融資申請で「粉飾決算」はなぜNGなのか?
【目次(もくじ)】
- はじめに
- 1.銀行が粉飾決算を知ったらどうなるのか?
- 2.絶対NG粉飾決算!ところで、粉飾決算って具体的にどんなことをするの?
- 3.粉飾スパイラルに陥らないためには?
- まとめ:いい専門家(税理士)といい関係を築くのが一番の対策
はじめに
とある大手電機メーカーが長年にわたり不正会計を繰り返していたことが原因で、経営の危機に瀕しています。
粉飾決算も不正会計の一種です。
そのため、何となく「融資の申請において粉飾決算はいけない」とお分かりの方が大半だと思われますが、「なぜいけないのか」は理解していらっしゃいますか?
一言でまとめれば、「関係が悪くなるから」です。
これだけだと簡単すぎるので、その理由と押さえていただきたい知識を徹底解説します。
1.銀行が粉飾決算を知ったらどうなるのか?
銀行が企業の粉飾決算を知った場合、どうなるのかという話から始めてみましょう。
新規融資を断られる
最初に銀行がとる対応は、新規融資を断ることです。
また、粉飾決算が理由で新規融資を断られた場合は、他の銀行でも新規融資を申し込めなくなる可能性が高いでしょう。
一括返済させられる
「新規融資を断る=これ以上の付き合いはしたくない」という意味でもあるので、「今まで貸していたお金も、耳を揃えて返してね」という発想になるはずです。
つまり、一括返済を求めてきます。金額にもよりますが、会社の資金繰りに大きな影響が及ぶでしょう。
損害賠償請される
顧問税理士が「粉飾決算をすれば、融資の申請に通るかもしれない」というアドバイスをしている場合だってあります。
この場合、税理士にも損害賠償が求められるのは珍しくありません。
刑事告訴される
最悪のケースも考えておきましょう。
「粉飾決算を行った上で融資の申請を行う」を、小学生でもわかるくらい簡単な言葉に置き換えてみましょう。
「嘘をついてお金を借りる」ことです。
つまり、銀行をだまして融資を引き出していることになるのだから、詐欺罪が成立します。
刑事告訴にまで及んでしまうと、会社経営を続けていくのはまず不可能です。
2.絶対NG粉飾決算!ところで、粉飾決算って具体的にどんなことをするの?
融資申請における粉飾決算の場合、様々な手法を使って利益を水増しし、「この会社は利益をあげている」と思わせるパターンがほとんどです。
比較的多用される手法を4つあげてみました。
期末在庫の調整をする
利益を多めに計上するために、期末在庫を実際の数量より多めにあることにする手法です。
会社が商品・製品を仕入れた場合、まずは費用(=仕入)として計上します。
そこから別の会社に売った場合、収益(=売上)が得られ、実際に売った商品・製品が売上原価となり、その差額が利益になる仕組みです。
期末数量を多めに計上すれば、売上原価は低くなるので、利益が増すというロジックを想定してください。
収益費用の計上時期を故意にずらす
わかりやすい例として、会計において、費用は発生した時期に計上するのがルールです(=発生主義)。
その期に属しない費用は、未払費用として計上しなくてはいけません。
しかし、未払費用の計上時期を故意にずらして、今期に認識される費用の額を調整することで、利益の額を調整する手法を用いるケースがあるのです。
もちろん、銀行の融資担当者は未払費用の内訳書を見て計上の妥当性をチェックしているので、かなりの確率で見破られます。
前期損益修正損を計上する
前期損益修正損を計上する、ということは、「本来前期の利益からマイナスすべきであったものを、今期に計上している」という意味です。
これを計上したからと言って、必ず粉飾決算をしているわけではないのですが、計上していた場合は融資担当者のチェックが厳しくなるので気を付けましょう。
表示方法を安易に変更する
これも必ず粉飾決算に結び付くわけではありませんが、表示方法を変更した場合、やはり融資担当者のチェックがよくなります。
わかりやすい例として、不動産業者を考えてみましょう。
不動産業者の場合、販売用の物件は流動資産、自社使用物件(自社ビルなど)は固定資産として区分します。
当然、固定資産を場倍したときの損益は特別損益勘定として扱いますが、会社としての売上を多く見せるために、販売収益を売上に、原価を売上原価に計上するケースもあるのです。
融資担当者にはすぐに見破られると思っていてください。
3.粉飾決算による不正融資から抜け出すためには?
