【起業家向け】株式会社の労災保険加入手続きと保険料納付の注意点

労災保険(労働者災害補償保険)とは、業務上または通勤上の事故や業務に関連した傷病や障害、死亡に対する補償をする保険です。

労災保険は従業員にとって必要なのはもちろん、事業主のための保険とも言えます。

万が一、業務上において重大な事故が起こった場合など事業主には抱えきれない大きな損害賠償責任が問われます。

そのため、労災保険に加入することで国が事業主に代わって補償してくれるのです。

そして、労災保険への加入は従業員だけでなく、中小企業等の事業主は特別加入ができます。

雇用保険とともに労働保険として、一括して手続きができることも起業をする上で知っておくべき知識となります。

そんな労働者のための保険である労災保険について、詳しく見ていきましょう。

目次(もくじ)

  1. 労災保険の基礎知識
    →労災保険の保険料について
    →社長は労災保険には入れないのか?
  2. 労災保険加入手続き
  3. 保険料の計算方法
  4. 保険料納付の注意点
  5. まとめ

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1. 労災保険の基礎知識

働く人にとって、必要な保険の一つに労災保険(労働者災害補償保険)があります。

この労災保険は政府が管掌する保険であり、労働者を一人でも使用する事業は適用事業となります。

労災保険の補償内容は業務に起因するケガや病気・通勤中の負傷疾病について保険給付を行い、治療に対する補償を始め、休業中の賃金も労災保険から支払われます。

もしも、ケガや病気により障害が残った場合には、障害補償年金の給付があります。

万が一、従業員が死亡した場合には葬祭にかかる費用も給付され、遺族に対する遺族補償年金もあります。

このように労災保険は労働者にとって手厚い補償があり、なくてはならない保険と言えます。

労災保険は通常パートやアルバイトを含めたすべての全従業員が対象となります。賃金の支払いを受ける人全てが加入対象となります。

社会保険と違い、日雇いなどの雇用形態によって適用が除外されることはありませんので、注意が必要です。

労災保険の保険料について

保険料は、従業員全員に支払われた賃金総額に対して業種ごとの労災保険率を乗じて、労災保険料を計算します。

労災保険料率は業種ごとの細かく区分されていて、平成28年度は2.5/1000から88/1000までの保険料率で、年度ごとに改正されます。

社長は労災保険には入れないのか?

通常、個人事業主や株式会社の代表者が労災保険に加入することはできません。しかし、特別に労災保険に加入する方法として、特別加入の制度があります。

中小企業の事業主は原則300人以下(卸売業・サービス業が主たる事業は100人以下、金融業・保険業・不動産業・または小売業が主たる事業は50人以下)の労働者を使用する場合、事業主とその家族従事者が特別加入できます。

