の中に現物出資をする人がいれば、払い込む金銭の額と、現物出資をすることを記載し、出資をする物資を書き入れます。

また、その出資をする物資に500万円を超える価額をつける場合には、本当にその価値があるのかどうかを調査する必要があり、相当であることについて検査役の鑑定評価を付けなくてはなりません。

検査役になれるのは、弁護士・弁護士法人・公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人です。

現物出資の場合は、出資財産が特定できるように記載しなくてはなりません。

自動車を出資するのであれば、その自動車のメーカーや車種・形式番号・車体番号等を詳細かつ正確に書きましょう。

(法令の準拠)
第30条 この定款に規定のない事項は、すべて会社法その他の法令に従う。

いよいよ定款条文の最後です。

法人は全て会社法に則っています。定款に記載がなければ、会社法の原則に従うことになるので、会社オリジナルの規定を設定するのであれば定款にきちんと書いておかなければなりません。

ただし、内容が無茶苦茶なものは、定款認証自体を受けることができません。

必ず、定款認証を受ける前に、公証役場での事前チェックをしてもらいましょう。

以上、株式会社○○○商事の設立に際し、この定款を作成し、発起人が次に記名押印する。
平成○年○月○日
発起人 ○○ ○○ 印

定款最終末尾の文言になります。定款の作成人、署名人欄です。上記は紙定款用の文言にあります。発起人の氏名の横に個人の実印で押印します。

電子定款でかつ行政書士に依頼吸う場合は、上記の以上に続いて、「以上、株式会社○○○商事の設立に際し、発起人法務太郎の定款作成代理人である行政書士○○○○は、電磁的記録である本定款を作成し、電子署名をする」となります。

また、発起人欄の下には、行政書士の氏名・事務所の所在地、登録番号などが記載されることになります。定款の作成を専門家に依頼される場合は参考にしてください。

なお、定款の作成日が抜けていることがしばしばあります。

会社を設立する際には、定款の作成が何をおいても最初の行動となります。

出資金の払い込み日が、定款作成日より前になっていると無効です。同日で設定することは可能です。会社の基礎となるものが定款です。最後まで気を抜かず、きちんと記載しましょう。

 

 

株式会社の定款【絶対的記載事項】

絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項をいい、その記載がなければ、定款全体が無効となってしまいますので注意が必要です。

定款の作成にあたっては、絶対的記載事項の他にも、後述する【相対的記載事項】、【任意的記載事項】なども考慮する必要があります。お時間のある方は、下記ページも参考にしてください。

それでは、【絶対的記載事項】から順に見ていきましょう。

定款関連ページ→電子定款代行コム

絶対的記載事項(会社法27条)
目的 会社の事業目的を記載します。将来、行う予定のある事業もあれば合わせて記載しましょう。→ 会社定款の事業目的検索(サンプル・記載例・ひな型)はこちら
商号 商号とは、会社の名称のこと。商号の選定は原則として自由ですが、商号中には「株式会社」という文字を用いなければなりません。同一の本店所在場所において、既に登記された商号と同一の商号を登記することはできません。
本店の所在地 本店の所在地…最小行政区画(東京23区については区まで)までを記載しなければなりません。もちろん、定款に全ての住所を記載することも可能です。
設立に際して出資される財産の価額又はその最低額 株数ではなく、出資財産額又は最低額を記載します。基本的にはこの価額が株式会社設立時の「資本金」になります。資本金についてはこちらも参考にして下さい。
発起人の氏名又は名称及び住所 発起人の氏名又は名称、住所を記載します。印鑑証明書の氏名、住所と一言一句違わないように記載しなければなりません。一般の方が自分で定款を作成するときに一番ミスをおかしやすい項目です。発起人は法人でもOKです。
発行可能株式総数 発行可能株式総数については、定款認証時に定めておく必要はありませんが、定款に定めない場合は、会社の成立のときまでに、
発起設立→発起人全員の同意により
募集設立→創立総会の決議により
定款を変更してその定めを設けなければなりません。
※設立時発行可能株式総数は、非公開会社の場合を除き、発行可能株式総数の4分の1を下回ることはできません。

株式会社の定款【相対的記載事項】

相対的記載事項とは、定款に記載しなくとも定款自体の効力は有効であるが、定款に定めがないと、その事項の効力が認められないものを言います。※相対的記載事項は、下記以外にも多数あります。

相対的記載事項(会社法28.29条)
変態的記載事項 (1)現物出資(金銭以外の財産である出資のこと)
(2)財産引受(発起人が会社のために会社成立を条件として特定の財産を譲り受ける旨の契約のこと)
(3)発起人の報酬、特別利益
(4)設立費用の求償
通常の会社は2~4の記載はほぼ必要ありません。1の現物出資については規制緩和で手続きも簡素化されていますので、活用する会社が増えています。株式会社は金銭だけでなく、現物での出資も可能です。
株式の譲渡制限に関する定め 全ての株式又は一部の種類の株式について、その譲渡に会社の承認を必要とする形で株式の譲渡を制限する旨を定款で定めることができます。一部の大企業を除き、大半の中小企業は株式譲渡制限規定を置きます。
取得請求権株式に関する定め 株主がその株式について、会社に取得(買取り)を請求できる株式に関する定め
取得条項付株式に関する定め 一定の事由が生じた場合に、株主でなく会社側が取得件を有する株式に関する定め
株券発行の定め 株券の不発行が原則であり、株券を発行する会社は定款で定める必要があります。
基準日 基準日を定めたときは2週間前までに当該基準日及び株主が行使することができる権利の内容を公告しなければなりませんが、定款に基準日と当該事項の定めがあれば、公告は不要となります。
取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、委員会、代表取締役の設置 これらの機関は、定款に定めれることにより、設置できます。
取締役等の任期の短縮 取締役の任期は、選任後2年以内に終了する最終の事業年度に関する定時株主総会の終結時までですが、定款で短縮することができます(会計参与についても同じ)。
取締役等の任期の伸長 公開会社でない株式会社の取締役の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時総会の終結のときまでに伸長が可能です(会計参与についても同じ)。同族会社、家族経営の株式会社は10年に伸ばすことで重任登記の回数を減らすことができます。
監査役の任期の伸長 公開会社でない株式会社の監査役の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時総会の終結のときまでに伸長が可能です。
取締役会の招集通知期間の短縮 取締役会の招集通知は、1週間前に発しなければなりませんが、定款で短縮が可能です。
取締役会の決議の省略 取締役が決議の目的である事項について提案した場合において、取締役の全員が書面又は電磁的記録により同意を意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款に定めることができます。
役員等の責任の軽減に関する定め 会社法423条1項に基づく役員等の会社に対する責任(同法428条1項の場合を除く)を株主総会決議により軽減するほか、取締役会決議により責任の軽減をすることができる旨を定めることができます。
剰余金配当の定め 取締役会設置会社は、事業年度の途中において、1回に限り取締役会の決議により、配当財産が金銭であるものに限り剰余金の配当(中間配当)をすることができる旨を定款に定めることができます。
公告の方法 公告の方法については、次のいずれかを選択できます。
(1)官報に掲載する方法
(2)時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
(3)電子公告
※定款で公告方法を定めないときは、官報に掲載する方法となります。官報が一般的です。電子公告の方法を取る場合は、URLの登記が必要になります。

株式会社の定款【任意的記載事項】

定款には、上記2つの記載事項以外に、公序良俗または会社の本質に反しない限り、いかなる事項でも定めることができます。事業年度定時株主総会などがこれに当たります。

定款外で定めてもよい事項ですが、定款に盛り込むことで内容が明確になります。