粉飾決算が悪いのはお分かりいただけたかと思います。
しかし、もっと怖いのは粉飾決算による融資に頼り切ってその状況から抜け出せなくなることです。
先ほどご紹介した以外にも、粉飾決算を行うためのスキームはたくさんあります。
中には、ベテランの融資担当者にも見破れないくらい複雑なものも存在するのです。
スキームを駆使すれば、融資を受けられ続けますが、粉飾決算をして上乗せした実態のない利益もどんどん膨らみます。
しかし、見破られた場合、どうなってしまうでしょうか?
上乗せした実態のない利益と膨大な額の借入金が残ってしまうだけです。
自社の体力・実力以上の資金調達を行って良いことなど一つもありません。決算を粉飾して借入を行うくらいならリスケジュールを行うべきです。
ここから会社を立て直すのは相当難しくなります。
まとめ:いい専門家といい関係を築くのが一番の対策
こんな事態を招かないためにはどうすればいいのでしょうか?
まずは、粉飾決算をしなくて済む環境を作り上げるのが大事です。
そのためには、粉飾決算に頼ることなく、合法的な方法で会社経営をサポートしてくれる税理士などの専門家と、いい関係を築き上げていくのが一番大事になります。
もし、「粉飾決算でもしないと融資に通らない」と思ったなら、まずは税理士に相談しましょう。
資金調達に精通したちゃんとした税理士なら、的確なアドバイスをくれるはずです。
税金を滞納するとどうなる?
日本人の義務のひとつに「納税の義務」があります。
税金は国や地方自治体が円滑に活動するうえで原資となるお金であり、日本の犯罪のなかでも適切な税金を納付しない「脱税」は厳しい罰則が定められています。
1、税金の滞納することへの罰則
脱税は刑法への違反行為、すなわち刑事事件になります。所得税法(個人)や法人税法(法人)にもとづき「5年以下の懲役」または「500万円以下の罰金(両方併科あり)」が課せられます。
そして脱税へのペナルティはこれだけではなく、延滞税と加算税が合わせて課せられます。
(1)延滞税
本来の税金の納付期限を超過したことによるペナルティとしての税金です。
本来の期限からどれくらい遅れたかによって延滞額の増す、利息としての側面があります。
利息額はとても高く、7.3%から14.6%という高額のペナルティがかかります。
特に延滞していた金額が高い場合は、1日でも早く返済の意思を表明するようにしましょう。
期限内申告をした場合において、法定申告期限後1年以上経過して修正申告または更生があった場合は、法定申告期限後1年を経過する日の翌日から修正申告書を提出した日までの期間(または更生通知書を発した日までの期間)は、延滞税の計算期間から除外します。
(2)加算税
自分で自首せずに、税務署の調査によって税金滞納が発生してしまった場合は、(1)の延滞税に加え、加算税が請求されます。加算税は1種類ではなく、以下に区分されます。
無申告加算税
申告書を申告期限までに提出しなかった場合に課せられる税金です。
納付すべき税額に対して50万円までは15%、50万円を超える場合は20%の割合を乗じて計算した金額となります。
なお、自主的に期限後申告をした場合には、5%の割合を乗じて計算した金額に軽減されます。
過少申告加算税
申告期限に提出された申告額が過少だった場合、課せられる税金です。
新たに納めることになった税金の10%相当額が課せられます。
ただし新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%相当額となります。
あまりに現実と乖離した税額を申告している場合は、更に強いペナルティを求めるというものですね。なお、自主的に過少申告をする場合は、過少申告加算税はかかりません。
不納付加算税
納付期限まで源泉徴収税を納付しなかった場合に課せられる税金です。納付すべき税額に対して10%の割合を乗じて計算した金額となります。
ただし、税務署からの指摘を受ける前に自主的に納付した場合は税率が5%に軽減されます。
なお、納付期限から1月を経過する日まで納付し、過去1年以内において納付期限内に源泉所得税を納付している場合は、不納付加算税は課税されません。
重加算税
申告を隠蔽した場合は、無申告加算税、過少申告加算税、不納付加算税に代わって課税されます。
仮装にもとづいて故意に過少申告を行った場合も、この重加算税が課税されます。
過少申告加算税に代えて課す場合は、新たに納めることになった税金の35%相当額が課せられます。
不納付加算税に代わる場合は、納付すべき税額に対して35%の割合の乗じて計算した金額となります。
また、無申告加算税に代えて課す場合は、納付すべき税額に対して40%の割合を乗じて計算した金額となります。
それでは、ここまでの数字をまとめましょう。
<加算税 税率一覧表>
税名 | 内容 | 税率 |