特別加入の保険料は実際の賃金額に対して計算するのではなく、その人の所得水準に見合った額を申請しますので、一般の被保険者とは保険料の計算方法が異なります。

そして、中小企業事業主の特別加入制度は、必ず労働保険事務組合への労働保険事務処理委託をしておくという条件があります。

労働保険事務組合は、事業主の労働保険事務処理を円滑化するために設けられた民間の組織です。

都道府県労働局長の認可を受けた商工会議所や協同組合・社会保険労務士事務所などが該当します。

全国各地にある労働事務組合に、一定の会費を支払い加入すると、保険給付の請求など以外のほとんどの労働保険手続きを代行してくれます。

株式会社において労災保険への加入は必須で、労使折半の社会保険料とは異なり、保険料は全額会社負担となります。

従業員を一人でも雇っていれば、適用事業所となり事業が開始された日において保険関係は成立したとみなされます。

社会保険などでは被保険者である従業員一人ひとりに番号が与えられますが、労災保険においては事業所単位での管理となり労働者ごとの加入手続きは不要です。

2. 労災保険加入手続き

労災保険は雇用保険と合わせて、労働保険と呼ばれます。

事業の内容によって、手続きにおいても一つにまとめて処理できる仕組みになっています。

労災保険と雇用保険の保険料の申告や納付などをまとめて行える事業を一元適用事業といい、多くの事業がこちらに該当します。

まとめることのできない二元適用事業には農林漁業や建設業、港湾の運送業などが該当します。二元適用事業以外の事業は一元適用事業となります。

どちらの事業も労災保険は、事業を開始して一人でも従業員を雇えば保険成立となります。

この日から10日以内に所轄労働基準監督署に「労働保険保険関係成立書」を提出する必要があります。

株式会社の場合には、「法人の全部事項証明書(法人登記謄本)」などの添付した上で提出します。これにより労働保険番号が与えられます。

加入手続きとともに、最初の保険料の納付が必要です。こちらは事業開始後50日以内の納付が必要となります。

「労働保険概算保険料申告書」を作成し、所轄都道府県労働局や銀行、郵便局などに納めます。一元適用事業の場合には、所轄労働基準監督署でも可能です。

3. 保険料の計算方法

労働保険には成立年度以降、毎年保険料の支払いを4月1日から翌年の3月31日までを保険年度とします。

労災保険と雇用保険にはそれぞれ異なる保険料率が事業ごとに定められていて、従業員全員の賃金にその保険料率をかけて労働保険料となります。

そして1年分の保険料を一旦概算払いしておいて、翌年差額を精算します。それと同時に、また次の年度分を概算払いするという方法で繰り返されます。

つまり新規事業を立ち上げ時、または年度始めにおいて、これから1年間に従業員に支払う賃金を予想して概算保険料を支払います。

そして保険年度終了後には確定保険料として計算し、前年の実際に支払った賃金で計算した保険料と概算保険料の差額を納付または控除して今年度の概算保険料を納める形になります。

これを労働保険の年度更新といい、毎年6月1日~7月10日の間に行わなければなりません。

年度更新の時期が近づくと送られる「労働保険概算・確定保険料申告書」によって届出、保険料を納付します。

4. 保険料納付の注意点

さらに、労働保険料には概算保険料から実際に確定保険料の差額があまりに大きい時に納める増加概算保険料があります。

特に株式会社を新規で立ち上げ、予想よりもかなり賃金が多く発生した場合、年度の途中で増加概算保険料を納めることは翌年の保険料の増加と差額の支払いを一度に行わずに済ますために必要です。

増加概算保険料は、保険年度の途中で、賃金総額が見込み額の2倍を超えて増加し、かつ13万円を超える増加額がある場合に納めます。

期日までに申告書を提出しない場合や保険料に誤りがある場合には、政府から認定決定を受け、通知されます。

労働保険は手続きを怠ると、延滞金が課せられることがあります。万が一保険料を延滞中に事故が発生し給付を受けると、災害給付の一部において事業主負担を求められることがありますので納期を守るようにしましょう。

種類 概算保険料 増加概算保険料 認定決定概算保険料
200/100を超え、かつ130万円以上の差額 ①期日まで提出しない場合
②誤りがある場合
納期 6/1から40日以内に納付 増加が見込まれた翌日から30日以内に納付 通知受けた翌日から15日以内に納付
中途成立は成立翌日~50日以内
方法 概算保険料申告書 増加概算保険料申告書 納付書

5. まとめ

このように労災保険を含む労働保険料の保険料計算は、複雑な部分が多くあります。

株式会社を起業する場合には、厚生労働大臣の認可を受けた労働保険事務組合への加入も検討すべきだと思います。

事務組合に委託すれば、中小企業の事業主であれば事業主自身が労災保険に特別加入することができるというメリットがあります。

また、労働保険料は原則一括での納付ですが、条件をみたせば3期に分けて延納することもできます。

延納の条件は概算保険料が40万円以上(労災保険のみ適用事業なら20万円以上)と厳しいですが、労働保険事務組合に処理を委託している場合は保険料額にかかわらず延納が可能です。

専門家に委託することも検討しながら、労災保険についての知識を深めていってください。