---|---|---|
無申告加算税 | 自主的な期限後申告 | 5% |
納税額のうち、50万円までの部分 | 15% | |
納税額のうち、50万円を超える部分 | 20% | |
過少申告加算税 | 自主的な修正申告 | なし |
追徴税額と50万円のいずれか多い金額までの部分 | 10% | |
追徴税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分 | 15% | |
不納付加算税 | 納付期限から1月を経過する日まで納付し、 過去1年以内において納付期限内に源泉所得税を納付している場合 |
なし |
自主的な納付 | 5% | |
税務署からの告知を受けての納付 | 10% | |
重加算税 | 過少申告加算税に代えて課す場合 | 35% |
不納付加算税に代えて課す場合 | 35% | |
無申告加算税に代えて課す場合 | 40% |
※ 各種加算税が5,000円未満の場合は納付義務がありません。
2、重加算税の適用を避けることがポイント
税金の滞納において避けなければいけないポイントは、重加算税の適用を避けることがポイントです。
そのためには、税金の滞納という事実が発生した時点で、急ぎ税務署に相談するようにしましょう。
特に母数となる課税対象額が大きい場合は、過少申告加算税と重加算税間で税額が10%異なる場合、影響力は格段に異なります。
また、いわゆる「故意の税金滞納」を避けることも重要なポイントです。故意の滞納は重加算税の適用に繋がるため、顧問税理士などと相談しながら定期的に納税のタイミングを確認し、支払っていくことが大切です。
滞納を続けていると厳しい「差し押さえ」が待っている。
税務署は、裁判所などを通さずに直接、財産の差し押さえができます。
現金・預金・不動産・動産・保険金・売掛金など全ての財産を問答無用で差し押さえることができるのです。
金融機関からの借入を行っている場合、取引口座を差し押さえられてしまったら、当然ですが滞納の事実が銀行に知られてしまいます。
以後の取引停止・新規融資不可でも十分にキツイですが、それよりも厳しいのが、すぐに資金の回収に動かれてしまうことです。
ただでさえ税金を滞納している状態で、銀行に資金を回収されてしまうと、即倒産です。
売掛金を差し押さえられた場合も当然、取引先にはそのことがバレます。信用を失いますね。
取引縮小で済めば良いですが、取引停止もあり得ます。以後の売上減少は確実です。更に資金繰りが悪化して倒産の憂き目に遭うでしょう。
もし、督促状や差し押さえ通知が税務署から届いた場合、絶対に無視をしてはいけません。
誠実に対応して、一括で支払えないのであれば分割での支払いが可能かどうかを頭を下げてでも交渉してみましょう。顧問税理士さんがいらっしゃるのであれば正直に打ち明けて一緒に対策を練ってもらいましょう。
社会保険料を滞納するとどうなる?
社会保険は、いくつか種類があります。
多くは「健康保険」と「厚生年金保険」を合わせて社会保険と呼ばれていますが、広義の意味では「労災保険」「雇用保険」も合わせた4種類が社会保険と呼ばれています。
社会保険は、原則すべての事業所が加入しなければならず、法人であれば労働者数に関係なく必ず加入が必要です。
労災保険と雇用保険は労働者を雇っていない場合は加入する義務はありませんので、ここでは「健康保険」と「厚生年金保険」を合わせたものを「社会保険」といいます。
社会保険料は例え会社が赤字であっても必ず支払わなければなりません。
会社にとって軽くない負担ですが、決められた金額は絶対に納付しなければなりません。
納付期限までに納付しなかった場合は、電話で納付督励されたり、年金事務所の職員が会社に訪問して完納を勧められます。
督促されてもなお納付しなかった場合は、督促状が送付され、指定期限日までに完納しないときは延滞金が科せられます。
一度滞納すると次月の保険料がまた遅延するという悪循環に陥ります。
督促状が送付されても支払う意思を示さない場合、最悪、会社の財産が差押えられます。
年金事務所では「納付計画」を合意することによって、分割納付や納付猶予をしてくれることもありますので、督促状が届いたらすぐに年金事務所に相談に行くことをお勧めします。
年金事務所も通常は納税者からの自主的な納付を推奨しますので、まずはきちんと相談に行きましょう。
督促を無視すると年金事務所は法律に従って差押えするしか方法がなくなります。
近年、差押え処分をされる事業所が増加しています。思っている以上に多くの事業所が差押えの処分をされていますので、「まさか差押えまでされる事はないだろう」という考えはもたない方が良いでしょう。
なお、年金事務所に相談したからといって社会保険料が無くなることはありませんので、万が一支払いができない場合は早めの相談を心がけてください。
<滞納処分の流れ>
1.納付期限に納付がない
↓
2.納付督励:電話・戸別訪問・文書による納付督励
↓
3.督促状の送付:指定期限までに納付しない場合は滞納処分が開始される
↓
4.滞納処分開始
(1)納付督励
(2)差押予告
(3)財産調査
(4)差押え・換価
<差押えの対象となる財産の例>
- 現金
- 預金口座
- 自動車などの動産
- 土地や建物などの不動産
- 有価証券
- 売掛金
- 保険金
督促状の発送から10日以内に保険料を完納できない場合は、滞納処分が開始されます。
つまり、10日以内に何もしない場合、自動的に差押えが開始されます。会社の預金口座を差押えられたり、売掛金を差押えられると取引先に知られる事になりますので、今後の取引に影響が出たり、事業を続けていくことが困難になります。
時間が経てば経つほど支払う事が難しくなります。最悪の自体である差し押さえを免れるためにも、督促状が届いたらすぐに年金事務所または社会保険労務士さんへ相談すると良いでしょう。
なお、現在金融機関から融資を受けている会社は、預金の差し押さえには十分に注意をしましょう。
当然ですが、預金を差し押さえられてしまうということは、金融機関に社会保険料等の滞納の事実が知られることを意味します。
以後の取引停止、ひどい場合は融資の回収に走られるかもしれません。
また、売掛金の差し押さえについても同様で、その事実が売掛先に知られてしまいます。信用の失墜ですね。
そもそも論ですが、社会保険料や雇用保険料などは従業員から一時的に預かっているお金ですから、それを支払わずに資金繰りに使ってしまうことなどは、絶対にしてはならないことです。注意しましょう。
資金繰りに関しては、専門のコンサルタントや資金調達・資金繰りに精通した税理士に頼んで、事前に手を打って早め早めの対策を心がけていきましょう。
社会保険未加入のリスクとペナルティー
株式会社を設立すると「社会保険」に必ず加入しなければいけないことは、知っていますか?
社長1人の会社でも夫婦で経営している会社でも従業員が2~3人程の中小企業であっても、必ず社会保険に加入しなくてはいけません。いわゆる「強制加入適用事業所」です。
まだ社会保険に未加入だとバレていないから大丈夫なんて思っていませんか?
バレていないのではなく、年金事務所から通知が来てないだけかもしれません。
未加入事業所には、まず年金事務所から加入勧奨の通知が届きます。それでも加入しない場合は加入指導され、最終的には立入検査という流れになります。
そして、法律上は未加入であった過去2年分の社会保険料の支払いを命じることができます。社長を含めた全従業員の過去2年分の納めるべきであった保険料です。もちろん辞めてしまっている従業員の分もです。
例えば社長の役員報酬が月額50万円とすると、単純計算で会社負担分が月額約8万円、社長個人負担分が月額約8万=月額16万円×2年分=384万円です。
社長1人でも上記金額です。もし従業員を雇っていたらどうでしょう。
社会保険料は、本来は会社と従業員で半分ずつ負担します。しかしながら、会社が加入していなかった期間の従業員負担分を従業員から徴収できるでしょうか?辞めた従業員がいた場合は?
結局、全額会社が負担する結果にならざるを得ません。
恐ろしい金額になることはお分かりになると思いますが、数百万円単位です。
もちろん丸々過去2年分の保険料を支払うように指導されるかどうかは分かりませんが、とても大きなリスクであることは分かると思います。
また、追徴されるだけでなく、罰則があり「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」と定められています。そして、さらにペナルティとして延滞金がありますので、通常の保険料よりも支払う金額が大きくなることがあります。
もし社会保険未加入であれば、未加入事業所に対するリスクとペナルティについては、きちんと理解しておくべきです。
社会保険とマイナンバー制度について
平成29年1月から、社会保険の加入等の際にはマイナンバー(法人のマイナンバー番号、個人のマイナンバー番号)を記載して届け出ることになりました。
平成28年の確定申告からは、確定申告書にマイナンバーの記載が必要になっています。
平成28年の確定申告からはこれらのマイナンバーの本格利用により情報が一元化されることで、会社情報を検索するのが非常に簡単になります。
会社で社会保険に加入せず、国民年金や国民健康保険に加入して、社会保険加入を逃れている会社が少なからずあります。
一昔前であればバレなかったかもしれませんが、マイナンバー制度の導入により加入指導が強化されると予想されています。
社会保険に加入しなくていいことはありませんので、問題が大きくなる前に自主的に加入するほうが懸命だといえます。